-
トップ
>
-
寢苦
船室の
中央に
吊してある
球燈の
光は
煌々と
輝いて
居るが、どうも
其邊に
何か
魔性でも
居るやうで、
空氣は
頭を
壓へるやうに
重く、
實に
寢苦しかつた。
小兒たちが、また
惡く
暖いので
寢苦しいか、
變に
二人とも
寢そびれて、
踏脱ぐ、
泣き
出す、
着せかける、
賺す。で、
女房は
一夜まんじりともせず、
烏の
聲を
聞いたさうである。
寢苦い
思ひの
息つぎに
朝戸を
出ると、あの
通り
暴れまはつたトタン
板も
屋根板も、
大地に、ひしとなつてへたばつて、
魍魎を
跳らした、ブリキ
罐、
瀬戸のかけらも
影を
散らした。