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明山閣
と
半纏の
襟に、
其の
明山閣と
染めたのを
片手で
叩いて、
飯坂ぢやあ、いゝ
宿だよと、
正直を
言つたし。
出口の
柳を
振向いて
見ると、
間もなく、
俥は、
御神燈を
軒に
掛けた、
格子づくりの
家居の
並んだ
中を、
常磐樹の
影透いて、
颯と
紅を
流したやうな
式臺へ
着いた。
明山閣である。
おもしろい
事は、——
停車場を
肱下りに、ぐる/\と
挽出すと、
間もなく、
踏切を
越さうとして
梶棒を
控へて、
目當の
旅宿は、と
聞くから、
心積りの、
明山閣と
言ふのだと
答へると、
然うかね、
此だ