廊下らうか)” の例文
しるべの燈火ともしびかげゆれて、廊下らうかやみおそろしきをれし我家わがやなにともおもはず、侍女こしもと下婢はしたゆめ最中たゞなかおくさま書生しよせい部屋へやへとおはしぬ。
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
うろつくものには、傍目わきめらず、肅然しゆくぜんとして廊下らうかながつて、とほつて、ひろ講堂かうだうが、青白あをじろうつつてひらく、其處そこ堂々だう/\はひつたのです。
雪霊続記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
僕もまた或晩春の午後、或オペラの楽屋の廊下らうかに彼等の一群いちぐんを見たことがある。彼等は佐藤君の書いたやうに、ぞろぞろ廻り梯子ばしごを下つて行つた。
野人生計事 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
さうして、また廊下らうからしておくはうつた。宗助そうすけ沈默ちんもくあひだおこなはれるこの順序じゆんじよながら、ひざせて、自分じぶんばんるのをつてゐた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
まつた不思議ふしぎことでございました。やまからとらつてかへつてまゐられたのでございます。そしてそのまゝ廊下らうか這入はひつて、とらぎんじてあるかれました。
寒山拾得 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
「だから、どこへ? 場所をきめろ」さう言ひながら周三は廊下らうかへ來て、その奧の非常口の方へ歩いてゐた。
天国の記録 (旧字旧仮名) / 下村千秋(著)
室内しつないはず、廊下らうかはず、にははず、なんともはれぬ臭氣しうきはないて、呼吸いきをするさへくるしいほど
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
取なといはるゝに忠右衞門殊勝けなげにも然らば父上ちゝうへ御免をかうむり御先へ切腹仕つり黄泉くわうせん露拂つゆはらひ致さんといさぎよくも短刀たんたうを兩手にもち左の脇腹わきばらへ既に突立つきたてんとする折柄をりから廊下らうか
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
中の間を通つて便所までは一本廊下らうかで、その先にお勝手があり、それから下女のお六や手代の彌吉の部屋になり、そして離屋はなれのやうになつて主人の六右衞門夫婦
さて雪中は廊下らうかに(江戸にいふたな下)雪垂ゆきだれを(かやにてあみたるすだれをいふ)くだし、(雪吹ふゞきをふせぐため也)まども又これを用ふ。雪ふらざる時はまいあかりをとる。
本堂の廊下らうかには此処こゝ夜明よあかししたらしい迂散うさんな男が今だに幾人いくにんこしをかけてて、の中にはあかじみた単衣ひとへ三尺帯さんじやくおびを解いて平気でふんどしをしめ直してゐるやつもあつた。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
其次そのつぎつた時に、はらが立ちましたからギーツとおもてを開けて、廊下らうかをバタ/″\駈出かけだして、突然いきなり書斎しよさいひらをガチリバタリとけて先生のそばまできました、先生はおどろいて先
西洋の丁稚 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
え/″\として硝子がらすのそとに、いつからかいとのやうにこまかなあめおともなくつてゐる、上草履うはざうりしづかにびしいひゞきが、白衣びやくえすそからおこつて、なが廊下らうかさきへ/\とうてく。
(旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
「左樣なら、ゲィツヘッド!」私たちが廊下らうかを通つて玄關へ出ていつた時、私は叫んだ。
この書院しよゐんからなかへつゞく廊下らうかのあたりは、とうさんのよくあそんだところです。なかはおうちのなかでも一ばんあかるい部屋へやでして、とほ美濃みのくにはうそらまでその部屋へやからえました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
まつ廊下らうかのヒダで自分のシワを作つた。
冠松次郎氏におくる詩 (新字旧仮名) / 室生犀星(著)
気ぬけして廊下らうかに立ちぬ
一握の砂 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
ながい廊下らうかまどのした
どんたく:絵入り小唄集 (新字旧仮名) / 竹久夢二(著)
廊下らうかゆく重き足音あしおと
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
何處どこへゆく何處どこへゆく、げてはならないと坐中ざちうさわぐにてーちやんたかさんすこたのむよ、かへるからとてずつと廊下らうかいそあしいでしが
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
うかするといし手水鉢てうづばちが、やなぎかげあをいのに、きよらかな掛手拭かけてぬぐひ眞白まつしろにほのめくばかり、廊下らうかづたひの氣勢けはひはしても、人目ひとめにはたゞのきしのぶ
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
取な早々はや/″\用意を致せといふ言葉ことばに隨て然ば御先へと又短刀たんたう持直もちなほしあはや只今突立つきたてんとする時亦々廊下らうか物音ものおとすさまじく聞えければ越前守何事やらん今暫いましばらくと忠右衞門を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
その聲を聽いて、家中の者が廊下らうかの一端に驅けつけました。其處は内儀のお春の部屋で、唐紙を開けた敷居際まで、首に細引を卷かれた死骸が轉げ出してゐたのです。
銭形平次捕物控:311 鬼女 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
道子みちこ廊下らうか突当つきあたりにふすまのあけたまゝになつたおくへ、きやくともはいると、まくらふたならべた夜具やぐいてあつて、まど沿壁際かべぎは小形こがた化粧鏡けしやうかゞみとランプがたのスタンドや灰皿はひざら
吾妻橋 (新字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
彼方あつちきませう」とつて、ちやとほして、廊下らうかづたひにちひさな書齋しよさいはひつた。其所そこには棕梠しゆろふでいたやうな、おほきなこはが五ばかりとこかゝつてゐた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
何故なぜと云ふと彼が廊下らうかへ出るか出ないのに、あとを追つてするすると裾を引いて来た芸者の一人ひとりが突然彼のくびきついたからである。さうして彼の酒臭いくちびるいさぎよい接吻をした。
東京小品 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
ある地方ちはう郡立病院ぐんりつびやうゐんに、長年ながねん看護婦長かんごふちやうをつとめてるもとめは、今日けふにち時間じかんからはなたれると、きふこゝろからだたるんでしまつたやうな氣持きもちで、れて廊下らうかしづかにあるいてゐた。
(旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
れでゐて足音あしおとしづかで、ある樣子やうす注意深ちゆういぶか忍足しのびあしのやうである。せま廊下らうかひと出遇であふと、みちけて立留たちどまり、『失敬しつけい』と、さもふとこゑひさうだが、ほそいテノルで挨拶あいさつする。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
廊下らうかがる蜘蛛くも人間にんげん
冠松次郎氏におくる詩 (新字旧仮名) / 室生犀星(著)
廊下らうかかな。
悲しき玩具 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
素通すどほりもなるまいとてずつと這入はいるに、たちま廊下らうかにばた/\といふあしおと、ねへさんお銚子てうしこゑをかければ、おさかななにをとこたふ。
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
とすると、先祖せんぞへはともかく、友達ともだちかほにかゝはる……とたん廊下らうかつてくと、女中ぢよちう案内あんないされたのは、これまた心易こゝろやすい。
飯坂ゆき (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
玄関の東側には廊下らうかがあり、その廊下の欄干らんかんそとには、冬を知らない木賊とくさの色が一面に庭をうづめてゐるが、客間の硝子ガラス戸をれる電燈の光も、今は其処そこまでは照らしてゐない。
東京小品 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
梯子段はしごだんあがると、廊下らうか片側かたがはかほあらなが便所べんじよ杉戸すぎどがあり、片側かたがはには三でふと六でふ座敷ざしき三間みまほど、いづれもきやくがあるらしくつたふすまそとにスリツパがてゝある。
吾妻橋 (新字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
かれ弱味よわみのある自分じぶんおそれをいだきつゝ、入口いりぐちつめたい廊下らうかあしした。廊下らうかながつゞいた。右側みぎがはにあるへやこと/″\くらかつた。かどふたまがると、むかふはづれの障子しやうじ灯影ひかげした。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
病院びやうゐんでは外來患者ぐわいらいくわんじやがもう診察しんさつ待構まちかまへて、せま廊下らうか多人數たにんず詰掛つめかけてゐる。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
はや其夜もすで亥刻よつどき過皆々とこへ入たる樣子やうすにて座敷々々ざしき/\しんと成ければ瀬川せがは用意ようい短刀たんたうかくもち八重咲やへざきの座敷へゆき八重咲やへざきさん/\とよぶ八重咲やへざきは何のつかずアイとこたへて廊下らうかへ出るをなにか用を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
廊下らうかでフト逢つた若い女に、平次は聲を掛けました。
黒部峡谷くろべけふこく廊下らうかかべ
冠松次郎氏におくる詩 (新字旧仮名) / 室生犀星(著)
『きやつ、』とつて、わたくし鉄砲玉てつぱうだまのやうに飛出とびだしたが、廊下らうかかべひたひつて、ばつたりたふれた。……よわはゝもひきつけてしまつたさうです。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
此邸こゝにては煤取すゝとりさゝ座敷ざしきにこぼれて、ひやめし草履ぞうりこゝかしこの廊下らうかちりみだれ、お雜巾ぞうきんかけまするもの、おたゝみたゝくもの家内かない調度てうどになひまはるもれば、お振舞ふるまひさゝふて
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
何かものを考へるのにいのはカツフエの一番隅の卓子テエブル、それから孤独を感じるのにいのは人通りの多い往来わうらいのまん中、最後に静かさを味ふのに善いのは開幕中の劇場の廊下らうか、……
都会で (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
平次はそれを追つて、廊下らうかで呼び留めました。
ねえさん、』と仰向あふむくとうへから俯向うつむいてたやうにおもふ、……廊下らうかながい、黄昏時たそがれどきひらききはで、むら/\とびんが、其時そのときそよいだやうにおもひました。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
いま客人きやくじんながさまだ車代しやだいくれんともせず何時いつまでたするこゝろにやさりとてまさかにはたりもされまじなんとしたものぞとさしのぞおくかた廊下らうかあゆ足音あしおとにもおもてくわつあつくなりて我知われしらずまたかげ
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「はてな。」とはじめていて、主人あるじわたしてつたかぎをガツチリ、狼狽眼うろたへまなこひらいてると、如何いかにはこそこから、階下した廊下らうか見通みとほしであつた。
人参 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
きやくまへをなぞへに折曲をれまがつて、だら/\くだりの廊下らうかかゝると、もと釣橋つりばししたに、磨硝子すりがらす湯殿ゆどのそこのやうにえて、して、足許あしもときふくらつた。
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
おやとおもふと、灰色はひいろひらきいて、……裏口うらぐちですから、油紙あぶらがみなんからかつた、廊下らうかのつめに、看護婦かんごふつて、ちやう釣臺つりだい受取うけとところだつたんですつて。
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
たしか、三日目みつかめ土曜どえうあたつたとおもふ。ばら/\ときやくはひつた。なか十人じふにんばかりの一組ひとくみが、ばん藝者げいしやんで、はこはひつた。申兼まをしかねるが、廊下らうかでのぞいた。
木菟俗見 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
此處こゝではへないぞ。」とこゝろさけんだ、たかいのに、べつ階子壇はしごだんふほどのものもし、廊下らうか一𢌞ひとまはりして、むかうへりるあたりが、なりな勾配こうばい
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)