西にし)” の例文
この金貨きんかは、西にしくに金貨きんかだ。この金貨きんかは、ひがしくに金貨きんかだ。この銀貨ぎんかは、おもい。しかしこちらの銀貨ぎんかのほうは、もっと目方めかたがある。
汽船の中の父と子 (新字新仮名) / 小川未明(著)
日本にほん化物ばけもの貧弱ひんじやくなのにたいして、支那しなるとまつたことなる、支那しなはあのとほ尨大ぼうだいくにであつて、西にしには崑崙雪山こんろんせつざん諸峰しよぼう際涯はてしなくつらな
妖怪研究 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
なにしろ西にしひがしからない原中はらなかの一軒家けんや一人ひとりぼっちとりのこされたのですから、心細こころぼそさも心細こころぼそいし、だんだん心配しんぱいになってきました。
安達が原 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
そらは深くんで、澄んだなかに、西にしはてから焼ける火のほのほが、薄赤く吹き返して来て、三四郎のあたまうへほてつてゐる様に思はれた。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
信長に身を寄せた漂泊の将軍家義昭よしあきは、その後、岐阜ぎふの城下西にしたなの立正寺を宿所と定められて、一行はそこにししていた。
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
草木さうもくおよ地上ちじやうしもまばたきしながらよこにさうしてなゝめけるとほ西にし山々やま/\ゆき一頻ひとしきりひかつた。すべてをつうじて褐色かつしよくひかりつゝまれた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
此時このとき今迄いまゝで晴朗うらゝかであつた大空おほぞらは、る/\うち西にしかたからくもつてて、熱帶地方ねつたいちほう有名いうめい驟雨にわかあめが、車軸しやぢくながすやうにつてた。
そのとき西にしのぎらぎらのちぢれたくものあひだから、夕陽ゆふひあかくなゝめにこけ野原のはらそゝぎ、すすきはみんなしろのやうにゆれてひかりました。
鹿踊りのはじまり (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
この牧場の管理人から月に十円の手宛てあてもらっていることや、自分は他の牧場からこの西にしいりの沢へ移って来たものであることなどを話した。
千曲川のスケッチ (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
鉄道の案内記によると、今日では金谷からゆくのを便利とするらしい。案内記には、小夜の中山夜啼石よなきいし西にし三十二ちょう、菊川、西にし廿二町とある。
小夜の中山夜啼石 (新字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
すはだしで、その染殿そめどのひがしもんよりはしで、きたざまにはしつて、一條いちでうより西にしへ、西にし洞院とうゐん、それからみなみへ、洞院下とうゐんさがりはしつた。
春着 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
此學校このがつこう敷地しきちは、數年前すうねんぜん水田すいでん埋立うめたてゝつくられたものであつて、南北なんぼくなが水田すいでん一區域いちくいきなかに、半島はんとうかたちをなして西にしからひがし突出とつしゆつしてゐた。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
この土器どきは、滿洲まんしゆうから彩色さいしき土器どきとはちがつてゐて、餘程よほど西にしほうくにからるものにてゐるところがありますから
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
((田忌))ただちに大梁たいりやうおもむく。しやう龐涓はうけんこれき、かんつてかへれり。(四二)せいぐんすですでぎて西にしす。
西にしたいあたりから、それにまじって、つい今しがた少女の習い出したらしい琴の幼い調べが途絶えがちに聴えて来る。
ほととぎす (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
くれのお席書せきがきの方が、試験よりよっぽど活気があった。十二月にはいると西にしうち一枚を四つに折ったお手本が渡る。
西にしそらはいま、みどろなぬまのやうに、まつゆふやけにたゞれてゐた。K夫人ふじんつて西窓にしまどのカーテンをいた。
彼女こゝに眠る (旧字旧仮名) / 若杉鳥子(著)
これは大變たいへんと、總掛そうがゝりでならしをして、今度こんどまたおもおもひにぢんり、西にしからひがしむかつて坑道こうだうすゝけた。
ぼくまたしてもおもいした、吉彦よしひこさんがかねをつくときった言葉ことばを——「西にしたにひがしたにも、きたたにみなみたにるぞ。ほれ、あそこのむらもここのむらるぞ。」
ごんごろ鐘 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
さうしてうす黄色く濡れた糸をくるくると枠にまくと几帳が無惨にほごされてしまひに西にしどつちの形したむくろがでる。それを兄は餌箱にいれて釣り堀へとんでゆく。
銀の匙 (新字旧仮名) / 中勘助(著)
小川町辺をがはまちへん御邸おやしきまへ通行つうかうすると、御門ごもん潜戸くゞりど西にしうち貼札はりふださがつてあつて、筆太ふでぶとに「此内このうち汁粉しるこあり」としたゝめてあり、ヒラリ/\と風であほつてつたから
士族の商法 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
寒山かんざんでございますか。これは當寺たうじから西にしはう寒巖かんがんまを石窟せきくつんでをりますものでございます。
寒山拾得 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
東京市は坂の上の眺望によって最もよくその偉大を示すというべきである。古来その眺望よりして最も名高きは赤坂霊南坂上あかさかれいなんざかうえより芝西にし久保くぼへ下りる江戸見坂えどみざかである。
一まいのはねは、ひがしのほうへ とんでいきました。もう一まいは、西にしのほうへ とんでいきました。ところが、三まいめのはねだけは、まっすぐ 上にまいあがったのです。
茨城県に来ますと、そう語るべきものを有ちませんが、何といっても「西にしうち」とか「程村ほどむら」とか呼ぶ純こうぞの和紙を生んだ国で、幸にもこの仕事は今も続いております。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
このうたでは、人麿ひとまろみやこから西にしくだつたのか、それともとほくにからみやこもどつてたのか、その事情じじようがわかりませんが、このうたかんがへるうへには、べつにさしつかへはありません。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
ふなやたなごは迷惑めいわくな、るほどにるほどに、夕日ゆふひ西にしちてもかへるがしく、其子そのこのこくおさかなつて、よろこかほたいとでもおもふたので御座ござりましよ
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
弓弭ゆはず清水しみずむすんで、弓かけ松の下に立って眺める。西にし重畳ちょうじょうたる磐城の山に雲霧くもきり白くうずまいて流れて居る。東は太平洋、雲間くもまる夕日のにぶひかりを浮べて唯とろりとして居る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
うまうま仲善なかよく、はなをならべて路傍みちばたくさみながら、二人ふたり半死半生はんしはんしやう各自てんで荷馬車にばしやひあがり、なほ毒舌どくぐちきあつて、西にしひがしへわかれるまで、こんなはなしをしてゐました。
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
ヂュリ けよはやう、あし若駒わかごまよ、かみ宿やどります今宵こよひ宿やどへ。フェートンのやうな御者ぎょしゃがゐたなら、西にしへ/\とむちをあてゝ、すぐにもよるれてうもの、くもったよるを。
拠無よんどころなく夕方から徒歩で大坂おおさかまで出掛でかける途中、西にしみやあまさきあいだで非常に草臥くたびれ、辻堂つじどう椽側えんがわに腰をかけて休息していると、脇の細道の方から戛々かつかつと音をさせて何か来る者がある
枯尾花 (新字新仮名) / 関根黙庵(著)
その円頂のことですが、森の親戚に西にしという家があります。やはり代々の医者でした。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
東北はねずみが関(岩船郡の内出羽のさかひ)西にし市振いちふり(頸城郡の内越中の堺)にいたるの道八十里が間すべて北の海浜かいひんなり。海気によりて雪一丈にいたらず(年によりて多少あり)又きゆるも早し。
芙蓉ふようはな清々すがすがしくもいろめて、西にしそらわたった富岳ふがくゆきえていた。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
いえなかのかたづけをおわって、諭吉ゆきちは、おかあさんとめいとをつれて、東京とうきようへかえることになり、ふねにのるため、中津なかつから四キロメートルほど西にししままでいって、宿屋やどやにとまりました。
そうおもうとわたくしはわれをわすれて、おかうえからりようとしましたが、その瞬間しゅんかんたちまちゴーッとみみもつぶれるような鳴動うなりともに、いままでとはちがって、西にしからひがしへときをかえた一じん烈風れっぷう
梶原に続き、三浦、鎌倉、秩父ちちぶ、足利の一族、党では猪俣いのまた児玉こだま野井与のいよ、横山、西にし党、綴喜つづき党などや、その他の私党の兵が続々と攻めこめば、平家もここに兵力のすべてを投入して戦った。
西にしおかなる陣すと
騎士と姫 (新字旧仮名) / 末吉安持(著)
場所 西にし洞院とういん御坊。
出家とその弟子 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
西にしかた廣野ひろのらん
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
おもひはし西にしうみ
寡婦の除夜 (新字旧仮名) / 内村鑑三(著)
さかんにえていた、西にしうみほのおが、いつしかなみあらわれて、うすくなったとおもうと、まどからえるそらも、くらくなりかけていました。
雲と子守歌 (新字新仮名) / 小川未明(著)
それでだれいうとなく、為朝ためとものことを鎮西八郎ちんぜいはちろうぶようになりました。鎮西ちんぜいというのは西にしくにということで、九州きゅうしゅう異名いみょうでございます。
鎮西八郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
旅亭やどや禿頭はげあたまをしへられたやうに、人馬じんば徃來ゆきゝしげ街道かいだう西にしへ/\とおよそ四五ちやうある十字街よつかどひだりまがつて、三軒目げんめ立派りつぱ煉瓦造れんぐわづくりの一構ひとかまへ
そこで嘉十かじふはちよつとにがわらひをしながら、どろのついてあなのあいた手拭てぬぐひをひろつてじぶんもまた西にしはうあるきはじめたのです。
鹿踊りのはじまり (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
すぎ大木たいぼく西にしたふしたのでづしんとそこらをおそろしくゆるがしておしなにはよこたはつた。えだくぢけてそのさきにはつちをさくつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
心持こゝろもち西にしと、ひがしと、真中まんなかやまを一ツいて二すぢならんだみちのやうな、いかさまこれならばやりてゝも行列ぎやうれつとほつたであらう。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
つぎにんおもてとほいろながうみながめた。まつみきからやに空氣くうきつた。ふゆみじかそら赤裸々せきらゝ横切よこぎつて大人おとなしく西にしちた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
日本につぽんける活火山かつかざん兩大關りようおほぜきひがしほう淺間山あさまやまとすれば、西にし阿蘇山あそざんである。なかにも阿蘇あそはその外輪山がいりんざん雄大ゆうだいなことにおい世界第一せかいだいゝちといはれてゐる。
火山の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
そのぎにふるいのは奈良なら西にしにある藥師寺やくしじとう、それから聖武天皇頃しようむてんのうころもの奈良ならにちょい/\のこつてをります。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)