をんな)” の例文
はて、なんだ、とおもひながら、こゑけようとして、ひとしはぶきをすると、これはじめて心着こゝろづいたらしく、あらをんなかほげた。
みつ柏 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
そはもし衣にだにもさはらばいえんとおもへばなりイエスふりかへりをんなを見て曰けるはむすめよ心安かれ爾の信仰なんぢを愈せり即ち婦この時よりいゆ
忘れがたみ (新字新仮名) / 原民喜(著)
ふたゝび荊棘けいきよくえだとり香花かうくわ神前しんぜんさしはさみくうず。次にあつま各童わらべども手に木刀をとりみち隊閙たいだうしすべて有婚こんれいして无子こなきをんな木刀をもつ遍身へんしん打之これをうち口に荷花蘭蜜こばらみとなふ。
をんなは家に帰つて、いそいそ箱をけてみると、なかから転がり出したのは、薬では無くつて金貨かねであつた。包紙つゝみがみには詩人の
「うむ、それは心配だらう。能く有る事だ。然し、飯も食はずに気をんでゐるとは、どう云ふつれなのかな。——年寄としよりか、をんなででもあるか」
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
掛軸からぬけ出したやうに、歌麿式の凄艶な容姿のをんながやつて来て、蚊遣香をつぎ足したので、又ひとしきり、仏臭い匂があたりに強く流れた。
薄暮の貌 (新字旧仮名) / 飯田蛇笏(著)
畫題ぐわだいは『自然しぜんこゝろ』と謂ツて、ちらしがみ素裸すつぱだかわかをんなが、新緑しんりよく雑木林ざふきばやしかこはれたいづみかたはらに立ツて、自分のかげ水面すゐめんに映ツてゐるのをみまもツてゐるところだ。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
案じ夏とて谷間に雪あるにをとこ單衣ひとへぎぬにてのぼられぬ梢のしづくいはほしたゝり何とてそれにてしのがれんあはせを贈りまゐらせたやとの情の孤閨を守るをんなが夫が遠征の先へ新衣を
木曽道中記 (旧字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
夕飯を終へてから、翁媼をうあうも、をんなも孫も、みんな、深く積つた雪がかんかんと氷る道を踏んでその人形芝居を見に行つた。時にはひどい吹雪の夜のことなどもあつた。
念珠集 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
ドクトル、アンドレイ、エヒミチはベローワとをんな小汚こぎたないいへの一りることになつた。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
しかもこれはをんなはうから種々しゆ/″\問題もんだい持出もちだしてるやうだそして多少いくらうるさいといふ氣味きみをとこはそれに説明せつめいあたへてたが隨分ずゐぶん丁寧ていねいものけつして『ハア』『そう』のではない。
湯ヶ原ゆき (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
併し、彼の妻は、暑さをさほどには感じなかつた。併し、彼の妻から暑さを防いだものは、その頭の上の紫陽花あぢさゐ色に紫陽花の刺繍ししゆうのあるパラソル——貧しいをんなの天蓋——ではなかつた。
鎮火と聞いていづれも胸を安めたやうなものの、かう毎晩の様に火事があつては、とても安閑として生活して居られぬといふそは/\した不安の情が村一体に満ち渡つて、家々の角には、をんなやら
重右衛門の最後 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
前掛ばかり白いをんなのひとは
女中 (新字旧仮名) / 石川善助(著)
あめのつれ/″\に、ほとけをしへてのたまはく、むかしそれくに一婦いつぷありてぢよめり。をんなあたか弱竹なよたけごとくにして、うまれしむすめたまごとし。
妙齢 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
ふたゝび荊棘けいきよくえだとり香花かうくわ神前しんぜんさしはさみくうず。次にあつま各童わらべども手に木刀をとりみち隊閙たいだうしすべて有婚こんれいして无子こなきをんな木刀をもつ遍身へんしん打之これをうち口に荷花蘭蜜こばらみとなふ。
をんなの徳をさへかでこの嬋娟あでやかに生れ得て、しかもこの富めるにへる、天のめぐみと世のさちとをあはけて、残るかた無き果報のかくもいみじき人もあるものか。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
たい日本にほんをんなの足とたら、周三所謂いはゆる大根だいこんで、不恰好ぶかつかうみぢかいけれども、お房の足はすツと長い、したがツてせいたかかツたが、と謂ツて不態ぶざま大柄おほがらではなかツた。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
お人好しの詩人は、それを聞くと狼狽うろたへ出した。をんなを引張るやうにして、そのうちへ駈けつけてみると、病人は乾魚ひうをのやうに痩せた身体からだを床の中によこたへてゐた。詩人は脈を取つてみた。
とせい/\、かたゆすぶると、ひゞきか、ふるへながら、をんな真黒まつくろかみなかに、大理石だいりせきのやうなしろかほ押据おしすえて、前途ゆくさきたゞじつみまもる。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
されば風早學士が、解剖臺に据ゑられた屍體に對する態度と謂ツたら、冷々たるもので、其が肉付の好い若いをんなであツても、また皺だらけの老夫であツても、其樣な事には頓と頓着せぬ。
解剖室 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
ある時、見すぼらしい姿をしたをんなが一人駈け込んで来た。
かならず此をんな当年このとしはらみ男をうむ
うですね、年少としわか田舍ゐなか大盡だいじんが、相場さうばかゝつて失敗しつぱいでもしたか、をんな引掛ひつかゝつてひど費消つかひぎた……とでもふのかとえる樣子やうすです。
艶書 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
流の彼方あツち此方こツちで、うかすると燦爛たる光を放つ……霧は淡い雲のやうになツて川面を這ふ……向ふの岸に若いをんなが水際に下り立ツて洗濯をしてゐたが、正面まともに日光を受けて、着物をしぼしづく
解剖室 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
かならず此をんな当年このとしはらみ男をうむ
だんちるやうにりたときくろ狐格子きつねがうし背後うしろにして、をんな斜違はすつかひ其處そこつたが、足許あしもとに、やあのむくぢやらの三俵法師さんだらぼふしだ。
人魚の祠 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
何んだか醜いをんな白粉おしろいが剥げたやうな心地こゝちもする。
解剖室 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
濡色ぬれいろふくんだあけぼのかすみなかから、姿すがたふりもしつとりとしたをんなかたに、片手かたて引担ひつかつぐやうにして、一人ひとり青年わかものがとぼ/\とあらはれた。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
……をんなは、薄色縮緬うすいろちりめん紋着もんつき單羽織ひとへばおりを、ほつそり、やせぎすな撫肩なでがたにすらりとた、ひぢけて、桔梗色ききやういろ風呂敷包ふろしきづつみひとつた。
艶書 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
(ひい。)とをんなこゑさぎ舞上まひあがりました。つばさかぜに、はなのさら/\とみだるゝのが、をんな手足てあしうねらして、もがくに宛然さながらである。
人魚の祠 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
いや/\、けつして貴下方あなたがた御辛抱ごしんばうなさるにはおよばん。辛抱しんばうをするのはおうらだ、可哀想かあいさうをんなだ。我慢がまんをしてくれ、おうらうでたしかだ。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
つぎをんなは、こしからかげつち吸込すひこまれさうに、悄乎しよんぼりこしをなやしてしやがむ……びんのはづれへ、ひよろりとつゑさきけてあをい。
三人の盲の話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
牛屋うしや手間取てまとり牛切ぎうきりのわかいもの、一婦いつぷめとる、とふのがはじまり。やつ女房にようばうにありついたはつけものであるが、をんな奇醜きしう)とある。
鑑定 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
まへとほけるばかりで、身體からだすくみます。歩行あるけなくつたところを、つかまつたらうしませう……わたしんでしまひますよ……をんなよわいものですねえ。
艶書 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ところがだあ、へゝゝ、ばんからおまへあかりくらくすると、ふつとをんな身體からだ月明つきあかりがさしたやうにつて、第一だいいちな、いろ眞白まつしろるのに、さめるだ。
鑑定 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
あゝ、あのやなぎに、うつくしにじわたる、とると、薄靄うすもやに、なかわかれて、みつつにれて、友染いうぜんに、鹿しぼり菖蒲あやめけた、派手はですゞしいよそほひをんなが三にん
人魚の祠 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ようた、お前樣まへさまおなことで、をんなにあひゞきにまゐるので、此處こゝを、さかを、矢張やはり、むかつてしたから、うか/\とあがりかけたのでありました。
三人の盲の話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
やつとのおもひ、念力ねんりきで、をんなましたときは、絹絲きぬいとも、むれて、ほろ/\とれてえさうに、なよ/\として、たゞうつむいてたのであります。
三人の盲の話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
あかりのついた、お附合つきあひとなりまどから、いはさんの安否あんぴかうとしでもしたのであらう。格子かうしをあけたをんながあつたが、なんにも女房にようばうにはきこえない。……
夜釣 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
貴方あなた、おをおください。家内かないとは一方ひとかたならぬ。」とひかけていやかほもしないが、をんな兩方りやうはう見較みくらべながら
みつ柏 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
これ船中せんちうはなしたがね、船頭せんどうはじめ——白癡たはけめ、をんなさそはれて、駈落かけおち眞似まねがしたいのか——で、ふねひとぐるみ、うして奈落ならくさかさま落込おちこんだんです。
印度更紗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
をんなたちはうらんだ。が、結句けつくこれがためにいきほひづいて、茣蓙ござ縁臺えんだい引摺ひきずり/\、とにかく黒塀くろべいについて、折曲をりまがつて、我家々々わがや/\むかうまでつてかへこと出來できた。
露宿 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
重詰ぢうづめ中味なかみのまゝつてかへことはない、とおもつたが、成程なるほどわたし家内かないだつて、つらはどうでも、かみつたをんなが、「めしあがれ。」とその火事場くわじばなか
火の用心の事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
なにうたぐつてところで、のもののひぶりが、べつひとがあつて、をんな對向さしむかひで樣子やうすにはおもはれないので
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
自分じぶんゆる色男いろをとこが、おもひをかけてとゞかぬをんなを、うしてひとほこすべ隨分ずゐぶんかぞれないほどあるのである。
二た面 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
さくらのわくらのぱら/\とちかゝるにさへ、をんなこゑて、をとこはひやりときもひやしてるのであつた。
露宿 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
元二げんじじゆんさかづき𢌞まはつてとき自分じぶん國許くにもとことりて仔細しさいあつて、しのわかものが庄屋しやうや屋敷やしき奉公ほうこうして、つま不義ふぎをする、なかだちは、をんな寵愛ちようあいねこ
二た面 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
黒塀くろべいの、溝端どぶばた茣蓙ござへ、つかれたやうに、ほつと、くのひざをついて、婦連をんなれんがいたはつてんでした、ぬるまで、かるむねをさすつた。そのをんな風情ふぜいなまめかしい。
露宿 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
たゞなかにも、はじめてうれしさをりましたのは、わたしたちをんななが黒髮くろかみです……しろまくらながれるやうにかゝりましたのが、自分じぶんながら冷々ひや/\と、こほりばしていたやうで
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)