しづ)” の例文
からになつた渡船とせんへ、天滿與力てんまよりきかたをいからしてつた。六甲山ろくかふざんしづまうとする西日にしびが、きら/\とれの兩刀りやうたう目貫めぬきひからしてゐた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
天空そらには星影ほしかげてん、二てんた三てんかぜしてなみくろく、ふね秒一秒べういちべうと、阿鼻叫喚あびけうくわんひゞきせて、印度洋インドやう海底かいていしづんでくのである。
あなやとおもふとさらに、もとのかほも、むねも、ちゝも、手足てあしまツた姿すがたとなつて、いつしづみつ、ぱツときざまれ、あツとまたあらはれる。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
落し娘兩人は苦界へしづみ夫のみ成らで其身まで此世のえにし淺草なる此中田圃なかたんぼの露と共にきえて行身のあはれさはたとふるものぞなかりける
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
あきぼんには赤痢せきりさわぎもしづんであたらしいほとけかずえてた。墓地ぼちにはげたあかつちちひさなつかいくつも疎末そまつ棺臺くわんだいせてた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
れぢや基督ハリストスでもれいきませう、基督ハリストスいたり、微笑びせうしたり、かなしんだり、おこつたり、うれひしづんだりして、現實げんじつたいして反應はんおうしてゐたのです。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
けれども三千代は其方面の婦人ではなかつた。色合いろあひから云ふと、もつと地味ぢみで、気持きもちから云ふと、もう少ししづんでゐた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
それが、船をしづめられたり、七平が殺されたり、あんな思ひも寄らぬ騷ぎになつてしまつたのです。私の死ぬのは、そのお蔭で一晩遲れました——もつと
しかねえさんはあいちやんがつてしまつても、頬杖ほゝづゑついてしづみゆく夕日ゆふひながら、可愛かあいあいちやんのことから、またその種々しゆ/″\不思議ふしぎ冐險談ばうけんだんかんがへながら
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
そも/\ながれにちり一ツうかびそめしはじめにて、此心このこゝろさらへどもらず、まさんとおもふほどきにごりて、眞如しんによつきかげ何處いづく朦々朧々もう/\ろう/\ふちふかくしづみて
たま襻 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
今初いまはじめたばかりです。』とうち浮木うきがグイとしづんだからあはすと、餌釣ゑづりとしては、中々なか/\おほきいのがあがつた。
都の友へ、B生より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
パレスといふ小岩こいはあそしづめてゐたころ折々をり/\とまりにきやくなので、調子てうしもおのづからこゝろやすく
吾妻橋 (新字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
青木さんはふと一人ごとのやうにさうつぶやいて、のき先にえるれた空をぢつと上げた。が、さういふ空さうの明るさとは反対はんたい氕持きもちめうくらしづんでつた。
(旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
産終うみをはるまでの困苦こんくのために尾鰭をひれそこなやせつかれ、ながれにしたがひてくだり深淵ふかきふちある所にいたればこゝにしづつかれやしなひ、もとのごとく肥太こえふとりてふたゝながれさかのぼる。
し付けられ、しづみきツた反動はんどうで、恰で鳥の柔毛にこげが風に飛ぶやうに氣が浮々うき/\する。さけびしたくなる。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
貴重品きちようひん一時いちじ井戸ゐどしづめることあり。地中ちちゆううづめる場合ばあひすなあつ五分ごぶほどにても有效ゆうこうである。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
たれか、——そのたれかはえないに、そつとむね小刀さすがいた。同時どうじにおれのくちなかには、もう一血潮ちしほあふれてる。おれはそれぎり永久えいきうに、中有ちううやみしづんでしまつた。………
藪の中 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
所詮しよせん此の経を一〇一魔道に回向ゑかうして、恨をはるかさんと、一すぢにおもひ定めて、ゆびやぶり血をもて願文ぐわんもんをうつし、経とともに一〇二志戸しとの海にしづめてし後は、人にもまみえず深くぢこもりて
みなにくいがもととはへ、可愛かはゆいにもふかい/\えんがある……すればりゃにくみながらの可愛かはゆさ! 可愛かはゆいながらのにくさといふもの! からぢゃ! かなしいたはぶれ、しづんだ浮氣うはき目易めやすみにく
わたし九州きゆうしゆう旅行りよこうしましたとき田圃たんぼみぞなか七寸しちすんぐらゐもあるおほきな磨製石斧ませいせきふ潜航艇せんこうていのようにしづんでゐるのを發見はつけんしてひろつたことがありますが、こんなやつをさがてたときは非常ひじよう愉快ゆかいです。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
しづかなること水のごとしづみて匂ふのそらに
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
わたしかなしくなつて、多時しばらくふか沈黙ちんもくしづんだ。
背負揚 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
さはらかひなだるげにしづ
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
なげきよりこそ人しづ
草わかば (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
ちゝしづみぬちゝのみの
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
白玉のしづく淺瀬に
花守 (旧字旧仮名) / 横瀬夜雨(著)
丁度ちやうどわたしみぎはに、朽木くちきのやうにつて、ぬましづんで、裂目さけめ燕子花かきつばたかげし、やぶれたそこ中空なかぞらくも往來ゆききする小舟こぶねかたちえました。
人魚の祠 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
『えゝ、無責任むせきにんなる船員せんいん! 卑劣ひれつなる外人くわいじん! 海上かいじやう規則きそくなんためぞ。』と悲憤ひふんうでやくすと、夫人ふじんさびしきかほわたくしむかつた、しづんだこゑ
かれほとんどうごかぬやうにしててゝけばすつとふかしづんでしまつたやうにめてへぽちり/\と麁朶そだしてた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
さます刺激のそこ何所どこしづんだ調子のあるのを嬉しく思ひながら、鳥打とりうち帽をかむつて、銘仙めいせんの不断の儘もんた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
しづめしうへ身の代金の三十兩は兩人にてつかすてたるに相違さうゐ有まじ夫故にこそ三次に頼み後のうれひを除かん爲又お安を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
猶且やはり毎朝まいあさのやうにあさ引立ひきたたず、しづんだ調子てうし横町よこちやう差掛さしかゝると、をりからむかふより二人ふたり囚人しうじんと四にんじゆうふて附添つきそふて兵卒へいそつとに、ぱつたりと出會でつくわす。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
坊主ぼうずまでが陰氣いんきらしうしづんで仕舞しまいましたといふに、みれば茶椀ちやわんはし其處そこいてちゝはゝとのかほをばくらべてなにとはらずになる樣子やうす、こんな可愛かわひものさへあるに
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
かのふちれいありといふは、むかし永光寺のほとりに貴人きにん何某なにがし住玉ひしに、その内室ないしつ色情しきじやうねたみにてをつとをうらみ、東光が淵に身をしづめ、冤魂ゑんこん悪竜あくりゆうとなりて人をなやまししを
またろうされて千鳥ちどりむれいはよりいはへとびかうてましたが、かるさいにも絶望ぜつばうそこしづんだひとこゝろ益々ます/\やみもとめてまよふものとえ、一人ひとり若者わかものありて、あをざめたかほえりうづ
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
かぜはなかつた。空氣くうきみづのやうにおもしづんでゐた。人家じんかも、燈灯ともしびも、はたけも、もりも、かはも、をかも、そしてあるいてゐる我我われわれからだも、はひとかしたやうな夜霧よぎりうみつつまれてゐるのであつた。
一兵卒と銃 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
「こんなうもしづんでけないものだ。」
虚弱 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
但馬守たじまのかみしづつたかほには、すご微笑びせうがあつた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
愈々いよ/\しづまつしやつたゞ、南無阿弥陀仏なむあみだぶつ。』
畑の祭 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
がくれにつとこそしづめ。
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
くろしづめるのうちに
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
我胸わがむね堪難たへがたしづめるとき
みどりしづめる川上かはかみ
花守 (旧字旧仮名) / 横瀬夜雨(著)
干潮かんてうときるもあはれで、宛然さながら洪水でみづのあとのごとく、何時いつてた世帶道具しよたいだうぐやら、缺擂鉢かけすりばちくろしづむで、おどろのやうな水草みづくさなみ隨意まに/\なびいてる。
三尺角 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
一同いちどう詮方せんかたなく海岸かいがんいへかへつたが、まつたえたあとのやうに、さびしく心細こゝろぼそ光景くわうけい櫻木大佐さくらぎたいさ默然もくねんとしてふかかんがへしづんだ。
「なあにかまあねえ」あとからしかめながら一人ひとり首筋くびすぢまでしづんだ。それから風呂桶ふろをけこしけてごし/\とあらひながら
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
けれども、それはたゞしづんだものをてて、にぎやかなひかりのうちにかしたまでであつた。御米およねくら過去くわこなか其時そのとき一種いつしゆ好奇心かうきしんきざしたのである。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
浮川竹うきかはたけとやらへおしづめ下されいさゝかにてもお金にかへらるゝ物ならば此身は何樣いかやう艱難かんなんを致し候も更々さら/\いとひ申さねば何卒此身を遊女いうぢよに御賣成うりなされ其お金にて御年貢ねんぐをさめ方を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
かのふちれいありといふは、むかし永光寺のほとりに貴人きにん何某なにがし住玉ひしに、その内室ないしつ色情しきじやうねたみにてをつとをうらみ、東光が淵に身をしづめ、冤魂ゑんこん悪竜あくりゆうとなりて人をなやまししを
で、かれももう思慮かんがへること無益むえきなのをさとり、全然すつかり失望しつばうと、恐怖きようふとのふちしづんでしまつたのである。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)