かこ)” の例文
新字:
さて私の結婚生活せいくわつは、うづのやうにぐる/\と私どもをもてあそばうとしました、今猶多少たせうの渦はこの身邊しんぺんを取りかこみつゝあるけれども
冬を迎へようとして (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
夕涼ゆふすゞみにはあしあかかにで、ひかたこあらはる。撫子なでしこはまだはやし。山百合やまゆりめつ。月見草つきみさうつゆながらおほくは別莊べつさうかこはれたり。
松翠深く蒼浪遥けき逗子より (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
その後へ玄龍先生は、かねて湯島にかこつて居た今の内儀の時代を入れ、母親のお市、先妻のお直も承知の上で、改めて女房の披露をした。
これを竪穴式石室たてあなしきせきしつんでゐるひとがありますが、じついし部屋へやといふほどのものではなく、たゞ簡單かんたんいしかこひにすぎないのであります。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
けた少時しばし竹藪たけやぶとほしてしめつたつちけて、それから井戸ゐどかこんだ井桁ゐげたのぞんで陰氣いんきしげつた山梔子くちなしはな際立はきだつてしろくした。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
すべてわれらのうち天に歸りたりし者、かの光の上にありてこれをかこめぐりつゝ、千餘の列より己をうつせり 一一二—一一四
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
さうしてこの水田すいでん東西南とうざいなん三方さんぽう比較的ひかくてきかた地盤ぢばんもつかこまれてゐる。かういふ構造こうぞう地盤ぢばんであるから、地震ぢしん比較的ひかくてきはげしかつたであらう。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
始終さうだつたのです。しかし私はもうソーンフィールド莊をたゝんでしまふ積りです。玄關の戸を釘付くぎづけにして下の窓は板でかこつてしまひます。
このやくもたつなども、ふる書物しよもつ説明せつめいにさへ、いくすぢものくもかこんだところから、いはれたものとしてゐます。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
言寄いひよことばかこまれても、こひするまなこおそはれても、いっかなこゝろうごかさぬ、賢人けんじん墮落だらくさする黄金こがねにも前垂まへだれをばひろげぬ。
木曾きそやまかこまれたふか谷間たにあひのやうなところですから、どうしてもたうげひとつだけはさなければらなかつたのです。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
しながら此處彼處ここかしこかこひ者をなし其上屡々しば/\女郎買にもゆきうちの下女には手を付て懷妊くわいにんさせて金を取られいやはや女を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
たくかこんでてんでに氣焔きえん猛烈まうれつなるはふまでもないことで、政論せいろんあり、人物評じんぶつひやうあり、經濟策けいざいさくあり
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
畫題ぐわだいは『自然しぜんこゝろ』と謂ツて、ちらしがみ素裸すつぱだかわかをんなが、新緑しんりよく雑木林ざふきばやしかこはれたいづみかたはらに立ツて、自分のかげ水面すゐめんに映ツてゐるのをみまもツてゐるところだ。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
みのるはその頃の自分をかこふやうな師匠の慈愛を思ひ出して、いたづらな涙にその胸を潤ほす日が多かつた。
木乃伊の口紅 (旧字旧仮名) / 田村俊子(著)
たゞ、一箇所かしよ丈餘じやうよ貝層かひそう下部かぶから一二しやくところに、小石こいしごとかこつたなかで、焚火たきびをしたらしい形跡けいせき個所かしよが、半分はんぶんきりくづされて露出ろしゆつしてるのを見出みいだした。
で、そこはまた拔目ぬけめのない所謂いはゆる政商せいしやうなどは莫大ばくだいもないかねけてちやう卓子たくしかこむ。そして、わざとける。
麻雀を語る (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
西町奉行にしまちぶぎやう荒尾但馬守あらをたじまのかみは、たか土塀どべいかこまれた奉行役宅ぶぎやうやくたくの一しつで、腕組うでぐみをしながら、にツとわらつた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
それらの人々は鐵格子に掴まり、街の甃石の上を見下ろしたが、そこでも群衆が揉み合ひ何事かが起つてゐるらしいが、何をかこんで見てゐるのか判斷がしにくかつた。
末野女 (旧字旧仮名) / 室生犀星(著)
よしや良人おつと藝者狂げいしやぐるひなさらうとも、かこものして御置おおきなさらうとも其樣そんこと悋氣りんきするわたしでもなく、侍婢をんなどもから其樣そんうわさきこえまするけれどれほどはたらきのある御方おかたなり
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
この私娼窟をかこんで商賣をしてゐるもの、醫者を初め、藥局、八百屋、豆腐屋、荒物屋、化粧品屋、要するに、彼女達の生活と直接關係を持つもの悉くが、有料、或ひは無料で
天国の記録 (旧字旧仮名) / 下村千秋(著)
れはかれふるくから病院びやうゐんにゐるためか、まち子供等こどもらや、いぬかこまれてゐても、けつして何等なんらがいをもくはへぬとことまちひとられてゐるためか、かくかれまち名物男めいぶつをとことして
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
きみへいいて大梁たいりやうおもむき・(三九)其街路そのがいろり・其方そのまさきよなるをくにかず。かれかならてうててみづかすくはん。われきよしててうかこみをきて、(四〇)へいをさむるなり
此處こゝです。』と一言いちごんのこして、鐵門てつもんくゞつた、わたくしもつゞいてそのなかると、たちまる、此處こゝは、四方しほう數百すうひやくけん大洞窟おほほらあなで、前後左右ぜんごさゆうけづつたやう巖石がんぜきかこまれ、上部じやうぶには天窓てんまどのやうな
わたしはかうしてみなさんにかこまれてゐると、氣持きもちいサナトリウムにでもてゐるやうですよ、私達わたしたちためにも、病院びやうゐんやサナトリウムが設備せつびされてゐたら、此間このあひだくなつたSさんなんか、屹度きつとまた
彼女こゝに眠る (旧字旧仮名) / 若杉鳥子(著)
「假りのおめかけや、たまに旦那に來て貰ふかこひ者ぢやアないよ!」
とりかこみ、攻寄せめよせてくるのでした。
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
菜種なたねの花にかこまれて
筑波ねのほとり (旧字旧仮名) / 横瀬夜雨(著)
夫婦ふうふはこれに刎起はねおきたが、左右さいうから民子たみこかこつて、三人さんにんむつそゝぐと、小暗をぐらかたうづくまつたのは、なにものかこれたゞかりなのである。
雪の翼 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
店から現金げんきんで一萬兩も持出して、妾を二人もかこつて居りました。三右衞門が丈夫になつて、帳尻ちやうじりを見たら一たまりもありません。
家財道具かざいだうぐもんそとはこばれたとき火勢くわせいすですべてのものちかづくことを許容ゆるさなかつた。いへかこんでひがしにもすぎ喬木けうぼくつてた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
この貝塚かひづか附近ふきんだとか、石器時代せつきじだいひとんでゐたあと發掘はつくつするときは、をり/\いしでもつてかこんだあとだとか
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
しかしてその未だ一周ひとめぐりせざるまに、いま一の碾石まろくこれをかこみつゝ、舞をば舞に歌をば歌にあはせたり 四—六
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
けれども先生せんせい其家そのいへかこ幾畝いくせかの空地くうちみづからたがやして菜園さいゑんとし種々しゆ/″\野菜やさいゑてます。また五六羽ごろつぱにはとりふて、一もちゆるだけのたまごつてます。
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
かこひの中の上手かみてにある花壇や果樹床の間を歩く内、私の足は止つた——物音がしたのでもなく、何か見えたのでもなく、前知らせをするやうな匂ひの爲めである。
出雲人いづもびとつくつた、幾重いくへにもまはす、屏風びようぶとばりるいよ。われ/\、あたらしく結婚けつこんしたものをつゝむために、幾重いくへかこひをつくつてあることよ。あゝ、その幾重いくへ屏風びようぶとばりよ。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
で、たとへば「おもはぬ大利たいりあり」とか「物事ものごと蹉跌さてつあり、西方せいはうきやう」などといふ、かんがへれば馬鹿ばからしい暗示あんじ卓子テーブルかこ氣持きもちへんうごかすことわれながらをかしいくらゐだ。
麻雀を語る (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
打過うちすぎうち或時重四郎又入り來りけるに平兵衞は相手ほしやと思ふ折柄をりからなれば重四郎殿よくこそ御入來ごじゆらいありしぞ率々いざ/\一石參らんと碁盤ごばん引寄ひきよせ重四郎を相手あひてかこ茶菓子ちやぐわしなどを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
葡萄園を葭簀よしずかこツて氷店にして、氷をかく臺もあればサイホンの瓶も三四本見えた。
昔の女 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
すみ燒灰等やけばいなどが、小石こいしかこまれた一小部分せうぶぶん滿ちてるのを見出みいだしただけである。
をとこらしくおもときあきらめておかねさへ出來できようならおりきはおろか小紫こむらさきでも揚卷あげまきでも別莊べつさうこしらへてかこうたらうござりましよう、うそんなかんがごとめにして機嫌きげんよく御膳ごぜんあがつてくだされ
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
相手は藝子あがりのおあさといふ女。それは綺麗だといふことだが、三味線堀にかこつて三日に一日は家をあけるといふことだ。
一方いつぱう廣庭ひろにはかこんだ黒板塀くろいたべいで、向側むかうがは平家ひらや押潰おしつぶれても、一二尺いちにしやく距離きよりはあらう、黒塀くろべい眞俯向まうつむけにすがつた。
露宿 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
そのほか南滿洲みなみまんしゆう各地かくちには、ちひさな煉瓦造れんがづくりのはか石棺せきかんがありますが、ことにめづらしいのは、貝殼かひがらでもつて四角しかくかこみ、そのなか死體したいをさめたはかであります。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
勘次かんじ依然いぜんとして俛首うなだれたまゝつひとなり主人しゆじんもんくゞつた。燒趾やけあといしずゑとゞめて清潔きれいはらはれてあつた。中央ちうあうおほきかつた建物たてものうしなつてには喬木けうぼくかこまれてる。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
虹彩こうさいの内に優しい光りをたゝへてゐる茶色の目と、それをかこんでゐる長いまつ毛が描いたやうに揃つてゐることが、彼女の大きなひたひの白さを殊更きは立たせてゐた。
葡萄黒むころ、たゞ一たばいばらをもて、村人むらびとかこあなといふとも、かのむれ我等をはなれし後 一九—
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
申懸るのみか己が見世の百圓[は#「百圓は」はママ]密かに我がかこひ女の方へこかせし奸曲かんきよくに逢ひ文右衞門は終に身の難儀なんぎとなるは其人にして此過失このあやまちあるは時の不幸と云べき而已
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
突當つきあたりの芥溜ごみためわきに九しやくけんあががまちちて、雨戸あまどはいつも不用心ぶようじんのたてつけ、流石さすがに一ぱうぐちにはあらでやま仕合しやわせは三じやくばかりゑんさきくさぼう/\の空地面あきぢめん、それがはじすこかこつて青紫蘇あをぢそ、ゑぞぎく
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ひとつの、和蘭館オランダくわん貴公子きこうしと、父親ちゝおや二人ふたりきやくで。卓子テエブルあをはちあをさらかこんで向合むきあつた、唐人たうじん夫婦ふうふ二人ふたり
印度更紗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)