まは)” の例文
あいちやんは心配しんぱいさうに木々きゞあひだのぞまはつてゐましたが、やが其頭そのあたま眞上まうへにあつたちひさなとがつたかはに、ひよいときました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
鹿しかおほきなをつくつて、ぐるくるぐるくるまはつてゐましたが、よくるとどの鹿しかのまんなかのはうがとられてゐるやうでした。
鹿踊りのはじまり (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
私はこの時母の前へ此三ツの貨幣を置いて其廻そのまはりをトン/\踊りまはつたのを覚えてます、「金の機会に、銀の機会に、あかがねの機会だ」
黄金機会 (新字旧仮名) / 若松賤子(著)
顏色かほいろ蒼白あをじろく、姿すがたせて、初中終しよつちゆう風邪かぜやすい、少食せうしよく落々おち/\ねむられぬたち、一ぱいさけにもまはり、往々まゝヒステリーがおこるのである。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
平生へいぜいは一ぽんきりしてゐないけれども、二本帶ほんさしてある資格しかくつてゐて、與力よりき京武士みやこぶしあとまはらなくてもいいだけの地位ちゐになつた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
るたけ順礼じゆんれいとほくよけて、——人気配ひとけはひうしろ振向ふりむけた、銀杏返ゐてふがへし影法師かげばふしについて、横障子よこしやうじうらまはつた。みせうら行抜ゆきぬけである。
銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
すべて、海上かいじやう規則きそくでは、ふね出港しゆつかうの十ぷん乃至ないし十五ふんまへに、船中せんちうまは銅鑼どらひゞききこゆるととも本船ほんせん立去たちさらねばならぬのである。
よるになると方々ほう/″\あるまはつて、たけのこ松茸まつたけいもいね大豆等だいずなど農作物のうさくぶつをあらしたり、ひ、野鼠のねずみうさぎなどもとらへて餌食ゑじきにします。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
たのまでは叶ふまじといへば吉兵衞はそれは兎も角も船頭せんどうまかせなればよきやうはからひ給へとて其議に決し此所こゝにて水差をたのみ江戸まはりとぞ定めける
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
草刈鎌くさかりがまの一ちやうや二ちやうまへどうするもんぢやない、あつちへまはつてあしでもあらつてさあ」内儀かみさんのくちもとにはかすかなわらひがうかんだ。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
そのうち今太郎君は、むき出しになつてゐる両方の手が、鱶の食慾しよくよくをそゝり立てはしまいかと気遣つたので、そつとうしろの方へまはしました。
動く海底 (新字旧仮名) / 宮原晃一郎(著)
一「セカンド」は大抵たいていみやく一動いちどうおなじ。さて時計とけい盤面ばんめんを十二にわかち、短針たんしん一晝夜いつちうやに二づゝまはり、長針ちやうしんは二十四づゝまは仕掛しかけにせり。
改暦弁 (旧字旧仮名) / 福沢諭吉(著)
いははなをば、まはつてくごとに、そこにひとつづゝひらけてる、近江あふみ湖水こすいのうちのたくさんの川口かはぐち。そこにつるおほてゝゐる。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
宗助そうすけは、うですかとつて、たゞふとつたをとこのなすがまゝにしていた。するとかれ器械きかいをぐる/\まはして宗助そうすけあなはじめた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
私達わたしたちはその日一にち歩きまはつた。夕方ゆふがたには、自分達じぶんたちの歩いてゐる所は一たいどこなのだらうと思ふほどもう三半器官はんきくわんつかれてゐた。
美しい家 (新字旧仮名) / 横光利一(著)
またさうした博物館はくぶつかんをこしらへるには非常ひじようおほきなものる、それをまはるだけでも二日ふつか三日みつかもかゝり、かへって不便ふべんになります。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
道子みちこはバスのとほるのをて、その停留場ていりうぢやうまであるき、つてゐるひとみちをきいて、こんどは国府台こふのだいから京成電車けいせいでんしや上野うへのまはつてアパートにかへつた。
吾妻橋 (新字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
水車すゐしや毎日まいにちうごいてるどころか、きつけるゆきうづめられまして、まるでくるままはらなくなつてしまつたこともりました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
福々ふく/\で思ひ出したが、七ふくまはりふのは一たいきみ何処どこくんだ。甲「ぼくの七ふくまはりといふのは豪商紳士がうしやうしんしもとまはるのさ。乙「へ、へ——何処どこへ。 ...
七福神詣 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
「今晩の演説は何でもいゝ。君にまかせる。病人があるから、そつちへまはらねばならないから。」と言つて、金持の鈴虫のお嬢さんのうちへ参りました。
こほろぎの死 (新字旧仮名) / 村山籌子(著)
したにゐたひとつなをひきそこなつて、つながぷっつりとれて、うんわるくもしたにあつたかなへうへちてまはしました。
竹取物語 (旧字旧仮名) / 和田万吉(著)
特に授業中は、先生が教室にゐることがわかつてゐるので、先生の奥さんに無理ばかり云つて、何度も小便に行つたり、運動場を歩きまはつたりしました。
先生と生徒 (新字旧仮名) / 槙本楠郎(著)
「うるせえ、ちと彼方あつちつててくれ」とひました。あぶのやんちやん、そんなことはみゝにもいれず、ますますはひなどまで呼集よびあつめてまはつてゐました。
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
天気のよい日、近いところをまはるには、鉢と嚢があればそれでよい。しかし良寛さんは、どんなときでも、手毬とおはじきは、ちやんともつて外へ出た。
良寛物語 手毬と鉢の子 (新字旧仮名) / 新美南吉(著)
左の手に蝋燭ろふそくを持つて兄の背後うしろまはつたが、三筋みすぢ麻縄あさなはで後手にしばつてはしらくヽり附けた手首てくびは血がにじんで居る。
蓬生 (新字旧仮名) / 与謝野寛(著)
個人こじん固有名こゆうめい神聖しんせいなもので、それ/″\ふか因縁いんねんゆうする。みだりにこれをいぢくりまはすべきものでない。
誤まれる姓名の逆列 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
『ラランよ、今度こんどなにをたべてるのか。すこしでいいからけてくれよ。はらつてぼくはもうまはりそうだ』
火を喰つた鴉 (新字旧仮名) / 逸見猶吉(著)
忌々いま/\しさうに頭をふつて、急に急足いそぎあし愛宕町あたごちやうくらい狭い路地ろぢをぐる/\まはつてやつ格子戸かうしどの小さな二階屋かいやに「小川」と薄暗い瓦斯燈がすとうけてあるのを発見めつけた。
節操 (新字旧仮名) / 国木田独歩(著)
そらは、ドンヨリくもツて、南風みなみかぜはひみやこまはり、そしてポカ/\する、いや其所そこらのざわつく日であツた、此様な日には、頭に故障こしやうのない者すら氣が重い。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
わたしのやうにまはりはこと/″\心得こゝろえちがひばかりで出來上できあがつて、ひとつとして取柄とりえこまものでも、こゝろとしてをかしたつみいほどに、これ此樣このやう可愛かあいらしいうつくしい
この子 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
さうしてつかまう/\とする要求えうきうはげしくなればなるほど強くなつて來るのは、それにたいする失望しつばうの心でした。私達はやみの中に手探てさぐりで何かを探しまはつてゐました。
冬を迎へようとして (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
三角の帽子をかぶり、赤や青の着物を着、一人の子供をつれて、田舎の町々をまはり歩きました。そして町の広場にむしろをひろげて、いろんな手品をして見せました。
シャボン玉 (新字旧仮名) / 豊島与志雄(著)
山窪の幾むら藁屋、水ぐるままはれる見れば、ほとほとに水も痩せたり。欅原けやきばらただ目に寒く、雨のごとちる落葉あり、よく見ればいよいよ繁し、声立てていよいよさびし。
観相の秋 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
中村家のお内儀かみさんは病身でしたから台所のことなどは二人の女中が切つてまはして居るのでした。
月夜 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
それから十ちやうへだたつてらぬ加瀬かせ貝塚かひづかまはつて、小發掘せうはつくつこゝろみ、相變あひかはらず失敗しつぱいして歸宅きたくした。
みづうつつきうばはんとする山猿やまざるよ、無芸むげい無能むのうしよくもたれ総身そうみ智恵ちゑまはりかぬるをとこよ、よつうをもとくさうつへびをどろ狼狽うろたへものよ、白粉おしろいせて成仏じやうぶつせんことねが艶治郎ゑんぢらう
為文学者経 (新字旧仮名) / 内田魯庵三文字屋金平(著)
色々事情はあつたが、そもそも戦火に遭ふということから、又思ひがけぬ信州へ来るといふことから、かうした場所に落着くといふことまで、自然さうなるやうなまはり合せであつた。
野の墓 (新字旧仮名) / 岩本素白(著)
俳句の選をするといふがらでもないのであるが、どういふまはり合せか時々に引つ張り出されて、迷惑ながら一廉ひとかどの選者顔をして、机の前に坐らなければならないやうな破目はめに陥ることがある。
赤い杭 (新字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
はいよ/\うれしくてたまらず、川面かわづらは水も見えぬまで、端艇ボート其他そのたふねならびて漕開こぎひらき、まは有様ありさま屏風びやうぶに見たる屋島やしまだんうら合戦かつせんにもて勇ましゝ、大尉たいゐ大拍手だいはくしゆ大喝采だいかつさいあひだ
隅田の春 (新字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
東町奉行跡部山城守良弼あとべやましろのかみよしすけも去年四月に現職に任ぜられて、七月に到着したのだから、まだ大阪には半年しかをらぬが、かくじつちやうがあるので、堀はまはしてもらふと云ふ風になつてゐる。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
のこされた同志どうしはそのうへ次々つぎ/\伝単でんたんまはすであらう
まはるほどに、流石さすが毒龍どくりよう魔力まりきかぎりあれ
鬼桃太郎 (旧字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
艶道の魔風くまなく四方に吹きまはれり。
徳川氏時代の平民的理想 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
どちらへまはつても気にはない。
もゝはがき (新字旧仮名) / 斎藤緑雨(著)
かべまはりのまぎれ易い模樣にも
メランコリア (旧字旧仮名) / 三富朽葉(著)
まはれ、廻れ、羽蟲はむしの群
太陽の子 (旧字旧仮名) / 福士幸次郎(著)
ミハイル、アウエリヤヌヰチは一人ひとりして元氣可げんきよく、あさから晩迄ばんまでまちあそあるき、舊友きういうたづまはり、宿やどには數度すうどかへらぬつたくらゐ
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
ひよいと飛上とびあがるのもあれば、ぐる/\と歩行あるまはるのもあるし、どうばして矢間やざまからて、天守てんしゆむね鯱立しやちほこだちにるのもえる。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
相述べ急ぎ登城あるべしとの事なり越前守委細ゐさい承知しようちし則ち馬を急し家來に申付火急くわきふの御用なり駕籠は跡よりまはせと申付麻上下あさがみしもに服を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
たかえ」それでも卯平うへい呶鳴どなつてたが返辭へんじがない。卯平うへいくちうちつぶやいて裏戸口うらとぐちまはつてたら其處そこうちから掛金かけがねかゝつてる。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)