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岩木
夫は
餘りのお
取こし
苦勞岩木の
中にも
思ひのなきかは
無情き
仰せの
有る
筈なし
扨も
御戀人は
杉原さまとやお
名は
何とぞ
此時こんな
塲合にはかなき
女心の
引入られて、一
生消えぬかなしき
影を
胸にきざむ
人もあり、
岩木のやうなるお
縫なれば
何と
思ひしかは
知らねども、
涙ほろ/\こぼれて一ト
言もなし。
背後を青森行の汽車が通る。枕の下で、
陸奧灣の
緑玉潮がぴた/\
言ふ。西には青森の人煙
指す可く、其
背に津輕富士の
岩木山が小さく見えて居る。