いつ)” の例文
と、宗教家は口癖のやうに言つてゐるが、さういふ宗教家は、いつも受ける方の地位には立つが、滅多に与ふる者にならうとはしない。
いつも樂しさうに見えるばかりか、心事こゝろばせも至て正しいので孤兒には珍しいと叔父をはじめ土地の者皆に、感心せられて居たのである。
少年の悲哀 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
児太郎は、寂しげな、しかも慣れた目付をしながら、それがいつも女のような姿をしつらえているように、立って弥吉の肩をそっと打叩いた。
お小姓児太郎 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
一寸ちょっと首を傾げた。これが何を聞く時でも雪江さんのる癖で、看慣みなれては居るけれど、私はいつも可愛らしいと思う。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
さて、中日の十四日の勘定前だから、小遣銭が、とて逼迫ひっぱくで、活動へも行かれぬ。斯様こんな時には、辰公はいつも、通りのラジオ屋の前へ、演芸放送の立聴きと出掛ける。
越後獅子 (新字新仮名) / 羽志主水(著)
豪く混むので一睡も出來ず、此頃はいつも連になる岩永良三君、名越徹君と退屈をカードにまぎらす。宇都宮で下車、曉の六時迄四時間といふものは時ならぬ無料宿泊である。
黒岩山を探る (旧字旧仮名) / 沼井鉄太郎(著)
始終使にばかり行っても居なかったろうが、私は勘ちゃんの事を憶出すと、何故だかいつも其使に行く姿を想出おもいだす。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
登山にはいつも苦手の笹などは藥にしたくもない程である。
黒岩山を探る (旧字旧仮名) / 沼井鉄太郎(著)
親仁おやじは郵便局の配達か何かで、大酒呑で、阿母おふくろはお引摺ひきずりと来ているから、いつ鍵裂かぎざきだらけの着物を着て、かかとの切れた冷飯草履ひやめしぞうりを突掛け、片手に貧乏徳利を提げ
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)