いつ)” の例文
椿つばきこずゑには、ついのあひだ枯萩かれはぎえだつて、そのとき引殘ひきのこした朝顏あさがほつるに、いつしろのついたのが、つめたく、はら/\とれてく。
湯どうふ (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
いつ子モ出テ来ルッテ云ッテマシタカラ固ク止メテアルンデス。デスガ颯子ハイヽジャアリマセンカ、ドウシテ颯子ヲオ嫌イニナルンデス」
瘋癲老人日記 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
山中さんちゆうといふだいです。山中さんちゆうみゝきこえるものをいつとほりならべて、そしてものしづかなやま樣子ようすかんがへさせようとしたのです。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
きたない きものを きた こじきの ははおやが、いつつかむっつぐらいの どもを そばに すわらせて、おもちゃを やっているのでした。
一休さん (新字新仮名) / 五十公野清一(著)
そして、仮死したままうごかないまゆずみと、いつぎぬにつつまれた高貴さとに、女性美の極致を見たように茫然と打たれながら
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いつぎぬ檜扇おうぎをさしかざしたといったらよいでしょうか、王朝式といっても、丸いお顔じゃありません、ほんとに輪郭のよくととのった、瓜実顔うりざねがおです。
九条武子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
急に彼はその姿をとらへようといつ足追ひすがつた。がすぐに棒立ちにそこに立ちすくんでしまつた。ふと思ひあたるところが彼にはあつたのである。
黎明 (旧字旧仮名) / 島木健作(著)
右のかゝりに鼠色のペンキで塗つたいつぐらゐ平家ひらやがある。硝子がらす窓が広くけられて入口に石膏の白い粉がちらばつて居るので、一けん製作室アトリエである事を自分達は知つた。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
真鍮のだいの燭台を組、ちういつ組、銅の燭台を組、大大だいだいのおらんだの皿をさん枚、錦手にしきでの皿を三十枚、ぎやまんの皿を百人前、青磁せいじの茶碗を百人前、煙草盆を十個とを
住吉祭 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
いつたび目に尼提の曲った路にも、——尼提は狭い路をななたび曲り、七たびとも如来の歩いて来るのに出会った。殊に七たび目に曲ったのはもう逃げ道のない袋路ふくろみちである。
尼提 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
めしひの牡牛は盲のこひつじよりもく倒る、ひとつつるぎいつにまさりて切味きれあぢよきことしば/\是あり 七〇—七二
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
與吉よきちいつつのはるつた。ずん/\と生長せいちやうしてかれ身體からだはおつぎの重量ぢうりやうぎてる。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
交詢社こうじゅんしゃの広間に行くと、希臘風ギリシヤふうの人物を描いた「神の森ボアサクレエ」の壁画のもとに、いつもんの紳士やかわのフロックコオトを着た紳士が幾組となく対座して、囲碁仙集いごせんしゅうをやっている。
銀座 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
そのなかには、煉瓦れんがつくつたいつつのしつのある漢時代かんじだいはかがありました。それをいまから二十年にじゆうねんほどまへに、わたしりにまゐりましたが、かゞみだとかつちつくつたいへかたちだとかゞました。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
すると向うから、たすきがけの女が駈けて来て、いきなり塩瀬しおぜいつもんをつらまえた。
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
小劍は、親友の、徳田秋聲よりみつしたであり、正宗白鳥よりいつうへであつた。
「鱧の皮 他五篇」解説 (旧字旧仮名) / 宇野浩二(著)
五木ごぼくとは、いつつのおもしてふのですが、まだそのほかくりすぎまつかつらけやきなぞがえてます。もみつげえてます。それからとちえてます。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
二十年はたとせにあまるいつとせになるといふみほぎのにはに差せる光やうづのみひかり
つゆじも (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
ひいふうみいよういつひいふうみいよういつひいふうみいよういつ。」
湖水の女 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
いつ月ののち、司馬遷はふたたび筆をった。よろこびも昂奮こうふんもない・ただ仕事の完成への意志だけに鞭打むちうたれて、傷ついた脚を引摺ひきずりながら目的地へ向かう旅人のように、とぼとぼと稿を継いでいく。
李陵 (新字新仮名) / 中島敦(著)
何時いつかははふとぞんじたれど、おまへさまといふ御人おひとにはあきれまする、れがいつつやとを子供こどもではなし、十六といへばお子樣こさまもつひともありますぞや、まあかんがへて御覽ごらんなされお母樣はヽさまがお病沒なくなりからこのかた
経つくゑ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
つきほなくかなしかるかなかがなべて年のへだたりは三十みそあまりいつ
白南風 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
この山中にはいつのうつありて、その下に黄金を埋めてありとて、今もそのうつぎの有処ありかを求めあるく者稀々まれまれにあり。この長者は昔の金山師なりしならんか、このあたりには鉄を吹きたるかすあり。
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
いつこえたるがといふ者は長三郎とて今茲十九になる男子一にんさるに此長三郎はうまれ附ての美男にて女の如き者なればたれいふともなく本町業平なりひらまた小西屋の俳優息子やくしやむすこと評判殊にたかかるより夫婦は何卒なにとぞよきよめとつ樂隱居らくいんきよ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
いつたび歳のめぐる中、豐かに鐵を用ゐ得む
イーリアス:03 イーリアス (旧字旧仮名) / ホーマー(著)
いつ半下はんさがり頃かの、婆さん」
南国太平記 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
いつたび歌よみに与ふる書
歌よみに与ふる書 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
いつどき、宙にられて、少年が木曾山中さんちゅうで鷲の爪を離れたのは同じ日のゆうべ。七つ時、あいだ五時いつとき十時間である。里数はほぼ四百里であると言ふ。
妖魔の辻占 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
露をもった草の上に、ふさふさとした黒髪と、いつぎぬすそを流した、まだうら若い姫の顔がそっと横に寝かされた。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
下の入口から中は暗くて見かされないが、やはり小さい卓のいつつは土間に置かれてあるやうである。それから門口かどぐちに藤棚のやうにして藪からしが沢山たくさんはせてある。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
まどから半身はんしんしてゐたれいむすめが、あの霜燒しもやけのをつとのばして、いきほひよく左右さいうつたとおもふと、たちまこころをどらすばかりあたたかいろまつてゐる蜜柑みかんおよいつむつ
蜜柑 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
どうかんがへても、このいつつの現象げんしようが、ひとつの完全かんぜんやまのありさまにてゝかんじられてはません。こんなひとですから、時々とき/″\おどけたうたつくつて、ひとわらはせようとしました。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
いわ佃島つくだじま深川万年橋ふかがわまんねんばし本所竪川ほんじょたてかわ、同じく本所いつ羅漢寺らかんじ千住せんじゅ、目黒、青山竜巌寺あおやまりゅうがんじ、青山穏田水車おんでんすいしゃ神田駿河台かんだするがだい日本橋橋上にほんばしきょうじょう駿河町越後屋店頭するがちょうえちごやてんとう浅草本願寺あさくさほんがんじ品川御殿山しながわごてんやま
いつ子モ陸子モ予トハ反リガ合ワナイデ喧嘩バカリシテイタガ、ヤハリ声ヲ挙ゲテ泣ク。颯子ハキット平気ダロウナ。ソレトモ案外泣クカ知ラ。セメテ真似グライハシテミセルカ知ラ。
瘋癲老人日記 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
ひいふうみいよういつひいふうみいよういつひいふうみいよういつ。」
湖水の女 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
つきほなくかなしかるかなかがなべて年のへだたりは三十みそあまりいつ
白南風 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
たびいつたび甲板でつきの上をめぐれど
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
『は、は、は、』とかたちさだめず、むや/\の海鼠なまこのやうな影法師かげぼふしが、案山子かゝしあしもとをいつツむら/\とまとふてすゝむ。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
わけても、新婦は、まだ華燭かしょくのかがやきのせない金色こんじき釵子さいしを黒髪にし、いつぎぬのたもとは薫々くんと高貴なとめの香りを歩むたびにうごかすのだった。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いつ子トウマク行ク筈ガナイカラ、ドウセホンノ泊メテ貰ウダケダロウ。………
瘋癲老人日記 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
いつそ。
とんぼの眼玉 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
いつつださうで。……それ持參ぢさんで、取極とりきめた。たつたのは、日曜にちえうあたつたとおもふ。ねんのため、新聞しんぶん欄外らんぐわいよこのぞくと、その終列車しうれつしや糸崎行いとざきゆきとしてある。
雨ふり (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
四つかいつつ。
新頌 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
おつこちるといきほひよくみつツばかりくる/\とまつたあひだに、鮟鱇博士あんかうはかせいつツばかりおまはりをして、をのばすと、ひよいとよこなぐれにかぜけて、なゝめにんで
化鳥 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
四つかいつつ。
新頌 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
いつも松露の香がたつようで、実際、初茸はつたけ、しめじ茸は、この落葉に生えるのである。入口に萩の枝折戸しおりど、屋根なしに網代あじろがついている。また松の樹をいつ株、株。
古狢 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
いつどきの事で、侍町さむらいまちの人通りのない坂道をのぼる時、大鷲おおわしが一羽、虚空こくうからいわ落下おちさがるが如く落して来て、少年を引掴ひっつかむと、たちまち雲を飛んで行く。少年は夢現ゆめうつつともわきまへぬ。
妖魔の辻占 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
障子しやうじかして、たゝみおよ半疊はんでふばかりの細長ほそなが七輪しちりんに、いつつづゝした眞白まつしろ串團子くしだんごを、大福帳だいふくちやう權化ごんげした算盤そろばんごとくずらりとならべて、眞赤まつかを、四角しかく團扇うちはで、ばた/\ばた
松の葉 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
細君さいくん張氏ちやうしより、しかも、いつつばかり年少としわか一少女いちせうぢよ淡裝たんさう素服そふくして婀娜あだたるものであつた。
みつ柏 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
これだけを心遣こゝろやりに、女房にようばうは、小兒こどもたちに、まだばん御飯ごはんにもしなかつたので、さかあがるやうにして、いそいで行願寺内ぎやうぐわんじないかへると、路地口ろぢぐちに、よつつになるをんなと、いつつのをとこ
夜釣 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)