振向ふりむ)” の例文
るたけ順礼じゆんれいとほくよけて、——人気配ひとけはひうしろ振向ふりむけた、銀杏返ゐてふがへし影法師かげばふしについて、横障子よこしやうじうらまはつた。みせうら行抜ゆきぬけである。
銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
痴人ばかめ!』女王樣ぢよわうさま焦心ぢれッたさうに御自身ごじしんあたましてまをされました、それからあいちやんに振向ふりむいて、『なんまをぢや?子供こども
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
吾等われら喫驚びつくりして其方そなた振向ふりむくと、此時このとき吾等われらてるところより、大約およそ二百ヤードばかりはなれたもりなかから、突然とつぜんあらはれて二個ふたりひとがある。
きやうさんれが本當ほんたう乞食こじきならおまへいままでのやうに可愛かあいがつてはれないだらうか、振向ふりむいててはれまいねとふに
わかれ道 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
背と腰には木葉をつづりたるものをまとひたり。横の方を振向ふりむきたる面構つらがまへは、色黒く眼円く鼻ひしげ蓬頭ほうとうにしてひげ延びたり。
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
もっとも庭へは足を入れず、傍屋はなれを一度だって振向ふりむきもしなかった。ところがその晩になって、わたしはおどろくべき出来事をこので見ることになった。
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
それから先は、後方うしろをも振向ふりむかず、一散走いつさんばしりに夢中で駈出かけだしたが、その横町を出ると、すぐ其処そこ金剛寺坂こんごうじざかという坂なので、私はもう一生懸命にその坂を中途まで下りて来ると
青銅鬼 (新字新仮名) / 柳川春葉(著)
立見たちみの混雑の中にの時突然とつぜん自分の肩をくものがあるのでおどろいて振向ふりむくと、長吉ちやうきち鳥打帽とりうちぼう眉深まぶかに黒い眼鏡めがねをかけて、うしろの一段高いゆかから首をのばして見下みおろす若い男の顔を見た。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
別れた人のうしろ姿に、霏々ひひと雪ふぶきの吹いていたその日の別離を。——幾たびも振向ふりむいては去った彼の君のひとみを。遂には、雪の中へ泣き倒れて、雪に埋もれていた自分の姿を。
日本名婦伝:静御前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
振向ふりむいて見ると、富士はいつの間にか姿を出している。甲府盆地で見た時とは違って雄大の感がある。麓の方一条の白い河原は、富士川で、淡く煙りの立つあたりは鰍沢だと人夫は指す。
白峰の麓 (新字新仮名) / 大下藤次郎(著)
「お房かな。」と思ツて、所故わざと振向ふりむきもせずにゐる。果してお房だ。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
きみよ』とべば、ちどまり、振向ふりむざま
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
「艦長!」龍介は艦長を振向ふりむいて云った。
骸骨島の大冒険 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
『そんなことめ!』と女王樣ぢよわうさまさけんで、『眩暈めまひがする』それから薔薇ばら振向ふりむいて、『なにをお前方まへがた此處こゝでしてたのか?』
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
振向ふりむざまに、ぶつきらぼうつて、握拳にぎりこぶしで、ひたいこすつたのが、悩乱なうらんしたかしらかみを、掻毮かきむしりでもしたさうにえて、けむりなび天井てんじやうあふいだ。
続銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
彼女は振向ふりむいたが、立ち止りもしないで、まるい麦わら帽子ぼうしについているはばの広い水色のリボンを、片手ではらいのけると、ちらとわたしにをそそぎ、軽くほほえんだなり
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
『おや、貴方あなた如何どうかなすつて。』と春枝夫人はるえふじん日出雄少年ひでをせうねんともおどろいて振向ふりむいた。
振向ふりむひててくれねば此方こちらひかけてそでらへるにおよばず、それならせとてりにりまする、相手あいてはいくらもあれども一せうたのひといのでござんすとてなげなる風情ふぜい
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ぐにこたへて、坂上さかがみのまゝ立留たちどまつて、振向ふりむいた……ひやりとかたからすくみながら、矢庭やにはえるいぬに、(畜生ちくしやう、)とて擬勢ぎせいしめ意氣組いきぐみである。
三人の盲の話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
あいちやんはふべき言葉ことばもなく、いくらかのおちや麺麭パン牛酪バターとをして、福鼠ふくねずみはう振向ふりむき、『何故なぜみん井戸ゐどそこんでゐたの?』とかへしました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
わたくし愕然がくぜんとして振向ふりむくと、今迄いまゝで白色巡洋艦はくしよくじゆんやうかん一方いつぽうられて、すこしも心付こゝろづかなかつたが、たゞる、西方せいほうそら一面いちめんに「ダンブローてう」とて、印度洋インドやう特産とくさん海鳥かいてう——そのかたちわしくちばしするど
七歳なゝつのとしに父親てゝおや得意塲とくいば藏普請くらぶしんに、足塲あしばのぼりてなかぬりの泥鏝こてちながら、したなるやつこものいひつけんと振向ふりむ途端とたんこよみくろぼしの佛滅ぶつめつとでもありしか、年來ねんらいれたる足塲あしばをあやまりて
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ちょうどその瞬間しゅんかん、少女もわたしを振向ふりむいた。
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
撫肩なでかたの優しい上へ、笠の紐ゆるく、べにのような唇をつけて、横顔で振向ふりむいたが、すずしい目許めもとえみを浮べて
薬草取 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
しぬけのおほせはませぬとてくを、恭助けうすけ振向ふりむいてんともせず、理由わけあればこそ、人並ひとなみならぬことともなせ、一々の罪状ざいじやういひたてんはかるべし、くるま用意よういもなしてあり、たゞのりうつるばかりとひて
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
いま、河鹿かじかながれに、たてがみを振向ふりむけながら、しばんだうま馬士うまかたとともに、ぼつとかすんでえたとおもふと、のうしろからひと提灯ちやうちん。……鄙唄ひなうたを、いゝこゑで——
飯坂ゆき (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「それ、あたまあぶないわ。」「合點がつてんだ。」といふしたから、コツン。おほゝゝほ。「あゝ殘念ざんねんだ、後姿うしろすがただ。いや、えりあししろい。」といふところを、シヤンに振向ふりむかれて、南無三寶なむさんばう
木菟俗見 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
これよりして、私は、茶の煮えると言うもの、およそこのへんしるした雀の可愛さをここで話したのである。時々微笑ほほえんでは振向ふりむいて聞く。娘か、若い妻か、あるいはおもいものか。
二、三羽――十二、三羽 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
出口でぐちやなぎ振向ふりむいてると、もなく、くるまは、御神燈ごしんとうのきけた、格子かうしづくりの家居いへゐならんだなかを、常磐樹ときはぎかげいて、さつべにながしたやうな式臺しきだいいた。明山閣めいざんかくである。
飯坂ゆき (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「お有難や、お有難や。あゝ、を忘れてが抜けた。もし、太夫様たゆうさま。」と敷居をまたいで、蹌踉状よろけざま振向ふりむいて、「あの、其のおかんざしに……」——「え。」と紫玉が鸚鵡おうむる時
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
かささへ振向ふりむけもしなければ、青牛せいぎゅうがまたうら枯草がれくさを踏む音も立てないで、のそりと歩む。
雨ばけ (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
ほたる紫陽花あぢさゐ見透みとほしの背戸せどすゞんでた、のおよねさんの振向ふりむいたなさけだつたのです。
雪霊記事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
はつと袖屏風そでびょうぶして、なかさえぎるとひとしく、御簾中の姿は、すつと背後向うしろむきに成つた——たけなす黒髪が、もすそゆらいだが、かすかに、雪よりも白き御横顔おんよこがおの気高さが、振向ふりむかれたと思ふと
妖魔の辻占 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
そよとのかぜもがなで、明放あけはなした背後うしろ肱掛窓ひぢかけまど振向ふりむいて、そでのブーンとくのをはらひながら、二階住にかいずみ主人あるじ唯吉たゞきちが、六でふやがてなかばにはびこる、自分じぶん影法師越かげぼふしごしにかして
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
うで、うで、めいぶつで。」と振向ふりむいて、和笑にやりとしながら、平手ひらてまたたゝいて、つゞけざまにドン/\とたはらつと、ふにやおよぶ、眞白まつしろなのが、ぱつ/\とつ——東京とうきやうほこりなか
飯坂ゆき (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
その小児こども振向ふりむけた、真白な気高い顔が、雪のように、さっと消える、とキリキリキリ——と台所を六角ろっかく井桁いげたで仕切った、内井戸うちいど轆轤ろくろが鳴った。が、すぐに、かたりと小皿が響いた。
国貞えがく (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
一寸ちよつと横顏よこがほ旦那だんなはう振向ふりむけて、ぐに返事へんじをした。細君さいくんが、またたゞちに良人をつとくちおうじたのは、けだめづらしいので。……西洋せいやうことわざにも、能辯のうべんぎんごとく、沈默ちんもくきんごとしとある。
山の手小景 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
ひろのりだと、した塀續へいつゞきなぞで、わざ/\振向ふりむいてつたことさへある。
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
背中せなかに、むつとして、いきれたやうな可厭いやこゑこれは、とると、すれちがつて、とほざま振向ふりむいたのは、真夜中まよなかあめ饂飩うどんつた、かみの一すぢならびの、くちびるたゞれたあの順礼じゆんれいである。
続銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
御神輿おみこしは、あらぬむかがはつて、振向ふりむきもしないで四五十間しごじつけんずつとぎる。
祭のこと (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
沢が、声を掛けようとして、思はず行詰ゆきづまつた時、向うから先んじて振向ふりむいた。
貴婦人 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
足駄あしだすこゆるんでるので、足許あしもとにして、踏揃ふみそろへて、そでした風呂敷ふろしきれて、むねをおさへて、かほだけ振向ふりむけてるので。大方おほかたをんなでそんなものるのが氣恥きはづかしいのであらう。
迷子 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
ちやうひとみはなして、あとへ一歩ひとあし振向ふりむいたところが、かは曲角まがりかどで、やゝたか向岸むかうぎしの、がけうち裏口うらぐちから、いはけづれるさま石段いしだん五六段ごろくだんりたみぎはに、洗濯せんたくものをしてむすめが、あたかもほつれくとて
城崎を憶ふ (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
「え?」と沢は振向ふりむいて、おびえたらしく聞返ききかえす、……
貴婦人 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
床几しやうぎむすめ肩越かたごし振向ふりむいた。一同いちどうじつ二人ふたりた。
松の葉 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ふと言淀いひよどむかして、だまつて、美人びじん背後うしろ振向ふりむいた。
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
おもはず振向ふりむいていけはう、うしろのみづ見返みかへつた。
三尺角 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
と糸車の前をずりもせず、顔ばかり振向ふりむかた
二世の契 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
まどからたまゝ振向ふりむきもしないで、急込せきこんで
化鳥 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
振向ふりむいたのを、莞爾にこやかにみ迎えて
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)