“走(はし)” の例文
また、ばたんと機械(きかい)がまわって、ピリッピリッと鳴(な)ると、ゴウッと走(はし)ってきた車(くるま)が急(きゅう)に止(と)まって、止(と)まっていた車(くるま)が走(はし)り出(だ)すのです。
はととりんご (新字新仮名) / 小川未明(著)
畑(はたけ)を越(こ)え、牧場(ぼくじょう)を越(こ)えて走(はし)って行(い)くうち、あたりは暴風雨(あらし)になって来(き)て、子家鴨(こあひる)の力(ちから)では、凌(しの)いで行(い)けそうもない様子(ようす)になりました。
櫻(さくら)の樹(き)の梢(うら)を、ぱつと照(て)らして、薄明(うすあか)るく掛(かゝ)るか、と思(おも)へば、颯(さつ)と墨(すみ)のやうに曇(くも)つて、月(つき)の面(おもて)を遮(さへぎ)るや否(いな)や、むら/\と亂(みだ)れて走(はし)る……
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
或(ある)ひはまた廷臣(ていしん)の鼻(はな)の上(うへ)を走(はし)る、と叙任(ぢょにん)を嗅出(かぎだ)す夢(ゆめ)を見(み)る、或(ある)ひは獻納豚(をさめぶた)の尻尾(しっぽ)の毛(け)で牧師(ぼくし)の鼻(はな)を擽(こそぐ)ると、僧(ばうず)め、寺領(じりゃう)が殖(ふ)えたと見(み)る。
四郎五郎(しろごろう)さんの藪(やぶ)の横(よこ)までかけて来(く)ると、まだ三百米(メートル)ほど走(はし)ったばかりなのに、あつくなって来(き)たので、上衣(うわぎ)をぬいでしまった。
ごんごろ鐘 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
此時(このとき)にふと心付(こゝろつ)くと、何者(なにもの)か私(わたくし)の後(うしろ)にこそ/\と尾行(びかう)して來(く)る樣子(やうす)、オヤ變(へん)だと振返(ふりかへ)る、途端(とたん)に其(その)影(かげ)は轉(まろ)ぶが如(ごと)く私(わたくし)の足許(あしもと)へ走(はし)り寄(よ)つた。
おかあさんも、セーサルがきっと、オーラのいどころを知っているにちがいないと思いましたので、そのあとについて走(はし)っていきました。
勘次(かんじ)が走(はし)つて鬼怒川(きぬがは)の岸(きし)に立(た)つた時(とき)は霧(きり)が一杯(ぱい)に降(お)りて、水(みづ)は彼(かれ)の足許(あしもと)から二三間(げん)先(さき)が見(み)えるのみであつた。岸(きし)には船(ふね)が繋(つな)いでなかつた。
土 (旧字旧仮名) / 長塚節(著)
一日僕(ぼく)を從(したが)へて往來(わうらい)を歩(ある)いて居ると忽(たちま)ち向(むかふ)から二人の男、額(ひたひ)から汗(あせ)を水(みづ)の如く流(なが)し、空中(くうちゆう)に飛(と)び上(あが)り飛(と)び上(あが)りして走(はし)りながら
石清虚 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
『夫人(ふじん)は牢屋(らうや)に居(ゐ)る』と云(い)つて女王樣(ぢよわうさま)は死刑執行者(しけいしつかうしや)に、『此處(こゝ)へ伴(つ)れて參(まゐ)れ』乃(そこ)で其(そ)の死刑執行者(しけいしつかうしや)が箭(や)の如(ごと)く走(はし)り去(さ)りました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
なんてまぶしくって、人間(にんげん)がどっさりいて、馬だの車(くるま)だのが走(はし)りまわって、おまけに、寒(さむ)い身をきるような風が、吹(ふ)きまわっているのだろう。
地震(ぢしん)に出會(であ)つた一瞬間(いつしゆんかん)、心(こゝろ)の落着(おちつき)を失(うしな)つて狼狽(ろうばい)もすれば、徒(いたづ)らに逃(に)げ惑(まど)ふ一方(いつぽう)のみに走(はし)るものもある。平日(へいじつ)の心得(こゝろえ)の足(た)りない人(ひと)にこれが多(おほ)い。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
それと知(し)れば俄(にはか)に肩(かた)すぼめられて見(み)る人(ひと)なければ遽(あはたゞ)しく片蔭(かたかげ)のある薄暗(うすくら)がりに車(くるま)も我(われ)も寄(よ)せて憩(いこ)ひつ、靜(しづ)かに顧(かへり)みれば是(こ)れも笹原(さゝはら)走(はし)るたぐひ
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
それに、もっとも、いやなことには、職掌がら、配下に「放免(ほうめん)」だの「走(はし)り下部(しもべ)」などという、札(ふだ)つきの雑人(ぞうにん)を、手あしに使っていることだ。
と、急(きふ)に來(き)た人(ひと)の院長(ゐんちやう)だと解(わか)つたので、彼(かれ)は全身(ぜんしん)を怒(いかり)に顫(ふる)はして、寐床(ねどこ)から飛上(とびあが)り、眞赤(まつか)になつて、激怒(げきど)して、病室(びやうしつ)の眞中(まんなか)に走(はし)り出(で)て突立(つゝた)つた。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
こゝは釜山(ふざん)から京城(けいじよう)へ行(ゆ)く汽車(きしや)に乘(の)つて、一時間(いちじかん)ばかりで大邱(たいきゆう)に着(つ)き、そこで下車(げしや)して自動車(じどうしや)で東(ひがし)の方(ほう)へ三四時間(さんよじかん)も走(はし)るとすぐ行(ゆ)かれる所(ところ)です。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
細(ほそ)い足(あし)のおかげで走(はし)るわ、走(はし)るわ、よつぽど遠(とほ)くまで迯(に)げのびたが、藪(やぶ)のかげでその美(うつ)くしい角(つの)めが笹(さヽ)に引掛(ひつか)かつてとう/\猟人(かりうど)につかまつたとさ。
三四郎は真逆(まさか)、左(さ)うかとも云へなかつた。薄(うす)笑ひをした丈で、又洋筆(ペン)を走(はし)らし始めた。与次郎も夫(それ)からは落付(おちつ)いて、時間の終る迄口(くち)を利(き)かなかつた。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
水谷氏(みづたにし)も余(よ)も、思(おも)はず知(し)らず穴(あな)から飛上(とびあが)つた。焚火連(たきびれん)も走(はし)つて來(き)た。一同(どう)公爵穴(こうしやくあな)を覗(のぞ)いて見(み)ると、なる程(ほど)出(で)て居(ゐ)る。
そして、變化(へんくわ)のない街道(かいだう)は相變(あいかは)らず小川(をがは)に沿(そ)うて、平(たひら)な田畑(たはた)の間(あひだ)をまつ直(す)ぐに走(はし)つてゐた。霧(きり)は殆(ほとん)ど霽(は)れ上(あが)つて、空(そら)には星影(ほしかげ)がキラキラと見(み)え出(だ)した。
一兵卒と銃 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
(一〇九)故(もと)の楚(そ)の貴戚(きせき)、盡(ことごと)く呉起(ごき)を害(がい)せんと欲(ほつ)す。悼王(たうわう)死(し)するに及(およ)んで、宗室大臣(そうしつだいじん)、亂(らん)を作(な)して呉起(ごき)を攻(せ)む。呉起(ごき)、走(はし)つて王(わう)の尸(し)に之(ゆ)きて之(これ)に伏(ふ)す。
台所の方(はう)へ走(はし)つて来た貢さんは、其処に阿母さんが見えないので、草履を穿(は)いて裏口(うらぐち)から納屋の後(うしろ)へ廻つた。阿母さんは物干竿(ものほしざを)に洗濯物を通して居る。
蓬生 (新字旧仮名) / 与謝野寛(著)
見留夫捕縛(めしとれ)と云ふより早く手先兩人づか/\と走(はし)り寄(よ)り上意と聲かけ文右衞門并びに久兵衞とも忽(たちま)ち高手小手に縛(いまし)め兩人ながら自身番(じしんばん)へ引行けるに是を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
というのが、手(て)にとるように聞(き)こえるので、坊(ぼう)さんはもういよいよ絶体絶命(ぜったいぜつめい)とかくごをきめて、一心(いっしん)にお経(きょう)を唱(とな)えながら、走(はし)れるだけ走(はし)って行きました。
安達が原 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
尚(なほ)化物(ばけもの)に一の必要條件(ひつえうぜうけん)は、文化(ぶんくわ)の程度(ていど)と非常(ひぜう)に密接(みつせつ)の關係(くわんけい)を有(いう)する事(こと)である。化物(ばけもの)を想像(さうざう)する事(こと)は理(り)にあらずして情(ぜう)である。理(り)に走(はし)ると化物(ばけもの)は發達(はつたつ)しない。
妖怪研究 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
「走(はし)りは一粒五銭から七八銭という相場ですから、貰いでもしなければ迚(とて)も此方の口へは入りません。他所(わき)の品物をこの土地で預かっているようなものです」
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
思ふにコロボックルは數人連合し互に相(あひ)助(たす)けて獸獵に從事し、此所彼所(ここかしこ)より多くの矢を射掛(ゐか)け、鹿なり猪なり勢衰(おとろ)へて充分(じうぶん)に走(はし)る事能はざるに至るを見濟(みす)まし
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
即(すなは)ち一日の後(おくれ)となるゆへ、四年目には一日増(ま)して其間(そのあひだ)に地球(ちきう)を走(はし)らしめ、丁度(ちやうど)本(もと)の處(ところ)に行付(ゆきつく)を待(ま)つなり。
改暦弁 (旧字旧仮名) / 福沢諭吉(著)
手帳を破ってそのうえに走(はし)り書(がき)にしたためたものであった。手首がとんでも、なおしっかり握りしめていたその手紙というのには、一体何が書いてあったろうか。
幽霊船の秘密 (新字新仮名) / 海野十三(著)
人をふきとばしそうなサイレンをならしている自動車(じどうしゃ)、往来(おうらい)いっぱいになってがたがた走(はし)ってくる乗合自動車(のりあいじどうしゃ)、うるさくベルをならしながらとびまわる自転車(じてんしゃ)などで
あたまでっかち (新字新仮名) / 下村千秋(著)
こは心得(こゝろえ)ぬ事也とて心あたりの処こゝかしこへ人を走(はし)らせて尋(たづね)させけるにその在家(ありか)さらにしれず。
其他(そのほか)は何(いづ)れも断片(だんぺん)で、文句(もんく)は素(もと)より拙劣(せつれつ)、唯(たゞ)血(ち)の躍(おど)るまゝにペンを走(はし)らせたものとしか見(み)えぬ。
背負揚 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
その時分(じぶん)、当(とう)のおこのは、駕籠(かご)を急(いそ)がせて、月(つき)のない柳原(やなぎはら)の土手(どて)を、ひた走(はし)りに走(はし)らせていた。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
ある年(とし)の夏(なつ)の初(はじめ)、館(やかた)の森(もり)に蝉時雨(せみしぐれ)が早瀬(はやせ)を走(はし)る水(みず)のように、喧(かまびず)しく聞(きこ)えている、暑(あつ)い真昼過(まひるす)ぎのことであったと申(もう)します——館(やかた)の内部(うち)は降(ふ)って湧(わ)いたような不時(ふじ)の来客(らいきゃく)に
術(すべ)もなく苦(くる)しくあれば出(い)で走(はし)り去(い)ななと思(も)へど児等(こら)に障(さや)りぬ 〔巻五・八九九〕 山上憶良
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
私はかぜを引き続(つゞ)けた。母が、「アツ」といつたまゝ死(し)んでしまつた。すると、妻(つま)が母に代つて床(とこ)についた。私の誇(ほこ)つてゐた門(もん)から登る花(はな)の小路は、氷を買ひに走(はし)る道(みち)となつた。
美しい家 (新字旧仮名) / 横光利一(著)
が、いくら身悶(みもだ)えをしても、體中(からだぢう)にかかつた繩目(なわめ)は、一層(そう)ひしひしと食(く)ひ入(い)るだけです。わたしは思(おも)はず夫(をつと)の側(そば)へ、轉(まろ)ぶやうに走(はし)り寄(よ)りました。いえ、走(はし)り寄(よ)らうとしたのです。
藪の中 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
おまえがときどき「あんまり断片的の感想で、さっぱり判りませんね。もっと冷静に書いて寄越(よこ)して下さい」と苦(にが)り切った手紙を寄越さなければならないほどの感情にあふれた走(はし)り書(がき)を
巴里のむす子へ (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
雪(ゆき)に覆(おほ)はれたその切(き)り崩(くづ)しの斜面(しやめん)に、獸(けもの)の足跡(あしあと)が、二筋(ふたすぢ)についてゐるのは、犬(いぬ)か何(なに)かゞ驅(か)け下(お)りたのであらう、それとも、雪崩(なだれ)になつて轉(ころ)げ下(お)りて來(き)た塊(かたま)りの走(はし)つた跡(あと)でもあらうかと
日の光を浴びて (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
走(はし)りながら廻(まは)りながら踊(おど)りながら、鹿(しか)はたびたび風(かぜ)のやうに進(すゝ)んで、手拭(てぬぐひ)を角(つの)でついたり足(あし)でふんだりしました。嘉十(かじふ)の手拭(てぬぐひ)はかあいさうに泥(どろ)がついてところどころ穴(あな)さへあきました。
鹿踊りのはじまり (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
可哀(かわい)そうなエチエンヌも、やっぱり自分の脚(あし)相応(そうおう)に歩(ある)いているのです。調子(ちょうし)が揃(そろ)う筈(はず)がありません。エチエンヌは走(はし)ります。息(いき)を切(き)らします。声を出します。それでも遅(おく)れてしまいます。
母の話 (新字新仮名) / アナトール・フランス(著)
本(ほん)がみつかったので、講堂(こうどう)へ走(はし)って帰(かえ)ると、もう生徒(せいと)らはお祈(いの)りの整列(せいれつ)をしていた。背(せい)の順(じゅん)に長(なが)い行列(ぎょうれつ)を作(つく)っているので、小さいのは前の方で聖像(せいぞう)に近く、大きいのはうしろに立っている。
身体検査 (新字新仮名) / フョードル・ソログープ(著)
浜の方からは神輿(みこし)の迎へに開運丸、住吉丸などと船の名を書いた旗を持つた若者が幾人も幾人も走(はし)しつて行(ゆ)く、四五町先へ神輿(みこし)が来た頃から危ながつて道端(みちはた)に居る人が皆店の上へ上(あが)つて来る。
住吉祭 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
「きょうは、たいそうがあって、走(はし)りきょうそうで一ばんになりました。」
左(ひだり)へ翔(かけ)り右(みき)へ走(はし)り、四面八角(しめんはつかく)縱横無盡(じうわうむじん)に飛(とひ)
鬼桃太郎 (旧字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
はたや、太皷(たいこ)の悶絶(もんぜつ)に列(つら)なり走(はし)る槍尖(やりさき)よ
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
事榮(ことばえ)の日(ひ)は、はららかにそそ走(はし)りゆき
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫、薄田淳介(著)
波だつ小川が笑いながら走(はし)ってゆく
笑いの歌 (新字新仮名) / ウィリアム・ブレイク(著)
火(ひ)は走(はし)り、焔は飛びき
春鳥集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
けたゝまし虹(にじ)走(はし)る
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)