いつ)” の例文
然し今の日本は、かみにもひとにも信仰のない国柄くにがらであるといふ事を発見した。さうして、かれは之をいつに日本の経済事情に帰着せしめた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
かの天をつかさどるもの、またその徳をあまたにしてこれを諸〻の星に及ぼし、しかして自らいつなることをたもちてめぐる 一三六—一三八
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
ぴらみっとやふるはかからたいろ/\の寶物ほうもついつぱいありまして、いまから四五千年前しごせんねんまへ王樣おうさまのみいらも、そのまゝることが出來できます。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
そしていつぱし立派な仕事をつてのけた積りで、上機嫌で受附のぼん/\時計にまで会釈をしながら、のつそり自動車に乗り込む。
いつはその布引より、一は都賀野村つがのむら上野より、他は篠原しのはらよりす。峰の形峻厳崎嶇しゅんげんきくたりとぞ。しかも海を去ること一里ばかりに過ぎざるよし。
一景話題 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
この派の詩の根調こんてうとなるものは新英雄主義ヌウボウ・ヒロイズムである。また活動主義である。いつはニイチエなどの感化、いつはヹルハアレンなどの影響であらう。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
こういうことは東西そのいつにするのかも知れぬが、わしも六十六番の二階で、よくその時計の鳴音なるおとを聴いたのが今も耳の底に残っている。
不吉の音と学士会院の鐘 (新字新仮名) / 岩村透(著)
恵王は打返して「いずれくこれをいつにする」と問うた時に、孟子は「人を殺すをたしなまざるものくこれをいつにせん」といった。
永久平和の先決問題 (新字新仮名) / 大隈重信(著)
いつ時立たない中に、婢女めやつこばかりでなく、自身たちも田におりたつたと見えて泥だらけになつて、若人たち十数人は戻つて来た。
死者の書:――初稿版―― (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
児を分娩すると同時に、またもいつの苦悶は出で来りぬ。そは重井と公然の夫婦ならねば、児の籍をば如何いかにせんとの事なりき。
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
「とまれ、大物小物といわず、諸方の武士の去就きょしゅうはいまいつにここの戦況如何にかかっている。名和の兄弟、ひとしお合戦にはげんでくれよ」
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
松源の目見えと云うのは、末造が為めにはいつfêteフェエト であった。一口に爪に火をともすなどとは云うが、金をめる人にはいろいろある。
(新字新仮名) / 森鴎外(著)
また試験実地に臨んでは、先生いつに必ずその理とその法とを丁寧に講じました。先生つねに倦怠けんたいの色は少しも見えませぬ。
禾花媒助法之説 (新字新仮名) / 津田仙(著)
おきなる島山しまやまいたゞき紫嵐しらんつゝまれ、天地てんちるとして清新せいしんたされてときはま寂寞じやくばくとしていつ人影じんえいなく、おだやかにせてはへすなみろう
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
けれども要するに、自分の身の廻りの言わん方なき苦しき紛紜ふんうんは、いつにお浜の心から来ていると、思えば思えるのである。
大菩薩峠:05 龍神の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
十年も一所に居てから、今更人にられるやうな事があつたら、ひとり間貫一いつ個人の恥辱ばかりではない、我々朋友ほうゆう全体の面目にも関する事だ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
ひめいつしよう懸命けんめいおもつてゐるかたがこんなにたくさんあるのだから、このうちからこゝろにかなつたひとえらんではどうだらう
竹取物語 (旧字旧仮名) / 和田万吉(著)
人を使うにしても、その選択はいつに使用者の方寸むねにあって、ほかから適当だと推薦してきたからといって、必ずしもそれを雇い入れるとは限らない。
融和促進 (新字新仮名) / 喜田貞吉(著)
(例へば、遠く離れ、永い間逢はない、まつたく疎遠そゑんになつた親戚の間に、日頃の疎遠に拘らず、素性を辿れば、源をいつにしてることを主張する)
漸次ぜんじ熱烈にしてしかも静平なる肉親的感情に変化したるは、いつに同氏が予の為に釈義したる聖書の数章の結果なりき。
開化の殺人 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
そんな眞似まねをして、もう我儘わたまゝいつぱいに振舞ふるまつてりますうちに、だん/″\わたしひとりぼつちにつてしまひました。たれわたしとは交際つきあはなくなりました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
南に富士川は茫々ばう/\たる乾面上に、きりにて刻まれたるみぞとなり、一線の針をひらめかして落つるところは駿河の海、しろがね平らかに、浩蕩かうたうとして天といつく。
霧の不二、月の不二 (新字旧仮名) / 小島烏水(著)
大塔宮様の家臣として、行動をいつにし千辛万苦をした、戦友の過去の出来事が、一瞬間眼前に展開ひろがって見えた。
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
機織女は何程位どのくらいな賃銀を取るものだと聞いて見ると、実に僅かな賃でございます。機織女を抱えますのに二種有ります。いつ反織たんおりと云い、一を年季と申します。
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「正月」の句と「水無月」の句とは、全くいつにするわけではないが、ほぼ同じような点をねらっている。
古句を観る (新字新仮名) / 柴田宵曲(著)
阪井が柳を打擲ちょうちゃくして負傷させたということはすぐ全校にひびきわたった。上級の同情はいつに柳に集まった。
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
平民新聞へいみんしんぶん創刊そうかんすべきは其門前そのもんぜんよりも其紙上そのしゞやう酸漿提灯ほうづきてうちんなき事なり各国々旗かくこく/\きなき事なり市中音楽隊しちうおんがくたいなき事なり、すなはいつ請負》文字《うけおひもんじ損料文字そんれうもんじをとゞめざる事なり。
もゝはがき (新字旧仮名) / 斎藤緑雨(著)
そのいつ桜花爛漫おうからんまんたる土塀どべいの外に一人の若衆頬冠ほおかむりにあたりの人目を兼ねてたたずめば、土塀にかけたる梯子はしごの頂より一人の美女結びぶみを手に持ち半身を現はしたり。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
ヸリヤム・ブレイクの兄弟きやうだいがヸリヤムにたいしてしたやうに。きみはもう我々われわれにはようはないかもれないけれど、ぼくいつぺんきみひたいとおもつてゐる。つてはなしたい。
「三つの宝」序に代へて (旧字旧仮名) / 佐藤春夫(著)
いつの驚きたるあり、オヨチにてはまむし多くして、倒れ木の上に丸くなりて一処いっしょに六七個あるあり。諸方にて多く見たり。其度毎そのたびごとにゾッとして全身粟起ぞっきするを覚えたり。
関牧塲創業記事 (新字新仮名) / 関寛(著)
へてれとらさぬ用心ようじんむかし氣質かたぎいつこくを立通たてとほさする遠慮ゑんりよ心痛しんつうおいたはしやみぎひだり御苦勞ごくらうばかりならばおよめさまなり舅御しうとごなり御孝行ごかうかう御遠慮ごゑんりよらぬはず
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
しゆは昔御力みちからを示して孟西モオゼを驚かし給ひぬ、されど、わが心には、罪なきいつ實有じつうとこそ見えたれ。
頌歌 (旧字旧仮名) / ポール・クローデル(著)
人類の未來に關する我々の理想は蓋しいつで有る——洋の東西、時の古今を問はず、畢竟一で有る。
所謂今度の事:林中の鳥 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
秦の商鞅しょうおうは自分の制定した法律のために関下かんかやどせられず、「嗟乎ああ法をつくるの弊いつここに至るか」
法窓夜話:02 法窓夜話 (新字新仮名) / 穂積陳重(著)
最初さいしよドードてうは、いついて競爭レース進路コースさだめました、(「かたち正確せいかくでなくてもかまはない」とドードてうひました)それから其處そこた一たいのものがみン
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
わたくし櫻木君さくらぎくん大望たいまうをばよくつてります。また、かれが、ひとらないこの印度洋インドやうちういつ孤島こたうに、三十有餘名いうよめい水兵すいへいともに、ひそめて次第しだいをもよくぞんじてります。
今大王北平にりて数群を取りたもうといえども、数月すうげつ以来にして、なお蕞爾さつじたる一隅の地をづる能わず、くらぶるに天下を以てすれば、十五にして未だそのいつをも有したまわず。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
著名な学者にもその例が多々見られ、いずれもみないつにしているわけである。これらは立場こそ異なれ、みな生命を打込まんとする心の嗜みから学び得たものであろう。
その背後に打ち続く伝統がなかったら、あの驚嘆すべき技術があり得るであろうか。その存在を支えるものはいつに伝統の力である。人には自由があると言い張るかも知れぬ。
工芸の道 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
第三十九条 両議院ノいつおいテ否決シタル法律案ハ同会期中ニおいふたたヒ提出ストコトヲ得ス
大日本帝国憲法 (旧字旧仮名) / 日本国(著)
これに慈悲の精舎しようじやあり、これに石楠花しやくなげの薫り妙なれば、かれに瓔珞躑躅やうらくつゝじの色もゆるがごとし、いつは清秀、他は雄偉、ともに肥前の名山たることはしばしば世に紹介せられたりし
松浦あがた (新字旧仮名) / 蒲原有明(著)
ゆゑに子遠が送別の句に「えんちようの多士一の貫高。荊楚深く憂ふるは只屈平」といふもこのことなり。しかるに五月十一日関東の行を聞きしよりは、またいつの誠字に工夫をつけたり。
留魂録 (新字旧仮名) / 吉田松陰(著)
いつたいどうしてがそんなにあかくなるのかといひますと、それはあきになるときゆうすゞしくなる、その氣候きこう變化へんかのために、新緑しんりよくのところでおはなしした、葉緑素ようりよくそ次第しだいかはつて
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
○万類の動物中、人類を除くのほか、いつも上帝の上帝たるをるものあることなし。
床下を全部コンクリートにして湿気を避けおおせたりと安心していると、いずくんぞ知らん、湿気が全部上へあがって床板や畳がじくじくになってしまうのと、全くいつにする失敗である。
いつにこの人間の労働の責任と用心ぶかき供給によるものであるというのであった。
この際、君の奮起を望むというのも、いつにこの点に皇国の興廃こうはいかかっているからだ
東京要塞 (新字新仮名) / 海野十三(著)
いずれも単に戦争の現場を見せようとするのが趣意であるから、その場面の善悪巧拙が直ちにその劇の運命を決するのであって、その成功と不成功とはいつにこれにかかっているのである。
明治劇談 ランプの下にて (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
聖武上皇からは鑑真に対して、自今戒授伝律の職はいつに和尚にまかすというようなちょくが下る。やがて東大寺大仏殿前に戒壇を築いて、上皇以下光明后・孝謙女帝などが真先に戒をうけられる。
古寺巡礼 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
根の味が最もにがく、り出して健胃けんいのために飲用いんようするセンブリは、いつにトウヤクともいい、やはりこのリンドウ科に属すれど、これはリンドウ属のものではなく、まったく別属のもので
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)