うみ)” の例文
四国しこくしまわたって、うみばたのむら托鉢たくはつしてあるいているうちに、ある日いつどこでみち間違まちがえたか、山の中へまよんでしまいました。
人馬 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
ちょうどひるごろでありました。おとうとが、そとから、だれかともだちに、「うみぼたる」だといって、一ぴきおおきなほたるをもらってきました。
海ぼたる (新字新仮名) / 小川未明(著)
そらくもくした! うすかげうへを、うみうへう、たちままたあかるくなる、此時このときぼくけつして自分じぶん不幸ふしあはせをとことはおもはなかつた。
湯ヶ原より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
たとへば、淡路あはぢ和泉いづみあひだうみは、古來こらい茅渟ちぬうみせうたつたのを、今日こんにちはこの名稱めいせうばないで和泉洋いづみなだまたは大阪灣おほさかわんせうしてゐる。
国語尊重 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
泥濘ぬかるみ捏返こねかへしたのが、のまゝからいて、うみ荒磯あらいそつたところに、硫黄ゆわうこしけて、暑苦あつくるしいくろかたちしやがんでるんですが。
艶書 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
そしてもなく、わたくし住宅すまいとして、うみから二三ちょう引込ひっこんだ、小高こだかおかに、土塀どべいをめぐらした、ささやかな隠宅いんたくててくださいました。
したるとおどろほどくびながくなつてて、まるでそれは、はる眼下がんかよこたはれる深緑しんりよくうみからくきのやうにえました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
ぐうせしことはなはだあつし小千谷をぢや北越ほくゑつ一市会いつしくわい商家しやうか鱗次りんじとして百物そなはらざることなし。うみる事わづかに七里ゆゑに魚類ぎよるゐとぼしからず。
そのあやしい、うみうへではよく眩惑ごまかされます、貴下あなた屹度きつと流星りうせいぶのでもたのでせう。』とビールだるのやうなはら突出つきだして
不思議なのは、雷狩をした年の夏は、屹度きつと雷鳴かみなりが少いといふ事だ。この雷狩は山や野原でするばかりでなく、またうみぱたでもやる。
日本にっぽんとロシヤが、うみこうでたたかいをはじめていました。海蔵かいぞうさんはうみをわたって、そのたたかいのなかにはいってくのでありました。
牛をつないだ椿の木 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
またその反對はんたいにデンマルクなどのように、うみ陸地りくちををかしてたので、今日こんにちでは海中かいちゆう貝塚かひづかひたつてゐるところもあります。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
そして彼等かれらは、その立派りっぱつばさひろげて、このさむくにからもっとあたたかくにへとうみわたってんでときは、みんな不思議ふしぎこえくのでした。
和歌わかうらしほがさしてると、遠淺とほあさうみ干潟ひがたがなくなるために、ずっと海岸かいがんちかくにあしえてゐるところをめがけて、つるいてわたつてる。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
おなじく、ふかひゞのはいつた肉體からだをもつてゐるわたしは、これからうみかうとしてゐたので、一つはしばらく先生せんせいにもおかゝれまいとおもつて。
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
「じゃ大胆に『危難きなんうみ』の南にそびえるコンドルセに着陸しよう。皆、防寒具ぼうかんぐに酸素吸入器きゅうにゅうきを背負うことを忘れないように。……では着陸用意!」
月世界探険記 (新字新仮名) / 海野十三(著)
つぎにんおもてとほいろながうみながめた。まつみきからやに空氣くうきつた。ふゆみじかそら赤裸々せきらゝ横切よこぎつて大人おとなしく西にしちた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
此陸界このりくかい水界中すいかいちゆうおいとくふかうみ部分ぶぶんとは、土地とち構造こうぞうとく其地震學上そのぢしんがくじようから性質せいしつおいなりな相違そういがある。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
「これもいまとなつてみれば、んでもない。ふねからうみてようかとおもつたけれど、到頭たうとうまた日本にほんつてかへつた。」
彼女の周囲 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
この谷の尽きたところにうみくち村がある。何となく川の音も耳について来た。暮れてから、私達はその村へ入った。
千曲川のスケッチ (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
にがい、みぐるしい案内者あんないじゃよ! やい、命知いのちしらずの舵手かんどりよ、くるしいうみつかれたこの小船こぶねを、はや巖礁角いはかど乘上のりあげてくれ!……さ、戀人こひゞとに!(と飮む)。
また一説いつせつには、その丸木橋まるきばしいま熊本くまもとあたりから、有明ありあけうみわたつて肥前國ひぜんのくに温泉岳うんぜんだけまでかゝつてゐたともひます。おそろしいおほきなではありませんか。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
うみに出るといふ私の衝動は失綜し、あしをなほ進めて行く事に何かしらんはにかみたい樣な意識が湧いて來た。
地方主義篇:(散文詩) (旧字旧仮名) / 福士幸次郎(著)
また問ひたまはく「汝はうみを知れりや」と問はしければ、答へて曰はく、「能く知れり」とまをしき。
私の二人の古い友達が、うみのあなたにわたつて、長く歸らないことが、堪らなくさびしくなつたのだつた。
あるとき (旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
もう一つのは、「我妹子に淡海あふみうみの、沖つ浪来寄す浜辺を、くれぐれと独ぞ我が来し、妹が目を欲り」
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
流石さすがありそうみのおきてまたりてつながめにかねど吐息といきされて八重やへはマアなんおもふぞとひとことば
五月雨 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
地球ちきゆうからえる火星くわせいくろいところは、だからうみといふよりもぬまか ちいさなぬまあつまったのか、かわだ。)
これを過ぐれば左ににおうみ蒼くして漣漪水色縮緬ちりめんを延べたらんごとく、遠山糢糊もことして水の果ても見えず。左に近く大津の町つらなりて、三井寺みいでら木立に見えかくれす。
東上記 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
ねこ姿すがたえないので障子せうじけた、うみからくるかぜには木立こだちふるはれて爽味さうみをもつてくる。
ねこ (旧字旧仮名) / 北村兼子(著)
うみ投込なげこみかへりしゆゑ此事知る者なかりしがもとより同氣相求あひもとむる者ども故是より折々は出會いであひけるに兩人とも三吉に金子を多くとられしかば勝手向かつてむき不如意ふによいになりしより今一度大稼おほかせぎを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
そして、いままでその背景はいけいをなしてゐたそらは、そのあをさは、刻々こく/\ひかりうみしつゝあつた。
日の光を浴びて (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
それに、ペリーがきてからは、日本国にっぽんこくじゅうで、うみのまもりや、りくしろづくりのはなしおおさわぎをしているときでしたから、諭吉ゆきちは、いっそうこのほんをよんでみたくなりました。
〔ヱヴェレストはおもつたよりとほいな〕と独言ひとりごとしながら四辺あたり見廻みまはすと、うすひかりうつくしくあやしくみなぎつて、夕暮ゆふぐれちかくなつたのだらう。下界したても、くもきりでまるでうみのやうだ。
火を喰つた鴉 (新字旧仮名) / 逸見猶吉(著)
油を流したようなうみに、おなじへだたりがふたつの船のあいだに何日となくつづいた。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
けれども商売が如何いかに繁昌するも、産業がなにほど隆盛に趣くも、はたまた個人の所得如何にゆたかに、国庫の歳入が幾ら充溢するも、更にまた鉄艦てっかんうみおおうも、貔貅ひきゅうに満つるも
国民教育の複本位 (新字新仮名) / 大隈重信(著)
わたし病氣びやうきして海岸かいがんかなかつたならば海岸かいがんつて宿やどまどから、うみはうてゐなかつたならば——、彼女かれ末男すゑを夫婦ふうふにならずに、らずのひととしてをはつたかもしれない。
追憶 (旧字旧仮名) / 素木しづ(著)
大串おほくしから續いた館大寶たてだいはうは、西は平沼ひらぬま(後の大寶沼だいはうぬま)東は鳥波とばうみに挾まれて、唯「しま」と呼ばれた頃らしい、黒鳥くろとりなにがしの築いた城は島の城と呼ばれたといふ口碑つたへはあるけれど
筑波ねのほとり (旧字旧仮名) / 横瀬夜雨(著)
かぜはなかつた。空氣くうきみづのやうにおもしづんでゐた。人家じんかも、燈灯ともしびも、はたけも、もりも、かはも、をかも、そしてあるいてゐる我我われわれからだも、はひとかしたやうな夜霧よぎりうみつつまれてゐるのであつた。
一兵卒と銃 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
草色くさいろ薔薇ばらの花、海の色の薔薇ばらの花、ああうみのあやしい妖女シレエヌほぞ草色くさいろ薔薇ばらの花、波に漂ふ不思議な珠玉しゆぎよく、指が一寸ちつとさはると、おまへは唯の水になつてしまふ、僞善ぎぜんの花よ、無言むごんの花よ。
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
四十ばかりのをとこでした、あたまには浅黄あさぎのヅキンをかぶり、には墨染すみぞめのキモノをつけ、あしもカウカケにつヽんでゐました、そのは、とほくにあをうみをおもはせるやうにかヾやいてゐました。
桜さく島:見知らぬ世界 (新字旧仮名) / 竹久夢二(著)
右大臣うだいじんちかねて、自分じぶんでもとほうみして、たつつけ次第しだい矢先やさきにかけて射落いおとさうとおもつてゐるうちに、九州きゆうしうほうながされて、はげしい雷雨らいうたれ、そののち明石あかしはまかへされ
竹取物語 (旧字旧仮名) / 和田万吉(著)
況んや百川ひやくせんうみを學んでうみに至るであるからして、其の志さへ失はないで、一蹶しても二躓しても、三顛四倒しても、起上り/\して敢て進んだならば、鈍駑も奮迅すれば豈寸進無からんやである。
努力論 (旧字旧仮名) / 幸田露伴(著)
六月中、うみかわいけのほとりに、水の神をまつるしきたりはあるか。
年中行事覚書 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
大野おほののみなみ、菜の花の黄金こがねうみ
第二邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
うみれば扁舟へんしうさをさすにたり
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
うみのようにふかかった。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
瑪瑙めなううみゆく孔雀船くじやくぶね
春鳥集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
朝日あさひかがよううみ
横浜市歌 (新字新仮名) / 森林太郎(著)
おもひはし西にしうみ
寡婦の除夜 (新字旧仮名) / 内村鑑三(著)