)” の例文
こく——亞尼アンニーかほ——微塵みじんくだけた白色檣燈はくしよくしようとう——あやしふね——双眼鏡さうがんきやうなどがかはる/\ゆめまぼろしと腦中のうちゆうにちらついてたが
もののようにえた呂宋兵衛は、すでに、味方みかたなかばはきずつき、半ばはどこかへ逃げうせたのを見て、いよいよ狼狽ろうばいしたようす。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
船乗ふなのびとには、しまとしてられています。しまにはうつくしいむすめたちがいて、つきのいいばんには、みどり木蔭こかげおどるということでした。
船の破片に残る話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
おゝ! 君達きみたちにもほゞ想像さうざう出来できるか、おうらさらはれた、天狗てんぐつかんだ、……おそらくうだらう。……が、わたしこれ地祇神とちのかみ所業しよげふおもふ。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
うはさがきか、あるひ事實じじつきか——それはとにかくがさしたのだと彼女かのぢよはあとでぢつゝかたつた——もなく彼女かのぢよ二人ふたり子供こどもとも
(旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
お前さんたち一家いっかのものを守ってあげている妖女ようじょなのだけれど、この五、六年のあいだというものは、わるいもののために、魔法まほうでしばられていて
ジャックと豆の木 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
ふちのようなしずけさの底に、闇黒やみとともに這いよる夜寒の気を、お艶は薄着の肩にふせぐすべもなく、じっと動かないお藤の凝視ぎょうしに射すくめられた。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
ともしがついて夕炊ゆうげのけむりが家々から立ち上る時、すべてのものが楽しく休むその時にお寺の高いとうの上からんだすずしい鐘の音が聞こえておにであれであれ
燕と王子 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
……それをいているうちに、私はまるでにでもかれたような薄気味のわるい笑いを浮べ出していた。
美しい村 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
明るいところにまないごとく、花前のような生活には虚偽きょぎ罪悪ざいあくなどいうものの宿やどりようがない。大悟徹底だいごてっていというのがそれか。絶対的ぜったいてき安心あんしんというのがそれか。
(新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
たゞなかふくれた。てんなみつてちゞんだ。地球ちきういとるしたまりごとくにおほきな弧線こせんゑがいて空間くうかんうごいた。すべてがおそろしい支配しはいするゆめであつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
有難ありがたぞんじます、良人やど平素ふだん牛肉うしなどは三人前にんまへべましたくらゐで……。女「おや、おちなさいまし、早桶はやをけなかでミチ/\おといたしますよ。妻「したのでせう。 ...
明治の地獄 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
この辺で止めて置けば万事が天衣無縫てんいむほうで、彼女の正体も暴露されず、私の病院も依然としてマスコットを失わずにすんだ訳であったが、好事こうず多し、とでも言おうか。
少女地獄 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
しぜん人も馬も重苦しい気持にしずんでしまいそうだったが、しかしふととおが過ぎ去ったあとのようなむなしいあわただしさにせき立てられるのは、こんな日は競走レースれて大穴が出るからだろうか。
競馬 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
「まさかあの案山子かゝしが差したやうなのにつてゐるんぢやもるまいな」
それとも山中のときの幻に過ぎなかったのか。京子は判断に迷った。
偉大なる夢 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
戀女こひをんな輪近わぢかくへ奇異おつりき魔物まものいのして、彼女おてき調伏てうぶくしてしまふまで、それを突立つッたたせておいたならば、それこそ惡戲てんごうでもあらうけれど、いまのは正直正當しゃうぢきしゃうたう呪文じゅもんぢゃ、彼女おてきりて
さても/\のかはやう我身わがみ嫁入よめいりのうわさきこそめころから、やけあそびのそこぬけさわぎ、高坂かうさか息子むすこまる人間にんげんかわつたやうな、でもさしたか、たゝりでもあるか、よもや只事たゞごとではいと其頃そのころきしが
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「全くしたんです」
凡人伝 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
しきの吹くかくかとぞ
藤村詩抄:島崎藤村自選 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
時刻とき
恐怖の口笛 (新字新仮名) / 海野十三(著)
段々だん/\むら遠退とほのいて、お天守てんしゆさびしくると、可怪あやし可恐おそろしこと間々まゝるで、あのふねものがいでくと、いま前様めえさまうたがはつせえたとほり……
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
それから、れいこく一件いつけんいては、水兵すいへい一同いちどうわたくしおなやうに、無※ばかはなしだとわらつてしまつたが、ひとり櫻木大佐さくらぎたいさのみはわらはなかつた。
ところが、好事こうじおおし、せっかくの白河夜船しらかわよふねを、何者とも知れず、ポカーンとっぺたをはりつけて、かれの夢をおどろかさせた者がある。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「どこからきたのだろう。あのふねはなにかおもしろいゆめせてやってきた、ふねではないかしらん。」とおもいました。
塩を載せた船 (新字新仮名) / 小川未明(著)
んな事があるものか」と云つて代助の手をおさえた。二人ふたりかれた様な顔をして互を見た。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「でも、良い女が三人も揃っていると、何んかこうすんですね」
うへへ五ほんめの、ひとのこつた瓦斯燈がすとうところに、あやしいものの姿すがたえる……それは、すべ人間にんげんかげる、かげつかむ、影法師かげぼふしくらものぢや。
三人の盲の話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
忽然たちまち樣々さま/″\妄想まうぞう胸裡こゝろわだかまつてた、今日こんにちまでは左程さほどまでにはこゝろめなかつた、こく怪談くわいだん
またいくども、ひろい試合場しあいじょう砂地すなじや、自分たちの顔に、その偉大いだい怪影かいえい太陽たいようをかすめるごとに、とおりのようなかげを投げていたのも、まったく知らずにいた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
むかしは、がついて、人間にんげんうのだといったものだ。
草原の夢 (新字新仮名) / 小川未明(著)
爾時そのときであつた。あの四谷見附よつやみつけやぐらは、まどをはめたやうな兩眼りやうがんみひらいて、てんちうする、素裸すはだかかたちへんじた。
露宿 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
きますると、われらに、くだんかげもののはなしいてからは、またゝさへ、ひとみいて、われかげ目前めさきはなれぬ。
三人の盲の話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
うてかすことまこととはおもはぬこなたに、言託ことづけるのは無駄むだぢやらうが、ありやうは、みぎものは、さしあたりこなたかげを、つかまうとするではない。
三人の盲の話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
やがて接吻キツスおとがした。天幕テントにほんのりとあかみがした。が、やがてくらつて、もやにしづむやうにえた。所業なすわざではない、人間にんげん擧動ふるまひである。
露宿 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
が、それ了見れうけんなら、こんな虚気うつけな、——対手あひておににしろ、にしろ、自分じぶん女房にようばううばはれる馬鹿ばかない。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
南無三寶なむさんばうした。ぶく/\のし/\と海坊主うみばうず。が——あゝ、これ元來ぐわんらい懸念けねんした。みちしようにあたつたり。
雨ふり (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ぞくに、ひきがへるものだとふ。かつ十何匹じふなんびき行水盥ぎやうずゐだらひせたのが、一夜いちやうちかたちしたのはげんつてる。
番茶話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
が、いづれものにちかいのであるから、またばける、といはれるのをおもんぱかつて、内々ない/\遠慮ゑんりよがちにはなしたけれども、じつは、みゝづくはきである。第一だいいちかたち意氣いきだ。
木菟俗見 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
さらぬだに、地震ぢしん引傾ひつかしいでゐる借屋しやくやである。颶風ぐふう中心ちうしんとほるより氣味きみわるい。——むね引緊ひきしめ、そであはせて、ゐすくむと、や、や、次第しだい大風おほかぜれせまる。
十六夜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
時々とき/″\うでのやうな眞黒まつくろけむりが、おほいなるこぶしをかためて、ちひしぐごとくむく/\つ。
露宿 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ちやるめらをく、さゝらをる、ベルらしたり、小太鼓こだいこつたり、宛然まるで神樂かぐらのやうなんですがね、うちおほきいから、とほくにきこえて、夜中よなかの、あのもののお囃子はやしたやうよ
印度更紗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
こんなときそゝのかして、狂人きちがひじみたわざをさせて、これうばはうとするのかもれぬ。
銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
せいもすら/\ときふたかくなつたやうにえた、婦人をんなゑ、くちむすび、まゆひらいて恍惚うつとりとなつた有様ありさま愛嬌あいけう嬌態しなも、世話せわらしい打解うちとけたふうとみせて、しんか、かとおもはれる。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
せいもすらすらと急に高くなったように見えた、婦人おんなは目をえ、口を結び、まゆを開いて恍惚うっとりとなった有様ありさま愛嬌あいきょう嬌態しなも、世話らしい打解うちとけた風はとみにせて、神か、かと思われる。
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
が、むべき岩窟がんくつを、かつ女賊ぢよぞくかくであつたとふのはをしい。……
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ながれと一しよわたしそばにおいでなさいといふてくれるし、まだ/\そればかりでは自身じぶんしたやうぢやけれども、こゝに我身わがみ我身わがみ言訳いひわけ出来できるといふのは、しきり婦人をんな不便ふびんでならぬ
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
天狗てんぐ——など意識いしきしましたのは、のせゐかもれません。たゞしこれ目標めじるし出來できたためか、えたやうにつて、たふれてゆきをか飛移とびうつるやうなおもひはなくなりました。
雪霊続記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
逆寄さかよせの決心で、そう言ったのをキッカケに、どかと土手の草へ腰をかけたつもりのところ、負けまい気の、ものの顔を見詰みつめていたので、横ざまに落しつけるはずの腰がすわらず、床几しょうぎすべって
春昼後刻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
就中なかんづく、ねうちものは、毛卷けまきにおしどりの羽毛うまう加工かこうするが、河蝉かはせみはねは、職人しよくにんのもつともほつするところ、とくに、あの胸毛むなげゆるは、ごとうをせる、といつてあたひえらばないさうである。
木菟俗見 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)