よわ)” の例文
女房かみさんは、よわつちやつた。可恐おそろしくおもいんです。が、たれないといふのはくやしいてんで、それにされるやうにして、またひよろ/\。
廓そだち (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「そんなよわいことでどうするんですか。わたしたちは、よくあなたにいかけられたものです。あの時分じぶん元気げんきしてください。」
木の上と下の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
看護かんごひとつかれぬ、雪子ゆきこよわりぬ、きのふも植村うゑむらひしとひ、今日けふ植村うゑむらひたりとふ、かはひとへだてゝ姿すがたるばかり
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
為朝ためともすじかれてゆみすこよわくなりましたが、ひじがのびたので、まえよりもかえってながることができるようになりました。
鎮西八郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
さて最初さいしょ地上ちじょううまでた一人ひとり幼児おさなご——無論むろんそれはちからよわく、智慧ちえもとぼしく、そのままで無事ぶじ生長せいちょうはずはございませぬ。
わたしこゝろむかへなければならなかつた……それはちからよわふゆだからだらうか? いや! どうして彼女かのぢよちからあなどこと出來できよう。
日の光を浴びて (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
われ/\は最初さいしよよわ部分ぶぶん初期微動しよきびどうづけ、中頃なかごろつよ部分ぶぶん主要動しゆようどうあるひ主要部しゆようぶをはりのよわ部分ぶぶん終期部しゆうきぶづけてゐる。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
たいわたし幼少ちひさ時分じぶんには、ごくよわかつたものですから、この白狐しろぎつねはこれでもそだつかしら、とみんなはれたくらゐださうです。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
あれっきりきゃく部屋へやにはよりつく人もない。おかみさんは朝食ちょうしょくをもってゆかなかった。きっと客は、はらをすかせてよわりきっているのだろう。
わづらひ漸く全快はなしたれども足腰あしこしよわ歩行事あゆむことかなはず日々身代に苦勞なすと雖種々しゆ/″\物入ものいりかさみ五年程に地面も賣拂うりはらひ是非なく身上を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
絶えず束縛され——無理ひに生得せいとくの性質の火を絶えずよわめさせられて、その焔が内に向ふにまかせ生命を刻々こく/\に嘗め盡すとも
「おめえ、さういに自分じぶんとこれえばかしかねえでせな」とよわものところさかづきあつめてこまるのをようとさへするやうつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
堂堂どうどう遠慮えんりよなくあらそつべく、よわき者やぶるる者がドシドシ蹴落けおとされて行く事に感傷的かんせうてき憐憫れんびんなどそゝぐべきでもあるまい。
けれども人形は一こうきませんでした。さあ甚兵衛はよわってしまいました。でも一いいだしたことですから、いまさら取消とりけすわけにはゆきません。
人形使い (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
「それだからね、はねよわいものやからだ壯健たつしやでないものは、みんな途中とちうで、かわいさうにうみちてんでしまふのよ」
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
そしてえず其の考に小突こづかかれるのであるから、神經は次第にひよわとなツて、ほゝの肉はける、顏の色は蒼白あをじろくなる
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
そうしてよわひとたちをおいてきぼりにします。ですが、このおはなしがどうなるか、おしまいまできいていらっしゃい。
母の話 (新字新仮名) / アナトール・フランス(著)
突然とつぜんくらいなかで、ゴットフリートがうたいだした。むねの中でひびくようなおぼろなよわこえだった。少しはなれてたら、きとれなかったかも知れない。
ジャン・クリストフ (新字新仮名) / ロマン・ロラン(著)
一人ひとり張飛ちやうひやせよわくなつたやうな中老ちゆうらう人物じんぶつ一人ひとり關羽くわんう鬚髯ひげおとして退隱たいゝんしたやうな中老ちゆうらう以上いじやう人物じんぶつ
湯ヶ原ゆき (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
こう考えたときニールスは、またもや、じぶんがちっぽけでよわい者になっていることをすっかり忘れていました。
『そればかりか、少年せうねん活溌くわつぱつことツたらはなしになりませんよ。獅子狩しゝがりもやります、相撲すまふります。よわ水兵すいへいなんかはかされます。』とかれ至極しごく眞面目まじめ
へやなかはたゞ薄暗うすぐららされてゐた。そのよわひかりは、如何いか大字だいじ書物しよもつをも披見ひけんせしめぬ程度ていどのものであつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
現時げんじひとよりうらやまるゝほど健康けんかうたもれども、壯年さうねんころまでは體質たいしついたつてよわく、頭痛づつうなやまされ、み、しば/\風邪ふうじやをかされ、えずやまひためくるしめり。
命の鍛錬 (旧字旧仮名) / 関寛(著)
あをみづうへには、三十石船さんじつこくぶねがゆつたりとうかんで、れた冬空ふゆぞらよわ日光につくわうを、ともからみよしへいツぱいにけてゐた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
つまりうさぎ外敵がいてきよわ動物どうぶつですから、ふゆゆきつて野山のやま眞白まつしろになれば自分じぶんのからだをもおなじようにしろくしてほかから容易よういつからないようにするのです。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
まあすべてがその調子ちょうしでした。震災しんさい以来いらい身体からだよわためもあったでしょうが蒐集癖しゅうしゅうへき大分だいぶうすらいだようです。
夏目先生と滝田さん (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
さて手毬てまりの大さになりたる時他のわらべが作りたる玉栗たまくり庇下ひさししたなどにおかしめ、我が玉栗を以他の玉栗にうちあつる、つよき玉栗よわき玉栗をくだくをもつて勝負しようぶあらそふ。
此度このたびの難産のあと、奥方は身体からだがげつそりよわつて、耳も少し遠く成り、気性までが一変して陰気に成つた。
蓬生 (新字旧仮名) / 与謝野寛(著)
わたくしかんがへではこれそも/\生活せいくわつづくべきものだらうと。また有機體いうきたい下等かとうればけ、よりすくなものかんずるのでらうと、其故それゆゑによりよわ刺戟しげきこたへるのである。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
みちぱたひろげたとこを、ひょっとだれかにられたにゃァ、それこそ若旦那わかだんなよわいおせんは、どんなことになるか、れたもんじゃござんせん。野暮やぼ承知しょうちうえでござんす。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
加賀爪伝内の切ってはなった黒鷹くろたか石打羽いしうちは、まさしく、白鳥しらとりみね大鳥居おおとりいがくぶちにさっているのに、それにひきかえて蔦之助つたのすけ妻羽白つまはじろ弓勢ゆんぜいよわかったため
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
文句もんく色々いろ/\へて、あるひつよく、あるひよわく、あるひのゝしり、あるひはふざけ、種々樣々しゆ/″\さま/″\こといてやつた。中途ちうとへたたれてはまつたてき降伏かうふくするわけだから、れい持藥ぢやくのつもりで毎日まいにちいた。
ハガキ運動 (旧字旧仮名) / 堺利彦(著)
園内を歩くと、せみのヌケがら幾個いくつも落ちて居る。昨夜は室内で、小さなものゝ臨終りんじゅう呻吟うめきの様なかすかな鳴声なきごえを聞いたが、今朝けさ見ればオルガンの上によわりはてたスイッチョが居た。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
いもうと自分じぶんのしたことでございますから、あま露骨ろこつにはまうしませんですけれど、けこんでまゐりましたときの、かほいろといふのはございませんでした。いきれさうによわつてをりました。
彼女の周囲 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
「わしはこの仔牛こうしをあずけられたのだ。ところが、いまだに、りにないのでよわっているところだ。すまねえが、おまえら、わけして、あずけていった子供こどもさがしてくれねえか。」
花のき村と盗人たち (新字新仮名) / 新美南吉(著)
花車「ハ、逃げやアがったよわえ奴だ、サア案じはねえ、わしが送ってきましょう」
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
戯談じやうだんいふな。三千メートルのまつたゞなかだぞ。辛棒しんぼうしろ、よわいやつだ。』
火を喰つた鴉 (新字旧仮名) / 逸見猶吉(著)
あの強烈な電気に相当そうとうまいっているところへ、あの硝子のへつっかかったんで、二重のよわり目にたたり目で、沼の中へ落ちこんだまま、あがりも飛び上りも出来なくなったんですよ。
崩れる鬼影 (新字新仮名) / 海野十三(著)
そのとき、よわよわしく視線を落した山口の目が、ぼくの弁当にふれると、急にそれを滑りぬけて流れた。はっと、はじめてぼくはあることに気づいた。そうだ、彼はいつも昼食をたべてないのだ。
煙突 (新字新仮名) / 山川方夫(著)
次第しだいつかれ、くもよわりてうすき、いま
鬼桃太郎 (旧字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
おとなくくる白熱びやくねつただえんだつよわごころ
第二邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
サンタ麻利亞マリヤ、かくもよわかる罪人つみびとしんうしほ
有明集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
よわきを
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
さてはや、念佛ねんぶつ題目だいもく大聲おほごゑ鯨波ときこゑげてうなつてたが、やがてそれくやうによわつてしまふ。取亂とりみださぬもの一人ひとりもない。
旅僧 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
じめじめした、いやな天気てんきがつづきました。生活力せいかつりょくとぼしい金魚きんぎょは、みんなよわってんでしまったけれど、どじょうは元気げんきでした。
どじょうと金魚 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ぞくかみ申子もうしごよわいなどともうしますが、けっしてそのようなものではなく、この立派りっぱ成人せいじんして、父親ちちおや実家じっかあとぎました。
院長ゐんちやうなにがしなかだちをしたのだといふうはさもあつた。人々ひと/″\はたゞ彼女かのぢよよわをんなであるといふことのために、おほみゝおほうて彼女かのぢよゆるした。
(旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
だから横町よこてう野蕃漢じやがたら馬鹿ばかにされるのだとひかけてよわいをはづかしさうな顏色かほいろ何心なにごゝろなく美登利みどり見合みあはつまの可愛かわゆさ。
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
わしかなんぞなららないが、さぎのようなはねよわいものでは、せいぜい一か二ぐらいしかちからはないはずだ。
鎮西八郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
打まもり夫は又きこえぬおほせぞや御前に別れて外々ほか/\縁付えんづくやうな私ぢやない氣のよわい事を云ず共コレ父樣とゝさま何卒どうぞ九助が命乞いのちごひ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)