きやく)” の例文
宗助そうすけにも御米およねにもおもけないほどたまきやくなので、二人ふたりともなにようがあつての訪問はうもんだらうとすゐしたが、はたして小六ころくくわんするけんであつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
下谷したや團子坂だんござか出店でみせなり。なつ屋根やねうへはしらて、むしろきてきやくせうず。時々とき/″\夕立ゆふだち蕎麥そばさらはる、とおまけをはねば不思議ふしぎにならず。
神楽坂七不思議 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
「朝顔に急がぬ膳や残りきやく」「ひそひそと何料理れうるやら榾明ほたあかり」「初秋の心づかひや味噌醤油」「大事がる馬の尾づつや秋の風」
雑筆 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
代金だいきんだれがきめたものか、いづこも宿賃やどちん二三百円びやくゑんのぞいて、をんな収入しうにふきやく一人ひとりにつき普通ふつうは三百円びやくゑんから五百円ひやくゑん、一ぱく千円せんゑん以上いじやうだとふ。
吾妻橋 (新字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
一つフロツクコートで患者くわんじやけ、食事しよくじもし、きやくにもく。しかれはかれ吝嗇りんしよくなるのではなく、扮裝なりなどにはまつた無頓着むとんぢやくなのにるのである。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
はるならで芳之助よしのすけ歸宅かへりおそさよきやくありてとほくまできたるにやそれにしてもかへりさうなもの日沒ひぐれまへに一度いちどづゝ樣子見やうすみもどるがつねなるを
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
借て手傳てつだはせしにふけまゝ其夜そのよは下女事私し方へ泊り翌朝よくてうきやく給仕きふじなどを仕舞て立歸り候處右の騷動さうどうゆゑ大いに驚き候由を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
『やア、ぼくいま、フアーマーをしてところだ。まアあがたまへ。あしあらふ。離座敷はなれざしき見晴みはらしがいから』ときやくこのむ。
きやくのもてなしもしつくしてほとんど倦果うみはてつひには役者仲間なかまいひあはせ、川のこほりくだきて水をあび千垢離せんごりしてはれいのるもをかし。
しかし、球台たまたいたま、キユウ、チヨウク、おきやくの人から建物たてものかんじ、周圍しうい状態ぜうたい經營者けいえいしや經營振けいえいふり——さうした條件ぜうけんがいい持にそろふのはじつ困難こんなんな事なので
文壇球突物語 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
まれびとといふのは、おきやくさまといふことですが、ごくたまにめづらしいひとといふのがふる意味いみです。わたどりなるかりをば、この珍客ちんきやく見立みたてたのであります。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
貴殿あなた何處どこ御出身ごしゆつしんですか』と突然とつぜん高等商業かうとうしやうげふ出身しゆつしんなにがしいまある會社くわいしや重役ぢゆうやくおぼえ目出度めでた一人ひとりをとこ小介川文學士こすけがはぶんがくしとなりすわつて新來しんらいきやくひかけた。
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
『あゝ、御寺内ごじないのおきやくさんだつかいな。孫右衞門まごゑもんさん、御苦勞ごくらうはん。』と、茶店ちやみせをんな愛嬌あいけういた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
〔譯〕濁水だくすゐも亦水なり、一ちようすれば則ち清水せいすゐとなる。客氣きやくきも亦氣なり、一てんすれば則ち正氣せいきとなる。きやくふの工夫は、只是れ己に克つなり、只是れ禮にかへるなり。
ねんごろにきやくをもてなす花楸樹はなかまど、小鳥が毎年まいとしあてにする降誕祭ノエルまつり飾木かざりぎよ、わたしの悲しい心のよろこび
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
ちひさな葬式さうしきながらひつぎあと旋風つむじかぜほこりぱらつたやうにからりとしてた。手傳てつだひ女房等にようばうらはそれでなくても膳立ぜんだてをするきやくすくなくてひまであつたから滅切めつきり手持てもちがなくなつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
でぱーとめんと・すとあーではおきやくくように、うつくしいものやめづらしいものを、たいてい、なんの秩序ちつじよもなくならてゝありますが、博物館はくぶつかん陳列品ちんれつひんみな種類しゆるいをわけ順序じゆんじよをつけ
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
これはおきやくさまの御馳走ごちそうですから仕方しかたいとおもひましたが、近所きんじよのおいへでは、鬪鷄しやもにはとり締殺しめころしてふといふことをよくやりました。むらには隨分ずゐぶん惡戲いたづらきな人達ひとたちがありました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
これより地きうからはるばるおいでになつた おきやくさんの歓迎会くわんげいくわいひらきます
太郎「とらきやくむかつて放尿ほうねうしてもおまはりさんはしからないんですか」
はやはやくときやくめこむし。
とんぼの眼玉 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
くびほそうきやく
霜夜 (新字旧仮名) / 末吉安持(著)
往來ゆききれて、幾度いくたび蔦屋つたやきやくつて、心得顏こゝろえがほをしたものは、およねさんのこと渾名あだなして、むつのはな、むつのはな、とひました。
雪霊記事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
聞いて見ると、玄関にあつた車は、ちゝきやくつてたものであつた。代助はながゝらなければ、きやくの帰る迄たうと思つた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
れがあんこのたねなしにつていまからはなにらう、直樣すぐさまかけてはいたけれど中途なかたびきやくことはれない、うしような、と相談そうだんけられて
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
きやくのもてなしもしつくしてほとんど倦果うみはてつひには役者仲間なかまいひあはせ、川のこほりくだきて水をあび千垢離せんごりしてはれいのるもをかし。
水上すゐじやうバスへ御乗おのりのおきやくさまはおいそくださいませ。水上すゐじやうバスは言問こととひから柳橋やなぎばし両国橋りやうごくばし浜町河岸はまちやうがしを一しうして時間じかんは一時間じかん料金れうきんにん五十ゑん御在ございます。
吾妻橋 (新字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
今一度なりとも呼度思ひ其夜は外のきやくへも染々しみ/″\つとめざる程なれば其心の此方こなたにもつうじけん千太郎も小夜衣の事を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
梅花は予の軽蔑する文人趣味を強ひんとするものなり、下劣詩魔げれつしませしめんとするものなり。予は孑然けつぜんたる征旅のきやくの深山大沢だいたくを恐るるが如く、この梅花を恐れざる可からず。
続野人生計事 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
一人ひとり毒瓦斯どくがすくべくつてまどすこけた。人々ひと/″\新來しんらいきやくそゝいだ。
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
こぼれるほどにつたきやく行商ぎやうしやう町人ちやうにんがへりの百姓ひやくしやう乳呑兒ちのみごかゝへた町家ちやうか女房にようばうをさなおとうといた町娘まちむすめなぞで、一かゝつたふねが、おほきな武士ぶしめに後戻あともどりさせられたのを
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
めづらしいおきやくさまでもあるときには、とうさんのおいへではにはとりにく御馳走ごちそうしました。山家やまがのことですから、にはとりにくへばたいした御馳走ごちそうでした。そのたびにおいへつてあるにはとりりました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
給仕女きゆうじをんな故郷こきよう風俗ふうぞくをしておきやく給仕きゆうじるといふふうになつてゐます。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
では あの地球からのおきやくさんたちは 野外やぐわいゐんの方へうつしませう
そこへうさぎがおきやくにござる。
とんぼの眼玉 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
が、きやくたうがつまいが、一向いつかう頓着とんぢやくなく、此方こつち此方こつち、とすました工合ぐあひが、徳川家時代とくがはけじだいからあぢかはらぬたのもしさであらう。
松の葉 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
かへりもおそいが、かへつてから出掛でかけなどといふ億劫おくくふこと滅多めつたになかつた。きやくほとんどない。ようのないとききよを十時前じまへかすことさへあつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
車夫くるまやあし何時いつよりおそいやうにおもはれて、御好物ごかうぶつ飴屋あめやのきはぐりました、此金これ少〻せう/\なれどわたし小遣こづかひのこり、麹町かうじまち御親類ごしんるいよりおきやくありとき
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
道子みちこきやくよりもはやてゐるものをぬぎながら、枕元まくらもとまど硝子障子がらすしやうじをあけ、「こゝのうちすゞしいでせう。」
吾妻橋 (新字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
えらび突出しの仕着しきせより茶屋々々の暖簾のれんに至る迄も花々敷吉原中大評判おほひやうばんゆゑ突出つきだしの日より晝夜ちうやきやくたえる間なく如何なる老人みにくき男にても麁末そまつに扱はざれば人々皆さき
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
唐土もろこしこれ火井くわせいといふ。近来きんらい此地獄谷に家を作り、地火ちくわを以てわかし、きやくまちよくさしむ、夏秋のはじめまでは遊客いうかく多し。此火井他国にはきかず、たゞ越後に多し。
東京とうきやうきやくれてけといふから一緒いつしよると下手へたくせれないとおこつてことれないとつておこやつが一ばん馬鹿ばかだといふこと温泉をんせん東京とうきやうきやくにはういふ馬鹿ばかおほこと
都の友へ、B生より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
山家やまがではなにかあるたびにおきやくさまをして、たがひんだりばれたりします。いよ/\とうさんたち東京行とうきやうゆきもきまりましたので、おとなりのおゆうさんのうちではとうさんたちをおきやくさまにしてんでれました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
きうからのおきやくさんです さあどうぞ
谷風や青田あをためぐいほきやく
澄江堂雑記 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
あたらしいきやくあひだ
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
年少としわかくて屈竟くつきやうきやくは、身震みぶるひして、すつくとつて、内中うちぢうめるのもかないで、タン、ド、ドン!との、其處そこしとみけた。——
霰ふる (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
時刻じこく時刻じこくなので、夕飯ゆふめしひにきやくかはかはた。そのおほくは用辯的ようべんてき飮食いんしよくまして、さつさと勘定かんぢやうをしてだけであつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
きやくさまは此處こゝにとしめしたるまゝ樓婢ろうひいそきたり障子しやうじそと暫時しばしたゆたひしがつべきことならずと
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
○秋山に夜具を持たる家は此おきなの家とほかに一軒あるのみ。それもかのいらにておりたるにいらのくずを入れ、布子ぬのこのすこし大なるにて宿とまきやくのためにするのみ也とぞ。