“擴(ひろ)” の例文
新字:拡
それからいよ/\問題(もんだい)が大(おほ)きく擴(ひろ)がつて、大學人類學教室(だいがくじんるゐがくけうしつ)で『彌生式研究會(やよひしきけんきうくわい)』が開(ひら)かれ、其結果(そのけつくわ)として、加瀬探檢(かせたんけん)の遠足會(えんそくくわい)が催(もよほ)された。
その場で斬られるのが落ちで、怨嗟と恐怖が、下町一パイに、夕立雲のやうに擴(ひろ)がつて行くのを、どうすることも出來ない有樣でした。
捨(す)てた燐寸(マツチ)の燃(も)えさしが道端(みちばた)の枯草(かれくさ)に火(ひ)を點(つ)けて愚弄(ぐろう)するやうな火(ひ)がべろ/\と擴(ひろ)がつても、見向(みむ)かうともせぬ程(ほど)彼(かれ)は懶(ものう)げである。
土 (旧字旧仮名) / 長塚節(著)
火(ひ)が天井(てんじよう)まで燃(も)え上(あが)つたならば、屋根(やね)まで打拔(うちぬ)いて火氣(かき)を拔(ぬ)くこと。これは焔(ほのほ)が天井(てんじよう)を這(は)つて燃(も)え擴(ひろ)がるのを防(ふせ)ぐに效力(こうりよく)がある。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
と如何(いか)なる企(くはだて)か、内證(ないしよう)の筈(はず)と故(わざ)と打明(うちあ)けて饒舌(しやべ)つて、紅筆(べにふで)の戀歌(こひうた)、移香(うつりが)の芬(ぷん)とする、懷紙(ふところがみ)を恭(うや/\)しく擴(ひろ)げて人々(ひと/″\)へ思入(おもひいれ)十分(じふぶん)で見(み)せびらかした。
二た面 (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
言寄(いひよ)る語(ことば)に圍(かこ)まれても、戀(こひ)する眼(まなこ)に襲(おそ)はれても、いっかな心(こゝろ)を動(うご)かさぬ、賢人(けんじん)を墮落(だらく)さする黄金(こがね)にも前垂(まへだれ)をば擴(ひろ)げぬ。
どし/\各地(かくち)へ植民(しよくみん)をしだしたと共(とも)に、今(いま)まですでに用(もち)ひてゐたところの金屬(きんぞく)、銅(どう)や青銅(せいどう)で造(つく)つた器物(きぶつ)の使用(しよう)が東亞(とうあ)の諸國(しよこく)へ擴(ひろ)められることになりました。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
不幸は靜かな湖面に石を投げたやうなものであらう、一點から起つて次第に四邊に同じ波紋を擴(ひろ)げて行く。
古い村 (旧字旧仮名) / 若山牧水(著)
たゞ多(おほ)く子(こ)どもたちが、さういふ歌(うた)を、無心(むしん)で謠(うた)ひ擴(ひろ)げて行(ゆ)くところから、あて字(じ)をしたのでありませう。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
そこで大殿樣が良秀の娘に懸想なすつたなどと申す噂が、愈々擴(ひろ)がるやうになつたのでございませう。
地獄変 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
入梅(つゆ)になッてからは毎日(まいにち)の雨降(あめふり)、其(それ)が辛(やつ)と昨日(きのふ)霽(あが)ツて、庭柘榴(ざくろ)の花に今朝(けさ)は珍(めづ)らしく旭(あさひ)が紅々(あか/\)と映(さ)したと思(おも)ツたも束(つか)の間(ま)、午後(ごゝ)になると、また灰色(はいいろ)の雲(くも)が空(そら)一面(いちめん)に擴(ひろ)がり
虚弱 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
權力を得よう、この慘(みじ)めな自分自身の爲めに力と名聲を得ようといふ野心(やしん)から、吾主(わがしゆ)、神の王國を擴(ひろ)めようと云ふ野心を形造(かたちづく)りました。十字架の旗印(はたじるし)の勝利を得る爲めに。
一(ひと)つはあをぎりの木(き)の葉(は)のように、擴(ひろ)がつた大(おほ)きな形(かたち)のもので、これを『濶葉樹(かつようじゆ)』とよび、もう一(ひと)つは松(まつ)の葉(は)のように針(はり)の形(かたち)をした葉(は)を持(も)つた木(き)でこれを『針葉樹(しんようじゆ)』とよびます。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
こんな噂(うはさ)が、市中(しちう)いツぱいに擴(ひろ)がつて、町々(まち/\)は火(ひ)の消(き)えたやうに靜(しづ)かだ。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
愛(あい)ちやんは兩手(りやうて)を擴(ひろ)げて、歌(うた)ひ初(はじ)めました。——
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
ナイル河のごとく、わが心の擴(ひろ)がれる
あな擴(ひろ)げたりこと/″\く
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
環(わ)になれ擴(ひろ)がれ
赤い旗 (旧字旧仮名) / 槙本楠郎(著)
さうして自分(じぶん)の天地(てんち)に其(その)羽(はね)を一杯(ぱい)に擴(ひろ)げる。何處(どこ)を見(み)ても只(たゞ)深(ふか)い緑(みどり)に鎖(とざ)された林(はやし)の中(なか)に彼等(かれら)は唄(うた)ふ聲(こゑ)に依(よ)つて互(たがひ)の所在(ありか)を知(し)つたり知(し)らせたりする。
土 (旧字旧仮名) / 長塚節(著)
腹を抱へて笑ひ出すと、その洞(うつ)ろな笑ひが、水を渡り闇を縫つて、ケラケラケラと川面一パイに擴(ひろ)がつて行きました。
それにあるこーる、えーてる等(とう)の如(ごと)く一時(いちじ)に燃(も)え擴(ひろ)がるものが近(ちか)くにあるとき、直(すぐ)に大事(だいじ)を惹起(ひきおこ)すに至(いた)ることが多(おほ)い。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
さて足駄(あしだ)を引摺(ひきず)つて、つい、四角(よつかど)へ出(で)て見(み)ると、南寄(みなみより)の方(はう)の空(そら)に濃(こ)い集團(しふだん)が控(ひか)へて、近(ちか)づくほど幅(はゞ)を擴(ひろ)げて、一面(いちめん)に群(むらが)りつゝ、北(きた)の方(かた)へ伸(の)すのである。
番茶話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
短歌(たんか)の出來(でき)るまでには、いろんな形(かたち)をとほつて來(き)てゐます。第一(だいゝち)に、世間(せけん)の人(ひと)は、短(みじか)い單純(たんじゆん)なものが初(はじ)めで、それが擴(ひろ)がつて、長(なが)い複雜(ふくざつ)なものとなるといふ考(かんが)へ方(かた)の、癖(くせ)を持(も)つてゐます。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
此所(こゝ)で水谷氏(みづたにし)と飯田氏(いひだし)とはすツかり懇意(こんい)に成(な)つて了(しま)つたので、今度(こんど)は僕(ぼく)の弟子(でし)を連(つ)れて來(き)ますから、一處(しよ)に發掘(はつくつ)しませうと、大採集袋(だいさいしふぶくろ)を擴(ひろ)げた結果(けつくわ)、七月(ぐわつ)十八日(にち)に水谷氏(みづたにし)は余(よ)と高橋佛骨氏(たかはしぶつこつし)と
眞紅な花が咲き擴(ひろ)がつた。
樹木とその葉:11 夏の寂寥 (旧字旧仮名) / 若山牧水(著)
尾羽(をば)を擴(ひろ)げて立(た)てるなり
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
兩國橋を中心に、大川の水の上にくり擴(ひろ)げられた夏の夜の大歡樂の中を、龜澤町の家主里見屋吉兵衞の凉み船は、上手へ、上手へと漕いで行きました。
さうして地震(ぢしん)が大(おほ)きければ大(おほ)きい程(ほど)地震波(ぢくんぱ)も大(おほ)きいので、これが地球(ちきゆう)の表面(ひようめん)を沿(そ)うて四方八方(しほうはつぽう)に擴(ひろ)がり、或(あるひ)は地球(ちきゆう)を一廻(ひとまは)りも二廻(ふたまは)りもすることもあるが
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
尾(を)と頭(あたま)を以(も)つて撃(う)つた炎(ほのほ)の大蛇(おろち)は、黒蛇(くろへび)に變(へん)じて剩(あまつさ)へ胴中(どうなか)を蜿(うね)らして家々(いへ/\)を卷(ま)きはじめたのである。それから更(さら)に燃(も)え續(つゞ)け、焚(や)け擴(ひろ)がりつゝ舐(な)め近(ちか)づく。
露宿 (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
暫(しばら)くして短(みじか)い日(ひ)が傾(かたむ)いた。社(やしろ)の森(もり)を包(つゝ)んで時雨(しぐれ)の雲(くも)が東(ひがし)の空(そら)一杯(ぱい)に擴(ひろ)がつた。濃厚(のうこう)な鼠色(ねずみいろ)の雲(くも)は凄(すご)く人(ひと)に迫(せま)つて來(く)るやうで、然(しか)もくつきりと森(もり)を浮(う)かした。
土 (旧字旧仮名) / 長塚節(著)
なんだかはじめての方(かた)には、外國語(がいこくご)でも聞(き)いてゐる感(かん)じがするかも知(し)れません。印南野(いなびぬ)といふのは、播州(ばんしゆう)の海岸(かいがん)に廣(ひろ)く亙(わた)つた地名(ちめい)で、加古川(かこがは)を中心(ちゆうしん)として、印南郡(いなぐん)、加古郡(かこぐん)に擴(ひろ)がつてゐます。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
尾羽(をば)擴(ひろ)ぐるよあなや今(いま)
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
怪盜風太郎と言ふのは、若くて美しい女ださうだ——といふ噂は、その日のうちに江戸中に擴(ひろ)がつてしまひました。
で、庭(には)が尖(とが)つて、あとが座敷(ざしき)つゞきに、むかうへすつと擴(ひろ)がつた工合(ぐあひ)が、友禪切(いうぜんぎれ)の衽前(おくみさき)と言(い)ふ體(てい)がある。
飯坂ゆき (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
即(すなは)ちその直徑(ちよつけい)は東西(とうざい)四里(より)南北(なんぼく)五里(ごり)に及(およ)び、こゝに阿蘇(あそ)一郡(いちぐん)四萬(しまん)の人(ひと)が住(す)まつてゐる。但(たゞ)し噴火(ふんか)はこの火口(かこう)全體(ぜんたい)から起(おこ)つたのではなく、周圍(しゆうい)の土地(とち)の陷沒(かんぼつ)によつて斯(か)く擴(ひろ)がつたものだといふ。
火山の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
半面紅(あけ)に染んだ顏は、恐ろしい苦痛に引吊つて、クワツと見開いた眼には次第に死の影が擴(ひろ)がるのです。
と、恁(か)う言(い)ひます内(うち)にも、其(そ)の沼(ぬま)が伸(の)びたり縮(ちゞ)んだり、すぼまつたり、擴(ひろ)がつたり、動(うご)いて居(ゐ)るやうでせう。——居(ゐ)ますか、結構(けつこう)です——其(そ)のつもりでお聞(き)き下(くだ)さい。
人魚の祠 (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
岩漿(がんしよう)は非常(ひじよう)な高(たか)い熱(ねつ)と壓力(あつりよく)との下(もと)に極(きは)めて多量(たりよう)の水(みづ)を含有(がんゆう)することが出來(でき)るから、外界(がいかい)に現(あらは)れて來(き)た鎔岩(ようがん)は多量(たりよう)の蒸氣(じようき)を吐(は)くのである。この蒸氣(じようき)の擴(ひろ)がる力(ちから)が火山(かざん)の爆發力(ばくはつりよく)となるのである。
火山の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
と紅筆(べにふで)の戀歌(こひか)、移香(うつりが)の芬(ぷん)とする懷紙(くわいし)を恭(うや/\)しく擴(ひろ)げて、人々(ひと/″\)へ思入(おもひいれ)十分(じふぶん)に見(み)せびらかした。
片しぐれ (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
「どんな風に? 疊んだまゝか、それとも擴(ひろ)げて何か載せて——」
茶(ちや)の鳥打(とりうち)をずぼりと深(ふか)く、身(み)の丈(たけ)を上(うへ)から押込(おしこ)んだ體(てい)に被(かぶ)つたのでさへ、見上(みあ)げるばかり脊(せ)が高(たか)い。茶羅紗(ちやらしや)霜降(しもふり)の大外套(おほぐわいたう)を、風(かぜ)に向(むか)つた蓑(みの)よりも擴(ひろ)く裾(すそ)一杯(いつぱい)に着(き)て、赤革(あかゞは)の靴(くつ)を穿(は)いた。
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
鍋鑄掛が一とわたり濟んで、空地に擴(ひろ)げた店を
合(あは)せ目(め)を細目(ほそめ)に開(あ)けて、其處(そこ)に立(た)つて、背後(うしろ)に、月(つき)の影(かげ)さへ屆(とゞ)かぬ、山(やま)又(また)山(やま)の谷々(たに/″\)を、蜘蛛(くも)の圍(い)の如(ごと)く控(ひか)へた、星(ほし)に屆(とゞ)く黒(くろ)き洞穴(ほらあな)の如(ごと)き大(おほい)なる暗闇(くらがり)を翼(つばさ)に擴(ひろ)げて、姿(すがた)は細(ほそ)き障子(しやうじ)の立棧(たちざん)。
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
八五郎は大手を擴(ひろ)げて立塞がりました。
立處(たちどころ)其(そ)の手足(てあし)を炙(あぶ)るべく、炎々(えん/\)たる炭火(すみび)を熾(おこ)して、やがて、猛獸(まうじう)を拒(ふせ)ぐ用意(ようい)の、山刀(やまがたな)と斧(をの)を揮(ふる)つて、あはや、其(その)胸(むね)を開(ひら)かむとなしたる處(ところ)へ、神(かみ)の御手(みて)の翼(つばさ)を擴(ひろ)げて、其(その)膝(ひざ)、其(その)手(て)、其(その)肩(かた)、其(その)脛(はぎ)
雪の翼 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
此(これ)が禁厭(まじなひ)に成(な)るのと見(み)えます。窓(まど)を透(とほ)して手(て)のやうに擴(ひろ)がります、其(そ)の黒雲(くろくも)が、じり/\と來(き)ては、引返(ひきかへ)し、じり/\と來(き)ては、引返(ひきかへ)し、仙人(せんにん)の背(せ)は波打(なみう)つやうに、進退(かけひき)するのが見(み)えました。
みつ柏 (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
禪師(ぜんじ)、斬(き)られたる其(そ)の首(くび)を我手(わがて)に張子(はりこ)の面(めん)の如(ごと)く捧(さゝ)げて、チヨンと、わけもなしに項(うなじ)のよき處(ところ)に乘(の)せて、大手(おほで)を擴(ひろ)げ、逃(に)ぐる數十(すうじふ)の賊(ぞく)を追(お)うて健(すこやか)なること鷲(わし)の如(ごと)し。尋(つい)で瘡(きず)癒(い)えて死(し)せずと云(い)ふ。
唐模様 (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
「小母(をば)さん頂戴(ちやうだい)な」「其蟲(そのむし)頂戴(ちやうだい)な」と聞(き)くうちに、蟲(むし)は、美(うつく)しい羽(はね)も擴(ひろ)げず、靜(しづ)かに、鷹揚(おうやう)に、そして輕(かる)く縱(たて)に姿(すがた)を捌(さば)いて、水馬(みづすまし)が細波(さゝなみ)を駈(かけ)る如(ごと)く、ツツツと涼傘(ひがさ)を、上(うへ)へ梭投(ひな)げに衝(つ)くと思(おも)ふと
番茶話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
渇(かわ)くのは尚(な)ほ辛(つら)くつて、雨(あめ)のない日(ひ)の續(つゞ)く時(とき)は帆布(ほぬの)を擴(ひろ)げて、夜露(よつゆ)を受(う)けて、皆(みんな)が口(くち)をつけて吸(す)つたんだつて——大概(たいがい)唇(くちびる)は破(やぶ)れて血(ち)が出(で)て、——助(たす)かつた此(こ)の話(はなし)の孫一(まごいち)は、餘(あんま)り激(はげ)しく吸(す)つたため
印度更紗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)