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缺擂鉢
で
干潮の
時は
見るも
哀で、
宛然洪水のあとの
如く、
何時棄てた
世帶道具やら、
缺擂鉢が
黒く
沈むで、
蓬のやうな
水草は
波の
隨意靡いて
居る。
水底の
其の
缺擂鉢、
塵芥、
襤褸切、
釘の
折などは
不殘形を
消して、
蒼い
潮を
滿々と
湛へた
溜池の
小波の
上なる
家は、
掃除をするでもなしに
美しい。
其處で
相談をして
水盤の
座へ……も
些と
大業だけれども、まさか
缺擂鉢ではない。