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團子坂
下谷團子坂の
出店なり。
夏は
屋根の
上に
柱を
建て、
席を
敷きて
客を
招ず。
時々夕立に
蕎麥を
攫はる、とおまけを
謂はねば
不思議にならず。
北八を
顧みて、
日曜でないから
留守だけれども、
氣の
利いた
小間使が
居るぜ、
一寸寄つて
茶を
呑まうかと
笑ふ。およしよ、と
苦い
顏をする。
即ちよして、
團子坂に
赴く。
此處の
森敢て
深しといふにはあらねど、おしまはし、
周圍を
樹林にて
取卷きたれば、
不動坂、
團子坂、
巣鴨などに
縱横に
通ずる
蜘蛛手の
路は、
恰も
黄昏に
樹深き
山路を
辿るが
如し。