いや)” の例文
するととき鎌倉かまくらのあるところに、能狂言のうきょうげんもようしがありまして、親子おやこにんれでその見物けんぶつ出掛でかけましたおり不図ふと間近まじかせき人品じんぴんいやしからぬ若者わかものかけました。
形状かたちほかにおのずからいやしからぬ様あらわれて、その親切なる言葉、そもや女子おなごうれしからぬ事か。
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
わし生涯しょうがい病気びょうきという病気びょうきはなく、丁度ちょうど樹木じゅもく自然しぜん立枯たちがれするように、やすらかに現世げんせにおいとまげました。身分みぶんこそいやしいが、後生ごしょういたってかったほうでござります……。
殊にお辰は叔父おじさえなくば大尽だいじんにも望まれて有福ゆうふくに世を送るべし、人は人、我は我の思わくありと決定けつじょうし、置手紙にお辰少許すこしばかりの恩をかせ御身おんみめとらんなどするいやしき心は露持たぬ由をしたた
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)