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賎
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いや
すると
或る
時、
鎌倉のある
所に、
能狂言の
催しがありまして、
親子三
人連れでその
見物に
出掛けました
折、
不図間近の
席に
人品の
賎しからぬ
若者を
見かけました。
形状の
外におのずから
賎しからぬ様
露れて、
其親切なる言葉、そもや
女子の
嬉しからぬ事か。
俺は
生涯病気という
病気はなく、
丁度樹木が
自然と
立枯れするように、
安らかに
現世にお
暇を
告げました。
身分こそ
賎しいが、
後生は
至って
良かった
方でござります……。
殊にお辰は
叔父さえなくば
大尽にも望まれて
有福に世を送るべし、人は人、我は我の思わくありと
決定し、置手紙にお辰
宛て
少許の恩を
伽に
御身を
娶らんなどする
賎しき心は露持たぬ由を
認め