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賎
すると
或る
時、
鎌倉のある
所に、
能狂言の
催しがありまして、
親子三
人連れでその
見物に
出掛けました
折、
不図間近の
席に
人品の
賎しからぬ
若者を
見かけました。
形状の
外におのずから
賎しからぬ様
露れて、
其親切なる言葉、そもや
女子の
嬉しからぬ事か。
是はまあどうした訳と二三日は
気抜する程恨めしくは存じたれど、
只今承れば
御親子の間柄、大切の娘御を私風情の
賎き者に
嫁入してはと
御家従のあなたが御心配なすッて
連て
行れたも御道理
さりながら
正四位何の
某とあって仏師彫刻師を
聟には
為たがらぬも無理ならぬ人情、是非もなけれど
抑々仏師は
光孝天皇
是忠の親王等の系に
出て
定朝初めて
綱位を
受け、
中々賎まるべき者にあらず