何日いつ)” の例文
「毎日」は何日いつでも私の方より材料たねが二つも三つも少かつた。取分け私自身の聞出して書く材料が、一つとして先方に載つて居ない。
菊池君 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
相「此の相川は年老いたれども、其の事は命に掛けて飯島様の御家おいえの立つように計らいます、そこでお前は何日いつ敵討に出立しゅったつなさるえ」
老俳友の南圃さんが何日いつか金沢の庭のなかできじの啼くのは、本多さんのお庭だけだ、一度見ておきたまへと言つたことを思ひ出した。
名園の落水 (新字旧仮名) / 室生犀星(著)
朝である、七宝寺しっぽうじの山で、ごんごんと鐘が鳴りぬいた、何日いつものときの鐘ではない、約束の三日目だ。吉報か、凶報かと村の人々は
宮本武蔵:02 地の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「どうして、江戸の女子はきれいでございますから」と、云って主翁は急に用を思い出したようにして、「命日は何日いつでございます」
立山の亡者宿 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
何日いつであったか寝床を出て鉢前の処の雨戸を繰ると、あの真正面まともに北を受けた縁側に落葉交りの雨が顔をも出されないほど吹付けている。
別れたる妻に送る手紙 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
この後にも、何日いつ何時なんどきそういったふらちな奴らの言葉に耳をお傾けになって、院宣をお下しになるか、わかったものではない。
ただある一人の友は、予が二三日前学校の窓に依りて、何日いつになく、沈んだる調子にて、何か考へいたりしを、見しといへり。
一青年異様の述懐 (新字旧仮名) / 清水紫琴(著)
蟻はちつとも休みなしに、そのどれにもこれにも一と口づつ食べ物をわけてやるのだ。そして、それが育つて行つて、何日いつか蟻になるのだ。
の女がここのかどくぐった所を見ると、妾は何日いつでも押掛おしかけて来て、頭の毛を一本一本引ッこ抜いてるから、う思っておいでなさい。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
今後とも、貴方は狭山さんの為には何日いつでも死んで下さい。何日でも死ぬと云ふ覚悟は、始終きつと持つてゐて下さい。可う御座いますか。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
「だけど残念なのは、あの混血児の小僧を逃がしたことですよ父さん、奴は又きっと何日いつか仕返しにやって来ますぜ……」
黒襟飾組の魔手 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
しかし何日いつどう云う風にして各自めいめいが別れ別れになるにしても、きっとうちの者は誰一人あのちびのティムのことを——うん
「ええ、実は昨晩少し天候が悪かったものですから責任上心配して、今朝は何日いつもより少し早く六時半に出勤しました」
デパートの絞刑吏 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
「そしたらそれ何日いつにしょう?」「何日いついうたかて、こないに監禁同様にしられてたら、今日より外に機会あれへん。」
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
愈々いよ/\何日いつ決定きまつた?」と女の顏をぢつと見ながら訊ねた。女は十九か二十の年頃、色青ざめても力なげなる樣は病人ではないかと僕の疑つた位。
少年の悲哀 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
「すると、その辺のことを、正確に記憶していますか。お父さんが、そういう行動を始めたのは、何日いつごろだったか」
潜航艇「鷹の城」 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
何故なら、何日いつか暇な時、その深淵をのぞき、その祕密を探り、その本性を分解することが出來るかも知れないから。
これは或るいは私の自惚れかも知れませんが、何日いつも魯迅さんのことを話しているとそんなことが頭に浮んで来て一人で微苦笑することがありますネー。
魯迅さん (新字新仮名) / 内山完造(著)
そして何日いつかはかみなりのようなおとがして、その格子戸がくだろうと、甘いあくがれを胸に持って待っていて見たけれど、とうとう格子戸はかずにしまった。
何日いつながめても何とも言わず美くしく、どんな気持のあしい時とても、あの絵すがたを見さえすれば、かくも美くしく生れついたわが身の仕合せを思い出し
艶容万年若衆 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
何日いつだったか、一寸ちょっと忘れたが、ある冬の夜のこと、私は小石川区金富町こいしかわくきんとみちょう石橋思案いしばししあん氏のうちを訪れて、其処そこを辞したのは、最早もう十一時頃だ、非常に真暗まっくらな晩なので
青銅鬼 (新字新仮名) / 柳川春葉(著)
槌で叩たなら頭が砕けるにもしろ必ず膨揚はれあがります決して何日いつまでも凹込んで居ると云う筈は無い、それだのにアノ傷が実際凹込んで居るのはう云う訳でしょう
無惨 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
三年前の夜這星よばいぼしの出る晩というのは、何日いつのことだか、その夜這星とは、何の星のことだかわからない。
大菩薩峠:28 Oceanの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
兄に頼めば今日明日きょうあすにもかたがつくものと、思い込んでいたのに、何日いつまでもらちが明かないのみか、まだ先方へ出かけてもくれないので、だいぶ不平になったのである。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
この家ならば、何日いつか遠い以前にでも、夢にであるか、幻にであるか、それとも疾走する汽車の窓からででもあつたか、何かで一度見たことがあるやうにも彼は思つた。
せた男は役人生活をしてゐるからには、何日いつまた大臣の椅子になほらうかも知れぬ加藤さんだ、一寸出迎へをした位で、そんな場合に官等の一つもあがる事が出来たなら
初めのうちは牛肉を食べたかったので、母が持って来てくれるまでに御飯を食べてしまわないようと少しずつ遅くかかって食べ出したが、何日いつにかお腹がふくれて来た。
(新字新仮名) / 横光利一(著)
何日いつぞやは障子を開けておいたのが惡いとかいつて、突然手近にあつた子供の算盤そろばんで細君の横面よこつらを思ひきりなぐつた。細君の顏はみる/\腫れ上つた、眼にも血がにじんで來た。
一家 (旧字旧仮名) / 若山牧水(著)
「さあ、——」と帆村は首領の背中を銃口で押して威嚇いかくした。「この図譜が出て来たからには、もう観念してよいだろう。こいつの実行期は何日いつだ、それを云ってみたまえ」
流線間諜 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「節分から百四十四日目は、八十八夜から五十六日目じゃないか、八十八夜は何日いつだい?」
予はわけて草餅を好むを以て日々の喰料とせり。亦久しく貯えて長く用ゆるには、煮て干し上げて貯うる時は、何日いつも草餅を喰せんと欲する時に臨んで草餅と為す事を得るなり。
関牧塲創業記事 (新字新仮名) / 関寛(著)
姉がまだ東京に居ました頃、あの家の二階の袋戸棚の前へ幼い甥を呼びつけて、その戸棚の中に入れて置いた燒饅頭やきまんぢゆう何日いつの間にか失くなつたことを責めたことが有りました。
愛子さんに深い親しみを感じていらっしゃればこそ、けさはわざわざ何日いつごろ死ぬだろうと見に来てくださったのね。なんとお礼を申していいか、そこはお察しくださいまし。
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
謀反人も明智のやうなは道理もつともだと伯龍が講釈しましたが彼奴のやうなは大悪無道、親方は何日のつそりの頭を鉄扇で打ちました、何日いつ蘭丸にのつそりの領地をると云ひました
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
何日いつも眼ぼしい物のない家の中をかきまはした後で子供達二人が縮こまつて眠つてゐる蒲団をハギとつて子供達を畳の上にころがし、台所のかまどから釜を持つて出てゆきました。
火つけ彦七 (新字旧仮名) / 伊藤野枝(著)
久し振りの歌舞伎かぶきが楽しみだとか、福助が早く見たいとか、何日いつの音楽会は誰さんのピアノが一番聴きものだとか、女の癖に東京風の牛鍋ぎゅうなべが早くたべたいとか、とか、とか、とか
猟奇の果 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
ひとえ定役ていえき多寡たかを以て賞罰の目安めやすとなせしふうなれば、囚徒は何日いつまで入獄せしとて改化遷善せんぜんの道におもむかんこと思いもよらず、悪しき者は益〻悪に陥りて、専心取締りの甘心かんしんを迎え
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
それはあだかも、彗星ほうきぼしが出るような具合に、往々おうおうにして、見える。が、彗星ほうきぼしなら、天文学者が既に何年目に見えると悟っているが、御連中ごれんちゅうになると、そうはゆかない。何日いつ何時なんどきか分らぬ。
一寸怪 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
その前にも二、三度ったおり言ってみたが、微笑と軽いうなずきだけで、さて何日いつになっても日を定めて語ろうとした事のなかったのは、全くあの人にとっても遺憾なことであった。
マダム貞奴 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
漸々だんだん自分の行末いくすえまでが気にかかり、こうして東京に出て来たものの、何日いつ我がのぞみ成就じょうじゅして国へ芽出度めでたく帰れるかなどと、つまらなく悲観に陥って、月をあおぎながら、片門前かたもんぜんとおりを通って
死神 (新字新仮名) / 岡崎雪声(著)
などとげんは誇っていた。結婚の日どりも何日いつごろというようなことを監が言うと、おとどのほうでは、今月は春の季の終わりで結婚によろしくないというような田舎めいた口実で断わる。
源氏物語:22 玉鬘 (新字新仮名) / 紫式部(著)
何日いつになつたつて我々われ/\けつしてすものか。』イワン、デミトリチはふ、『我々われ/\こゝくさらしてしま料簡れうけんだらう! 來世らいせい地獄ぢごくがなくてるものか、這麼人非人共こんなひとでなしども如何どうしてゆるされる、 ...
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
戦争いくさはいやなもんでごあんすの、山木さん。——そいでその婚礼は何日いつ?」
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
賢一郎 (やや真面目に)杉田さんがその男に会うたのは何日いつのことや。
父帰る (新字新仮名) / 菊池寛(著)
まへこゝろ虚僞いつはりがなく、まこと夫婦めをとにならうなら、明日あす才覺さいかくして使者つかひをばげませうほどに、何日いつ何處どこしきぐるといふ返辭へんじをしてくだされ、すれば、一しゃう運命うんめいをばおまへ足下あしもと抛出なげだして
何日いつかねえ、このお庭で、この離れで母様は坊やの夢を見たのよ」
少年・春 (新字新仮名) / 竹久夢二(著)
或時は里の子供等を集めて、昔の剛者つはものの物語など面白く言ひ聞かせ、喜び勇む無邪氣なる者のさまを見て呵々と打笑ふ樣、二十三の瀧口、何日いつに習ひ覺えしか、さながら老翁の孫女をもてあそぶが如し。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
余の得し所これにとどまらず、余は天国と縁を結べり、余は天国ちょう親戚を得たり、余もまた何日いつかこの涙のさとを去り、余の勤務つとめを終えてのち永き眠に就かん時、余は無知の異郷に赴くにあらざれば
基督信徒のなぐさめ (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
あたたかくると思ひて何日いつしかに身に付く清さしむ日に持つ
遺愛集:02 遺愛集 (新字新仮名) / 島秋人(著)