)” の例文
いままで、たのしかった、いえなかは、たちまちわらいがえてしまって、あには、自分じぶん本箱ほんばこや、つくえのひきだしを、かたづけはじめました。
たましいは生きている (新字新仮名) / 小川未明(著)
そうして今度こんどは、石を二度、沼の中に投げこみました。ゆっくりと間を置いて、はじめのあわがえてしまうと、また投げるのです。
清造と沼 (新字新仮名) / 宮島資夫(著)
「おれは内地の農林のうりん学校の助手じょしゅだよ、だから標本ひょうほんあつめに来たんだい。」私はだんだん雲のえて青ぞらの出て来る空を見ながら
サガレンと八月 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
もとの蔦屋つたや旅館りよくわん)のおよねさんをたづねようとふ……る/\つもゆきなかに、淡雪あはゆきえるやうな、あだなのぞみがあつたのです。
雪霊続記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
くちもうしたらその時分じぶんわたくしは、えかかった青松葉あおまつばが、プスプスとしろけむりたてくすぶっているような塩梅あんばいだったのでございます。
もっともすこし失敗しっぱいしたところもあって、うまくえうせてはしまわなかったがね。うまくいかなかったところは、ひとみとつめだ。
けれど少女の姿はなく、光もえていて、花もべつだんかがやいてもいず、ただいつものようにきれいに咲いているだけでした。
しかるにおうとのぞみは、ついえずたちまちにしてすべてかんがえ圧去あっしさって、こんどはおも存分ぞんぶん熱切ねっせつに、夢中むちゅう有様ありさまで、ことばほとばしる。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
からははひにあともとゞめずけぶりはそら棚引たなびゆるを、うれしやわが執着しふちやくのこらざりけるよと打眺うちながむれば、つきやもりくるのきばにかぜのおときよし。
軒もる月 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
と、伊那丸いなまるもそのひとみのむいたほうをみると、あいいろの月の空へ、ひとすじの細い火が、ツツツツーと走りあがってやがてえた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
なにもかもがえてしまわないうちに、できるだけたくさんの物を見ておこうと思って、ニールスは、どんどんさきへかけていきました。
宗助そうすけ浴衣ゆかた後影うしろかげが、裏口うらぐちところへてなくなるまで其處そこつてゐた。それから格子かうしけた。玄關げんくわんへは安井やすゐ自身じしんあらはれた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
其後そのご一週間いつしゆうかんむなしく※去すぎさつたならば、櫻木大佐さくらぎたいさつひには覺悟かくごさだめて、稀世きせい海底戰鬪艇かいていせんとうていともに、うみ藻屑もくづえてしまうことであらう。
開いて見れば不思議にも文字もんじえてたゞの白紙ゆゑ這は如何せし事成かと千太郎は暫時しばしあきはて茫然ばうぜんとして居たりしが我と我が心を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
土塊どくわいごとうごかぬかれ身體からだからはあはれかすかなけぶりつてうてえた。わら沿びたとき襤褸ぼろかれ衣物きものこがしたのである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
いま彼女かのぢよかほをごりと得意とくいかげえて、ある不快ふくわいおものために苦々にが/\しくひだりほゝ痙攣けいれんおこしてゐる。彼女かのぢよつてく。
(旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
兼吉かねきち五郎ごろうは、かわりがわり技師と花前とのぶりをやって人を笑わせた。細君が花前を気味きみわるがるのも、まったくそのころからえた。
(新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
あのなみだいけおよいでからはなにかはつたやうで、硝子ガラス洋卓テーブルちひさなのあつた大廣間おほびろままつた何處どこへかせてしまひました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
それでも感心かんしんなことには、畫板ぐわばんむかうと最早もはや志村しむらもいま/\しいやつなどおもこゝろえてはうまつたこゝろられてしまつた。
画の悲み (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
わたしはかなり長いあいだねむったらしく、火はほとんどえかかっていた。もう小屋の中にほのおが光ってはいなかった。
「むりに宮仕みやづかへをしろとおほせられるならば、わたしえてしまひませう。あなたのおくらゐをおもらひになるのをて、わたしぬだけでございます」
竹取物語 (旧字旧仮名) / 和田万吉(著)
とりんでってしまうと、杜松ねずまたもととおりになりましたが、手巾はんけちほねと一しょに何処どこへかえてしまいました。
と大きなこえのりました。するとそれなりすっと魔物まものえて、天子てんしさまの御病気ごびょうきはきれいになおってしまいました。
八幡太郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
障子しようじのような建具たてぐえついたならば、この建具たてぐたふすこと、衣類いるいえついたときは、ゆかまた地面じめん一轉ひところがりすれば、ほのほだけはえる。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
「いやだよ。おまえは、もううち奉公人ほうこうにんでもなけりゃ、あたしのともでもないんだから、ちっともはやくあたしのとどかないとこへえちまうがいい」
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
をんなかたほヽをよせると、キモノの花模様はなもやうなみだのなかにいたりつぼんだりした、しろ花片はなびら芝居しばゐゆきのやうにあほそらへちら/\とひかつてはえしました。
桜さく島:見知らぬ世界 (新字旧仮名) / 竹久夢二(著)
つまり卵が半分以上水につかると胴が細くなるから、水面に接している面積が小さくなってゆくのです。その中に遂に点になり、そしてせます。
新学期行進曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
と、蝋燭ろふそくの火をげて身をかゞめた途端とたんに、根太板ねだいたの上の或物は一匹いつぴきの白いへびに成つて、するするとかさなつたたヽみえてえ去つた。刹那せつな、貢さんは
蓬生 (新字旧仮名) / 与謝野寛(著)
しかるに、中途ちうとえて大瀧氏おほたきしあらはれて、懷中ふところから磨製石斧ませいせきふ完全くわんぜんちかきを取出とりいだし、坪井博士つぼゐはかせまへして。
これは近頃ちかごろ西洋せいよう文明ぶんめいがはひつててもおなじことで、いかに西洋風せいようふうならつても、あるてんには日本人につぽんじんには日本人につぽんじんらしい趣味しゆみ特質とくしつが、えないのであります。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
うまはこのまんま、えるやうににたいとおもひました。んで、そして何處どこかで、びつくりして自分じぶんいてわびる無情むじやう主人しゅじんがみてやりたいとおもひました。
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
ゆがに見える連峰が、まだ深々と雪をかつぎ、遠く淡く流れて見え、その前備そなえといったように、伊那の地へ越せる山脈が、牛の背のように起伏している。
血煙天明陣 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
だい覇圖はと夢物語ゆめものがたり奉天城外ほうてんじやうぐわいつゆえてしまつたが、れい張作霖ちやうさくりん非常ひじやう麻雀好マアジヤンずきだつたとふ。
麻雀を語る (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
のこる所の二十七名は之よりすすむのみにしてかへるを得ざるもの、じつすすりて决死けつしちかひをなししと云ふてなり、すでにして日やうやたかく露亦やうやへ、かつ益渇をくわ
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
王子がをあげて見ると、もう老人ろうじん姿すがたえてしまっていました。王子はぼんやりあたりを見まわしました。あたまの上には、みきった大空と太陽たいようとがあるばかりでした。
強い賢い王様の話 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
横笛今は稍〻やゝ浮世に慣れて、風にも露にも、餘所よそならぬ思ひ忍ばれ、墨染のゆふべの空に只〻一人、わたる雁の行衞ゆるまで見送りて、思はず太息といきく事も多かりけり。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
そして二人ふたりみみをすましてきいていたが、余韻よいんがわあんわあんとなみのようにくりかえしながらえていったばかりで、ぜんそくちのたんのようなおとはぜんぜんしなかった。
ごんごろ鐘 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
ゆびのさきにつばをつけて、鼻の頭をこすりながら、わたしは、いままで自分の顔にむけていたランプをくるりむこうへまわすと、ガラスにうつっていた自分のかげえて
くまと車掌 (新字新仮名) / 木内高音(著)
しかし樹木じゆもくによつては氣候きこう急激きゆうげき變化へんかのためまたは、病虫害びようちゆうがい一時いちじおとしたりすると、この生長状態せいちようじようたい例外れいがい出來できて、完全かんぜんあらはれず、半分はんぶんぐらゐでえるのがあります。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
太郎は一二九網子あごととのふるとて、一三〇つとめて起き出でて、豊雄が閨房ねやの戸のひまをふと見入れたるに、え残りたる灯火ともしびの影に、輝々きらきらしき太刀たちを枕に置きて臥したり。あやし。
御食みけむかふ南淵山みなぶちやまいはほにはれる斑雪はだれのこりたる 〔巻九・一七〇九〕 柿本人麿歌集
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
ロミオ せんたびもまんたびもおれ機嫌きげんがわるうなったわ、そもじといふ光明ひかりえたによって。
竪矢たてやあかいろが、ひろ疊廊下たゝみらうかから、黒棧腰高くろさんこしだか障子しやうじかげえようとしたとき
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
さあいたところみやこはなの評判で、しも全盛ぜんせいきはめたりし我楽多文庫がらくたぶんこにはか月夜げつや提灯てうちんつた、けれども火はえずに、十三、十四、十五、(よく二十二年の二月出版しゆつぱん)と持支もちこたへたが
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
幼児をさなごだまつて、あたしをつめてくれた。この森蔭もりかげはづれまであたしは一緒いつしよつてやつた。此児このこふるへもしずにあるいてく。つひにそのあかかみが、とほひかりえるまで見送みおくつた。
わたし畢生ひつせい幸福かうふくかげえてしまつたかのやうにむねさはがせ、いそいで引出ひきだしてた。
背負揚 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
そのわたしの顔には、今でもおぼえているのですが、まだしずかな思い出のあのほほえみがえずにのこっていました。ほんの一分ばかり、わたしは、まだ思い出にひたっていたのでした。
彼女かのぢよは、生命いのちの、えるまへあかるさで、めづらしくK夫人ふじんはなしかけた。
彼女こゝに眠る (旧字旧仮名) / 若杉鳥子(著)
そのなやましげな顔には、なんともいえぬ誠実せいじつさが見えていた。クリストフは頬杖ほおづえをついて、彼を見守みまもりはじめた。もうよるになりかかっていた。ゴットフリートのかおは少しずつえていった。
ジャン・クリストフ (新字新仮名) / ロマン・ロラン(著)
幾日の心配を煙とやし天晴れな手腕うでを寝せ殺しにするにも当らない、のう十兵衛、我の云うのが腑に落ちたら思案をがらりとし変えてくれ、源太は無理は云わぬつもりだ、これさなぜ黙って居る
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)