見送みおく)” の例文
吉坊よしぼうは、両手りょうてあたまうえにのせて、きよちゃんがあちらへゆけば、そのほう見送みおくり、こちらへくればまたはなさずに、むかえていました。
父親と自転車 (新字新仮名) / 小川未明(著)
元気げんきこえをのこして、ていきました。おじいさんとおばあさんは、もんそとって、いつまでも、いつまでも見送みおくっていました。
桃太郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
たかく、あしんで、ぬまきしはなれると、足代あじろ突立つゝたつて見送みおくつた坊主ばうずかげは、背後うしろから蔽覆おつかぶさるごとく、おほひなるかたちつてえた。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
宗助そうすけ二人ふたり七條しちでうまで見送みおくつて、汽車きしやまでへやなか這入はいつて、わざと陽氣やうきはなしをした。プラツトフオームへりたときまどうちから
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
此上このうへにおたのみは萬々ばん/″\見送みおくりなどしてくださるな、さらでだにおとこ朋友ともだち手前てまへもあるになにかをかしくられてもおたがひつまらず
経つくゑ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
トーケルン湖の鳥たちは、うれしそうにばたきながら、美しいお月さまの光をあびて、みんなが家へ帰っていくのを見送みおくっていました。
おどろいてあと見送みおくつてゐるりよ周圍しうゐには、めしさいしるつてゐたそうが、ぞろ/\とてたかつた。道翹だうげう眞蒼まつさをかほをしてすくんでゐた。
寒山拾得 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
聯合軍に噛まれて天狗犬は尾を捲き、獅子毛を逆立さかだてゝ、甲州街道の方に敗走するのを、白の主人は心地よげに見送みおくった。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
見る事ぞ病氣でさへなき物ならば此邊迄も見送みおくやらんに無念むねんの事を仕てけりと前後不覺ぜんごふかくに泣沈み正體しやうたいさらあらざれば其有樣を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
そんなこといまして、途中とちゅうわたくしとすれちがときなどは、土地とちおとこおんなみななみだぐんで、いつまでもいつまでもわたくし後姿うしろすがた見送みおくるのでございました。
赤シャツの農夫はすこしわらってそれを見送みおくっていましたが、ふと思い出したように右手をあげて自分の腕時計うでどけいを見ました。そして不思議ふしぎそうに
耕耘部の時計 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
長吉ちやうきち後姿うしろすがた見送みおくるとまたさらうらめしいあの車を見送みおくつた時の一刹那せつな思起おもひおこすので、もうなんとしても我慢がまん出来できぬといふやうにベンチから立上たちあがつた。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
そとのぞくと、うすぐらいプラットフォオムにも、今日けふめづらしく見送みおくりの人影ひとかげさへあとつて、ただをりれられた小犬こいぬが一ぴき時時ときどきかなしさうに、ててゐた。
蜜柑 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
ブラ/\と面白おもしろき空想をつれにしてどて北頭きたがしら膝栗毛ひざくりげあゆませながら、見送みおくはててドヤ/\と帰る人々が大尉たいゐとしいくつならんの、何処いづこ出生しゆつしやうならんの、あるひ短艇ボートこと
隅田の春 (新字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
これを見送みおくつておきな夫婦ふうふはまたひとしきりこゑをあげてきましたが、なんのかひもありませんでした。
竹取物語 (旧字旧仮名) / 和田万吉(著)
ぐわつすゑかたえがてなりしゆきも、次第しだいあとなくけた或夜あるよ病院びやうゐんにはには椋鳥むくどりしきりにいてたをりしも、院長ゐんちやう親友しんいう郵便局長いうびんきよくちやう立歸たちかへるのを、門迄もんまで見送みおくらんとしつた。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
幼児をさなごだまつて、あたしをつめてくれた。この森蔭もりかげはづれまであたしは一緒いつしよつてやつた。此児このこふるへもしずにあるいてく。つひにそのあかかみが、とほひかりえるまで見送みおくつた。
先刻せんこく見送みおくられた吾等われらいま彼等かれらこのふねよりおくいださんと、わたくし右手めて少年せうねんみちびき、流石さすが悄然せうぜんたる春枝夫人はるえふじんたすけて甲板かんぱんると、今宵こよひ陰暦いんれき十三深碧しんぺきそらには一ぺんくももなく
ぼくたちむら子供こどもは、見送みおくるつもりでしばらくかねのうしろについていった。さんざかもすぎたが、誰一人だれひとりかえろうとしなかった。小松山こまつやまのそばまでたが、まだだれかえるようすをせなかった。
ごんごろ鐘 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
伯父をぢさんはとうさんたち引連ひきつれまして、日頃ひごろしたしくする近所きんじよ家々うち/\挨拶あいさつりました。大黒屋だいこくやれば小母をばさんたちうちそとまで見送みおくり、俵屋たはらやればおばあさんが見送みおくつてれました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
うしろすがたを見送みおくりながら、ふたりの勇士ゆうしは、うるんだ眼を見あわせた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
主人はうしろ姿すがた見送みおくって、この変人いよいよおもしろいなと思った。
(新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
一同いちどう次第しだいはひる。ヂュリエットと乳母うばのこりて、出行いでゆきゃく見送みおくる。
太郎たろうはいつまでも、そのふね見送みおくっていますと、ふねはだんだん、らぬとおとおくにほうちいさくなっていってしまったのであります。
薬売り (新字新仮名) / 小川未明(著)
おりたつ後姿うしろすがた見送みおくものはお八重やへのみならず優子いうこ部屋へや障子しようじ細目ほそめけてはれぬ心〻こゝろ/\を三らう一人ひとりすゞしげに行々ゆく/\ぎんずるからうたきゝたし
五月雨 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
若者わかものは、下男げなん姿すがたとおくにえなくなるまで見送みおくりました。それからそこの清水しみずあらいきよめて、長谷寺はせでら観音かんのんさまのほういて手をわせながら
一本のわら (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
さては身延みのぶ參詣さんけいをするのであつたか。遙拜えうはいしつゝ、わたしたちは、いまさらながら二人ふたりを、なみだぐましく見送みおくつた。
雨ふり (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
代助は橋の上に立つて、三千代が横町をまがる迄見送みおくつてゐた。それからゆつくり歩をめぐらしながら、はらなか
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
小娘こむすめは、おそらくはこれから奉公先ほうこうさきおもむかうとしてゐる小娘こむすめは、そのふところざうしてゐた幾顆いくくわ蜜柑みかんまどからげて、わざわざ踏切ふみきりまで見送みおくりにをとうとたちのらうむくいたのである。
蜜柑 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
がつすえかたえがてなりしゆきも、次第しだいあとなくけた或夜あるよ病院びょういんにわには椋鳥むくどりしきりにいてたおりしも、院長いんちょう親友しんゆう郵便局長ゆうびんきょくちょう立帰たちかえるのを、もんまで見送みおくらんとしつた。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
見送みおくりも爲ざりし由檢使場けんしばでも御奉行樣のお前でも申立たる赴きゆゑはてなと思うて居るものゝ人の事にて兎や角と言爭いひあらそはんもえきなき事ことに私しの女房の云には滅多めつたにそんな事を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
みんなが見送みおくろうとあとをついて玄関まで行ったときは山男はもうませんでした。
紫紺染について (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
やがて、たのしそうに鳴きさけぶガンのむれにまじって、アッカたちのむれだけは、さびしそうに飛んでいきました。ニールスは、いつまでも、いつまでもそのあとを見送みおくっていました。
やがて、この集會つどひをはると、十間近まぢかで、いよ/\弦月丸げんげつまる乘船のりくみ時刻じこくとはなつたので、濱島はまじま一家族いつかぞくと、わたくしとはおな馬車ばしやで、おほくひと見送みおくられながら波止塲はとばきたり、其邊そのへんある茶亭ちやてい休憇きうけいした
見送みおくわたくしからはこらへこらへた溜涙ためなみだが一たきのようにながれました。
見送みおくりながら、居士は白鳥しらとりおくいんのほうへ風のごとく立ち去った。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
乳母うば入る。ヂュリエットじっと行方ゆくかた見送みおくって
青年せいねんは、あかはたが、黄昏たそがれうみに、えるのを見送みおくっていました。まったくえなくなってから、かれはがけからおりたのであります。
希望 (新字新仮名) / 小川未明(著)
はらたずか言譯いひわけしながら後刻のち後刻のちにと行過ゆきすぎるあとを、一寸ちよつと舌打したうちしながら見送みおくつてのちにもいもんだもないくせ
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
それからあたらしいおわんのおふねに、あたらしいおはしのかいをえて、住吉すみよしはまから舟出ふなでをしました。おとうさんとおかあさんははまべまで見送みおくりにってくださいました。
一寸法師 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
見送みおくるとちいさくなつて、一大山おほやま背後うしろへかくれたとおもふと、油旱あぶらでりけるやうなそらに、やまいたゞきから、すく/\とくもた、たきおとしづまるばかり殷々ゐん/\としてらいひゞき
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
をしめどもかくてあるべきにあらざれば既にたもとわかちしが跡には女房といもととの二人夫とあねの後ろかげを我が門口かどぐちへ立出て伸上のびあがり/\見送みおくるを此方こなたも同じ思ひにて十兵衞お文の兩人もつまと妹を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
自分じぶん勝手かつてつくげたうつくしい未來みらいが、半分はんぶんくづれかゝつたのを、さもはたひと所爲せゐででもあるかのごとこゝろみだしてゐる小六ころくかへ姿すがた見送みおくつた宗助そうすけは、くら玄關げんくわん敷居しきゐうへつて
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
園丁えんていは何だか顔が青ざめてしばらくそれを見送みおくりやがて唐檜とうひの中へはいります。
チュウリップの幻術 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
汽車きしや見送みおくつた子供こどもたちのうへへばらばらとそらからつてた。
蜜柑 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
濱島武文はまじまたけぶみと、ほか三人みたりひと本船ほんせんまで見送みおくつてた。
少年しょうねんは、なかには、やさしいこころ婦人ふじんもあるものとおもって、そのうしろ姿すがた見送みおくりますと、おんなこうがわのたばこにはいりました。
街の幸福 (新字新仮名) / 小川未明(著)
千代ちいちやんあれなん学校がくかう御朋友おともだち随分ずゐぶん乱暴らんばう連中れんぢうだなアとあきれて見送みおく良之助りやうのすけより低頭うつむくお千代ちよ赧然はなじろめり
闇桜 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
罷違まかりちがふて旧道きうだうみな歩行あるいてもしうはあるまい、ういふ時候じこうぢや、おほかみしゆんでもなく、魑魅魍魎ちみまうりやうしほさきでもない、まゝよ、とおもふて、見送みおくると親切しんせつ百姓ひやくしやう姿すがたえぬ。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
こういうわけで九州きゅうしゅうから為朝ためともについて家来けらいは二十八だけでしたが、どうしてもおともができなければ、せめて途中とちゅうまでお見送みおくりがしたいといって、いくらことわっても、ことわっても、どこまでも
鎮西八郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)