おそ)” の例文
新字:
はやがさめても何時いつまでもるのがいゝか、おそがさめてもむつくりきるのがいゝか、そのことで兄弟きやうだいあらそつてました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
ロレ (傍を向きて)それはおそうせねばならぬ仔細わけが、此方こちわかってをらなんだらなア!……あれ、御覽ごらうぜ、ひめ此庵こゝにわせられた。
かへりのおそきをはゝおやあんしてたづねにてくれたをば時機しほうちへはもどつたれど、はゝものいはず父親てゝおや無言むごんに、一人ひとりわたしをばしかものもなく
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
『や、や、あのはたは、あのふねは。』とばかり、焦眉せうびきふわすれてをどつ、わたくしいそそのほうまなこてんぜんとしたが、ときすでおそかつた。
がないものだから、ついおそくなりまして御氣おきどくです。すぐ御膳ごぜんいたしませう。しかしこんなところだからげるものがなくつてこまります。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
何の顏さげて人にいはれん然れば其時ぬるより外に方便てだても無き身なればおそかれ早かれ死ぬ此身とても死ぬなら今日只今長庵方へ押掛ゆきいのち
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
さいはひに、でない。わたし柳川やながは恩人おんじんだとおもふ——おもつてる。もう一歩ひとあしやうがおそいと、最早もはやことばつひやすにおよぶまい。
火の用心の事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
隨分ずいぶんえそえだつもりだつけがこんなにおそくなつちやつて、なんちつてもみじかくなつたかんな、さうつても怪我人けがにんちやるもんだな
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
さいはひを愛する愛、その義務つとめに缺くるところあればこゝにておぎなはる、怠りておそくせるかいこゝにて再び早めらる 八五—八七
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
逡巡ぐづ/″\してゐずにあいちやんはかぜのやうにはしりました、うさぎかどまがらうとしたときに、『あれッ、わはしみゝひげうしたんだらう、おそいこと』とふのをきました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
ヨーロッパではみなみほうにははやてつがはひつてましたが、北方ほつぽうのデンマルクやスエーデンやノールウエなどでは、てつのはひつてるのが大分だいぶおそかつたがために
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
その晩もやうやく新太郎を寢かし付けて、さて雨戸をめようとすると夜更よふけまで開けて置いた窓の障子へ、おそい月に照らされて、ハツキリ映つてゐるものがあります。
尤も今日は、刻限こくげんおそいせいか、一羽も見えない。唯、所々ところどころ、崩れかゝつた、さうしてそのくづれ目に長い草のはへた石段いしだんの上に、からすくそが、點々と白くこびりついてゐるのが見える。
羅生門 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
『さうともかぎりませんが熱海あたみおそくなると五ふんや十ぷん此處こゝたされるのです。』
湯ヶ原ゆき (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
『これではおそて、それですこしもらないものが、一ばん勝利しやうりわけですね』
あゆみおそむることもなく、急ぎもせずに、悠然と
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
かへりもおそいが、かへつてから出掛でかけなどといふ億劫おくくふこと滅多めつたになかつた。きやくほとんどない。ようのないとききよを十時前じまへかすことさへあつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
かりはたらかせしが其の夜はおそなりしかば翌朝かへしけるにはや辰刻頃いつゝごろなるに隱居所の裏口うらぐちしまり居て未だ起ざる樣子なれば大いにあやし何時いつも早く目を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
この深山しんざんすこしばかり迂回うくわいしてかへつたとて、左程さほどおそくもなるまい、またきわめて趣味しゆみあることだらうとかんがへたので、わたくし發議はつぎした。
はるならで芳之助よしのすけ歸宅かへりおそさよきやくありてとほくまできたるにやそれにしてもかへりさうなもの日沒ひぐれまへに一度いちどづゝ樣子見やうすみもどるがつねなるを
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
あはれ、あに元太郎もとたらうは、何事なにごとふりますで、何時いつもよりかへつておそくまで野良のらかへらないでたとふのに。
一席話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
黄昏たそがれやうや其處そこかゝつた高瀬船たかせぶねが、其處そこらで食料しよくれうもとあるいておそ晩餐ばんさんすましてまだねむらずにたのであつたらう。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
が、これぞとほどこともありませんでした。またあいちやんは、うさぎみちからしてて、『あァ/\おそくなつた』なんてふだらうとはちつともおもひませんでした。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
うへなうあま蜂蜜はちみつ旨過うますぎていやらしく、うてようといふにぶる。ぢゃによって、こひほどよう。ほどよいこひながつゞく、はやきにぐるはなほおそきにぐるがごとしぢゃ。
わたしおそがさめても、にいさんのやうにながないで、むつくりきたはうがいゝとおもひます。』
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
「權八が昨夜ゆうべおそく歸つて來て、店の臆病窓おくびやうまどを締めようとしたおいらに、この金包を渡したんだ」
何事ぞおそき魂等よ 一一八—一二〇
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
殺したる事は存ぜねども去年霜月しもつき十七日博奕よりおそく歸りし時如何なる故か面色かほいろからず衣類に血が付居つきをりし故樣子を尋ね候に途中とちうにて喧嘩を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
車夫くるまやあし何時いつよりおそいやうにおもはれて、御好物ごかうぶつ飴屋あめやのきはぐりました、此金これ少〻せう/\なれどわたし小遣こづかひのこり、麹町かうじまち御親類ごしんるいよりおきやくありとき
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
本艦ほんかんことやく一千米突いつせんメートル——忽然こつぜん波間はかんしづんだとおもしやおそしや、たゞ本艦ほんかん前方ぜんぽう海上かいじやうたちまおこ大叫喚だいけうくわん
懇意こんいなそここゝでおしな落葉おちば一燻ひとくいてもらつてはかざしてやつあたゝまつた。蒟蒻こんにやく仕入しいれてときはそんなこんなでひまをとつて何時いつになくおそかつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
小六ころくさいはひにしてもなくかへつた。日本橋にほんばしから銀座ぎんざそれから、水天宮すゐてんぐうはうまはつたところが、電車でんしやんで何臺なんだいはしたためにおそくなつたといふ言譯いひわけをした。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
パリス しうとカピューレットどのが其樣そのやうにしたいと被言おしゃる。わしとてもそれをおそうしたいとはおもひませぬ。
すぐ翌日よくじつであつた。がこれちつ時間じかんおそい。女中ぢよちうばん買出かひだしに出掛でかけたのだから四時頃よじごろで——しかし眞夏まなつことゆゑ、片蔭かたかげ出來できたばかり、日盛ひざかりとつてもい。
番茶話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
こんな物を縁の下へ入れて置けば、おそくとも明日の朝になれば、わけもなく見付かるぢやないか
祖父おぢいさん、わたしはやがさめました。そのかはり何時いつまでもました。おとうとおそがさめました。そのかはりわたしよりさききました。私達わたしたちいまそのことでつてるところです。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
まァ、眞個ほんとう奇態きたいゆめだこと、さァ、おちやみにきませうね、もうおそいから、そこあいちやんは、あがるやいなしました、けるも、熟々つく/″\奇妙きめうゆめであつたことをかんがへながら。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
傘屋かさやきちだよ、れだよとすこたかへば、いやなだね此樣こんおそくになにひにたか、またかちんのおねだりか、とわらつて、いまあけるよ少時しばらく辛防しんばうおしとひながら
わかれ道 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
あゝ、大分だいぶおそうござります。さあ、おしなさりまし。御存ごぞんじの、あのあか大蜈蚣おほむかでうねつた、さがふぢそろひの軒提灯のきぢやうちん御覽ごらうじながら、徐々そろ/\かへりなさいませんか。
月夜車 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
思ひの外使はおそくなつたやうですが、生憎あいにくあつしは釣船つりぶねに乘つて沖へ出て居て、片瀬の宿へ戻つたのは夜中近くなつてからでせう、——ところが、片瀬の宿は、引つくり返る騷ぎです
太吉たきち小僧こぞうひとさしゆびさきいて、おふねこぐ眞似まねせいみせしなをばちよろまかされぬやうにしておれ、わたしかへりがおそいやうならかまはずとをばおろして
うらむらさき (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ともさん、い、かへつておくれ。んだか、うへやまたやうにはなしがあるが、つてては、落着おちつかない。何處どこかへ一所いつしよにとおもふが、れもおそし、明日あすでもまたはうよ、ね。
月夜車 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
はづかしいおちましていまうちもの御座ござりませぬ、寐處ねどころ淺草町あさくさまち安宿やすやど村田むらたといふが二かいころがつて、ひたとき今夜こんやのやうにおそくまでこともありまするし
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
たべものにけては、中華亭ちうくわていむすめはこ新栗しんぐりのきんとんから、町内ちやうない車夫しやふ内職ないしよく駄菓子店だぐわしみせ鐵砲玉てつぱうだままで、おもむきかいしないではかないかただから、おそ朝御飯あさごはん茶漬ちやづけで、さら/\。
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ときいま何時なんどきにか、あれ、そらきこゆるは上野うへのかねならん、ふたつ、八時はちじか、いな九時くじになりけり、さてもおそくおはしますことかな、いつも九時くじのかねはぜんうへにてたまふを
軒もる月 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
片山家かたやまがおそ縁柱えんばしら暗中くらがりに、しにして、もだえてふるうでからは、れた。
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
庭口にはぐちぱなして、さぞかし貴郎あなたのおおこあそばしたことではかつたなれど、病人びやうにん見捨みすてゝかへこともならず、今日けふこのやうにおそくまでりまして、何處どこまでもわたしわろ御座ござんするほどに
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
くてあしたくれをさむ。すべ一七日いちしちにちじゆつるとしようし、でて昌黎しやうれいたいして、はじめてぢたるいろあり。いはく、うらむらくはせつおそきこと一月ひとつきなり、ときすでふゆにしておもふがまゝならずと。
花間文字 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
じつはなくなりましたちゝが、危篤きとくとき東京とうきやうからかへりますのに、(タダイマココマデキマシタ)とまちから發信はつしんした……とそれを口實こうじつに——時間じかんおそくはありませんが、目口めくちもあかない
雪霊続記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
やれ/\うしてこのおそくにたおうちではみなかはりもなしかといつかはらずもてはやさるれば、はりむしろにのるやうにておくさまあつかひなさけなくじつとなみだ呑込のみこんで、はいれも時候じかうさわりも御座ござりませぬ
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)