天下てんか)” の例文
しかしあのたくましいムツソリニも一わんの「しるこ」をすゝりながら、天下てんか大勢たいせいかんがへてゐるのはかく想像さうぞうするだけでも愉快ゆくわいであらう。
しるこ (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
すなわち、伊勢いせ滝川一益たきがわかずますをうった秀吉ひでよしが、さらにその余勢よせいをもって、北国の柴田軍しばたぐんと、天下てんか迎戦げいせんをこころみたのである。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
などゝいふから、益々ます/\国王こくわう得意とくいになられまして、天下てんかひろしといへども、乃公おれほどの名人めいじんはあるまい、と思つておいでになりました。
詩好の王様と棒縛の旅人 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
天下てんか役人やくにんが、みな其方そちのやうに潔白けつぱくだと、なにふことがないのだが。‥‥』と、但馬守たじまのかみは、感慨かんがいへぬといふ樣子やうすをした。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
しからば、天下てんかひんなんだ。まアいです』となぐさめたが、あるひまた兒島氏こじまし大瀧氏おほたきしところにも、天下てんかぴんとゞいてはせぬか?
この書一度ひとたび世にでてより、天下てんか後世こうせい史家しかをしてそのるところを確実かくじつにし、みずからあやまりまた人を誤るのうれいまぬかれしむるにるべし。
「いくらいいものがあっても、おれ背中せなかにあるような、天下てんかぴんはここにもあるまい。」と、おとここころなかでいいながら、ながめていました。
天下一品 (新字新仮名) / 小川未明(著)
わたしたちが、子供こどものころから、したしみなれてきた一休いっきゅうさんは、紫野大徳寺むらさきのだいとくじ、四十七代目だいめ住職じゅうしょくとして、天下てんかにその智識ちしき高徳こうとくをうたわれたひとでした。
先生と父兄の皆さまへ (新字新仮名) / 五十公野清一(著)
朝飯前あさめしまへ仕事しごとにして天下てんかをどろかす事虎列刺コレラよりもはなはだしく天下てんか評判ひやうばんさる〻事蜘蛛くもをとこよりもさかんなるは唯其れ文学者あるのみ、文学者あるのみ。
為文学者経 (新字旧仮名) / 内田魯庵三文字屋金平(著)
ロミオ はて、びるとへば、そのびるとは足下きみはなしたぢゃ、いま天下てんかならびもない拔作ぬけさくどのとは足下きみのことぢゃ。
天下てんか(一一)重器ちようき王者わうしや(一二)大統たいとう天下てんかつたふるかくごときのかたきをしめしたるなりしかるに(一三)ものいは
無論むろん立去たちさつたあとでも、永久えいきゆう日本帝國につぽんていこく領土りようどであるべきことうたがひれぬが、こゝすこぶ憂慮ゆうりよえぬのは、いまや、まなこはなつて天下てんか形勢けいせいながむるに
これなん當時たうじ國色こくしよく大將軍梁冀たいしやうぐんりやうきつま孫壽夫人そんじゆふじん一流いちりう媚態びたいよりでて、天下てんかあまねく、狹土けふど邊鄙へんぴおよびたるなり
唐模様 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
素性すぜうへずは目的もくてきでもいへとてめる、むづかしうござんすね、いふたら貴君あなたびつくりなさりましよ天下てんかのぞ大伴おほとも黒主くろぬしとはわたしこととていよ/\わらふに
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
磐梯山ばんだいざんたか千八百十九米せんはつぴやくじゆうくめーとる)の明治二十一年めいじにじゆういちねん六月十五日ろくがつじゆうごにちける大爆發だいばくはつは、當時とうじ天下てんか耳目じもく聳動しようどうせしめたものであつたが、クラカトアには比較ひかくすべくもない。
火山の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
天下てんかたからといふものはすべてこれを愛惜あいせきするものにあたへるのが當然たうぜんじや、此石このいしみづかく其主人しゆじんえらんだので拙者せつしやよろこばしくおもふ、然し此石の出やうがすこはやすぎる
石清虚 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
おれは、大和やまと日代ひしろみや天下てんかを治めておいでになる、大帯日子天皇おおたらしひこてんのう皇子おうじ、名は倭童男王やまとおぐなのみこという者だ。
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
しゅはずんで、糠袋ぬかぶくろせてもらうどじはあるめえぜ。——おめえいまなんてッた。おせんのゆきのはだからった、天下てんかに二つと代物しろものおがませてやるからと。——
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
それでこの二人ふたりあひだには、號外がうぐわい發行はつかう當日たうじつ以後いご今夜こんや小六ころくがそれをしたまでは、おほやけには天下てんかうごかしつゝある問題もんだいも、格別かくべつ興味きようみもつむかへられてゐなかつたのである。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
儂も久しくかんがえた末、届と税を出し、天下てんかれて彼を郎等ろうどうにした。郎等先生此頃では非常に柔和になった。第一眼光が違う。尤もわるくせがあって、今でも時々子供をおいかける。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
天下てんか勢力せいりょくを一もんにあつめて、いばっていた平家へいけも、とうとう源氏げんじのためにほろぼされて、安徳天皇あんとくてんのうほうじて、だんうらのもくずときえてからというもの、この壇ノ浦いったいには
壇ノ浦の鬼火 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
つぶし先生の大力實に天下てんか無双ぶさうならんと見て居たるに後藤はコレ彌助先刻さつきの代りに鳥渡ちよつと一本こゝろみようかと振上ふりあげければ彌助は大いに仰天ぎやうてんなし御免なされと云より早くおく目懸めがけ迯行にげゆきけり
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
そこではじめて、天下てんかはれて、王女と結婚けっこんのしだいを、国じゅうに知らせました。そうして、りっぱな儀式ぎしきをととのえて、あらためて、眠る森から、お姫さまをお迎えになりました。
眠る森のお姫さま (新字新仮名) / シャルル・ペロー(著)
さては往来ゆききいとまなき目も皆ひかれて、この節季の修羅場しゆらばひとり天下てんかくらへるは、何者の暢気のんきか、自棄やけか、豪傑か、さとりか、酔生児のんだくれか、とあやしき姿を見てすぐる有れば、おもてを識らんとうかがふ有り
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
ぼくは研究けんきゅう完成かんせいしたそのとき、ぱっと世間せけん発表はっぴょうして、一夜で天下てんかに名をとどろかせてやろうと考えたんだ。研究はおもうとおりに進んだ。そのうち、思いもかけない大発見をしたのだ。
もつとも功業をなすつもりの人は天下てんかみなこれ、忠義をなすつもりはただ吾同志数人のみ。吾等功業にたらずして忠義に余りあり。いく回も罪名論行つまらざること僕一生のあやまちなり。(以下欠)
ここでいちばんにものぐるいにねこたたかって、うまくてば、もうこれからはの中になにもこわいものはない、天井裏てんじょううらだろうが、台所だいどころだろうが、かべすみだろうが、天下てんかはれてわれわれの領分りょうぶんになるし
猫の草紙 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
今もなほ天下てんか好事の客ありてうれしみて君の絵求むとや
閉戸閑詠 (新字旧仮名) / 河上肇(著)
「おまえさんの天下てんかになるのに、なんでうれしくないことがあるもんかね。」と、としとったねこが、まぶしそうなつきをして、いいました。
木の上と下の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
わたしはいまでもこのことだけは、感心かんしんだとおもつてゐるのです。わたしと二十がふむすんだものは、天下てんかにあのをとこ一人ひとりだけですから。(快活くわいくわつなる微笑びせう
藪の中 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
するのに棒がねえから貸しておくんねえって断って持って往ったから縛られるこたアねえ、天下てんがの道具だから貸してもいだろう、わっち天下てんかの町人だ
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
孔明こうめい天下てんか三分さんぶんけいもだめでした。天下二分は、もっと、烈しい対立の相を呈しましょう。なぜといえば、二者の一挙一動はことごとくその対者を決定している。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いまいくほどもあらざりき、天下てんかおほいみだれて、敵軍てきぐん京師けいし殺倒さつたうし、婦女子ふぢよしとらへてほしいまゝ凌辱りようじよくくはふ。
唐模様 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
それで發掘場はつくつばめぐりしてると、珍把手ちんとつて珍破片ちんはへんすくなからずなかに、大々土瓶だい/″\どびん口邊こうへんの、もつと複雜ふくざつなる破片はへんる。完全くわんぜんつたら懸價無かけねなしの天下てんかぴんだ。
せい桓公くわんこうもつたり。諸矦しよこう(六)九合きうがふし、天下てんか(七)きやうする、管仲くわんちうはかりごとなり管仲くわんちういは
彼等かれら日本帝國につぽんていこくために、いまかゝ戰艇せんてい竣成しゆんせいしたとつたら、けつしてもくしてはりません、必定ひつぜう全力ぜんりよくつくして、掠奪りやくだつ着手ちやくしゆしませうが、其時そのときうごいては天下てんか無敵むてきこの電光艇でんくわうてい
縦令たとひ石橋いしばしたゝいて理窟りくつひね頑固ぐわんことうことの如く、文学者ぶんがくしやもつ放埓はうらつ遊惰いうだ怠慢たいまん痴呆ちはう社会しやくわい穀潰ごくつぶ太平たいへい寄生虫きせいちうとなすも、かく文学者ぶんがくしや天下てんか最幸さいかう最福さいふくなる者たるにすこしも差閊さしつかへなし。
為文学者経 (新字旧仮名) / 内田魯庵三文字屋金平(著)
京師けいしの、はなかざしてすご上臈じょうろうたちはいざらず、天下てんか大将軍だいしょうぐん鎮座ちんざする江戸えど八百八ちょうなら、うえ大名だいみょう姫君ひめぎみから、した歌舞うたまい菩薩ぼさつにたとえられる、よろず吉原よしわら千の遊女ゆうじょをすぐっても
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
あの親切しんせつやさしいかたふてはわるいけれど若旦那わかだんなさへかつたらおぢやうさまも御病氣ごびやうきになるほどの心配しんぱいあそばすまいに、左樣さういへば植村樣うゑむらさまかつたら天下てんか泰平たいへいをさまつたものを
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
主翁おやじが死んで、石山の新家はよめ天下てんかになった。誰もひささんのうちとは云わず、宮前のお広さんの家と云った。宮前は八幡前を謂うたのである。外交も内政も彼女の手と口とでやってのけた。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
こんどの さいごんじの おしょうさまは、こんなふうに てっていした こころを もっており、そのころ がくもんも おこないも、天下てんか一だと いわれていた えらい ぼうさんでした。
一休さん (新字新仮名) / 五十公野清一(著)
そこで權官けんくわん首尾しゆびよく天下てんか名石めいせきうばてこれを案頭あんとうおい日々ひゞながめて居たけれども、うはさきし靈妙れいめうはたらきは少しも見せず、雲のわくなどいふ不思議ふしぎしめさないので、何時いつしか石のことは打忘うちわす
石清虚 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
さうしてすゑには天下てんかを…………などゝ大気焔だいきえんも有つたのです
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
と、玄竹げんちく天下てんかの一大事だいじかたるやうに、こゑひそめてつた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
天下てんか御評定ごひやうぢやう日にて諸國より訴訟人夥多おびたゞしく出張なし居けるに程なく榊原さかきばら遠江守領分越後國頸城郡寶田村百姓傳吉一けん這入はひりませいと呼び込むこゑもろともに訴訟人憑司おはや相手方あひてかた傳吉其の外引合共白洲へ出るに傳吉は
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
隣村となりむらに、もう一人ひとり金持かねもちがありました。この金持かねもちも天下てんかぴん仏像ぶつぞうがぜひたくなりました。それで、わざわざおとこのもとへやってきました。
天下一品 (新字新仮名) / 小川未明(著)
どうも誠に斯様かやう御名作ごめいさく出来できませんもので、じつ御名作ごめいさくで、天下てんか斯様かやうなおさく沢山たくさんにございますまい。
詩好の王様と棒縛の旅人 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
下心したごころ。——天下てんか諸人しよにん阿呆あはうばかりぢや。さえ不才ふさえもわかることではござらぬ。」
孔雀 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
わけて、九郎判官が、天下てんかに身をれる尺地せきちもなくなった後も、労苦を共にして、連れ歩いている麗人とは、いったいどんな女性かと、武者輩むしゃばらは、眼をぎたてて、まわりに立った。
日本名婦伝:静御前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
公子こうしきうやぶるるや、召忽せうこつこれし、われ(一〇)幽囚いうしうせられてはづかしめく。鮑叔はうしゆくわれもつはぢしとさず。(一一)小節せうせつぢずして・功名こうめいの・天下てんかあらはれざるをづるをればなり