“いつ”のいろいろな漢字の書き方と例文
カタカナ:イツ
語句割合
何時56.9%
何日9.2%
7.5%
3.6%
3.1%
2.9%
1.8%
1.5%
1.3%
0.9%
0.8%
毎時0.8%
0.6%
0.6%
平生0.6%
0.4%
0.4%
0.4%
0.3%
0.3%
何年0.3%
0.3%
平時0.3%
0.3%
0.3%
平常0.3%
平日0.3%
0.3%
0.2%
何刻0.2%
如何0.2%
居着0.2%
0.2%
0.1%
云付0.1%
0.1%
0.1%
常時0.1%
0.1%
早晩0.1%
毎年0.1%
稜威0.1%
0.1%
0.1%
伊都0.1%
毎次0.1%
0.1%
云附0.1%
何歳0.1%
何爲0.1%
何處0.1%
0.1%
例年0.1%
例日0.1%
嫁入0.1%
0.1%
射尽0.1%
居付0.1%
居著0.1%
居附0.1%
0.1%
常日0.1%
幾時0.1%
0.1%
毎度0.1%
0.1%
0.1%
言付0.1%
0.1%
鋳付0.1%
0.1%
隨一0.1%
(注) 作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため、一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
うねうねとつづく街道筋を歩いて二人が何時いつの間にか石地蔵のある断崖の近くへくるまで南里君は鶺鴒の巣のあることを忘れていた。
鶺鴒の巣 (新字新仮名) / 尾崎士郎(著)
相「此の相川は年老いたれども、其の事は命に掛けて飯島様の御家おいえの立つように計らいます、そこでお前は何日いつ敵討に出立しゅったつなさるえ」
かの天をつかさどるもの、またその徳をあまたにしてこれを諸〻の星に及ぼし、しかして自らいつなることをたもちてめぐる 一三六—一三八
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
兼「人を馬鹿にするなア、いつでもしめえにア其様そんな事だ、おやアおりを置いて行ったぜ、平清のお土産とは気が利いてる、一杯いっぺい飲めるぜ」
名人長二 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
いや、有難う。』と竹山はいつになく礼を云つたが、平日いつもの癖で直ぐには原稿に目もくれぬ。渠も亦平日いつもの癖でそれを一寸不快に思つたが
病院の窓 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
いつ子モ出テ来ルッテ云ッテマシタカラ固ク止メテアルンデス。デスガ颯子ハイヽジャアリマセンカ、ドウシテ颯子ヲオ嫌イニナルンデス」
瘋癲老人日記 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
予もまたかかる畸形の岩を万一いわゆる基本財産次第で大社といつく事もあらば尊崇の精神を失い神霊を侮辱する訳になると惟う。
と、ねぎのやうに寒い歯齦はぐきを出して笑つてゐる。画剣斎も、夢剣庵もまんざら悪くは無いが、もつといのはいつそ剣の事なぞ忘れてしまふのだ。
「どいつも、此奴も、ろくでもねえくずばかり。何だって、俺あ、あんな狐鼠狐鼠こそこそ野郎ときたねえ、血などめ合って、義兄弟になったんだろう」
雲霧閻魔帳 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
迎えて陣屋の設けもできていません。今、直ちに逆寄さかよせをなし給えば、いつをもって労を撃つで——必ず大捷たいしょうを博すだろうと思います
三国志:04 草莽の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いつか当に云々と続いて居るのだから、「話るべきか」の「か」は蛇足であり、この蛇足のために調子はひどく崩れる。
閑人詩話 (新字旧仮名) / 河上肇(著)
お前は例の如く努力を始めた。お前の努力から受ける感じというのは、柄にもない飛び上りな行いをした後に毎時いつでも残される苦しい後味なのだ。
惜みなく愛は奪う (新字新仮名) / 有島武郎(著)
彼アイヌ、眉毛かがやき、白き髯胸にかき垂り、家屋チセに萱畳敷き、さやさやと敷き、いつかしきアツシシ、マキリ持ち、研ぎ、あぐらゐ、ふかぶかとその眼れり。
(新字旧仮名) / 北原白秋(著)
年足らずの十三を、十五だといつわって、姉は十六銭の日給を貰うために、朝五時から起きて、いそいそと一里も離れている専売局にかよった。
戦争雑記 (新字新仮名) / 徳永直(著)
その日神中が銀行へ往ったところで、他の銀行員は平生いつになく神中にあざけりの眼を向けた。神中はどうしたことだろうと思っていると、知人が出て来て
雀が森の怪異 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
ひきモシ若旦那さういつては「イヤ吾儕わしは花見にはモウゆかぬ是から家へかへるなり」と言捨いひすて足を早めるに和吉は本意ほいなき面地おもゝちにて夫では花見はやめになつたかさうして見ば辨當を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
帰りには、主僧は停車場まで人車くるまを用意して置いて呉れた。わかれを告げた時には日はもう暮れかけて居た。『もう、何うぞ——』私達はかういつて幾度も辞した。
百日紅 (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
いつも樂しさうに見えるばかりか、心事こゝろばせも至て正しいので孤兒には珍しいと叔父をはじめ土地の者皆に、感心せられて居たのである。
少年の悲哀 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
わが國の大神をば絶待としていつきまつる、わが丹心の至誠をば、ねがはくは見そなはし給へといふので、同時に作つた歌に
愛国歌小観 (旧字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
やい、しっかりしろ。と励ませば、八蔵はようように、脾腹ひばらを抱えて起上り、「あいつ、あ痛。……おお痛え、痛え、畜生非道ひどいことをしやあがる。 ...
活人形 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
遠い九国への旅立なれば、帰るのが何年いつになるやら、……まずまず今宵は拙者のために、貴用をのばしてくられよ
艶容万年若衆 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
尋ねしにこの夫婦の者浪人せしは其頃越後高田の城主じやうしゆ松平越後守殿まつだひらゑちごのかみどの藩中はんちうにしてたか二百石をりやう側役そばやくつとめし者なるが女房は同藩の娘にてお梅といつて是も奧を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
然るにこの位な揶揄やゆ弄言ろうげんは平生面と向って談笑の間に言合いいあうにかかわらず、この手紙がイライラした神経によっぽどさわったものと見えて平時いつにない怒気紛々たる返事を直ぐ寄越よこした。
二葉亭四迷の一生 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
出しまてども一度の返事へんじもなし何處どこうして居なさるやらとてもあはれぬ者ならばいつそ死んだがましならめと打しほれしがかほふりあげ伯父樣どうぞ三河町とやらへいつて樣子を尋ねて下されとたのめば長庵小首こくび
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
奇觀きくわん妙觀めうくわんいつつべし。で、激流げきりう打込うちこんだ眞黒まつくろくひを、したから突支棒つツかひぼうにした高樓たかどのなぞは、股引もゝひきさかさまに、輕業かるわざ大屋臺おほやたいを、チヨンとかしらせたやうで面白おもしろい。
飯坂ゆき (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
被告の身にとつては人のい、福々ふく/″\した、朝餐あさめしうまく食べた裁判官に出会でくはすといふ事が大切だいじだが、原告になつてみると、平常いつも不満足たらしい
気分も平日いつになくいというので、髪も結って一枚着換えて出たのであった。
葛飾砂子 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
実は無知な余をいつわりおおせた死は、いつの間にか余の血管にもぐり込んで、ともしい血を追い廻しつつ流れていたのだそうである。
思い出す事など (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ある時は安逸の中ゆ仰ぎ見るカントの「善」のいつくしかりし
和歌でない歌 (旧字旧仮名) / 中島敦(著)
彼女かれの石の如き拳は、如何いつまでも冬子の黒髪を握り詰めて放さなかった。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「あるかないか、昔からの言い伝えじゃ。お内儀かみさん、お前さんもこの土地に居着いつきなさるものなら、よく覚えておおきなさい、鉾尖ヶ岳から白馬ヶ岳まで一筋の雲……」
大菩薩峠:05 龍神の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
そなたをいかほどもいつくしもうが、一度、心にそむき、自分の栄華栄達の道具に使えぬとわかったときには、子にもせよ、娘にもせよ、もはやかたきとして憎むほかはないであろう——
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
こひ一方いつはうつよよく一方いつはうはきものとくはいつはり何方いづれすてられぬ花紅葉はなもみぢいろはなけれど松野まつのこゝあはれなり、りとて竹村たけむらきみさしき姿すがたおもえもしたれ、あさからぬ御志みこゝろざしかたじけなさよ
たま襻 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
そうかね、ほんとうにそうかね、お前の云付いつけ口を聞いたからと云って、何もお父さんは沼倉を叱る訳じゃないんだから、ほんとうの事を云いなさい。
小さな王国 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
主従ここで討死をした、姫は父を失い、母にはぐれ、山路に行き暮れて、悩んでいるのを、通りがかりの杣人そまびとが案内を承るといつわり、姫を檜にいましめ、路銀を奪って去った、ややありて姫は縛を解き
梓川の上流 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
律師りしせきいつ
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
けれど心中は常時いつも不愉快で、自分がまさに行くべき位置ところに行くことも出来ず、みすみす栄ない日々の生活を送らなければならないのかと真から身の不幸せを歎いていた。
頸飾り (新字新仮名) / ギ・ド・モーパッサン(著)
君のいふ魔法使ひの婆さんとは違つた、風流な愛とか人道とかいつくしむとか云つてるから悉くこれ慈悲忍辱の士君子かなんぞと考へたら、飛んだ大間違ひといふもんだよ。
子をつれて (旧字旧仮名) / 葛西善蔵(著)
領す澤井佐太夫の次男に友次郎といふ者あり當年十九歳にて古今無双の美男なりしが早晩いつの程にかお花とわりなき中となり喜内が當番たうばんの留守の夜などにはひそかにお花がねやに忍び來り語らう事も稀に有しかば彼の若黨の吾助は此樣子を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
毎年いつも唯そわ/\と、心ばかり急がしそうにしているに経って行って了う。分けて此の秋くらい、斯うして斯様こんなに寂しい思いのするのは、初めて覚えることだ。
別れたる妻に送る手紙 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
天の石位いはくらを離れ、天の八重多那雲やへたなぐもを押し分けて、稜威いつ別き道別きて一〇、天の浮橋に、浮きじまり、そりたたして一一竺紫つくし日向ひむかの高千穗のじふるたけ一二天降あもりましき。
あきらけく、いつくしき
新頌 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
「これの鏡は、もはらが御魂として、吾が御前をいつくがごと、いつきまつれ。次に思金の神は、みまへことを取り持ちて、まつりごとまをしたまへ
「天の下平ぎ、人民おほみたから榮えなむ」とのりたまひて、すなはち意富多多泥古の命を、神主かむぬしとして、御諸山に、意富美和おほみわの大神の御前をいつき祭りたまひき。
(正鹿山津見の神より戸山津見の神まで并はせて八神。)かれ斬りたまへる刀の名は、天の尾羽張をはばりといひ、またの名は伊都いつの尾羽張といふ。
天の安の河の河上の天の石屋いはやにます、名は伊都いつ尾羽張をはばりの神、これ遣はすべし。もしまたこの神ならずは、その神の子建御雷たけみかづちの神、これ遣はすべし。
緑雨はお抱えの俥が毎次いつでも待ってるからいとしても、こっちはわざわざ高い宿俥やどぐるまで遠方まで出掛けるのは無駄だと思って
斎藤緑雨 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
三日に揚げずに来るのに毎次いつでも下宿の不味いものでもあるまいと、何処かへ食べに行かないかと誘うと、鳥は浜町はまちょう筑紫つくしでなけりゃア喰えんの、天麩羅は横山町よこやまちょう丸新まるしんでなけりゃア駄目だのと
斎藤緑雨 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
いつの如く書くは誤れり。行書ぎょうしょにて聿の如く書くことあれどもその場合には四箇の点を打たぬなり。
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
誤りやすき字につきて或人は盡の上部はいつなりじゅんの中は王なりなど『説文せつもん』を引きて論ぜられ
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
「ソンナコト絶対ニ許サナイワヨ、浄吉ニ云附いつケテヤルカラ」
瘋癲老人日記 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
返來へんじをさへうちとけてひしことはなく、しひへばしさうな景色けしきるおたみきのどくさかぎりなく、何歳いつまでも嬰兒ねねさまでいたしかたが御座ござりませぬ
経つくゑ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
米原まいばら北陸線ほくりくせん分岐道ぶんきだうとて、喜多きたにはひとり思出おもひでおほい。が、けるとかぜつめたい。所爲せゐか、何爲いつもそゞろさむえきである。
大阪まで (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
何處いつ、何處からゐなくなつたんだ」
侯国の臣下でありながら、自分の家廟で、天子の舞である八いつの舞を舞わせるような、僭上沙汰までやっていると聞くが、もしこれをも忍ぶとしたら、天下に忍びがたいものはないわけじゃ。
論語物語 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
かれ例年いつになく身體からだやつれがえた。かさ/\と乾燥かんさうした肌膚はだへが一ぱん老衰者らうすゐしや通有つういうあはれさをせてるばかりでなく、そのおほきな身體からだにくおちてげつそりとかたがこけた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
つれなくへされなば甲斐かひもなきこと、兎角とかく甚之助殿じんのすけどの便たよきたしとまちけるが、其日そのひ夕方ゆふがた人形にんぎやうちて例日いつよりもうれしげに、おまへうたゆゑ首尾しゆびよくかち
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
お前がそういつて剛情を張つておいでのところを見ると、うしてもあたしが彼家あすこ嫁入いつたのを根にもつて、あたしを呵責いためて泣かして、笑つてくれやうと思つておいでなのにちがひない。
もつれ糸 (新字旧仮名) / 清水紫琴(著)
おつ成長せいちやうまし/\器量きりやう拔群ばつくんすぐ發明はつめいなれば加納將監夫婦ふうふひとへに實子の如くいつくしみそだてけるさて或日あるひ徳太郎君につきの女中みなあつま四方山よもやまはなしなどしけるが若君には御運ごうんつたなき御生おうまれなりと申すに徳太郎君御不審ごふしんおぼしめし女中に向ひ其方ども予が事を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
ついに、その刀を打ち折り、その箭種やだね射尽いつくされたとでも申しましょうか……どうしても自殺されなければならぬ破目はめに陥って来られたのです。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
其れがまた以前の如く居付いつく様になり、到頭余が家のデカで死んだ。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
新開地に面白そうに、すぐ人畜が居著いつくのだ。
玄関や門などはなおさらのこと、……そういうもののあるのは、居附いつき地主か、名主なぬしか、医者の家位です。
われは車を下りて、些の稍事せうじを買はゞやと酒店の中に入りぬ。店の前には狹き廊ありて、小龕せうがんに聖母をいつきまつり、さゝやかなる燈を懸けたり。
それでそこの魚屋の主人は米は障子を開ける前に、きっと叔父おじさんは常日いつものように笑っているだろうと思って覗いて見たが、独人ひとりで恐い顔をして庭の同じ処を見詰めていた。
(新字新仮名) / 横光利一(著)
「帆村君」と大江山課長が近づいて「怪紳士の行方が分るのは幾時いつごろかね。十日も二十日もかかるのなら、こんなとこに立っていては風邪を引くからね」
流線間諜 (新字新仮名) / 海野十三(著)
此頃にお邪魔させていただきますわさていつ
黒手組 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
眦裂ねめつける體を見て重四郎はおくへも行れねば其儘そのまゝそこ/\我が家へ立歸り獨り倩々つく/″\かんがふるに毎度いつに變りし今日の樣子且番頭が我を眦裂ねめつけし事合點行ず扨は彼の文を父平兵衞に見せしにや其等それらの事より我が足を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
日本でも叡山の鼠禿倉の本地毘沙門ほんじびしゃもんといい(『耀天記ようてんき』)、横尾明神は本地毘沙門で盗をあらわすためにいつき奉るという(『醍醐寺雑事記』)などその痕跡を留むる。
代助の右隣みぎどなりには自分と同年輩の男が丸髷にいつた美くしい細君を連れててゐた。代助は其細君の横顔を見て、自分の近付ちかづきのある芸者によく似てゐると思つた。左隣ひだりどなりには男づれ四人許よつたりばかりゐた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
兄がおやじに言付いつけた。おやじがおれを勘当かんどうすると言い出した。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
美学者は笑いながら「実は君、あれは出鱈目でたらめだよ」と頭をく。「何が」と主人はまだいつわられた事に気がつかない。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
此の絵(千里駒のお龍逆鋒を抜く図)は違つて居ます。鋒の上は天狗の面を二ツ鋳付いつけて一尺回りもありませうか、から金で中は空であるいのです。
千里駒後日譚 (新字旧仮名) / 川田瑞穂楢崎竜川田雪山(著)
のみならず翁は蒐集家しゅうしゅうかです。しかし家蔵の墨妙のうちでも、黄金おうごん二十いつに換えたという、李営丘りえいきゅう山陰泛雪図さんいんはんせつずでさえ、秋山図の神趣に比べると、遜色そんしょくのあるのをまぬかれません。
秋山図 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
此君このきみにあたるひとあるまじとえけるが、ひめとは隨一いつなかよしにて、なにごとにも中姉樣ちうねえさましたれば、もとよりものやさしきたちの、これはまた一段いちだん可愛かあいがりて、ものさびしきあめなど
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)