げき)” の例文
はしわたると、みずがさらさらといって、いわげきして、しろくだけていました。ところどころにある、つたうるしがになっていました。
空晴れて (新字新仮名) / 小川未明(著)
〔譯〕民のに因つて以て之をげきし、民のよくに因つて以て之をはしらさば、則ち民其の生をわすれて其の死をいたさん。是れ以て一せんす可し。
げきしているのでも無く、おそれているのでも無いらしい。が、何かと談話だんわをしてその糸口いとぐちを引出そうとしても、夫はうるさがるばかりであった。
鵞鳥 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
勘次かんじほどそれがげきしたこゝろ忌々敷いま/\しくくてもれをたしなめてしかつてなんがかりもつてらぬ。三にんたゞだまつてあるいた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
技師はげきしているから花前の花前たるところにいっこう気がつかない。技師はたまりかねたか、ここでは話ができないといって玄関げんかんへまわった。
(新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
その総滝そたきとは川はゞはおよそ百けんちかくもあるべきに、大なる岩石竜がんぜきりやうふしたるごとく水中すゐちゆうにあるゆゑに、おとしくる水これにげきして滝をなす也。
だが卜斎の返答へんとう雄弁ゆうべんだけで、ところどころうまくごましているのをつらにくくおもった村上賛之丞むらかみさんのじょうは、ややげきして
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
荒浪あらなみげきする洋上をすれすれに飛んだり、あるいはまた、雲一つない三千メートルの高空にのぼったりして、消えた巨船の行方をさがしもとめたけれど
海底大陸 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「そんな男か」と跡部が聞くと、「矢部様の前でお話をしてゐるうちにげきして来て、六寸もある金頭かながしらを頭からめり/\とん食べたさうでございます」
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
... わたくし無論むろん哲人てつじんでも、哲學者てつがくしやでもいのですから。』と、さらげきして。『ですから、那麼事こんなこといてはにもわからんのです。議論ぎろんするちからいのです。』
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
若い男の影と若い女の影があった。始めは男がげきして女が泣いた。あとでは女が激して男がなだめた。ついには二人手を引き合って音のしない砂の上を歩いた。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
甲斐守は、膝に手をおいて、虫の音に聴きいるような眼つきをしていたが、急にげきしたような口調になって
『そしてほこりますか。そして其出身そのしゆつしんたることを感謝かんしやしますか』とへした兒玉こだま口調くてうはやゝげきしてた。
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
「何をいかるやいかの——にわかげきする数千突如とつじょとして山くずれ落つ鵯越ひよどりごえ逆落さかおとし、四絃しげんはし撥音ばちおと急雨きゅううの如く、あっと思う間もなく身は悲壮ひそう渦中かちゅうきこまれた。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
けれど幸いにも彼は殴打を免がれて、ノズドゥリョフのげきした両手を掴んで、しっかりと押えつけた。
足下きみ同情どうじゃう多過おほすぎるわし悲痛かなしみに、たゞ悲痛かなしみへるばかり。こひ溜息ためいき蒸氣ゆげけむりげきしてはうち火花ひばならし、きうしてはなみだあめもっ大海おほうみ水量みかさをもす。
セエラはそれに答えた時、自分の声がどうしてこんなにげきしているのか、不思議なくらいでした。
困難のじつに水量と反比例をなしきたすすむこと一里にして両岸の岩壁屏風びやうぶごとく、河はげきして瀑布ばくふとなり、其下そのしたくぼみて深淵しんえんをなす、衆佇立相盻あひかへりみて愕然がくぜん一歩もすすむを得ず
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
ねこ可厭いや!』とするどげきしたこゑねずみひました。『しお前樣まへさまわたしだつたらねこくの?』
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
近江さんに案内して頂いて自分達はイザル川を横ぎり森の中を雨に濡れながら歩いた。川は石灰いしばひとかした様に真白まつしろな流れがげきして居た。森には種種いろ/\が鮮かに黄ばんで居る。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
手鍋てなべぐる意氣いきげきして、所帶しよたい稽古けいこ白魚しらうをめざしつくなりしかすがいぢらしとて、ぬきとむるはなるをよ。いといろも、こぼれかゝる袖口そでくちも、篝火かゞりびたるかな。
婦人十一題 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
手前てめえ」とか、「くたばってしまえ」とか、「親不孝」とか、「鬼婆」とか、「子殺し」とか云うような有りたけの暴言が、げきしきった二人の無思慮な口から、しきりほとばしり出た。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
母親思いの兄貴が、げきこうの余り、ふと飛んでもない事を考えつかなかったとはいえない
疑惑 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
いずれの群集を見ても少しもげきしているものはない。大言たいげんする者もなく、あざけわらう者もない。すこぶる真面目まじめでさながら親の大病の診断を医者から聞いているような顔つきであった。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
かしわの葉が北風に鳴るように、一寸したことにもすぐげきふるえるような人がある。それにつけて思出すことは、私が小諸へ来たばかりの時、青年会を起そうという話が町の有志者の間にあった。
千曲川のスケッチ (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
あゝ此樣こんことつたら何故なぜ倫敦ロンドンへん流行歌はやりうた一節ひとふしぐらいはおぼえてかなかつたらうとくやんだが追付おひつかない、あまりの殘念くやしさに春枝夫人はるえふじんかほると、夫人ふじんいま嘲罵あざけりみゝにして多少たせうこゝろげきしたと
ぼくはいつもそれを思うと、われわれは感情にげきしたためにひとりの有為ゆういの青年を社会からほうむることになったことが実に残念でたまらん、人を罰するには慎重しんちょうに考えなければならん、そうじゃないか
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
お浜は、自分の言うことに自分でげきして行くらしかった。
次郎物語:02 第二部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
世をばげきせしあとを見よ
草わかば (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
「それに私も、昨夜はあなたの前で少々げきしすぎましたよ……おまけに妙にいらいらして失禮でした。これははっきり白状させてもらいます。じつは時にどうも氣分のよくないことがあるんでして、そこへあなたがいきなり眞夜中に見えたものだから……。」
主人しゆじん内儀かみさんは一おう被害者ひがいしやはなしをつけてた。被害者ひがいしや家族かぞく律義者りちぎものみなげきつてる。七十ばかりに被害者ひがいしや老人ぢいさんこと頑固ぐわんこ主張しゆちやうした。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
あたりが真っ暗におぼえる程な失望に血をげきしながら、今ここで、自分の心をいいだす勇気もなく、目の前を通りすぎて行こうとする運命に対しても
鳴門秘帖:06 鳴門の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
... わたくし無論むろん哲人てつじんでも、哲学者てつがくしゃでもいのですから。』と、さらげきして。『ですから、こんなことにいてはにもわからんのです。議論ぎろんするちからいのです。』
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
おさへて之をげ、げきして之をすゝましむるは、教のけんにして而てへんなり。教も亦じゆつ多し。
いかにも大木たいぼくたふれたのがくさがくれにみきをあらはしてる、ると足駄穿あしだばき差支さしつかへがない、丸木まるきだけれども可恐おそろしくふといので、もつともこれをわたてるとたちまながれおとみゝげきした
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
奇樹きじゆきしよこたはりてりようねふるがごとく、怪岩くわいがんみちふさぎてとらすにたり。山林さんりんとほそめにしきき、礀水かんすゐふかげきしてあゐながせり。金壁きんへきなら緑山りよくざんつらなりたるさま画にもおよばざる光景くわうけい也。
むかしやうくわつげきして、すぐ叔母をばところ談判だんぱんける氣色けしきもなければ、今迄いままで自分じぶんたいして、世話せわにならないでもひとやうに、餘所よそ々々/\しく仕向しむけておとうと態度たいどきふ方向はうかうてんじたのを
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
境遇きょうぐうのためにげきせられて他の部よりも比較的ひかくてきに発展したものであろうか。
雁坂越 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
大阪侯がげきして仙台侯に斬り附けると云ふのが序幕で、次には大阪侯の切腹、其れから仇打かたきうちの相談が済むと力彌りきやに当る彌五郎の息子が敵の仙台侯に仕へて居て仇打かたきうちを父に思ひまれと忠告したり
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
このいへこと數町すうちやう彼方かなたに、一帶いつたいわんがある、逆浪げきらうしろいわげきしてるが、その灣中わんちういわいわとが丁度ちやうど屏風びやうぶのやうに立廻たてまわして、自然しぜん坩※るつぼかたちをなしてところ其處そこ大佐たいさ後姿うしろすがたがチラリとえた。
天地間てんちかん最早もはや小山某こやまなにがしといふかきの書生しよせいなくなる! とぼくおもつたときおもはずあしとゞめた。あたまうへ眞黒まつくろしげつたえだからみづがぼた/\ちる、墓穴はかあなのやうな溪底たにそこではみづげきしてながれるおとすごひゞく。
湯ヶ原より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
などちか畑同士はたけどうし呶鳴どなつた。こゑ被害者ひがいしやみゝにも這入はひつてむか/\とげきしたこゝろいきほひをけた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
げきしやすい処女おとめの感情は、青じろい権まくを顔にもって、涙まじりに、あいての胸へしがみついて行った。
宮本武蔵:02 地の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
半町はんちやうばかりまへを、燃通もえとほさまは、眞赤まつか大川おほかはながるゝやうで、しかぎたかぜきたかはつて、一旦いつたん九段上くだんうへけたのが、燃返もえかへつて、しか低地ていちから、高臺たかだいへ、家々いへ/\大巖おほいはげきして
露宿 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
小六ころくあに平氣へいき態度たいどこゝろうちでは飽足あきたらずながめた。しか宗助そうすけ樣子やうす何處どこつて、ひとげきさせるやうするどいところも、みづからを庇護かばやういやしいてんもないので、つてかゝ勇氣ゆうきさらなかつた。たゞ
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
されど急流きふりう岩にげきして水勢すゐせい絶急はげしきところは雪もつもる事あたはず、浪を見る処もあり。渡口わたしばなどはをのにて氷をくだきてわたせども、つひにはこほりあつくなりて力およびがたく、船はをかりて人々氷の上をわたる。
滅多に、大声など出さない良人が、さっきからげきしている様子に、彼の妻は、ふすま近くにいたらしかった。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ひどいこと!」と柳眉りゅうび逆立さかだち、こころげきして団扇うちわに及ばず、たもとさきで、向うへ払ふと、怪しい虫の消えたあとを、姉は袖口そでくちんでいてりながら、同じ針箱の引出から、二つ折、笹色ささいろべにいた
蠅を憎む記 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
容易に開かないくちへ、武蔵がこう少しげきしかかると吉野は、消していた笑靨えくぼをまたちらと見せ
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それをば刈払かりはらひ、遁出のがれいでむとするにそのすべなく、すること、なすこと、人見て必ず、まゆひそめ、あざけり、笑ひ、いやしめ、ののしり、はたかなしうれひなどするにぞ、気あがり、こころげきし、ただじれにじれて
竜潭譚 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)