おぼ)” の例文
新字:
佐賀錦さがにしき紙入かみいれから、の、ざく/\と銅貨どうくわまじりをあつかつた、岡田夫人をかだふじん八千代やちよさんの紙包かみづつみの、こなしのきれいさをいまでもおぼえてる。
九九九会小記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
Kさんのその時分じぶんうたに、わがはしやぎし心は晩秋ばんしう蔓草つるくさごとくから/\と空鳴からなりするといふやうなこゝろがあつたやうにおぼえてゐます。
冬を迎へようとして (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
仁三郎は全くの一人者で、金も係累けいるゐも、人に怨を買ふおぼえもなく、その上、賽錢さいせん箱が無事で、取られた物といつては、拜殿のすゞだけ。
おぼえてます。父樣おとつさんわたくしあたまでゝ、おまへ日本人につぽんじんといふことをばどんなときにもわすれてはなりませんよ、とおつしやつたことでせう。
ぼく、このあそびをおぼえてから足掛あしかけ五ねんになるが、食事しよくじ時間じかんだけはべつとしてたゝかひつづけたレコオドはやく三十時間じかんといふのが最長さいちやうだ。
麻雀を語る (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
現在げんざいうけひしはれにおぼえあれどなにれをいとことかは、大方おほかたまへきゝちがへとたてきりて、烟草たばこにふきわたしらぬとすましけり。
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
とうさんは榎木えのきばかりでなく、橿鳥かしどりうつくしいはねひろひ、おまけにそのおほきな榎木えのきしたで、『丁度好ちやうどいとき。』までおぼえてかへつてました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
專門上せんもんじやう知識ちしきのない小六ころくが、精密せいみつ返答へんたふをしはず無論むろんなかつた。かれはたゞ安之助やすのすけからいたまゝを、おぼえてゐるかぎねんれて説明せつめいした。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
ふるはしアノ白々しら/″\しいといふとき長庵は顏色がんしよくかへて五十兩には何事ぞや拙者はさらおぼえなき大金を拙者に渡したなどとは途方とはうなき事を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
しなやうやあきなひおぼえたといつてたのはまだなつころからである。はじめはきまりがわるくて他人たにんしきゐまたぐのを逡巡もぢ/\してた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
わたしなども少年しようねんのころ、御陵ごりよう巡拜じゆんぱいするといふようなことから、つい/\考古學こうこがく興味きようみおぼえるようになつた次第しだいであります。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
くさ邪魔じやまをして、却々なか/\にくい。それにあたらぬ。さむくてたまらぬ。蠻勇ばんゆうふるつてやうやあせおぼえたころに、玄子げんし石劒せきけん柄部へいぶした。
ロミオ わし無禮ぶれいをしたおぼえはない、いや、その仔細しさいわかるまではとて會得ゑとくのゆかぬほどわし足下きみあいしてゐるのぢゃ。
翌朝よくてうかれはげしき頭痛づつうおぼえて、兩耳りやうみゝり、全身ぜんしんにはたゞならぬなやみかんじた。さうして昨日きのふけた出來事できごとおもしても、はづかしくもなんともかんぜぬ。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
けれども、こんなにむづかしい子守歌こもりうたはありません。とてもむづかしくて牝牛めうし小鳥ことりはちつともおぼえられませんでした。それはかういふ子守歌こもりうたでした。
お母さん達 (旧字旧仮名) / 新美南吉(著)
をとこは、——いえ、太刀たちびてれば、弓矢ゆみやたづさへてりました。ことくろえびらへ、二十あまり征矢そやをさしたのは、唯今ただいまでもはつきりおぼえてります。
藪の中 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
來年らいねんはこれよりもうつくしい初日はつひをがみたいものだ。』とつた言葉ことば其言葉そのことばかたおぼえてて、其精神そのせいしんあぢはうて、としとも希望きばうあらたにし
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
けれどもだんだんなにきこえなくなつていつのにか彼女かれは、にゐることをおぼえるやうになつたのであつた。
追憶 (旧字旧仮名) / 素木しづ(著)
かつ此麽こんなことをしたことはないのですが、にいさんの拉典語ラテンご文典ぶんてんに、『ねずみは——ねづみの——ねずみに—ねずみを——おゥねずちやん!』といてあつたのをおぼえてましたから
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
これでみなさんもやまかんするいろ/\なことをおぼえられたので、をりがあつたらたかやまにものぼつて實際じつさいについてられると、一層いつそう興味きようみがあるでせう。——(終)——
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
わたしいまわたし少年時代せうねんじだいことおもひだす。明治めいぢ十九ねんわたしはじめて九しうから東京とうきやう遊學いうがくときわたし友人いうじん先輩せんぱい學生間がくせいかんに、よくういふはなしのあつたことおぼえてゐる。
ものつたことはないが、かほだけはおぼえてゐる天滿與力てんまよりき何某なにがしであることを玄竹げんちくつてゐた。この天滿與力てんまよりき町人ちやうにんからそでしたるのにめうてゐるかたちだけの偉丈夫ゐぢやうふであつた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
何故だか其頃私は見すぼらしくて美しいものに強くひきつけられたのをおぼえてゐる。
檸檬 (旧字旧仮名) / 梶井基次郎(著)
しばら見詰みつめてゐるうちに、りよおぼえず精神せいしんそうさゝげてゐるみづ集注しふちゆうした。
寒山拾得 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
〔譯〕靈光れいくわう障碍しやうげ無くば、則ち乃ち流動りうどうしてゑず、四體したいかるきをおぼえん。
兎まれ角まれ、汝が病をばわが手ぬかりにて長じたりとおぼし、汝は獨り籠り居て蟲をおこしたるならん。あすは車一輛ひて、エルコラノ、ポムペイに往き、それよりヱズヰオの山に登るべし。
無爲寂寞じやくまくの國にひとり立つをおぼ
よくおぼえてゐたからだ。
おぼえずるのがあかはた
赤い旗 (旧字旧仮名) / 槙本楠郎(著)
二人ふたりは、はゝ父母ふぼで、同家ひとついへ二階住居にかいずまひで、むつまじくくらしたが、民也たみやのものごころおぼえてのちはゝさきだつて、前後ぜんごしてくなられた……
霰ふる (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
日出雄ひでをや、あのむかふにえるたかやまおぼえておいでかえ。』と住馴すみなれし子ープルス市街まち東南とうなんそびゆるやまゆびざすと、日出雄少年ひでをせうねん
小學校へはひつて文字を習ひおぼえ、をさない頭にも自分のさうあらはすことを知つて、初めて書き上げた作文にし思ひ出がのこるならば
処女作の思い出 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
さしてなにとははれねども次第々々しだい/\心細こゝろぼそおもひ、すべて昨日きのふ美登利みどりおぼえなかりしおもひをまうけてものはづかしさふばかり
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
彼女かのぢよ恐怖きようふは、いままでそこにおもいたらなかつたといふことのために、餘計よけいおほきくかげのばしてくやうであつた。彼女かのぢよあらたなるくゐおぼえた。
(旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
宗助そうすけ安井やすゐ此所こゝに二三たづねた縁故えんこで、かれ所謂いはゆる不味まづさいこしらえるぬしつてゐた。細君さいくんはうでも宗助そうすけかほおぼえてゐた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
ひしがるゝともおぼ無事なきことは申上難く候と言ひつのるにぞ然ば猶後日の調べと再度さいどどうさげられ長庵三次の兩人は又も獄屋ごくやへ引れける
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
それにみぎかたのあたりでこはばつたやうでうごかしやうによつてはきや/\と疼痛いたみおぼえた。かれ病氣びやうき其處そこあつまつたのではないかとおもつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
とうさんの幼少ちひさ時分じぶんにはおうちにおひなといふをんな奉公ほうこうしてまして、半分はんぶん乳母うばのやうにとうさんをおぶつたりいたりしてれたことをおぼえてます。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
餞別せんべつに貰つた小判の百兩を懷中に深く祕め、編笠に面體を隱したまゝ、先づ日頃信心する觀音樣の近くに陣取つて心靜かにうろおぼえのおきやうし乍ら
牝牛めうし小鳥ことりは、一生いつしやうけんめいにならひましたが、それでもおぼえられないのでおしまひにはいやになつてしまひました。
お母さん達 (旧字旧仮名) / 新美南吉(著)
が、奈何どうしたのかこゑ咽喉のどからでず、あしまたごとうごかぬ、いきさへつまつてしまひさうにおぼゆる甲斐かひなさ。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
大變たいへんわかりました』とあいちやんははなは丁寧ていねいつて、『いてきませう、おぼえてるやうに』
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
これならどんな責任せきにんでも背負せおつててると、つく/\蠻勇ばんゆう難有ありがたさをおぼえた。
盜人ぬすびとつまつたのち太刀たち弓矢ゆみやげると、一箇所かしよだけおれのなはつた。「今度こんどはおれのうへだ。」——おれは盜人ぬすびとやぶそとへ、姿すがたかくしてしまうときに、かうつぶやいたのをおぼえてゐる。
藪の中 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
『おまへさんはおぼえてなさるか。』
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
すうツとむねくのをおぼえた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
ばれた坂上さかがみは、こゑくと、外套ぐわいたうえりから悚然ぞつとした。……たれ可厭いやな、何時いつおぼえのある可忌いまはしい調子てうしふのではない。
三人の盲の話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
勿論もちろん外形ぐわいけいあらはれてもなにいぶかしいてんはないが、すこしくわたくし異樣ゐやうおぼえたのは、さう噸數とんすう一千とんくらゐにしてはその構造かうざうあまりに堅固けんごらしいのと
あの牌音パイおとくといふ力強ちからづよ魅力みりよくがある。だからこそ、麻雀マアジヤンすこあそびをおぼえると、大概たいがいひとが一熱病的ねつびやうてきになつてしまふ。
麻雀を語る (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
私共わたしどもとほくにはうからまゐるものですから、なか/\言葉ことばおぼえられません、でも、あなたがたが親切しんせつにしてくださるのを、なにより有難ありがたおもひます。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)