いつ)” の例文
「おっと、待てよ。これは悴の下駄を買うのを忘れたぞ。あいつ西瓜すいかが好きじゃ。西瓜を買うと、おれもあ奴も好きじゃで両得じゃ。」
(新字新仮名) / 横光利一(著)
「どいつも、此奴も、ろくでもねえくずばかり。何だって、俺あ、あんな狐鼠狐鼠こそこそ野郎ときたねえ、血などめ合って、義兄弟になったんだろう」
雲霧閻魔帳 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
だが、僕は、君があの証人と何か話合っている間に、あの芝草の中から、こいつを、このレコードの缺片かけらを、拾い上げたんさ。
花束の虫 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
「そうだ。ミミ族だ。さっきから音響砲の砲撃をくらって、かなり弱っている。さあ、そこをつけこんで、あいつらを、みな生擒いけどりにしてもらおう」
宇宙戦隊 (新字新仮名) / 海野十三(著)
いつが 鈴なんぞさげてどうするのだ ときいたから私は、迷子になつたとき音をきいて伯母さんが捜しにくるためだ といつたら彼らはさも軽蔑したらしく顔を見合せた。
銀の匙 (新字旧仮名) / 中勘助(著)
……こいつみはづしてかはへはまると、(浦安うらやすかう、浦安うらやすかう)ときます。
深川浅景 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
茂兵衛 思い出されねえのは却って仕合せでござんす、あいつかとわかっては面目ねえ。立退くなら早いがいい。事によったら一里ばかりは。ご免なさんせ。(戸を開けて出て行く)
一本刀土俵入 二幕五場 (新字新仮名) / 長谷川伸(著)
そいつを真先にもみ消したなあどいつだ!
いつはただの山師ではないぞ、——
しらを切ったのはどいつだ!
蕗のとうを摘む子供等 (新字新仮名) / 長沢佑(著)
ずるずると引きずり降ろすと、あわれやこいつおしか片輪か、なんにもいわずペタリと坐って、両手を合せて拝んだものです。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「御橋も達者だ。しかし、先生、どうもあんまりめかけを大切にするのでつき合いにくいよ。あいつも参木のような馬鹿者だね。」
上海 (新字新仮名) / 横光利一(著)
洋服の上へ着ていた浴衣を脱いでカバンへ突込むと、そいつを邸内へ置きにいったついでに、大急ぎで庭下駄の詭計トリックを弄し、女中達を叩き起したと云う寸法だ。
石塀幽霊 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
「おい、早く蒲団を持って来ないか。由蔵はどうしたんだ、いったいあいつは何処へ行っちまったんだ?」
電気風呂の怪死事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
いつ、評判は良かねえんだ。
一本刀土俵入 二幕五場 (新字新仮名) / 長谷川伸(著)
「だが、兎に角こいつは、ひょっとすると証人の責任問題になるかも知れませんから、その点心得ていて下さい」
石塀幽霊 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
みなやめちゃったのもそれなんだよ。あいつらはそこがまた豪いとこなんだね。矢っ張りインテリの重役じゃなくちゃ駄目なんだよ。ヨーロッパはどうだね。近頃は
厨房日記 (新字新仮名) / 横光利一(著)
いつは、すこぶる変った賊でございまして、変った物ばかり盗んで行くのです。
「こいつ、乱心したな」
討たせてやらぬ敵討 (新字新仮名) / 長谷川伸(著)
いつをあの晩ゴタゴタ並べて強請ゆすりに来たんだ。だから片付けちまったんだ。ただ、それだけさ。
カンカン虫殺人事件 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
「じゃ、今夜弟はここへ来るんだな。僕はあいつをこないだから探してたんだが。」
上海 (新字新仮名) / 横光利一(著)
「吁ッ! あいつの血だ! 由蔵が殺られてるんですぜ!」
電気風呂の怪死事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
と云ってまた馳け出すのを見ると、梶はこいつは日本人だと思ってひそかに喜んだ。
厨房日記 (新字新仮名) / 横光利一(著)
そしてその奇蹟を発見みつけた犯人が、そいつを利用して故意に君達証人、特に郵便屋のように一定の時刻にきっとあの辺を通る男の面前で、巧妙な犯罪を計画したんだよ。あ、どうしたんだ。君。
石塀幽霊 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
「あいつの鶯はまだ子供だね。俺のは親鳥だぞ。お前も一つやってみないか」
比叡 (新字新仮名) / 横光利一(著)
『ハッハッハッハッ——あいつぁ僕にも、矢島が自白するまでは少しも判らなかったよ。ただ、前後の事情を考えて見て、何故なぜ話を丸くしなかったのか——なんてカマを掛けて見たけなんだ。』
カンカン虫殺人事件 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
「ロシアか、あれは不思議なやつだのう。わしにはあいつは分らんよ。」
上海 (新字新仮名) / 横光利一(著)
『こいつなんですがね。——』
カンカン虫殺人事件 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
(こいつ、俺そっくりじゃないか。)
御身 (新字新仮名) / 横光利一(著)