あさ)” の例文
あるあさのこと、ひがしそらがやっとあかくなりはじめたころ、いつものごとくふねそうと、海岸かいがんをさして、いえかけたのであります。
羽衣物語 (新字新仮名) / 小川未明(著)
かれ生活せいくわつかくごとくにしていた。あさは八き、ふく着換きかへてちやみ、れから書齋しよさいはひるか、あるひ病院びやうゐんくかである。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
昨日きのふあさ千葉ちばわたしびまして、奧樣おくさまこの四五にちすぐれやう見上みあげられる、うぞあそばしてかと如何いかにも心配しんぱいらしくまをしますので
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
しかし、よるになると、こっそりとはじめて、あさしろもんがあくまでうつしました。かおははれぼったくなり、病人びょうにんのようにみえました。
「いや、むほどのことでもなかろうが、なんわかおんな急病きゅうびょうでの。ちっとばかり、あさから世間せけんくらくなったようながするのさ」
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
あさつぱらにつたらはあけたに相違さうゐねえつちんでがすから、なにわしもむしろけたところあんした、むしろわかるから駄目だめでがす
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
景色けしきだ、とこれから、前記ぜんき奥入瀬おいらせ奇勝きしようくこと一ばんして、くちあさぼらけ、みぎはまつはほんのりと、しまみどりに、なみあをい。
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
今でも朝げ夕げという名を使う人がすこしはあり、また神さまにさし上げるおぜんは、あさみけゆうみけと昔から敬語をそえてとなえている。
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
あさになるとかさずとほ納豆賣なつとううりこゑが、かはらとざしもいろ連想れんさうせしめた。宗助そうすけとこなかそのこゑきながら、またふゆたとおもした。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
その折左衛門尉は自分が毎朝馬で馬場先を運動する事を話したので、石黒氏は父親てゝおやかれてあさはやくから馬場先に出掛けて往つた。
ひがしそらのききょうのはなびらはもういつかしぼんだようにちからなくなり、あさ白光しろびかりがあらわれはじめました。ほしが一つずつきえてゆきます。
いちょうの実 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
はちかつぎはあさばんもおかままえすわって、いぶりくさまきのにおいに目もはないためながら、ひまさえあればなみだばかりこぼしていました。
鉢かつぎ (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
〔譯〕あさにしてくらはずば、ひるにしてう。わかうして學ばずば、壯にしてまどふ。饑うるは猶しのぶ可し、まどふは奈何ともす可からず。
かぜでもいてくりえだれるやうなあさとうさんがおうちから馳出かけだしてつてますと『たれないうちにはやくおひろひ。』とくりつて
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
はとはおなかいてゐました。あさでした。羽蟲はむしを一つみつけるがはやいか、すぐ屋根やねからにはびをりて、それをつかまえました。
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
相手は藝子あがりのおあさといふ女。それは綺麗だといふことだが、三味線堀にかこつて三日に一日は家をあけるといふことだ。
人差指はその家婦かみさんだ。干鱈ひだらのやうに乾涸ひからびた男まさり、あさつぱらから女中をちどほしだ、けるのだらう、徳利は手を離さない、好きだから。
五本の指 (旧字旧仮名) / ルイ・ベルトラン(著)
我国の雪里地さとちは三月のころにいたれば次第しだい々々にきえあさ々はこほること鉄石の如くなれども、日中ひなかは上よりも下よりもきゆる。
ロミオ とらはれうと、死罪しざいにならうと、うらみはない、そもじのぞみとあれば。あの灰色はひいろあさいともはう、ありゃ嫦娥シンシヤひたひから照返てりかへ白光びゃくくわうぢゃ。
その翌日よくじつから、わたくしあさ東雲しのゝめ薄暗うすくら時分じぶんから、ゆふべ星影ほしかげうみつるころまで、眞黒まつくろになつて自動鐵檻車じどうてつおりのくるま製造せいぞう從事じゆうじした。
それはおあさという今年二十歳の女と、わたくしとの二人で、さびしい御下屋敷へ参るのはなんだか島流しにでも逢ったような心持も致しましたが
三浦老人昔話 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「おいおい。いったい どうしたわけで、こんなに あさはやくから、はたけのなかを、うろちょろしているんだね。」
が、そのふゆってしまったとき、あるあさ子家鴨こあひる自分じぶん沢地たくちがまなかたおれているのにがついたのでした。
いかにも、くらよるあさかはつたよろこびが、『あけぬこのは』といふ簡單かんたんのうちに、みなぎつてゐるではありませんか。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
搖上ゆりあ搖下ゆりおろ此方こなたたゞよひ彼方へゆすれ正月四日のあさこくより翌五日のさるこくまで風は少しもやま吹通ふきとほしければ二十一人の者共は食事しよくじもせす二日ふつか二夜ふたよ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
たとへば、それがあさの九であつたと假定かていして、丁度ちやうど其時そのとき稽古けいこはじめる、時々とき/″\何時なんじになつたかとおもつてる、時計とけいはりめぐつてく!一時半じはん晝食ちうじき
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
十四あさぼく支度したく匆々そこ/\宿やどした。銀座ぎんざ半襟はんえりかんざし其他そのたむすめよろこびさうなしなとゝのへて汽車きしやつた。
湯ヶ原より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
「ああ、このごろみみこえるこえぬがあってのオ。きんのはあさからみみなかはえが一ぴきぶんぶんいってやがって、いっこうこえんだった。」
ごんごろ鐘 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
がつあさのうちですよ。金魚きんぎょをよこせといつてきたのが、そのまえ夕方ゆうがたでしてね。どうしてだか、ひどくいそいでもつてこいつていうんでした。
金魚は死んでいた (新字新仮名) / 大下宇陀児(著)
ちょうど、いのきちのまれたあさ、おじいさんが、うらの谷で大きなイノシシをうちとめたので、その記念きねんに、いのきちという名をつけられたのだという。
ラクダイ横町 (新字新仮名) / 岡本良雄(著)
『胃の悪いのは喰過ぎだ。あさツから煙草許りんでゐて、躰屈たいくつまぎれに種々いろんな物を間食するから悪いんだよ。』
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
ああなつかしきかな余の生れ出し北地ほくち僻郷へきごうの教会よ、あさゆうに信徒相会し、木曜日の夜半の祈祷会、土曜日の山上の集会、日曜終日の談話、祈祷、聖書研究
基督信徒のなぐさめ (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
ただぼんやりしていたのではもらしがありますので、わたくしあさになればいつもふか統一状態とういつじょうたいはいり、そしてそのまま御弊ごへいと一しょになってしまうのでございます。
あさ須原峠のけんのぼる、偶々たま/\行者三人のきたるにふ、身には幾日か風雨ふううさらされてけがれたる白衣をちやくし、かたにはなが珠数じゆづ懸垂けんすゐし、三個の鈴声れいせいに従ふてひびきた
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
彼等かれらあさきて先づ火焚き塲の火をさかんにし、食物調理しよくもつてうりを爲し、飮食いんしよくを終りたる後は、或は食物原料採集げんれうさいしうに出掛け、或は器具製造に從事じうじし、日中のときつひやしたる後
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
この歌の、「朝に」は時間をあらわすので、「あさに出で見る毎に」(巻八・一五〇七)、「朝な夕なにかづくちふ」(巻十一・二七九八)等の「に」と同じい。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
それからそのそばに、あみだ寺をたてて、とくの高いぼうさんを、そこにすまわせ、あさゆうにおきょうをあげていただいて、海のそこにしずんだ人びとのれいをなぐさめました。
壇ノ浦の鬼火 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
そのあさ学校で、おいのりの前に、講堂こうどうにいるシューラのそばへ、ミーチャ・クルイニンがって
身体検査 (新字新仮名) / フョードル・ソログープ(著)
歸營きえいしてから三日目かめあさだつた。中隊教練ちうたいけうれんんで一先ひとま解散かいさんすると、分隊長ぶんたいちやう高岡軍曹たかをかぐんそう我々われわれ銃器庫裏ぢうきこうらさくら樹蔭こかげれてつて、「やすめつ‥‥」と、命令めいれいした。
一兵卒と銃 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
こういうところをあさ未明まだきに旅をするのは実に旅行中の最大愉快である。湖辺に沿うて行くこと五里ばかりにして朝時頃に山の間の小さな流れのところに着きました。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
赤城下あかぎしたの邸で、新蔵が心配しているに違いないと、あくあさは、真っ先に起きて戸外おもてへとび出した。
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
朝日新聞社員あさひしんぶんしやゐん横川勇次氏よこかはゆうじしを送らんと、あさ未明まだきおきいでて、かほあらも心せはしく車をいそがせて向島むかふじまへとむかふ、つねにはあらぬ市中しちうにぎはひ、三々五々いさましげにかたふて
隅田の春 (新字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
B うゝきまつてるよ。毎日まいにちあさばんと一まいづつる。ぼく毎日まいにちあさばんと一まいづつしてる。
ハガキ運動 (旧字旧仮名) / 堺利彦(著)
あさはんつてから、老人らうじんあしだから、池田いけだいたときは、もうつであつた。おくれた中食ちうじきをして、またぽつ/\と、うまかよひにくいみちを、かはつて山奧やまおくへとすゝんでつた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
ひかりいま頑固かたくなあさこゝろいて、そのはれやかな笑顏ゑがほのうちに何物なにものをもきずりまないではかないやうに、こゝをけよとばかりぢられた障子しやうじそとかゞやきをもつてつてゐる。
日の光を浴びて (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
「こゝはいゝね。たかいし、庭はひろいし、はなはあるし、あさ起きても日にあたれるし。」
美しい家 (新字旧仮名) / 横光利一(著)
一門のたより、天下の望みをつなぐ御身なれば、さすがの横紙よこがみやぶりける入道にふだうも心を痛め、此日あさまだき西八條より遙々はる/″\の見舞に、内府ないふも暫く寢處しんじよを出でて對面あり、半晌計はんときばかて還り去りしが
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
そのも、あさはや彼女かのぢよあがらうとしたが、自分じぶんにどうむちうつてても、全身ぜんしんのひだるさにはてなかつた。あがるとはげしい眩暈めまひがした。周圍しうゐがシーンとして物音ものおとがきこえなくなつた。
彼女こゝに眠る (旧字旧仮名) / 若杉鳥子(著)
どうしたつてえぢやアえか、昨日きのふ年始𢌞ねんしまはりだ、あさうちを出て霊南坂れいなんざかあがつて、麻布あざぶへ出たんだ、麻布あざぶから高輪たかなわへ出て、それからしばかへつてて、新橋しんばしを渡り、煉瓦通れんがどほりを𢌞まはつて神田かんだへ出て
年始まはり (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
我が国は当時の地理上の知識において、知りうる限りの世界の最東にあるが故に、所謂日出処ひいづるところ、すなわち「あさ」の国であり、これに対して西方なる支那は日のる国、すなわち「くれ」の国である。
国号の由来 (新字新仮名) / 喜田貞吉(著)