いつ)” の例文
騎兵大隊長きへいだいたいちやう夫人ふじん變者かはりものがあつて、いつでも士官しくわんふくけて、よるになると一人ひとりで、カフカズの山中さんちゆう案内者あんないしやもなく騎馬きばく。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
兼「人を馬鹿にするなア、いつでもしめえにア其様そんな事だ、おやアおりを置いて行ったぜ、平清のお土産とは気が利いてる、一杯いっぺい飲めるぜ」
名人長二 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
衣服こそ貧しくあるが、いつもきちんとしてあかの付かぬ物を着ているという、一分の隙もないなり風俗だから余計に話が面白いのだ。
おもかげ抄 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
お情けでたまに載せて貰ふ写真。彼は息子に対して、いつも乍ら耻らひを感じた。此の息子の眼に、役者としての自分がどの位に映るだらう。
(新字旧仮名) / 久米正雄(著)
「君はいつも妙な事を言ふ人ぢやね。アルフレッド大王とは奇想天外だ。僕の親友を古英雄に擬してくれた御礼に一盃いつぱいを献じやう」
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
此頃のくせで、起き出る頃は、いつ満目まんもくきり。雨だなと思うと、朝飯食ってしまう頃からからりとれて、申分なき秋暑しゅうしょになる。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
いつも宿り客の内幕を遠慮も無く話しちらすに引代ひきかえて、余計な事をおといなさるなと厳しく余を遣込やりこめたれば余が不審は是よりしてかえって、益々つの
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
この二馬は一和してとどまる、これふたつながら荒くて癖が悪く、いつつなを咬み切る、罪を同じゅうし過ちをひとしゅうする者は必ず仲がよいと答え
藝術げいじゆつ價値かちだの、理想りさう永遠えいえんだのといふことを、いつ口癖くちぐせのやうにしてゐる友としては、今日の云ふことはなんだかすこ可笑おかしい……と私は思ツた。
虚弱 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
あの人にも困つたもんや、あんな家を建て腐りにしといて、んだとも潰れたともいうて來んのやもん、家屋税はいつでもわしが立て替へやないか。
兵隊の宿 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
僕は此処へ来て此の景色を見るといつも何だか悲愴な厳粛な気持ちになつて祝福し度い心に充たされるんですよ。此町は実に苦しんだのですからね。
自畫自讚に而人には不申候得共、東湖も心に被にくまむきに而は無御座いつも丈夫と呼ばれ、過分の至に御座候。
遺牘 (旧字旧仮名) / 西郷隆盛(著)
する者もなけれど誰しも欲の世の中なれば身上の太きにめで言込者いひこむものも又多かり然共持參金の不足よりいつも相談とゝのは
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
第一、何処へかお出掛けになる時はいつでも俺がお伴を仰付あふせつかるから子、君達が指でもさせば直ぐワンと喰付くらひつく。麺包パンの一きれや二片呉れたからつて容赦は無いよ。
犬物語 (新字旧仮名) / 内田魯庵(著)
なんだろう? 此の人は、まあ、——しかしそれで、いつも夫に話す様な気軽い口調になれた。
鋳物工場 (新字新仮名) / 戸田豊子(著)
物事に迷易くていつも愚痴ばかりでは頼甲斐たのみがいのない様にもあり世智賢せちがしこくてかゆいところまで手の届く方は又た女を馬鹿にしたようで此方の欠点あらまで見透されるかと恐しくもあるし
旧主人 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
近来はヒマラヤ山いただきの天文台で、極めて鋭敏な写真機を以て天を写すのだから、よほど早く分かりはするが、それでも火星人の方が更に早い、いつでも我が地球へ注意してくれる。
暗黒星 (新字新仮名) / シモン・ニューコム(著)
斯うして私の小さいけれど際限の無い慾が、いつも祖母をとおして遂げられる。それは子供心にも薄々了解のみこめるから、自然家内中で私の一番すきなのは祖母で、お祖母ばあさんお祖母さんと跡を慕う。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
いつも毎も定った物許りで詰らない、一つ此でも遣って見よう、と云う場合と、其物語に共鳴し人生に非常に価値ある事件として、見る者を驚歎させようと思った場合とは、心の態度に於て
二つの態度 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
それから四度の歸國にもいつも自分はなつかしく見上げて居たのである。
山遊び (旧字旧仮名) / 木下利玄(著)
それから後も縁談はしばしばあったが、「まあもう少し」という平三郎の気持を思いやって、いつもそのまま話をすすめずに通していった。
日本婦道記:小指 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
仁「恐れ入りましたな、何ともお礼の申そうようはございません、いつもお噂ばかり申しております実に余り十分過ぎまして……」
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
朝飯が済でから身仕度するがおよそ二時まで掛ります、大層着物をるのがかましい人でいつでも婚礼の時かと思うほど身綺麗みぎれいにして居ました
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
また深い穴にいつも毒ガスちいて入り来る人を殺す。それを不思議がる余り、バシリスクの所為と信じたのだと説いたは道理ありというべし。
「間、貴様は犬のくそかたきを取らうと思つてゐるな。遣つて見ろ、そんな場合には自今これからいつでも蒲田が現れて取挫とりひしいで遣るから」
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
花月園内には京浜第一の、大舞踏場がある事は、兼々かね/″\知つてゐた。そして其処では水曜と土曜と日曜とに、いつもバンドが来て舞踏会が開かれてゐた。
私の社交ダンス (新字旧仮名) / 久米正雄(著)
「一つ珍物を喰はさうかなあ。」と、父はいつ年齡としを訊かれた時にするやうな手段てだてで、話をわきへ持つて行かうとした。
父の婚礼 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
ばんにはいつ郵便局長いうびんきよくちやうのミハイル、アウエリヤヌヰチがあそびにる。アンドレイ、エヒミチにつては人間ひとばかりが、町中まちゞゆう一人ひとりけぬ親友しんいうなので。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
あの女がいつも俺に「じつがない。狡るい。」と云つたり、「此人はこんな人の善さ相な温和しい顔してゐて、しんはそれは氷のやうにきついんですからね。」
玉川に遠いのがいつも繰り返えされる失望であったが、井水がんだのでいさゝか慰めた。農家は毎夜風呂を立てる。彼等も成る可く立てた。最初寒い内は土間に立てた。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
小説に関する御議論も中々あるらしいやうだ。荒尾君の作などはいつでも骨灰こつぱい軽蔑けなされる、お邸の書斎には沙翁シエークスピーアを初めヂツケンスやサツカレイの全集が飾つてあるさうな。
犬物語 (新字旧仮名) / 内田魯庵(著)
さてまたこゝ武州ぶしう熊谷堤くまがいづつみはづれに寶珠花屋はうじゆばなや八五郎と云居酒屋あり亭主八五郎は此邊の口利くちきゝにて喧嘩けんくわ或ひは出入等之ある時はいつあつかひに這入はひりては其騷動そのさうどうしづめけるにかれが云事は皆是を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
いつでも御顔色が病人のようになって、鼻の先が光りまして、まゆの間が茶色に見えます。
旧主人 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
いつもそんな姿だけが眼に浮ぶ。
歩む (新字新仮名) / 戸田豊子(著)
それもいが、己もせんの利齋の弟子で、いつも話す通り三年釘を削らせられた辛抱を仕通したお蔭で、是までになったのだから
名人長二 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
家のまわりはいつもひっそりしていたし、たまに話し声がすると思って見ると、三町も向うの田道をゆくものもうでの人だった。
野分 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
宮はいつよりも心煩こころわづらはしきこの日なれば、かの筆採りて書続けんとたりしが、あまりに思乱るればさるべき力も無くて、いとどしく紛れかねてゐたり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
世間は讒人で満ち居るから何分讒言にてられぬよう注意せよと言って死んだ、善牙獅いつガゼルを殺すと肉を啖い血をすすって直ちに巣へ帰ったが
天滿宮の境内で催される定例ぢやうれいの盆踊は、場所がだだツ廣くて、若い衆と娘たちとが押し合ふのに工合がわるいさうで、いつも餘りはずまずに流れて了ふが
天満宮 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
目科の今日の打扮いでたちいつもより遙か立派にして殊に時計其他の持物も殆ど贅沢の限りを尽しう見ても衣服蕩楽なりどうらく
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
とき丁度ちやうど時過じすぎ。いつもなら院長ゐんちやう自分じぶんへやからへやへとあるいてゐると、ダリユシカが、麥酒ビール旦那樣だんなさま如何いかゞですか、と刻限こくげん戸外こぐわいしづか晴渡はれわたつた天氣てんきである。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
二人の間には同情が通つてゐても、何となくいつもよりぎごちなかつた。そこで私は姉が鳥渡臺所の方へ立つたのを機にして、一人になるべく二階へ上つて行つた。
受験生の手記 (旧字旧仮名) / 久米正雄(著)
使つかって見ると、少しおろかしいとこもあるが、如何にも親切な女で、いつ莞爾々々にこにこして居る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
彼は大波止おほはとの海岸の方へ向つて浜から来る汐臭い秋風にふるへながら歩いた。いつも其処を通る毎に癖のやうに引きずられて立寄るシナ店の前をも彼は今気がつかずに通り越してゐた。
ことに寝起の時の御顔色は、いつすこし青ざめて、老衰おいおとろえた御様子が明白ありありと解りました。
旧主人 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
よび我等が名代に萬八へ行き仲間の者にも知己ちかづきに成るべしと云ふに千太郎はかしこまり候とやがて支度に掛りしに持參の衣類は商人あきうどには立派過ると養父の差※さしづいつもの松坂縞まつざかじまの布子に御納戸木綿おなんどもめん羽織はおり何所どこから見ても大家の養子とは受取兼る樣子なり其時養父五兵衞は千太郎に云ひける樣今日の馳走ちそうは總て割合わりあひ勘定かんぢやうなれば遠慮ゑんりよには
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
志津子は美しさ許りでなく、泳ぎにかけてもその浜で続く者がなく、いつも海へ入るなり、ぐんぐんと抜いて、遥かに遠い沖へ独りで行ってしまう。
海浜荘の殺人 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
しかして自分らの水游ぎを戒むるとて、母がいつも通し蛇が水游ぐ児の肛門より入りてその腸を食い、前歯を欠いて口より出ると言うを聞きじた。
少し此の日は空合そらあいが悪くてばら/\/\と降出しましたから、いつもより早く帰って脚半を取って、山之助お繼が次の間に足を投出して居りまする。
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
いつも家へばツかりドツサリ割り付けやはるんだすやろけど、商賣やさかい餘計難儀だすがな。
兵隊の宿 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)