そな)” の例文
おのづから智慧ちゑちからそなはつて、おもてに、隱形おんぎやう陰體いんたい魔法まはふ使つかつて、人目ひとめにかくれしのびつゝ、何處いづこへかとほつてくかともおもはれた。
番茶話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
やがて、金の力の宏大なのに陶醉たうすゐして、貫兵衞はもう一度、それが自分にそなはつた才能、徳望のやうに思ひ込んでしまつたのです。
わたくしみぎ懐剣かいけん現在げんざいとても大切たいせつ所持しょじしてります。そして修行しゅぎょうときにはいつもこれ御鏡みかがみまえそなえることにしてるのでございます。
僕はこれは表裏をそなうる人の意志によるものであると思う。僕のここにいう意志とは天性てんせいというにあい対して用いたのである。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
最前看護婦が、枕元に立てかけて行った、病院そなつけの白木の松葉杖を左右に突っ張って、キマリわるわる廊下に出てみた。
一足お先に (新字新仮名) / 夢野久作(著)
神と悪魔との反対面をそなえて持つ科学に、われ等はかれているのだ。くのごとき科学力時代に、科学小説がなくていいであろうか。
『地球盗難』の作者の言葉 (新字新仮名) / 海野十三(著)
煖房装置だんぼうそうちもあれば、かべにはオゾン発生機はっせいきそなえてあって、たくさんのテーブルには、それぞれきゃくむかっていました。
世の中へ出る子供たち (新字新仮名) / 小川未明(著)
櫻島噴火さくらじまふんかいちじるしい前徴ぜんちようそなへてゐた。數日前すうにちぜんから地震ぢしん頻々ひんぴんおこることは慣例かんれいであるが、今回こんかい一日半前いちにちはんぜんからはじまつた。
火山の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
わたしたちの宿やど構造こうぞうはしごく簡単かんたんであった。そなえつけの家具も同様で、土の山と、二つ三つ大きな石がいすの代わりにいてあるだけであった。
○さて堂内人さんじて後、かの山長やまをとこ堂内に苧幹をがらをちらしおく㕝れいなり。翌朝よくてうおとこ神酒みき供物くもつそなふ、うしろさまにすゝみさゝぐ、正面にすゝむを神のいみ給ふと也。
そして内氣うちきでもありませんね。あなたは、あなたの精神に或る雄々をゝしさをそなへてゐらつしやると同時に、あなたの眼にある鋭さを備へてゐらつしやる。
それ欧、米諸国のごとき、人民を教育する諸般の学校を設け、諸般の方法をたつる、もとより周密そなわらざるなし。
教育談 (新字新仮名) / 箕作秋坪(著)
それから、かや、まき、とべらなど常緑樹じようりよくじゆ發芽はつが最後さいご五月ごがつ上旬頃じようじゆんごろには、すべての樹木じゆもくはるつけををはつて、ついでなつ生活せいかつそなへをします。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
あわてるには及ばぬまでも、諸陣はみな戦気立ッて、御司令を待ちおりまする。そなえはいかにしたものでしょうか
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
普通ふつう中学校などにそなけてある顕微鏡けんびきょうは、拡大度かくだいどが六百ばい乃至ないし八百倍ぐらいまでですから、ちょうはね鱗片りんぺん馬鈴薯ばれいしょ澱粉粒でんぷんりゅうなどはじつにはっきり見えますが
手紙 三 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
かのみつの形のわざは、みな直に成りそなはりてその主より輝き出で、いづれを始めと別ちがたし 二八—三〇
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
しかしてのちある義士ぎし一撃いちげきたほれたりとかば事理分明じりぶんめいにして面白おもしろかるべしといへどもつみばつ殺人罪さつじんざいは、この規矩きくにははづれながら、なほ幾倍いくばい面白味おもしろみそなへてあるなり。
「罪と罰」の殺人罪 (旧字旧仮名) / 北村透谷(著)
とかのぞたまふらんそはまた道理だうりなり君様きみさまつまばれんひと姿すがたあめしたつくして糸竹いとたけ文芸ぶんげいそなはりたるを
闇桜 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
しかしあのあか水々みづ/″\したは、ながい/\野山のやまゆきえるまでのあひだを、かみ小鳥達ことりたち糧食りやうしよくにとそなへられたものではないかとおもふと、痛々いた/\しくなたれたひとつみおそろしい。
日の光を浴びて (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
……ついこの神かつて出現無くして凶年相続き候へば、豊年の願として人々かの形を似せ供物くもつそなへ、古見三村より小舟一そうづゝ、にぎやかに仕出しいだし争はせ、祭の儀式を勤め候。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
やがてナブルスに着き、羅甸らてん派の精舎しやうじや宿しゆくす。総じてパレンスタインの僧舎は、紹介状だに持参せば、旅客を泊むる仕組にて、此処にも幾個の客床かくしやうを設けあり、食堂もそなはる。
冷却れいきゃくしてのち飛散ひさんするとすれば、高尚こうしょうなるほとんかみごと智力ちりょくそなえたる人間にんげんを、虚無きょむより造出つくりだすの必要ひつようはない。そうしてあたかあざけるがごとくに、またひと粘土ねんどする必要ひつようい。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
しかもおかしみを十分にそなえたところに、この丈草の句よりは一歩を進めたところがある。
俳句はかく解しかく味う (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
おこなき親達おやたちいさゝ孝養かうやうそなへんと出立なす折柄をりから輕井澤かるゐざはへんより彼の曲者くせものと連れに成り道中みちすがら彼の振舞ふるまひに心をつけるに唯者たゞものならず江戸より付き來りし樣子なり今日も彼者度々たび/\手を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
押しも押されもせぬ文豪のおもかげがある。遊蕩青年からすぐこの文豪の風格をそなへた著書を生んだその間の系統の不明なのに、他の国文学者たちは一致して不思議がつて居る。
上田秋成の晩年 (新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
堅牢けんらうなるてつおりをもつて圍繞かこまれ、下床ゆか彈力性だんりよくせいいうするクロー鋼板かうばんで、上部じやうぶ半面はんめん鐵板てつぱんおほはれ、半面はんめん鐵檻てつおりをもつてつくられ、鐵車てつしや都合つごう十二の車輪くるまそなへ、其内そのうち齒輪車しりんしや
其議論のはげしきつひに小西技師をして、国境論者こくけうろんしやは別隊をひきゐてべつ探検たんけんすべしとの語をはつせしむるにいたりたる程なりき、もし糧食れうしよくそなへ充分にして廿日以上の日子をつひやすの覚悟なりせば
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
すなは關其思くわんきしりくしていはく、「(一〇三)兄弟けいていくになりこれてとふはなんぞや」と。胡君こくんこれいて、ていもつおのれしたしむとして、ていそなへず。鄭人ていひとおそうてこれれり。
花にはがく、花弁、雄蕊ゆうずい雌蕊しずいそなわっていて、植物学上でいう完備花かんびかをなしている。
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
「どうぞおくつろぎなさるよう。何はなくても晩食の物、すぐにおそなえ致しましょう」
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
それはたとへば堂塔だうたふ伽藍がらんつく場合ばあひに、巨大きよだいなるおも屋根やねさゝへる必要上ひつえうじやう軸部ぢくぶ充分じうぶん頑丈ぐわんぜうかためるとか、宮殿きうでんつく場合ばあひに、その格式かくしきたもち、品位ひんゐそなへるために、優良いうれうなる材料ざいれうもち
日本建築の発達と地震 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
たまのようだといわれたその肌は、年増盛としまざかりの愈〻いよいよえて、わけてもお旗本の側室そくしつとなった身は、どこか昔と違う、お屋敷風の品さえそなわって、あたか菊之丞きくのじょう濡衣ぬれぎぬを見るような凄艶せいえんさがあふれていた。
歌麿懺悔:江戸名人伝 (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
くびむしさかさまれてひたひがいつでもあつられてあせばんでた。百姓ひやくしやうみな見窄みすぼらしいをんなかへりみなかつた。村落むらから村落むらわたときをんな姿すがた人目ひとめくべき要點えうてんが一つもそなはつてなかつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
茨右近が独断どくだんで、四谷自証院よつやじしょういん、瘤寺裏の横地半九郎方へ斬り込んで、居合わせた松原源兵衛をその四番首にした時、先方にもそなえがあって、芝源助町の神保造酒、無形一刀流の道場から、春藤幾久馬
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
殊勝しゆしようらしくきこえて如何いかゞですけれども、道中だうちうみややしろほこらのあるところへは、きつ持合もちあはせたくすりなかの、何種なにしゆのか、一包ひとつゝみづゝをそなへました。
人魚の祠 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
しかしだんだん彼らとつきあってみると、実に村夫子そんぷうしの中に高い人格をそなえた人が、いたる所にいるのを見て、心窃こころひそかに喜んでいる。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
真正真銘しんしょうしんめいの九万九千トンの巨艦だ。立派に大砲もそなえ、重油じゅうゆを燃やして時速三十五ノットで走りもする。見本とはいいながら、立派なものじゃ。
そのはよほど家柄いえがらうまれらしく、まるポチャのあいくるしいかおにはどことなく気品きひんそなわってり、白練しろねり下衣したぎうすうす肉色にくいろ上衣うわぎかさ
○さて堂内人さんじて後、かの山長やまをとこ堂内に苧幹をがらをちらしおく㕝れいなり。翌朝よくてうおとこ神酒みき供物くもつそなふ、うしろさまにすゝみさゝぐ、正面にすゝむを神のいみ給ふと也。
「どうもさうらしいな。飯の食ひ溜めといふことは聽いたが、煙草の呑み溜めは、八五郎一人にそなはる藝當だよ」
駿河臺するがだい紅梅町こうばいちやうにそのほる明治めいぢ功臣こうしん竹村子爵たけむらししやくとの尊稱そんしよう千軍万馬せんぐんまんばのうちにふくみし、つぼみのはなひらけるにや、それ次男じなんみどりとて才識さいしきらびそなはる美少年びせうねん
たま襻 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
山の根にって、広いほりをめぐらし、千松万柳、門への道は、り橋だった。正門の次に内門をひかえ、白壁高く、楼に楼をかさね、武器庫、厩長屋うまやながや、およそそなわらざるはない。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それはした鐵心てつしんいたるまでは玄武岩質げんぶがんしつのものもしくはそれに鐵分てつぶんくははつたもので出來できてゐて、これは急速きゆうそくはたらちからたいしてきはめてしぶとく抵抗ていこうする性質せいしつそなへてゐるけれども
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
みつともな婦人をんなといふものは創造のうるはしい顏の汚點だと見なします。でも殿方とのがたにはたゞ力と勇武だけをおそなへになれば結構ですわ。その座右の銘としては——狩獵、射撃、戰ですわ。
それも御褥御枕おしとねおまくらそなえ、御沓杖おくつつえ等を用意して、祭儀の中心をなすものは神と君と、同時の御食事をなされる、むしろ単純素朴にすぎたとも思われる行事であったというに至っては
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
そんな飲食店の食器やそなつけ品を、初めは楊子ようじ入れ位から始めて、ナイフ、フォークに到る迄失敬して、泥棒学のイロハを習う。だんだん熟練して、額縁や掛物、皿小鉢や鍋に及ぶ。
東京人の堕落時代 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
少女しょうじょは、っていた、パンをちぎりました。とつぜん、なにかおとがして、ねこのそばへちました。おどろいたははねこは、まるくして、不意ふい来襲者らいしゅうしゃそなえて、身構みがまえをしました。
どこかに生きながら (新字新仮名) / 小川未明(著)
冷却れいきやくしてのち飛散ひさんするとすれば、高尚かうしやうなるほとんかみごと智力ちりよくそなへたる人間にんげんを、虚無きよむより造出つくりだすの必要ひつえうはない。さうしてあたかあざけるがごとくに、またひと粘土ねんどくわする必要ひつえうい。あゝ物質ぶつしつ新陳代謝しんちんたいしやよ。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
説明ときあかせば惣領そうりやううまるゝは格別かくべつ果報くわはうある事なれば貴賤きせんかぎらず惣領そうりやう其家そのいへ相續人さうぞくにんなりよつ自然しぜんとくそなへてうましに相違さうゐなくすで右大將頼朝公うだいしやうよりともこうにも源家げんけ御惣領ごそうりやうなりしが一たん清盛公きよもりこうため
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
いま一個いつこひとあり、車臺しやだいして、右手ゆんで柄子とりでにぎつて旋廻輪せんくわいりんまわしつゝ、徐々じよ/\足下そくか踏臺ふみだいむとたちまかたはらそなへられたる號鈴器がうれいきはリン/\として、下方かほう軸盤じゆくばんしづかに回轉くわいてんはじむるととも