親子おやこ)” の例文
糟谷かすや次男じなん芳輔よしすけじょれい親子おやこ四人の家族かぞくであるが、その四人の生活が、いまの糟谷かすやはたらきでは、なかなかほねがおれるのであった。
老獣医 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
御寝所ごしんじょの下のへびかえるのふしぎも、あれら親子おやこ御所ごしょ役人やくにんのだれかとしめしわせて、わざわざれていたものかもれません。
葛の葉狐 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
勘次かんじ菜種油なたねあぶらのやうに櫟林くぬぎばやしあひせつしつゝ村落むら西端せいたん僻在へきざいして親子おやこにんたゞ凝結ぎようけつしたやうな状態じやうたいたもつて落付おちついるのである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
そうしたことは、そのだけでなかった。それからいくたびも、親子おやこが、こまっていたときに、むすめさんは、ぜにあたえてくれました。
街の幸福 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「それにちがいありません。ああ、親子おやこはあらそわれない、やっぱりわしにはなんとなく、虫の知らせがありましたに……」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
手荷物てにもつにしてのみゆかしき妻戀坂下つまこひざかした同朋町どうぼうちやうといふところ親子おやこ三人みたり雨露あめつゆしのぐばかりのいへりてからひざをばれたりけり
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
登時そのとき大岡忠相ぬし再度ふたゝび元益に向ひて云やう其方親子おやこは庄兵衞の殺されたるより其のかたきうつくれよと願ひ出たるをり武左衞門親子おやこの者はまさしく庄兵衞を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
宗助そうすけ一應いちおうへやうち見回みまはして、この親子おやこほかに、まだ一人ひとりめうをとこが、一番いちばん入口いりぐちちかところかしこまつてゐるのを見出みいだした。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
また石器時代せつきじだいのごときまだひらけない時代じだいでも、親子おやこ情愛じようあいといふものは今日こんにちかはりはなかつたのですから、幼兒ようじ死體したいでもけっしててゝはありません。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
色々いろ/\折檻せつかんもしてたが無駄むだなので親父おやぢ持餘もてあまし、つひにお寺樣てらさま相談さうだんした結極あげくかういふ親子おやこ問答もんだふになつた。
怠惰屋の弟子入り (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
親子おやこもしくは夫婦ふうふ僅少わづか手内職てないしよくむせぶもつらき細々ほそ/\けむりを立てゝ世が世であらばのたんはつそろ旧時きうじの作者が一場いつぢやうのヤマとする所にそろひしも今時こんじは小説演劇を
もゝはがき (新字旧仮名) / 斎藤緑雨(著)
儂等わしら親子おやこ三人の外に、女中が一人。阿爺おやじが天理教に凝って資産を無くし、母に死別れて八歳から農家の奉公に出て、今年二十歳だが碌にイロハも読めぬ女だ。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
竜宮界りゅうぐうかいうえ神様達かみさまたち御様子ごようすても、いつも夫婦ふうふ親子おやこ同棲どうせいしてられることはないようでございます。
いくら惡人あくにんでも、親子おやこじやうはまた格別かくべつへ、正直しやうじきなる亞尼アンニーは「一寸ちよつとで。」とそのをば、其邊そのへんちいさい料理屋れうりやれてつて、自分じぶんさびしい財嚢さいふかたむけて
これもまたシューベルトの天才の一面を語るもので、邪念のない美しさにほほませるだろう。「行進曲」は、ビクターにシュナーベル親子おやこの連奏で五曲入っている。
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)
私は親子おやこ相啣あいは兄妹けいまい相姦あいかんする獣類の生活をも少しもいたましくまた少しもいとわしく思っていない。
監獄署の裏 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
きやくわたしのほかに三人さんにんあつた。三人さんにんは、親子おやこづれで、こゝのツばかりの、かすり羽織はおりおな衣服きものおとなしらしいをとこ。——見習みならへ、やつこ、と背中せなかつゝいてりたいほどな、人柄ひとがらなもので。
松の葉 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
今にもその人とおなじくあるじのかへりたまはんもはかりがたし、雪頽なだれにうたれ給ふやうなる不覚人ふかくにんにはあらざるを、かの老奴おやぢめがいらざることをいひて親子おやこたちの心をくるしめたりといふに
親子おやこもろともいにました。
どんたく:絵入り小唄集 (新字旧仮名) / 竹久夢二(著)
のんき坊主ぼうづのへちまの親子おやこ
赤い旗 (旧字旧仮名) / 槙本楠郎(著)
母親ははおやは、手内職てないしょくをしたり、よそへやとわれていったりして親子おやこらしていた。おれは、小学校しょうがっこうをおえると、まち乾物屋かんぶつや奉公ほうこうされた。
さか立ち小僧さん (新字新仮名) / 小川未明(著)
先刻さつきもいふとほはらつべえが親子おやことなつてりやれ、えゝこともるもんだからなあ、さうはねえでそれ、わしげまかせて不承ふしようしさつせえね
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
よしや千萬里ばんりはなれるとも眞實まこと親子おやこ兄弟けうだいならば何時いつかへつてうといふたのしみもあれど、ほんの親切しんせつといふ一すぢいとにかヽつてなれば
経つくゑ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
くなったおじいさんにいたことがある。親子おやこからないうまは、二ひきはなしておいて、あいだくさけばいい。
姨捨山 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
出さば早速さつそくむかひに來る約束なるに三四年立ども一向に沙汰さたもなければ餘儀よぎなく吉三郎は人の周旋せわにて小商こあきなひなどして親子おやこやうやく其日をおくり江戸よりむかひの來るを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
するととき鎌倉かまくらのあるところに、能狂言のうきょうげんもようしがありまして、親子おやこにんれでその見物けんぶつ出掛でかけましたおり不図ふと間近まじかせき人品じんぴんいやしからぬ若者わかものかけました。
此女は愛をもつぱらにする時機が余り短かぎて、親子おやこの関係が容赦もなく、若いあたまうへを襲つてたのに、一種の無定を感じたのであつた。それは無論堅気かたぎの女ではなかつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
その秋の赤痢せきり流行りゅうこうのさい、親子おやこ五人ひとりものこらず赤痢せきりをやった。とうとう妻と子ども三人とはひと月ばかりのあいだに死亡しぼうし、花前は病院びょういんにあってそれを知らないくらいであった。
(新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
じつ矢叫やさけびごとながれおとも、春雨はるさめ密語さゝやきぞ、とく、温泉いでゆけむりのあたゝかい、山国やまぐにながらむらさきかすみ立籠たてこもねやを、すみれちたいけと見る、鴛鴦えんわうふすま寝物語ねものがたりに——主従しゆじう三世さんぜ親子おやこ一世いつせ
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
をつと蓑笠みのかさ稿脚衣わらはゞきすんべを穿はき晴天せいてんにもみのきるは雪中農夫のうふの常也)土産物みやげもの軽荷かるきにになひ、両親ふたおや暇乞いとまごひをなし夫婦ふうふたもとをつらね喜躍よろこびいさみ立出たちいでけり。正是これぞ親子おやこ一世いつせわかれ、のち悲歎なげきとはなりけり。
居眠姿ゐねむりすがたの、のんきな親子おやこ
赤い旗 (旧字旧仮名) / 槙本楠郎(著)
おんなこじきがつくってくれたくすりをつけると、ふしぎにいたみがうすらいで、そのばん親子おやこは、はじめて、もちよくねむりました。
空にわく金色の雲 (新字新仮名) / 小川未明(著)
すっかりかんしゃくをおこしてぷんぷんしながらげようとしますと、ひょっこり、親子おやこびききつねながいすすきのかげにかくれているのをつけました。
葛の葉狐 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
かまれて暖簾のれんはぢれゆゑぞもとたゞせば根分ねわけのきく親子おやこなからぬといふ道理だうりはなしよしらぬにせよるにせよそれは其方そなた御勝手ごかつてなり仇敵かたき
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
家督かとくとし近村よりおやすといふよめもら親子おやこ夫婦のなかもよくいとむつまじくかせぎけり斯てあに作藏は勘當の身と成しを後悔こうくわいをもせず江戸へ出で少しの知己しるべ便たよりて奉公の口を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
すべて修行場しゅぎょうばひとによりてめいめいちがう。家屋かおく内部なかかるるものもあれば、やまなかかるるものもある。親子おやこ夫婦ふうふ間柄あいだがらでも、一しょにはけっしてむものでない。
所が親爺おやぢの腹のなかでは、それが全く反対あべこべに解釈されて仕舞つた。なにをしやうと血肉けつにく親子おやこである。子がおやに対する天賦の情あひが、子を取扱ふ方法の如何に因つて変るはづがない。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
勘次等かんじら親子おやこなかよくつてよかんべ、世間せけんきこえも立派りつぱだあ、親身しんみのもなあ、おかげ肩身かたみひろくつてえゝや」おつたはには出口でぐちから一寸ちよつとかへりみていつた。さうしてさつさとつてしまつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
榮燿ええうくらすやに相見あひみさふらふ、さるにても下男げなん下女げぢよどもの主人しゆじんあしざまにまをし、蔭言かげごとまをさぬいへとてはさらになく、また親子おやこ夫婦ふうふ相親あひしたしみ、上下しやうか和睦わぼくして家内かない波風なみかぜなく、平和へいわ目出度めでたきところはまれさふらふ
十万石 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
いまごろは、あの親子おやことりはどこへいったろう。さだめしあたたかな土地とちへいって、ああして、たのしくさえずったり、びまわったりしているであろう。
春がくる前 (新字新仮名) / 小川未明(著)
親子おやこのいたいたしい様子ようすると、さすがの清盛きよもりどくおもって、そのねがいをきとどけてやりました。
牛若と弁慶 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
親子おやこ三人くちおも滿足まんぞくにはまれぬなかさけへとはくおまへ無茶助むちやすけになりなさんした、おぼんだといふに昨日きのふらも小僧こぞうには白玉しらたま一つこしらへてもべさせず
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
御母おつかさん、それぢや御父おとつさんにまないぢやありませんかと云ひさうな所で、急にアポロ抔を引合にして、呑気につて仕舞ふ。それでゐて顔付かほつき親子おやことも泣きしさうである。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
それは、親子おやこのからすのようにえました。やはりゆきのために、さがしにさとほうへやってきたのだとおもわれます。
二番めの娘 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「いったいうまなんぞをれててどうするつもりだろう。」とびくびくしながら、殿様とのさま手紙てがみをあけてごらんになりますと、二ひきうま親子おやこ見分みわけてもらいたい。
姨捨山 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
友達ともだちいやしがりて萬年町まんねんちやう呼名よびないまのこれども、三五らうといへば滑稽者おどけもの承知しやうちしてくむものなききも一とくなりし、田中屋たなかやいのちつな親子おやこかうむる御恩ごおんすくなからず
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
幕になる少し前に、隣りの男が、其又隣りの男に、登場人物の声が、六畳敷で、親子おやこ差向ひの談話の様だ。丸で訓練くんれんがないと非難してゐた。そつち隣りの男は登場人物のこしすわらない。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
あ、よくかえってきてくれた! わたしは、おまえがいったから、一にちでもむねやすまったとてなかった。いくら貧乏びんぼうしても、親子おやこはいっしょにらします。
二番めの娘 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「だれかうま親子おやこ見分みわけることをっているか。うまく見分みわけたものにはのぞみの褒美ほうびをやる。」
姨捨山 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
八百安やをやすもの何時いつ帳面ちやうめんにつけたやうなとわらはるれど、愛顧ひいきありがたきもの、まがりなりにも親子おやこ三人のくちをぬらして、三すけとて八歳やつになるを五厘學校ごりんがくかうかよはするほどの義務つとめもしけれど
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)