いつ)” の例文
且つまた、本当の安楽は、世の見て以ていつとするところに存在せずして、見て以てろうとするところに存在するのではございますまいか。
大菩薩峠:38 農奴の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
迎えて陣屋の設けもできていません。今、直ちに逆寄さかよせをなし給えば、いつをもって労を撃つで——必ず大捷たいしょうを博すだろうと思います
三国志:04 草莽の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かん中の余技よぎとしてたのしむ僕達ぼくたち棋戰きせんでさへ負けてはたのしからず、あく手をしたりみの不足でみをいつしたりした時など
令息には正に違いないが、余り懇意に話をしたせいか、令息と呼ぶのは空々しい気がする。が、兎に角その令息のいつ氏なぞと愉快に溯江を続ける事が出来た。
長江游記 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
建築家けんちくか勿論もちろん、一ぱん人士じんしへず建築界けんちくかい問題もんだい提出ていしゆつして論議ろんぎたゝかはすことはきわめて必要ひつえうなことである。假令たとひその論議ろんぎ多少たせう常軌じやうきいつしてもそれ問題もんだいでない。
建築の本義 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
それは實に恐ろしい技術ぎじゆつです。もつと昨夜ゆうべ兩國橋の下では、四人狙つて三人はいつし、一人だけ殺したわけですが、それにも何にか、含みがあつたのかも知れません。
また獲物えものするどみづつてすゝんでるのを彼等かれら敏捷びんせふ闇夜あんやにもかならいつすることなく、接近せつきんした一刹那せつな彼等かれら水中すゐちうをどつて機敏きびんあみもつ獲物えものくのである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
あとで、近所きんじよでも、たれ一人ひとりばらしいむれ風説うはさをするもののなかつたのをおもふと、渠等かれらは、あらゆるひとから、不可思議ふかしぎ角度かくどれて、たくみいつつたのであらうもれぬ。
番茶話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「なるほど、それがよろしかろう。いつをもって労を討つ、これ日本の兵法の極意じゃ」
次に寛政三年六月四日に、寄合よりあい戸田政五郎とだまさごろう家来納戸役なんどやく金七両十二人扶持川崎丈助かわさきじょうすけむすめを迎えたが、これは四年二月にいつというむすめを生んで、逸が三歳で夭折ようせつした翌年、七年二月十九日に離別せられた。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
かんざしにて雪のふかさをはかるときは畳算たたみざんと共に、ドドいつ中の材料らしくいやみおほくしてここには適せざるが如し。「はかりし」とここには過去になりをれど「はかる」と現在にいふが普通にあらずや。
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
桃花馬とうくわばいつせり
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
これいつをもって労を待つかたち。兵法にもこういっておる。——客兵倍ニシテ主兵半バナルモノハ、主兵ナオヨク客兵ニ勝ツ——と。
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
耕耘かううん時期じきいつしてるのと、肥料ひれう缺乏けつばふとでいく焦慮あせつても到底たうてい滿足まんぞく結果けつくわられないのである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
つたなかな驕奢けうしやれふ一鳥いつてうたかいつして、こだまわらふこと三度みたび
月令十二態 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
いつを以て労を待つの計となりましょう。
三国志:09 図南の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)