此時このとき)” の例文
そらくもくした! うすかげうへを、うみうへう、たちままたあかるくなる、此時このときぼくけつして自分じぶん不幸ふしあはせをとことはおもはなかつた。
湯ヶ原より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
此時このとき座敷の隅を曲って右隣の方に、座蒲団ざぶとんが二つ程あいていた、その先の分の座蒲団の上へ、さっきの踊記者が来て胡坐あぐらをかいた。
花吹雪 (新字新仮名) / 太宰治(著)
此時このときいへいて、おほきなさら歩兵ほへいあたまうへ眞直まつすぐに、それからはなさきかすつて、背後うしろにあつた一ぽんあたつて粉々こな/″\こわれました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
此時このとき堂上だうじやうそう一齊いつせい合掌がつしやうして、夢窓國師むさうこくし遺誡ゐかいじゆはじめた。おもひ/\にせきつた宗助そうすけ前後ぜんごにゐる居士こじみな同音どうおん調子てうしあはせた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
此邊このへんまではるのだ。迂路うろつきまわるのですでに三以上いじやうあるいたにかゝはらず、一かう疲勞ひらうせぬ。此時このときすで打石斧だせきふ十四五ほん二人ふたりひろつてた。
一大事と云ふことばが堀の耳を打つたのは此時このときはじめであつた。それからはどんな事が起つて来るかと、前晩ぜんばんほとんど寝ずに心配してゐる。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
しかるにかねてより斥候せきこうの用にてむためならきたる犬の此時このときをりよくきたりければ、かれを真先に立たしめて予は大胆だいたんにも藪にれり。
妖怪年代記 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
此時このときにふと心付こゝろつくと、何者なにものわたくしうしろにこそ/\と尾行びかうして樣子やうす、オヤへんだと振返ふりかへる、途端とたんそのかげまろぶがごとわたくし足許あしもとはしつた。
此時このとき最早六十歳を越し、中風で廃人も同様、国の政治や江戸藩邸の命令は、その惣領で、若くて美男で物好きで、インテリで
然し此時このときの位、何も彼もなくたゞ無暗にもう死にたくなつて、呼吸もつかずに目をつむる程心細いと思つた事はありません。
雲は天才である (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
なんだと畜生ちくしやう!』と、此時このときイワン、デミトリチはきふにむツくりと起上おきあがる。『なん彼奴きやつさんとはふがある、我々われ/\こゝ閉込とぢこめてわけい。 ...
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
また此時このとき死人しにん首府しゆふ總人口そうじんこう三分さんぶんめたこともしるされてあるから、地震ぢしん餘程よほど激烈げきれつであつたことも想像そう/″\される。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
此時このとき領主りゃうしゅ公爵こうしゃく多勢おほぜい從者じゅうしゃ引連ひきつれて出る。モンタギュー長者夫婦ちゃうじゃふうふ、カピューレット長者夫婦ちゃうじゃふうふ其他そのた多勢おほぜい出る。
ぬいながむるに是も亦違もなき天下三品さんぴんの短刀なりと拜見しをはりて大膳にもどし成程御證據の二品は慥なれ共天一坊殿に於ては僞物にせものに相違なしといふ此時このとき天忠席を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
此時このとき善ちゃんは最早もうめろ、仮髪かつらを返して来いと言った。で、乃公も講壇から下りようとすると
いたずら小僧日記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
利生りしょう相見あいみえ豊年なれば、愈〻いよいよその瑞気ずいきを慕ひて懈怠けたい無く祭りきたり候。いま村にて世持役よもちやくと申す役名も、是になぞらへて祈り申す由に候。但し此時このとき由来伝へはなし有之これあり候也(以上)
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
さすがはわれも女の生みたる子なるか、そは此時このとき、理性も師説しせつも、すべての妄誕ばうたん
頌歌 (旧字旧仮名) / ポール・クローデル(著)
彼は思わずこう云って天井裏をって居る真鍮しんちゅうの棒を堅く握り締めた。車が京橋に停った時の大動揺であった。此時このとき彼のからだは、右脇へ来て立って居た前の貴婦人と衝突したのであった。
乗合自動車 (新字新仮名) / 川田功(著)
此時このときこんな塲合ばあいにはかなき女心をんなごゝろ引入ひきいれられて、一せうえぬかなしきかげむねにきざむひともあり、岩木いわきのやうなるおぬひなればなにおもひしかはらねども、なみだほろ/\こぼれて一トこともなし。
ゆく雲 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
愈々いよいよ影法師の仕業に定まったるか、エヽ腹立はらだたし、我最早もはやすっきりと思い断ちて煩悩ぼんのう愛執あいしゅう一切すつべしと、胸には決定けつじょうしながら、なお一分いちぶんの未練残りて可愛かわゆければこそにらみつむる彫像、此時このとき雲収り
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
まことに此時このときうららかにかぜやはらかくうめの花、のきかんばしくうぐひすの声いと楽しげなるに、しつへだてゝきならす爪音つまおと、いにしへの物語ぶみ、そのまゝのおもむきありて身も心もきよおぼえたり、の帰るさ
隅田の春 (新字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
しかういふものか此時このときばかり、わたしこころめう其方そつち引付ひきつけられた。
虚弱 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
らむ心地こゝちして、此時このときなりとこゝろばかりは
鬼桃太郎 (旧字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
此時このとき声なきは 声あるにまさ
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そして此時このときから十七じふしち分前に
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
此時このとき相望めども相聞えず
大菩薩峠:34 白雲の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
これぞくむしらせとでもいふものであらうかと、のちおもあたつたが、此時このときはたゞ離別りべつじやうさこそとおもるばかりで、わたくし打點頭うちうなづ
此時このときいままでなに備忘録ノートブツクいそがしさうにいてられた王樣わうさまが、『だまれ!』とさけんで、やがて御所持ごしよぢ書物しよもつをおひらきになり
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
すくないのか、とやかくと、心遣こゝろづかひにむねさわがせ、さむさにほねひやしたれば、わすれて持病ぢびやうがこゝで、生憎あいにく此時このとき
雪の翼 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
ふさ燗瓶かんびんあげしやくをした。銀之助は会社から帰りに何処どこかで飲んで来たと見え、此時このときすでにやゝよつて居たのである。
節操 (新字旧仮名) / 国木田独歩(著)
此時このとき宗助そうすけつて、醫者いしやるのをいまいまかとけるこゝろほどつらいものはなかつた。かれ御米およねかたみながらも、えずおもて物音ものおとくばつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
此時このとき越前守殿高聲かうしやうにコレ段右衞門左右とかくおのれがつみかくさぎからす言黒いひくろめんとするは扨々不屆き者なりと白眼付にらみつけられ夫より同心どうしんに豫て申つけおきたる品川宿の馬士まご
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
此時このときリスボンには津浪つなみ襲來しゆうらいし、こゝだけの死人しにんでも六萬人ろくまんにんのぼつた。震原しんげん大西洋底たいせいようていにあつたものであらう。津浪つなみきたアメリカの東海岸ひがしかいがんおいても氣附きづかれた。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
ハヾトフは此時このとき少計すこしばかけて室内しつないのぞいた。イワン、デミトリチは頭巾づきんかぶつて、めう眼付めつきをしたり、ふるへあがつたり、神經的しんけいてき病院服びやうゐんふくまへはしたりしてゐる。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
貝塚發掘かひづかはつくつために、種々しゆ/″\遭難そうなんかさねるけれど、此時このときごと惡難あくなんおそらく前後ぜんごからうである。
かけすゞり此處こゝへとおくよりばれて、最早もはや此時このときわがいのちもの大旦那おほだんな御目通おめどほりにてはじめよりのことを申、御新造ごしんぞ無情むじやうそのまゝにふてのけ、じゆつもなしはうもなし正直しやうぢき我身わがみまも
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
此時このときモンタギュー下人げにん、エブラハムとバルターザーとが一ぱうる。
室香に約束はたがえど大丈夫青雲の志此時このときのぶべしと殊に血気の雀躍こおどりして喜び、米国より欧州に前後七年の長逗留ながとうりゅう、アヽ今頃いまごろ如何どうして居おるか、生れた子は女か、男か、知らぬ顔に、知られぬ顔
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
わたしは此時このとき
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
わたくし此時このときまでほとんど喪心そうしん有樣ありさまで、甲板かんぱん一端いつたん屹立つゝたつたまゝこの慘憺さんたんたる光景ありさままなこそゝいでつたが、ハツと心付こゝろついたよ。
たゞ此時このとき大路おほぢときひゞいたのは、肅然しゆくぜんたる騎馬きばのひづめのおとである。のあかりにうつるのは騎士きし直劍ちよくけんかげである。
露宿 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
あいちやんは此時このときまでに、まつた公爵夫人こうしやくふじんわすれてしまつてゐたので、耳元みゝもと夫人ふじんこゑいたときにはすこしくおどろきました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
此時このとき二人ふたり巡査じゆんさ新聞しんぶんんでた。關羽巡査くわんうじゆんさ眼鏡めがねをかけて、人車じんしやのぼりだからゴロゴロと徐行じよかうしてた。
湯ヶ原ゆき (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
此時このとき市街地しがいち大部だいぶ沈下ちんかしてうみとなつたといふこともしるしてあるから、前記現象ぜんきげんしようおこつた場所ばしよあたらしい地盤ぢばんたりしに相違そういなかるべく、埋立地うめたてちであつたかもれない。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
見るより今日出役しゆつやく與力よりき駈來かけきたる是ぞ島秀之助といふ者なり大音だいおんあげ下乘々々げじよう/\と制せしが更にきかぬ風してなほも門内へ舁込かきこまんとす此時このとき島秀之助駈寄かけより天一坊の乘物の棒鼻ぼうはなへ手を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
此時このときとこいた洋燈らんぷあぶらつて、みじかいしんとゞかなくなつたので、御米およねてゐるところ眞暗まつくらになつてゐた。其所そこきよにした灯火あかりかげが、ふすまあひだからんだ。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
此時このときは一しゆべからざるの凄氣せいきたれたのである。此所こゝこれ、千すう年前ねんぜんひとほうむつた墳墓ふんぼである。その内部ないぶきながらつてつのである。白骨はくこつけるにあらぬか。
かれおよがんとるものゝやうに兩手りやうてうごかして、たれやらの寐臺ねだいにやう/\取縋とりすがつた。とまた此時このとき振下ふりおろしたニキタのだい二の鐵拳てつけん背骨せぼねゆがむかともだゆるひまもなく打續うちつゞいて、又々また/\度目どめ鐵拳てつけん
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
たか胸先むなさきくつろげんとする此時このときはやし間一髮かんいつぱつ、まちたまへとばかりうしろ藪垣やぶがきまろびでゝ利腕きゝうでしつかとをとこれぞはなしてなしてと脆弱かよわにも一心いつしん振切ふりきらんとするをいつかなはなさず
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
つまる。此時このとき上手かみてよりモンタギューの親族しんぞくベンヺーリオーる。