)” の例文
東の仙人峠せんにんとうげから、遠野とおのを通り土沢つちざわぎ、北上山地を横截よこぎって来るつめたい猿ヶ石さるがいし川の、北上川への落合おちあいから、少し下流かりゅうの西岸でした。
イギリス海岸 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
二郎じろうは、そのおじいさんをていますと、おじいさんは、二郎じろうのわきへちかづいて、ゆきぎようとして二郎じろうあたまをなでてくれました。
赤い船のお客 (新字新仮名) / 小川未明(著)
姿すがた婀娜あだでもおめかけではないから、團扇うちは小間使こまづかひ指圖さしづするやうな行儀ぎやうぎでない。「すこかぜぎること」と、自分じぶんでらふそくにれる。
深川浅景 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「石切り場の入口は左のほうだよ。わたしたちは気がつかずに通りぎてしまったにちがいない。あともどりするほうがいいだろう」
ぼくおもふに、いつたい僕等ぼくら日本人にほんじん麻雀マージヤンあそかた神經質しんけいしつぎる。あるひ末梢的まつせうてきぎる。勿論もちろんあらそひ、とらへ、相手あひてねら勝負事しようぶごとだ。
麻雀を語る (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
かれ生活せいくわつかくごとくにしていた。あさは八き、ふく着換きかへてちやみ、れから書齋しよさいはひるか、あるひ病院びやうゐんくかである。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
さう云ふひとつてごす時間が、本当の時間で、穴倉で光線の試験をしてくら月日つきひは寧ろ人生に遠い閑生涯と云ふべきものである。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
今日こんにち私はくまでもこの自然宗教にひたりながら日々を愉快ゆかいごしていて、なんら不平の気持はなく、心はいつも平々坦々へいへいたんたんである。
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
ひだりれたところに応接室おうせつしつ喫煙室きつえんしつかといふやうな部屋へやまどすこしあいてゐて人影ひとかげしてゐたが、そこをぎると玄関げんかんがあつた。
微笑の渦 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
日本人にほんじん固有こゆう風習ふうしふてゝ外國ぐわいこく慣習くわんしふにならうは如何いかにも外國ぐわいこくたいして柔順過じうじゆんすぎるといふ怪訝けげんかんおこさしむるにぎぬとおもふ。
誤まれる姓名の逆列 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
するとそのばん夜中よなかぎになって、しっかりしめておいたはずのおもてのがひとりでにすうっとあいて、だれかがはいって様子ようすです。
山姥の話 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
李克りこくいはく、『たんにしていろこのむ。しかれどもへいもちふるは、司馬穰苴しばじやうしよぐるあたはざるなり』と。ここおい文矦ぶんこうもつしやうす。
月には一滴いってきの水もない。だから地球から見ると海のように見えるところも、来てみれば何のことか、それは平原にぎないのであった。
月世界探険記 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「いや、体がわるければ、なおやるよ。実は、将軍家から七日ほどぎに、わしの剣を御覧になりたいというお達しが参ったからじゃ」
剣の四君子:05 小野忠明 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しなはやしいくつもぎて自分じぶんむらいそいだが、つかれもしたけれどものういやうな心持こゝろもちがして幾度いくたび路傍みちばたおろしてはやすみつゝたのである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
あっしゃァまつろうという、けちな職人しょくにんでげすがね。おまえさんの仕方しかたが、あんまりなさけぎるから、くちをはさましてもらったのさ。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
さる十三にちぼくひとつくゑ倚掛よりかゝつてぼんやりかんがへてた。十いへものてしまひ、そとあめがしと/\つてる。
湯ヶ原より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
ゾオラが偶々たま/\醜悪しうあくのまゝをうつせば青筋あをすじ出して不道徳ふだうとく文書ぶんしよなりとのゝしわめく事さりとは野暮やぼあまりに業々げふ/\しき振舞ふるまひなり。
為文学者経 (新字旧仮名) / 内田魯庵三文字屋金平(著)
彼はいつものやうに、暁方あけがたぎからうと/\と重苦しい眠りにはひつて、十時少し前に気色のわるい寝床を出たのであつた。
哀しき父 (新字旧仮名) / 葛西善蔵(著)
は、毎電まいでん東京毎日とうきやうまいにち、やまと、日本にほん記者きしやともに、山越やまごしをして、駒岡貝塚こまをかかひづか末吉貝塚すゑよしかひづか遺跡ゐせきぎ、鶴見つるみ歸宅きたくした。
ぎたる紅葉もみぢにはさびしけれど、かき山茶花さゞんかをりしりかほにほひて、まつみどりのこまやかに、ひすゝまぬひとなきなりける。
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
そのうちそら真暗まっくらくなって、あたりの山々やまやま篠突しのつくような猛雨もううめにしろつつまれる……ただそれきりのことにぎませぬ。
外国人も貿易の一点に注意ちゅういすることとりたれども、彼等のるところはただこれ一個の貿易国ぼうえきこくとして単にその利益りえきを利せんとしたるにぎず。
お前からいふと、おれ虚弱きよじやくだからとひたからうが、俺からいふとお前が強壯きやうさうぎるとひたいね。しか他一倍ひといちばい喧嘩けんくわをするからいぢやないか。
青い顔 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
いまちひさいことにがつくとともに、それが矢張やつぱり自分じぶんのやうにすべちた一ぴきねずみぎないことをりました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
これですっかり安心あんしんして、うれしそうにしているうちに、九つきぎて、十月目つきめになって、おんなゆきのようにしろく、のようにあか小児こどもみました。
終夜しうやあめ湿うるほひし為め、水中をあゆむもべつに意となさず、二十七名の一隊粛々しゆく/\としてぬまわたり、蕭疎しようそたる藺草いくさの間をぎ、悠々いう/\たる鳧鴨ふわうの群をおどろかす
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
これからのち室町時代むろまちじだいからときぎて江戸えど時代じだいいたるまで、そんなにすぐれた歌人かじんは、おほくはてまゐりませんでした。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
部屋をぎるときもずつと彼女の蔭になつて、その時にはもう垂布カアテンを下ろしてある例のアアチを通つて、その向うの優雅な奧まつた方へ這入つた。
が、そのふゆってしまったとき、あるあさ子家鴨こあひる自分じぶん沢地たくちがまなかたおれているのにがついたのでした。
御年おんとし四十にして、御鬚おんひげへそぎさせたもうに及ばせたまわば、大宝位たいほういに登らせたまわんことうたがいあるべからず、ともうす。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
列車は五けんぎ——十間過ぎぬ。落つばかりのび上がりて、ふりかえりたる浪子は、武男が狂えるごとくかのハンケチを振りて、何か呼べるを見つ。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
わたしは昨日きのふひるすこぎ、あの夫婦ふうふ出會であひました。そのときかぜいた拍子ひやうしに、牟子むし垂絹たれぎぬあがつたものですから、ちらりとをんなかほえたのです。
藪の中 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
「昨夜は風呂が立たなかつたので、町風呂へ行つたやうでございました。小半刻經つて、戌刻いつゝぎになつてから、宜い心持にうだつて歸つて來ましたが」
或る日同じ淵のほとりぎて町へ行くとて、ふと前の事を思い出し、ともなえる者に以前かかることありきと語りしかば、やがてそのうわさは近郷に伝わりぬ。
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
給仕きふじはおりのこつな一人ひとり引受ひきうけてべんずるのであるが、それにしても、今宵こよひんだかさびぎて、百物語ひやくものがたりといふやうながしてならなかつた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
ロミオ おゝ、有難ありがたい、かたじけない、なんといふうれしいよる! が、よるぢゃによって、もしやゆめではないからぬ。うつゝにしては、あんまうれぎてうそらしい。
「なんじゃかんじゃというても、三分の一はぎたでないか。しんぼう、しんぼう。もうちょっとのしんぼう」
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
新石器時代しんせつきじだいになると氣候きこうその世界せかい状態じようたい今日こんにちあまかはつたところなく、たゞ海岸線かいがんせんいまよりも陸地りくちんでゐたといふくらゐにぎないのです。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
タカをくくぎて依怙地えこじになられては厄介なので、是非なく庄造は膝頭ひざがしらを揃へ、キチンとかしこまつてすわり直すと、前屈まえかがみに、その膝の上へ両手をつきながら
猫と庄造と二人のをんな (新字旧仮名) / 谷崎潤一郎(著)
しかしぎると黒くなって苦くって役に立たん。その色付油の中へ豚の皮ばかり小さく切ってり付けて火からおろして冷却してからその皮を出してしまう。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
台州たいしうから天台縣てんだいけんまでは六十はんほどである。日本にほんの六はんほどである。ゆる/\輿かせてたので、けんから役人やくにんむかへにたのにつたとき、もうひるぎてゐた。
寒山拾得 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
へえゝ釣堀つりぼりさまとは。小「なんだね釣堀つりぼりだね。梅「有難ありがたい……わたしは二十一にち御飯ごぜんべないので、はらつたのがとほぎたくらゐなので、小「ぢやア合乗あひのりでかう。 ...
心眼 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
なばひもねとや我妹子わぎもこ吾家わぎへかどぎてくらむ 〔巻十一・二四〇一〕 柿本人麿歌集
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
地震ぢしんおこつたのは當日とうじつ午前十一時十分頃ごぜんじゆういちじじつぷんごろであり、郵便局ゆうびんきよくとなりの潰家かいかから發火はつかしたのは正午しようごぐる三十分位さんじつぷんぐらゐだつたといふから、地震後ぢしんごおよ一時間半いちじかんはん經過けいかしてゐる。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
讀者とくしやげんしんぜずば罪と罰にきて、さら其他そのた記事きじ精讀せいどくせられよ、おもけだなかばぎんか。
「罪と罰」の殺人罪 (旧字旧仮名) / 北村透谷(著)
だからわたし其時そのとき日本國民にほんこくみんとして所有しよいうするものは、わづかの家具かぐと、わづかのほんと、わづかの衣服類いふくるゐとにぎなかつた。そしてわづかに文筆勞働ぶんぴつらうどうつて衣食いしよくするのであつた。
そこで、この一町内も門並かどなみに杭を打たれてしまふと、その月のお彼岸ひがんぎ——廿八にじゅうはち日の晩でした。
赤い杭 (新字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
家のひとたちのあてがうものをこころよくみして、なんのこともなく昨夜さくやまでごしてきたところ、けさは何時なんじになっても起きないから、はじめて不審ふしんをおこし
告げ人 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
かっこうはほとゝぎすのるい𤍠帶ねつたいむものですが、なつになると北方ほつぽうすゞしい地方ちほうへやつてくるのです。なかには日本につぽんとほぎて、もっときたくにへまでくのもあります。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)