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暖
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あたゝか
ふりがな文庫
“
暖
(
あたゝか
)” の例文
堀割
(
ほりわり
)
は
丁度
(
ちやうど
)
真昼
(
まひる
)
の
引汐
(
ひきしほ
)
で
真黒
(
まつくろ
)
な
汚
(
きた
)
ない
泥土
(
でいど
)
の
底
(
そこ
)
を見せてゐる上に、四月の
暖
(
あたゝか
)
い日光に
照付
(
てりつ
)
けられて、
溝泥
(
どぶどろ
)
の
臭気
(
しうき
)
を
盛
(
さかん
)
に発散して
居
(
ゐ
)
る。
すみだ川
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
彼
(
かれ
)
は
眼前
(
がんぜん
)
に
氷
(
こほり
)
が
閉
(
と
)
ぢては
毎日
(
まいにち
)
暖
(
あたゝか
)
い
日
(
ひ
)
の
光
(
ひかり
)
に
溶解
(
ようかい
)
されるのを
見
(
み
)
て
居
(
ゐ
)
た。
彼
(
かれ
)
にはそれが
只
(
たゞ
)
さういふ
現象
(
げんしやう
)
としてのみ
眼
(
め
)
に
映
(
うつ
)
つた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
斯
(
か
)
うなると
昨夜
(
さくや
)
の
暖
(
あたゝか
)
な「スープ」や、
狐色
(
きつねいろ
)
の「フライ」や、
蒸氣
(
じようき
)
のホカ/\と
立
(
た
)
つて
居
(
を
)
る「チツキンロース」などが、
食道
(
しよくだう
)
の
邊
(
へん
)
にむかついて
來
(
く
)
る。
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
而
(
さう
)
して
其眼
(
そのめ
)
には
暖
(
あたゝか
)
な
健全
(
けんぜん
)
な
輝
(
かゞやき
)
がある、
彼
(
かれ
)
はニキタを
除
(
のぞ
)
くの
外
(
ほか
)
は、
誰
(
たれ
)
に
對
(
たい
)
しても
親切
(
しんせつ
)
で、
同情
(
どうじやう
)
が
有
(
あ
)
つて、
謙遜
(
けんそん
)
であつた。
六号室
(旧字旧仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
彳
(
たゝず
)
めば、
暖
(
あたゝか
)
く
水
(
みづ
)
に
抱
(
いだ
)
かれた
心地
(
こゝち
)
がして、
藻
(
も
)
も、
水草
(
みづくさ
)
もとろ/\と
夢
(
ゆめ
)
が
蕩
(
とろ
)
けさうに
裾
(
すそ
)
に
靡
(
なび
)
く。おゝ、
澤山
(
たくさん
)
な
金魚藻
(
きんぎよも
)
だ。
城崎を憶ふ
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
▼ もっと見る
暖炉
(
シユミネ
)
の火が灰がちな下に
昨夜
(
ゆうべ
)
の
名残
(
なごり
)
の
紅玉
(
リユビイ
)
の様な
明
(
あか
)
りを美しく保つては居るが、少しも
暖
(
あたゝか
)
く無いので寝巻の
儘
(
まゝ
)
楊枝
(
やうじ
)
を
遣
(
つか
)
つて居た手を休めて火箸で掻廻すと
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
暖
(
あたゝか
)
に
寢
(
ね
)
かす事ならず
豫
(
かね
)
て金二分に
質入
(
しちいれ
)
せし
抱卷
(
かいまき
)
蒲團
(
ふとん
)
有
(
あれ
)
ども其日を送る事さへ心に
任
(
まか
)
せねば
質
(
しち
)
を出す金は
猶更
(
なほさら
)
なく其上吉之助一人口が
殖
(
ふゑ
)
難儀
(
なんぎ
)
の事故夫婦は
膝
(
ひざ
)
を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
と言つて、
安々
(
やす/\
)
と娘の
暖
(
あたゝか
)
さうな掌面と不恰好な自分のをぴたりと合せたと思ふと、その
儘
(
まゝ
)
凝
(
じつ
)
と握り締めた。
茶話:02 大正五(一九一六)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
九日は江戸の気候が
稍
(
やゝ
)
暖
(
あたゝか
)
であつたものか。蘭軒の「草堂小集」には「梅発初蘇凍縮身」、「数曲鶯歌在翠筠」等の句がある。茶山の「人日」は錯愕の語を
作
(
な
)
してある。
伊沢蘭軒
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
車夫
(
しゃふ
)
はがら/\引いてまいりますと、積んで来た荷の中の死骸が腐ったも道理、小春なぎの
暖
(
あたゝか
)
い時分に
二晩
(
ふたばん
)
留
(
と
)
め、又
打
(
うち
)
かえって寒くなり、雨に当り、いきれましたゆえ、臭気
甚
(
はなはだ
)
しく
西洋人情話 英国孝子ジョージスミス之伝
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
三千代
(
みちよ
)
は
今
(
いま
)
湯から
帰
(
かへ
)
つた所だと云つて、団扇さへ
膝
(
ひざ
)
の
傍
(
そば
)
に置いてゐた。
平生
(
いつも
)
の
頬
(
ほゝ
)
に、
心持
(
こゝろもち
)
暖
(
あたゝか
)
い色を
出
(
だ
)
して、もう帰るでせうから、
緩
(
ゆつ
)
くりしてゐらつしやいと、茶の
間
(
ま
)
へ茶を入れに
立
(
た
)
つた。
それから
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
また
暖房
(
だんぼう
)
のあるために
冬
(
ふゆ
)
の
日
(
ひ
)
も
館内
(
かんない
)
は
春
(
はる
)
のように
暖
(
あたゝか
)
く
過
(
すご
)
すことが
出來
(
でき
)
ます。
博物館
(旧字旧仮名)
/
浜田青陵
(著)
蠅
(
はへ
)
は
灰
(
はひ
)
より
生
(
しやう
)
ず、灰は火の
燼末
(
もえたこな
)
也、しかれば蠅は火の虫也。
蠅
(
はへ
)
を
殺
(
ころ
)
して
形
(
かたち
)
あるもの
灰中
(
はひのなか
)
におけば
蘇
(
よみがへる
)
也。又
虱
(
しらみ
)
は人の
熱
(
ねつ
)
より
生
(
しやう
)
ず、
熱
(
ねつ
)
は火也、火より生たる虫ゆゑに
蠅
(
はへ
)
も
虱
(
しらみ
)
も
共
(
とも
)
に
暖
(
あたゝか
)
なるをこのむ。
北越雪譜:03 北越雪譜初編
(新字旧仮名)
/
鈴木牧之
、
山東京山
(著)
日影
(
ひかげ
)
弱
(
よは
)
き
初冬
(
はつふゆ
)
には
稀
(
まれ
)
なる
暖
(
あたゝか
)
さに
候
(
そろ
)
まゝ
寒斉
(
かんさい
)
と申すにさへもお
耻
(
はづ
)
かしき
椽端
(
えんばた
)
に
出
(
い
)
でゝ
今日
(
こんにち
)
は背を
曝
(
さら
)
し
居
(
を
)
り
候
(
そろ
)
、
所謂
(
いはゆる
)
日向
(
ひなた
)
ぼつこに
候
(
そろ
)
日向
(
ひなた
)
ぼつこは今の
小生
(
せうせい
)
が
唯一
(
ゆいいつ
)
の楽しみに
候
(
そろ
)
、
人知
(
ひとし
)
らぬ楽しみに
候
(
そろ
)
もゝはがき
(新字旧仮名)
/
斎藤緑雨
(著)
日本の冬の
明
(
あかる
)
さと
暖
(
あたゝか
)
さとはおそらくは多島海の牧神をしてこゝに来り遊ばしむるも猶快き夢を見させる魅力があつたであらう。
冬日の窓
(新字旧仮名)
/
永井荷風
、
永井壮吉
(著)
彼
(
かれ
)
は
自由
(
じいう
)
を
失
(
うしな
)
うた
其
(
その
)
手先
(
てさき
)
が
暖
(
あたゝか
)
い
春
(
はる
)
の
日
(
ひ
)
が
積
(
つも
)
つて
漸次
(
だん/\
)
に
和
(
やは
)
らげられるであらうといふ
微
(
かす
)
かな
希望
(
のぞみ
)
をさへ
起
(
おこ
)
さぬ
程
(
ほど
)
身
(
み
)
も
心
(
こゝろ
)
も
僻
(
ひが
)
んでさうして
苦
(
くる
)
しんだ。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
何
(
なん
)
ぼ
私
(
わし
)
が
顱巻
(
はちまき
)
しても、
血
(
ち
)
の
通
(
かよ
)
ふ、
暖
(
あたゝか
)
い
彫刻物
(
ほりもの
)
は
覚束
(
おぼつか
)
ないで、……
何
(
なん
)
とか
別
(
べつ
)
の
工夫
(
くふう
)
を
頼
(
たの
)
むだ、
最
(
も
)
う
此
(
こ
)
なものは
神鑿
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
ヂオゲンは
勿論
(
もちろん
)
書齋
(
しよさい
)
だとか、
暖
(
あたゝか
)
い
住居
(
すまゐ
)
だとかには
頓着
(
とんぢやく
)
しませんでした。
是
(
これ
)
は
彼
(
か
)
の
地
(
ち
)
が
暖
(
あたゝか
)
いからです。
樽
(
たる
)
の
中
(
うち
)
に
寐轉
(
ねころが
)
つて
蜜柑
(
みかん
)
や、
橄欖
(
かんらん
)
を
食
(
た
)
べてゐれば
其
(
そ
)
れで
過
(
すご
)
される。
六号室
(旧字旧仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
「丁亥元日、客歳冬暖、園中梅柳、頗有春色、故詩中及之。梅已含香柳帯烟。杪冬猶是属蕭然。春風先自融人意。方道今朝草樹妍。」江戸は冬以来
暖
(
あたゝか
)
であつたと見える。
伊沢蘭軒
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
冬
(
ふゆ
)
は
暖
(
あたゝか
)
くて
夏
(
なつ
)
は
涼
(
すゞ
)
しいので、
住居
(
じゆうきよ
)
には
申
(
まを
)
し
分
(
ぶん
)
がないといふことです。
博物館
(旧字旧仮名)
/
浜田青陵
(著)
彼
(
かれ
)
は
暫
(
しばら
)
く
好
(
すき
)
な
煙草
(
たばこ
)
に
屈託
(
くつたく
)
して
居
(
ゐ
)
たが
漸
(
やうや
)
く
日
(
ひ
)
が
暖
(
あたゝか
)
く
成
(
な
)
り
掛
(
か
)
けたので、
稀
(
まれ
)
に
生存
(
せいぞん
)
して
居
(
ゐ
)
る
往年
(
わうねん
)
の
朋輩
(
ほうばい
)
や
近所
(
きんじよ
)
への
義理
(
ぎり
)
かた/″\
顏
(
かほ
)
を
出
(
だ
)
す
積
(
つもり
)
で
外
(
そと
)
へ
出
(
で
)
た。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
そよ吹く風は丁度
酣
(
たけなは
)
なる春の
夜
(
よ
)
の如く
爽
(
さわや
)
かに
静
(
しづか
)
に、身も溶けるやうに
暖
(
あたゝか
)
く、海上の大なる沈静が心を澄ませる。
黄昏の地中海
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
やゝ
大粒
(
おほつぶ
)
に
見
(
み
)
えるのを、もし
掌
(
たなごころ
)
にうけたら、
冷
(
つめた
)
く、そして、ぼつと
暖
(
あたゝか
)
に
消
(
き
)
えたであらう。
空
(
そら
)
は
暗
(
くら
)
く、
風
(
かぜ
)
も
冷
(
つめ
)
たかつたが、
温泉
(
ゆ
)
の
町
(
まち
)
の
但馬
(
たじま
)
の
五月
(
ごぐわつ
)
は、
爽
(
さわやか
)
であつた。
城崎を憶ふ
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
而
(
さう
)
して
自分
(
じぶん
)
は
暖
(
あたゝか
)
い
靜
(
しづか
)
な
處
(
ところ
)
に
坐
(
ざ
)
して、
金
(
かね
)
を
溜
(
た
)
め、
書物
(
しよもつ
)
を
讀
(
よ
)
み、
種々
(
しゆ/″\
)
な
屁理窟
(
へりくつ
)
を
考
(
かんが
)
へ、
又
(
また
)
酒
(
さけ
)
を(
彼
(
かれ
)
は
院長
(
ゐんちやう
)
の
赤
(
あか
)
い
鼻
(
はな
)
を
見
(
み
)
て)
呑
(
の
)
んだりして、
樂隱居
(
らくいんきよ
)
のやうな
眞似
(
まね
)
をしてゐる。
六号室
(旧字旧仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
自分は衰弱した身心の健康を、力ある海洋の空気によつて恢復させ、
最少
(
もすこ
)
し軟かな
暖
(
あたゝか
)
な感情を以て、自分と自分の周囲を顧ることが出来るやうになりたいと思つた。
海洋の旅
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
今
(
いま
)
まで
其
(
その
)
上
(
うへ
)
について
暖
(
あたゝか
)
だつた
膝頭
(
ひざがしら
)
が
冷々
(
ひや/\
)
とする、
身體
(
からだ
)
が
濡
(
ぬ
)
れはせぬかと
疑
(
うたが
)
つて、
彼處此處
(
あちこち
)
袖
(
そで
)
襟
(
えり
)
を
手
(
て
)
で
拊
(
はた
)
いて
見
(
み
)
た。
仕事最中
(
しごとさいちう
)
、こんな
心持
(
こゝろもち
)
のしたことは
始
(
はじ
)
めてである。
三尺角
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
自分は長椅子から立上り
爽
(
さわやか
)
な風に
面
(
おもて
)
を吹かせ、
暖
(
あたゝか
)
く静かな空気を肺臓一ぱいに
吸込
(
すひこ
)
み、遠くの星の殊更美しい一ツを見詰めて、さて唇を開いて声を出さうとすると
黄昏の地中海
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
佗
(
わび
)
しさは、
食
(
た
)
べるものも、
着
(
き
)
るものも、こゝに
斷
(
ことわ
)
るまでもない、
薄
(
うす
)
い
蒲團
(
ふとん
)
も、
眞心
(
まごころ
)
には
暖
(
あたゝか
)
く、
殊
(
こと
)
に
些
(
ちと
)
は
便
(
たよ
)
りにならうと、
故
(
わざ
)
と
佛間
(
ぶつま
)
の
佛壇
(
ぶつだん
)
の
前
(
まへ
)
に、
枕
(
まくら
)
を
置
(
お
)
いてくれたのである。
雪の翼
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
崖をうしろにした此の窪地は風も吹き通はず小鳥の声も聞えず、小春の日光の照り輝くばかり。その
暖
(
あたゝか
)
なことは帽子を冠つた頭が
忽
(
たちま
)
ちむづ/\
痒
(
かゆ
)
くなつて来るほどでした。
畦道
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
さま/″\の
女
(
をんな
)
を
引込
(
ひつこ
)
むのを
術
(
て
)
としたが、
當春
(
たうしゆん
)
、
天氣
(
てんき
)
麗
(
うらゝ
)
かに、
桃
(
もゝ
)
の
花
(
はな
)
のとろりと
咲亂
(
さきみだ
)
れた、
暖
(
あたゝか
)
い
柳
(
やなぎ
)
の
中
(
なか
)
を、
川上
(
かはかみ
)
へ
細
(
ほそ
)
い
杖
(
ステツキ
)
で
散策
(
さんさく
)
した
時
(
とき
)
、
上流
(
じやうりう
)
の
方
(
かた
)
より
柳
(
やなぎ
)
の
如
(
ごと
)
く、
流
(
ながれ
)
に
靡
(
なび
)
いて
みつ柏
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
暖
(
あたゝか
)
い
穏
(
おだやか
)
な
午後
(
ひるすぎ
)
の日光が一面にさし込む
表
(
おもて
)
の窓の
障子
(
しやうじ
)
には、
折々
(
をり/\
)
軒
(
のき
)
を
掠
(
かす
)
める小鳥の影が
閃
(
ひらめ
)
き、茶の
間
(
ま
)
の
隅
(
すみ
)
の
薄暗
(
うすぐら
)
い
仏壇
(
ぶつだん
)
の奥までが
明
(
あかる
)
く見え、
床
(
とこ
)
の
間
(
ま
)
の梅がもう散りはじめた。
すみだ川
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
小兒
(
こども
)
たちが、また
惡
(
わる
)
く
暖
(
あたゝか
)
いので
寢苦
(
ねぐる
)
しいか、
變
(
へん
)
に
二人
(
ふたり
)
とも
寢
(
ね
)
そびれて、
踏脱
(
ふみぬ
)
ぐ、
泣
(
な
)
き
出
(
だ
)
す、
着
(
き
)
せかける、
賺
(
すか
)
す。で、
女房
(
にようばう
)
は
一夜
(
いちや
)
まんじりともせず、
烏
(
からす
)
の
聲
(
こゑ
)
を
聞
(
き
)
いたさうである。
夜釣
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
さきに
秋冷
(
しうれい
)
相催
(
あひもよほ
)
し、
次第
(
しだい
)
に
朝夕
(
あさゆふ
)
の
寒
(
さむ
)
さと
成
(
な
)
り、やがて
暮
(
くれ
)
が
近
(
ちか
)
づくと、
横寺町
(
よこでらまち
)
の
二階
(
にかい
)
に
日
(
ひ
)
が
當
(
あた
)
つて、
座敷
(
ざしき
)
の
明
(
あかる
)
い、
大火鉢
(
おほひばち
)
の
暖
(
あたゝか
)
い、
鐵瓶
(
てつびん
)
の
湯
(
ゆ
)
の
沸
(
たぎ
)
つた
時
(
とき
)
を
見計
(
みはか
)
らつて、お
弟子
(
でし
)
たちが
順々
(
じゆん/\
)
春着
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
長吉
(
ちやうきち
)
は二三日
前
(
まへ
)
から起きてゐたので、
此
(
こ
)
の
暖
(
あたゝか
)
い日をぶら/\散歩に
出掛
(
でか
)
けた。すつかり
全快
(
ぜんくわい
)
した今になつて見れば、
二十日
(
はつか
)
以上も苦しんだ
大病
(
たいびやう
)
を
長吉
(
ちやうきち
)
はもつけの幸ひであつたと喜んでゐる。
すみだ川
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
其
(
そ
)
の
実
(
じつ
)
、
矢叫
(
やさけび
)
の
如
(
ごと
)
き
流
(
ながれ
)
の
音
(
おと
)
も、
春雨
(
はるさめ
)
の
密語
(
さゝやき
)
ぞ、と
聞
(
き
)
く、
温泉
(
いでゆ
)
の
煙
(
けむ
)
りの
暖
(
あたゝか
)
い、
山国
(
やまぐに
)
ながら
紫
(
むらさき
)
の
霞
(
かすみ
)
の
立籠
(
たてこも
)
る
閨
(
ねや
)
を、
菫
(
すみれ
)
に
満
(
み
)
ちた
池
(
いけ
)
と見る、
鴛鴦
(
えんわう
)
の
衾
(
ふすま
)
の
寝物語
(
ねものがた
)
りに——
主従
(
しゆじう
)
は
三世
(
さんぜ
)
、
親子
(
おやこ
)
は
一世
(
いつせ
)
神鑿
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
されば
水筋
(
みづすぢ
)
の
緩
(
ゆる
)
むあたり、
水仙
(
すゐせん
)
の
葉
(
は
)
寒
(
さむ
)
く、
花
(
はな
)
暖
(
あたゝか
)
に
薫
(
かを
)
りしか。
刈
(
かり
)
あとの
粟畑
(
あはばたけ
)
に
山鳥
(
やまどり
)
の
姿
(
すがた
)
あらはに、
引棄
(
ひきす
)
てし
豆
(
まめ
)
の
殼
(
から
)
さら/\と
鳴
(
な
)
るを
見
(
み
)
れば、
一抹
(
いちまつ
)
の
紅塵
(
こうぢん
)
、
手鞠
(
てまり
)
に
似
(
に
)
て、
輕
(
かろ
)
く
巷
(
ちまた
)
の
上
(
うへ
)
に
飛
(
と
)
べり。
月令十二態
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
手
(
て
)
を
以
(
もつ
)
て
密
(
そ
)
と
肌
(
はだへ
)
に
觸
(
ふ
)
るゝに、
滑
(
なめら
)
かに
白
(
しろ
)
く
膩
(
あぶら
)
づきて、
猶
(
なほ
)
暖
(
あたゝか
)
なるものに
似
(
に
)
たり。
唐模様
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
つれ/″\には
名
(
な
)
を
呼
(
よ
)
んで、
翼
(
つばさ
)
を
撫
(
な
)
でもし、
膝
(
ひざ
)
に
抱
(
だ
)
きもし、
頬
(
ほゝ
)
もあて、
夜
(
よる
)
は
衾
(
ふすま
)
に
懷
(
ふところ
)
を
開
(
ひら
)
いて、
暖
(
あたゝか
)
い
玉
(
たま
)
の
乳房
(
ちぶさ
)
の
間
(
あひだ
)
に
嘴
(
はし
)
を
置
(
お
)
かせて、すや/\と
寐
(
ね
)
ることさへあつたが、
一夜
(
あるよ
)
、
凄
(
すさま
)
じき
寒威
(
かんい
)
を
覺
(
おぼ
)
えた。
雪の翼
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
些
(
ち
)
とお
話
(
はなし
)
もいかゞぢやから、
前刻
(
さツき
)
はことを
分
(
わ
)
けていひませなんだが、
昨夜
(
ゆふべ
)
も
白痴
(
ばか
)
を
寝
(
ね
)
かしつけると、
婦人
(
をんな
)
が
又
(
また
)
炉
(
ろ
)
のある
処
(
ところ
)
へやつて
来
(
き
)
て、
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
へ
苦労
(
くらう
)
をして
出
(
で
)
やうより、
夏
(
なつ
)
は
涼
(
すゞ
)
しく、
冬
(
ふゆ
)
は
暖
(
あたゝか
)
い
高野聖
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
私
(
わたし
)
はお
米
(
よね
)
さんの、
清
(
きよ
)
く
暖
(
あたゝか
)
き
膚
(
はだ
)
を
思
(
おも
)
ひながら、
雪
(
ゆき
)
にむせんで
叫
(
さけ
)
びました。
雪霊記事
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
それから
障子
(
しやうじ
)
の
内
(
うち
)
と
外
(
そと
)
で、
話
(
はなし
)
をしたり、
笑
(
わら
)
つたり、それから
谷川
(
たにがは
)
で
二人
(
ふたり
)
して、
其時
(
そのとき
)
の
婦人
(
をんな
)
が
裸体
(
はだか
)
になつて、
私
(
わし
)
が
背中
(
せなか
)
へ
呼吸
(
いき
)
が
通
(
かよ
)
つて、
微妙
(
びめう
)
な
薫
(
かほり
)
の
花
(
はな
)
びらに
暖
(
あたゝか
)
に
包
(
つゝ
)
まれたら、
其
(
その
)
まゝ
命
(
いのち
)
が
失
(
う
)
せても
可
(
い
)
い!
高野聖
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
が、としよりの
爲
(
ため
)
には
此
(
こ
)
の
暖
(
あたゝか
)
な
日和
(
ひより
)
を
祝
(
しゆく
)
する。
松の葉
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
“暖”の意味
《名詞》
(ダン 例示の成句で)あたたまること。
(出典:Wiktionary)
暖
常用漢字
小6
部首:⽇
13画
“暖”を含む語句
暖炉
生暖
温暖
暖炉棚
暖爐
瓦斯暖炉
暖簾
暖味
暖気
繩暖簾
暖室
暖房
瓦斯暖爐
御暖
縄暖簾
紺暖簾
暖簾口
寒暖
花暖簾
店暖簾
...