)” の例文
それがひとうように規則的きそくてきあふれてようとは、しんじられもしなかった。ゆえもない不安ふあんはまだつづいていて、えず彼女かのじょおびやかした。
伸び支度 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
いままでながもとしきりにいていたむしが、えがちにほそったのは、雨戸あまどからひかりに、おのずとおびえてしまったに相違そういない。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
公爵夫人こうしやくふじんそのだいせつうたも、えず赤子あかごひどゆすげたりゆすおろしたりしたものですから、可哀相かあいさうちひさなのがさけぶので
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
やうやあさはなれてそら居据ゐすわつた。すべてのものあかるいひかりへた。しかしながら周圍しうゐ何處いづこにも活々いき/\したみどりえてうつらなかつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
正吉しょうきちは、とぼとぼとまちほうをさしてあるいてゆきました。このあたりはもうれると、まったく人通ひとどおりはえてしまったのです。
幸福のはさみ (新字新仮名) / 小川未明(著)
彼女かのぢよは、片山かたやま一人ひとりためには、過去くわこの一さいてた。肉親にくしんともたなければならなかつた。もつとも、母親はゝおや實母じつぼではなかつた。
彼女こゝに眠る (旧字旧仮名) / 若杉鳥子(著)
そこで、私はさっと輪をなげてかれのくびにかけてめてしまった。そのままぐっとひきしめて息の根をとうとする仲間なかまを、私は
「いゝえ、あに一緒いつしよですから……でも大雪おほゆきなぞは、まちからみちえますと、こゝにわたし一人ひとりきりで、五日いつか六日むいかくらしますよ。」
雪霊記事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
眞中まんなかには庭園ていえんがあり、噴水ふんすいえずみづし、あたりには青々あを/\しげつた庭木にはきゑてあり、あつなつでもすゞしいかんじをあた
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
しかるも我國わがくに財源ざいげんにはかぎりあり、兵船へいせん増加ぞうかにも限度げんどあり、くにおもふの日夜にちや此事このこと憂慮ゆうりよし、えず此點このてんむかつてさくこうじてる。
ササユリは、関西諸州の山地には多く野生やせいしているが、関東地方にはえてない。しかし関西の地でも、あまり人家には作っていない。
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
むすめよ! むすめどころかい、わが靈魂たましひよ! 其方そなたにゃった! あゝ、あゝ! むすめんでしまうた、むすめねばおれたのしみも最早もうえたわ。
「およそ人心じんしんうちえてきのこと、夢寐むびあらわれず、昔人せきじんう、おとこむをゆめみず、おんなさいめとるをゆめみず、このげんまことしかり」
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
震災しんさい以來いらい東京とうきやう梅園うめぞの松村まつむら以外いぐわいには「しるこ」らしい「しるこ」あとつてしまつた。そのかはりにどこもカツフエだらけである。
しるこ (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
きん小鳥ことりのやうないたいけな姫君ひめぎみは、百日鬘ひやくにちかつら山賊さんぞくがふりかざしたやいばしたをあはせて、えいるこえにこの暇乞いとまごひをするのであつた。
桜さく島:見知らぬ世界 (新字旧仮名) / 竹久夢二(著)
きのこの毒にあたりて一日のうちに死にえ、七歳の女の子一人を残せしが、その女もまた年老いて子なく、近きころみて失せたり。
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
みちのつよきひとなればむなぐるしさえがたうて、まくら小抱卷こがいまき仮初かりそめにふしたまひしを、小間こまづかひのよねよりほか、えてものあらざりき。
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ルピック氏——(彼はにんじんを可愛かわいがっている。しかし、いっこう、かまいつけない。えず、商用のため、東奔西走とうほんせいそうしているからだ)
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
折角、あの神尾喬之助の居場所を知らせに来た者が、その肝腎かんじんの場所を言わないうちに呼吸いきえてしまってはしようがない。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
それからのわたくしえず竜宮界りゅうぐうかいこと乙姫様おとひめさまことばかりかんがむようになり、わたくし幽界生活ゆうかいせいかつひとつ大切たいせつなる転換期てんかんきとなりました。
なんといふしづかさだらう!もなくひさしからつゆる。水晶すゐしやうくだけてちるやうに、いやひかりそのものがるやうに……。
日の光を浴びて (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
カチインと※ずきこ※てくる球突たまつきたまひゞきはさういふ塲面ばめん空氣くうき對應たいおうして、いかにもかんじの美しい、何ともいへない舞たい効果こうくわをなしてゐる。
文壇球突物語 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
けれどもそれはまったく、作者に未知みちえざる驚異きょういあたいする世界自身じしん発展はってんであって、けっして畸形きけいねあげられた煤色すすいろのユートピアではない。
薄紅うすべにをさして居るのが一層ひときはいやらしく見える、が、一更いつこうすましたもので、其だるい京訛きやうなまりを大声で饒舌しやべつて居る、勿論えず煙草たばこはすつて居るので。
夜汽車 (新字旧仮名) / 尾崎放哉(著)
河面かはづら対岸たいがんそらかゞや朝日あさひビールの広告くわうこくと、東武電車とうぶでんしや鉄橋てつけううへえず徃復わうふくする電車でんしや燈影ほかげてらされ、かしボートをわか男女だんぢよ姿すがたのみならず
吾妻橋 (新字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
今にもえなんとしていた火のいのち! よみがえったかの如く赫々あかあかと燃え上がってあたりは光明昼のごとく真っ赤に照った。
増長天王 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
工藤は、彼のため外出のたびに神社廻りをして祈願をなし、好きな酒もって、一生けんめいに地下戦車が完成するように願をかけていたのであった。
未来の地下戦車長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
数時間のあいだ、かれは悲しみに打たれて、えずくちびるを動かしながら、こうつぶやいているように思われた。
一四四いづれ消息せうそこを見ずばあらじとて、ふたたび山にのぼり給ふに、一四五いかさまにも人のいききえたると見えて、去年こぞふみわけし道ぞとも思はれず。
此時このとき宗助そうすけつて、醫者いしやるのをいまいまかとけるこゝろほどつらいものはなかつた。かれ御米およねかたみながらも、えずおもて物音ものおとくばつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
カシミールの方にも行くけれどもこれもやはり英領です。通商上インドとってしまうということは到底出来ない。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
よくの一字より、親戚のしたしみも離るゝものなれば、根據こんきよする處をつがせん要なり。さすれば慈愛自然に離れぬなり。
遺教 (旧字旧仮名) / 西郷隆盛(著)
夜はいたけにければ、さらでだに音をてる寂静しづかさはここに澄徹すみわたりて、深くも物を思入る苦しさに直道が蹂躙ふみにじる靴の下に、瓦のもろるるが鋭く響きぬ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
錢形の平次はからくも間に合ひました。夜櫻見物の歸りもえた、兩國橋の中ほど、若い二人のたもとを取つて引戻したのは、本當に精一杯の仕事だつたのです。
もしこの時島津氏の建議が採用されていたら、沖縄は二百年前に支那との関係をっていたのでありましょう。
琉球史の趨勢 (新字新仮名) / 伊波普猷(著)
現時げんじひとよりうらやまるゝほど健康けんかうたもれども、壯年さうねんころまでは體質たいしついたつてよわく、頭痛づつうなやまされ、み、しば/\風邪ふうじやをかされ、えずやまひためくるしめり。
命の鍛錬 (旧字旧仮名) / 関寛(著)
病院びょういん小使こづかい看護婦かんごふ、その子供等こどもらなどはみな患者かんじゃ病室びょうしつに一しょ起臥きがして、外科室げかしつには丹毒たんどくえたことはい。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
さうだ、未來の良人ロチスター氏その人で、彼の望んでゐる人になき監視の眼を向けてゐるのであつた。
晏子あんし(五〇)戄然くわくぜんとして衣冠いくわん(五一)をさめ、しやしていはく、『えい不仁ふじんいへども、やくまぬかれしむ。なんつをもとむるのすみやかなるや』と。石父せきほいはく、『しからず。 ...
建築家けんちくか勿論もちろん、一ぱん人士じんしへず建築界けんちくかい問題もんだい提出ていしゆつして論議ろんぎたゝかはすことはきわめて必要ひつえうなことである。假令たとひその論議ろんぎ多少たせう常軌じやうきいつしてもそれ問題もんだいでない。
建築の本義 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
幼時の思い出にはさすがにちがたいものがあり、ことに二人とももう八十に近い高齢こうれいなので、遠くへだたったらいつまた会えるかわからないという懸念けねんもあった。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
此度このたびくはだて残賊ざんぞくちゆうして禍害くわがいつと云ふ事と、私蓄しちくあばいて陥溺かんできを救ふと云ふ事との二つをこゝろざした者である。しかるにかれまつたく敗れ、これは成るになん/\としてくじけた。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
寒気のために感覚の痲痺まひしかかったひざの関節はしいて曲げようとすると、筋をつほどの痛みを覚えた。
或る女:1(前編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
松陰踴躍ゆうやくして曰く、「防長えて真尊攘の人なし、われといえどもた尊攘を言うを得ず、しからば則ち防長の真尊攘者、ただ汝一人のみ、切にみずから軽んずるなかれ」
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
都慣みやこなれぬ身には只〻胸のみ驚かれて、何と答へんすべだに知らず、其儘心なく打ち過ぐる程に、雲井の月の懸橋かけはしえしと思ひてや、心を寄するものも漸くすくなくなりて
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
虫が多いくらいですから、夏は随分暑うございますが、冬は案外暖かく、寒中でも四月頃の陽気であります。月日のつのは早いもので、早くも一箇年いっかねんを過ぎました。
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
その正面に掲げある黒髪の美青年の肖像画の前に来り、石甃いしだたみの上にたおれ伏したるまま息えぬ。
押絵の奇蹟 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
町の西端にしはずれに寺ありてゆうべゆうべの鐘はここより響けど、鐘く男は六十むそじを幾つか越えしおきななれば力足らずえだえのは町の一端はしより一端はしへと、おぼつかなく漂うのみ
わかれ (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
これはえず蒸氣じようき火山灰かざんばひ鎔岩ようがんとう中央ちゆうおう小丘しようきゆうからあふたものであつて、かゝる平地へいち火口原かこうげんづけ、外輪山がいりんざんたいする中央ちゆうおう火山かざん中央火口丘ちゆうおうかこうきゆうづける。
火山の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
わたつみのうみでたる飾磨河しかまがはえむ日にこそこひまめ 〔巻十五・三六〇五〕 作者不詳
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)