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例
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いつ
ふりがな文庫
“
例
(
いつ
)” の例文
「どなた。」と、淺野が優しい顏には不似合に突き出た咽喉佛を、ゴク/\動かして、咎めるやうに言つた聲は、
例
(
いつ
)
もよりまだ太かつた。
太政官
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
『
否
(
いや
)
、有難う。』と竹山は
例
(
いつ
)
になく礼を云つたが、
平日
(
いつも
)
の癖で直ぐには原稿に目もくれぬ。渠も亦
平日
(
いつも
)
の癖でそれを一寸不快に思つたが
病院の窓
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
義男はもうこの女を切り放さなければならなかつた。——斯う云ふ時には
例
(
いつ
)
も
手強
(
てづよ
)
い抵抗をみのるに對して見せ得る男であつた。
木乃伊の口紅
(旧字旧仮名)
/
田村俊子
(著)
あゝと貞之進は初めて声を出して答え、よく
入来
(
いらし
)
ってよと解けた詞に嬉しさは頸筋元から這入って、
例
(
いつ
)
もの通り肚で躍って居た。
油地獄
(新字新仮名)
/
斎藤緑雨
(著)
そうしてその
後
(
あと
)
から
暗
(
あん
)
に
人馴
(
ひとな
)
れない継子を
憐
(
あわ
)
れんだ。最後には何という気の毒な女だろうという
軽侮
(
けいぶ
)
の念が
例
(
いつ
)
もの通り起った。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
▼ もっと見る
馬車や自働車の
燈
(
ひ
)
のくるめき、電車の
鐸
(
すず
)
——銀座の二丁目から三丁目にかけて
例
(
いつ
)
も見馴れた浅はかな喧騒の市街が今はぼかされ掻き消されて
桐の花
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
と、私も何だか観せてやり
度
(
たく
)
なって、芝居だって観ように由っては
幾何
(
いくら
)
掛るもんかと、
不覚
(
つい
)
口を滑らせると、お糸さんが
例
(
いつ
)
になく大層喜んだ。
平凡
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
よりによって順平のお母が産気づいて、
例
(
いつ
)
もは自転車に乗って来るべき産婆が雨降っているからとて傘さして高下駄はいてとぼ/\と辛気臭かった。
放浪
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
「然しあんなに駄目を押して、
予防線
(
くぎ
)
をさすッてエなア
何様
(
どう
)
せ
例
(
いつ
)
もの
洞喝
(
おどかし
)
だろうが——奴等も大部こたえたらしいナ」
監獄部屋
(新字新仮名)
/
羽志主水
(著)
黒板には只一つ
樺太
(
からふと
)
定期ブラゴエ丸の二等料理人の口が出ているだけで、その前の大
卓
(
テーブル
)
の上に車座に
胡座
(
あぐら
)
を
掻
(
か
)
いて、
例
(
いつ
)
もの連中が朝から壷を伏せていた。
上海された男
(新字新仮名)
/
牧逸馬
(著)
私は産の
気
(
け
)
が附いて
劇
(
はげ
)
しい陣痛の襲うて来る度に、その時の感情を偽らずに申せば、
例
(
いつ
)
も男が憎い気が致します。
産屋物語
(新字新仮名)
/
与謝野晶子
(著)
それから「松の落葉」といふのも元祿の小唄を集めたのではなくて、
例
(
いつ
)
もの藤井何とかいふ人の隨筆集であつた。
京阪聞見録
(旧字旧仮名)
/
木下杢太郎
(著)
例
(
いつ
)
になく左眼をショボショボさせて、口の中でつぶやきましたが、これはこの時の左膳の正直な感想でしたろう。
丹下左膳:02 こけ猿の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
◎
山城
(
やましろ
)
の
相楽郡木津
(
さがらぐんきづ
)
辺の或る寺に某と云う
納所
(
なっしょ
)
があった、身分柄を思わぬ
殺生好
(
せっしょうずき
)
で、師の坊の
誡
(
いまし
)
めを物ともせず、
例
(
いつ
)
も大雨の後には寺の裏手の小溝へ出掛け
枯尾花
(新字新仮名)
/
関根黙庵
(著)
「浜子さんが、ムッと黙っているので、おばさんが、その代りにニコニコ、ニコニコして、
阿亀
(
おかめ
)
さんがわらっているように、
例
(
いつ
)
も笑い顔をしてるでしょう。」
朱絃舎浜子
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
例
(
いつ
)
になく
厭
(
いと
)
い避けるような調子で言って、叔父が机に
対
(
むか
)
っていたので、お俊はまた何か機嫌を
損
(
そこ
)
ねたかと思った。
手持不沙汰
(
てもちぶさた
)
に、勝手の方へ引返して行った。
家:02 (下)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
彼
(
かれ
)
は
更
(
さら
)
に
栗
(
くり
)
の
木
(
き
)
の
茂
(
しげ
)
つた
葉
(
は
)
の
間
(
あひだ
)
から
針
(
はり
)
の
先
(
さき
)
で
突
(
つ
)
くやうにぽちり/\と
洩
(
も
)
れて
射
(
さ
)
す
光
(
ひかり
)
を
避
(
さ
)
けて
例
(
いつ
)
もの
如
(
ごと
)
く
藺草
(
ゐぐさ
)
の
編笠
(
あみがさ
)
を
被
(
かぶ
)
つて、
麻
(
あさ
)
の
紐
(
ひも
)
を
顎
(
あご
)
でぎつと
結
(
むす
)
んである。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
新派俳優の
深井
(
ふかゐ
)
八
輔
(
すけ
)
は、
例
(
いつ
)
もの通り、
正午
(
おひる
)
近くになつて眼を覚した。
戸外
(
そと
)
はもう晴れ切つた秋の日である。
虎
(新字旧仮名)
/
久米正雄
(著)
皆は言ひ合せたやうに、眼を閉ぢて
睡
(
ねむ
)
つた風をしてゐた。医学士は娘に向つて、一言二言話してゐるうちに、
例
(
いつ
)
も女を
蕩
(
たら
)
す折にするやうに、掌面の講釈を始めた。
茶話:02 大正五(一九一六)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
己れは何うしても不思議でならない、と燒あがりし餅を兩手でたゝきつゝ
例
(
いつ
)
も言ふなる心細さを繰返せば、夫れでもお前笹づる錦の守り袋といふ樣な證據は無いのかえ
わかれ道
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
またお町も
例
(
いつ
)
になく磨き立て、立派に髪を結上げまして、当日は別して美しく化粧を致しました。
後の業平文治
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
楊庵は
肥胖漢
(
ひはんかん
)
で、其大食は師友を驚かしたものである。渋江抽斎は楊庵の来る毎に、
例
(
いつ
)
も三百文の切山椒を饗した。三百文の切山椒は飯櫃の
蓋
(
ふた
)
に盛り上げる程あつたさうである。
伊沢蘭軒
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
貝島は
例
(
いつ
)
になくムカムカと腹を立てゝ顔色を変えた。なぜかと云うのに、沼倉が自分の罪をなすりつけようとした野田と云う少年は、平生から温厚な品行の正しい生徒なのである。
小さな王国
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
其
(
その
)
動力
(
どうりよく
)
は
常
(
つね
)
に
石油發動力
(
せきゆうはつどうりよく
)
にあらずば、
電氣力
(
でんきりよく
)
と
定
(
さだ
)
まり、
艇形
(
ていけい
)
は
葉卷烟草形
(
はまきたばこがた
)
に
似
(
に
)
て、
推進螺旋
(
スクリユー
)
の
翅
(
つばさ
)
の
不思議
(
ふしぎ
)
に
拗
(
よぢ
)
れたる
有樣
(
ありさま
)
など、
例
(
いつ
)
もシー、エヂスン
氏等
(
しら
)
の
舊套
(
きゆうとう
)
を
摸傚
(
もほう
)
するばかりで
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
ロミオ
頼
(
たの
)
もしらしい
夢
(
ゆめ
)
の
告
(
つげ
)
が
實
(
まこと
)
ならば、やがて
喜
(
よろこ
)
ばしい
消息
(
たより
)
があらう。わが
胸
(
むね
)
の
主
(
ぬし
)
(戀の神)もいと
安靜
(
やすら
)
かに
鎭座
(
ちんざ
)
めされた、されば
例
(
いつ
)
になく
嬉
(
うれ
)
しうて/\、
日
(
ひ
)
がな
一日
(
ひとひ
)
心
(
こゝろ
)
が
浮
(
う
)
かるゝ。
ロミオとヂュリエット:03 ロミオとヂュリエット
(旧字旧仮名)
/
ウィリアム・シェークスピア
(著)
葬式が濟んだばかり、何となく落着かない家の中へ、岡つ引二人迎へて、あんまり嬉しい顏をする者はありませんが、平次は一向平氣で、お染を引付けて、
例
(
いつ
)
もにない杯などを取ります。
銭形平次捕物控:073 黒い巾着
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
そは
例
(
いつ
)
もこの店先にある日用諸雑記の帳なるか、もしそれならばわれ覚えたり、いざいざ書いて得させんとて、新しき帳を開き、ことごとく写し
認
(
とど
)
めて与えにければ、主の男はかつ感じかつ歓びけり
失うた帳面を記憶力で書き復した人
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
「
死出
(
しで
)
」の
揷頭
(
かざし
)
と、
例
(
いつ
)
も
例
(
いつ
)
もあえかの花を編む「
命
(
いのち
)
」。
海潮音
(旧字旧仮名)
/
上田敏
(著)
幼い自分が別に大人の話を聽かうとするのではなく、
例
(
いつ
)
もの通り父の根付けの積りで、居間へ入つて行くと、父は珍らしく怖い顏と高い聲とで
父の婚礼
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
それから
何時
(
なんじ
)
だか分らない朝の光で眼を
覚
(
さ
)
ました。雨戸の
隙間
(
すきま
)
から差し込んで来るその光は、明らかに
例
(
いつ
)
もより寝過ごした事を彼女に物語っていた。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
奈何
(
どう
)
したのか、鍛冶屋の
音響
(
ひびき
)
も今夜は
例
(
いつ
)
になく早く止んだ。高く流るる天の河の下に、村は死骸の様に黙してゐる。
赤痢
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
まさかとは頼みにもしていたのですが、ところが
直
(
すぐ
)
近所の
料理店
(
りょうりや
)
へ、
例
(
いつ
)
も来る豆腐売りがぼんやりと荷物ももたずに来て、実は
昨夜
(
ゆうべ
)
、御近所の
何
(
なに
)
さんに
浜町河岸
(
はまちょうがし
)
で
人魂火
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
下級吏員の収入問題は、
従来
(
これまで
)
池上氏が取扱つて来た多くの難問題に比べて、別に解決し易いといふ程度の物ではなかつたが、市長は
例
(
いつ
)
になく自分一人で考へ込んだ。
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
和泉屋の晴れの
披露目
(
ひろめ
)
とあって、
槙町
(
まきちょう
)
亀屋
(
かめや
)
の大浚えには
例
(
いつ
)
もの通り望月が心配して下方連を集めて来たまでは好かったが、笛を勤めるのが乗物町の名人又七と聞いて
助五郎余罪
(新字新仮名)
/
牧逸馬
(著)
三吉は直ぐ
箸
(
はし
)
を
執
(
と
)
らなかった。
例
(
いつ
)
になく、彼は自分で自分を責めるようなことを言出した。「実に、自分は馬鹿らしい性質だ」とか、何だとか、種々なことを言った。
家:02 (下)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
三年前にも来て降らせた。よりによって順平のお母が産気づいて、
例
(
いつ
)
もは自転車に乗って来るべき産婆が雨降っているからとて傘さして高下駄はいてとぼとぼ辛気臭かった。
放浪
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
鹿田が
例
(
いつ
)
になく丁寧な言葉使をするのが、富之助にはまた非常に氣味が惡かつた。
少年の死
(旧字旧仮名)
/
木下杢太郎
(著)
下に着て居る古渡の更紗も面白くなく、
柿色
(
かきいろ
)
の
献上博多
(
けんじょうはかた
)
の帯も面白くなく、後に聞けば生意気を以て新道に鳴る花次の調子のなおさら面白くなく、それに
例
(
いつ
)
もの婢が二階座敷に出て居て
油地獄
(新字新仮名)
/
斎藤緑雨
(著)
『おゝ、それも
左樣
(
さう
)
だ、
私
(
わたくし
)
の
考通
(
かんがへどう
)
りにも
行
(
い
)
かないな、
之
(
これ
)
から
糧食
(
かて
)
を
積入
(
つみい
)
れたり、
飮料水
(
のみゝづ
)
の
用意
(
ようゐ
)
をしたりして
居
(
を
)
ると、
矢張
(
やはり
)
出發
(
しゆつぱつ
)
は
明朝
(
あすのあさ
)
になるわい。』と
獨言
(
ひとりご
)
つ、
此
(
この
)
男
(
をとこ
)
例
(
いつ
)
もながら
慓輕
(
へうきん
)
な
事
(
こと
)
よ。
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
心ならずも
商
(
あきな
)
いをしまい
夕方帰
(
かえっ
)
て留守中の
容子
(
ようす
)
を聞くと、
例
(
いつ
)
も
灯
(
ひ
)
の
付
(
つく
)
ように
泣児
(
なくこ
)
が、一日一回も
泣
(
なか
)
ぬと
言
(
いわ
)
れ、不審ながらも
悦
(
よろこ
)
んで、それからもその通りにして毎日、
商
(
あきな
)
いに
出向
(
でむく
)
に
何
(
なに
)
とても
枯尾花
(新字新仮名)
/
関根黙庵
(著)
お京さん
母親
(
おふくろ
)
も
父親
(
おやぢ
)
も
空
(
から
)
つきり
当
(
あて
)
が無いのだよ、親なしで産れて来る子があらうか、己れはどうしても不思議でならない、と焼あがりし餅を両手でたたきつつ
例
(
いつ
)
も言ふなる心細さを繰返せば
わかれ道
(新字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
みのるの
例
(
いつ
)
もするやうに風呂敷包みを持つて、氣取つたお辭儀をしてから
木乃伊の口紅
(旧字旧仮名)
/
田村俊子
(著)
其面
(
そのかお
)
を見ると、私は急に元気づいて、
例
(
いつ
)
になく
壮
(
さかん
)
に
饒舌
(
しゃべ
)
った。何だか皆が私の挙動に注目しているように思われてならなかった。無論友達は
家
(
うち
)
で
立際
(
たちぎわ
)
に私の泣いたことを知る筈はないから……
平凡
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
「
死出
(
しで
)
」の
挿頭
(
かざし
)
と、
例
(
いつ
)
も
例
(
いつ
)
もあえかの花を編む「命」。
海潮音
(新字旧仮名)
/
上田敏
(著)
ガラッ八は
例
(
いつ
)
ものように絵解きをせがみます。
銭形平次捕物控:104 活き仏
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
千代松は
例
(
いつ
)
も自分の坐るところへ例ものやうな形に、
版
(
はん
)
こで
捺
(
お
)
した如くキチンと坐つて、肩を搖り/\低い聲で言つた。
天満宮
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
奈何したのか、鍛冶屋の響も今夜は
例
(
いつ
)
になく早く止んだ。高く流るゝ天の河の下に、村は死骸の樣に默してゐる。
赤痢
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
電気燈のまだ
戸
(
こ
)
ごとに
点
(
とも
)
されない頃だったので、客間には
例
(
いつ
)
もの通り暗い
洋燈
(
ランプ
)
が
点
(
つ
)
いていた。
道草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
記者はそんな折に
例
(
いつ
)
もするやうに煙草を
喫
(
ふか
)
さうと思つて
上衣
(
うはぎ
)
のポケツトに手を入れた。指先に触つたのは煙草では無くて、矢張その頃の文士の一人フランソア・コツペエの詩集であつた。
茶話:02 大正五(一九一六)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
それに
鉤手
(
かぎのて
)
に一連の山があり、そしてその間が平地として、汽車に依つて遠國の蒼渺たる平原と聯絡するやうな、或るやや大きな町の空をば、この日
例
(
いつ
)
になく鈍い緑色の空氣が
被
(
おほ
)
つてゐる。
少年の死
(旧字旧仮名)
/
木下杢太郎
(著)
例
常用漢字
小4
部首:⼈
8画
“例”を含む語句
慣例
例之
例令
常例
定例
例外
例年
例日
通例
先例
實例
比例
恒例
例証
実例
惡例
例刻
其例
好例
吉例
...