-
トップ
>
-
島山
王子は
宇治の
柴舟のしばし目を流すべき
島山もなく
護国寺は
吉野に似て
一目千本の雪の
曙思ひやらるゝにや
爰も
流なくて
口惜し。
沖なる
島山の
頂は
紫嵐に
包まれ、
天地見るとして
清新の
氣に
充たされて
居る
時、
濱は
寂寞として
一の
人影なく、
穩かに
寄せては
返へす
浪を
弄し
海の水平線は
画幀の上部を狭く
劃って、青灰色の天空が風に流れている。そこには
島山の噴煙が
靡き、雲が
這っている。