あら)” の例文
少年せうねんゆびさかたながめると如何いかにも大變たいへん! 先刻せんこく吾等われら通※つうくわして黄乳樹わうにうじゆはやしあひだより、一頭いつとう猛獸まうじういきほいするどあらはれてたのである。
また日本にほん小説せうせつによくあらはれる魔法遣まはふづかひが、不思議ふしぎげいえんずるのはおほくは、一はん佛教ぶつけうから一はん道教だうけう仙術せんじゆつからたものとおもはれる。
妖怪研究 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
細君は怒つて先に部屋へはひつて仕舞しまふ。隣の部屋からさきの夫人のマドレエヌが手燭てしよくを執つてあらはれ一人残つたモリエエルを慰める。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
先驅さきがけひかり各自てんでかほ微明ほのあかるくして地平線上ちへいせんじやう輪郭りんくわくの一たんあらはさうとする時間じかんあやまらずに彼等かれらそろつて念佛ねんぶつとなへるはずなので
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
小櫻姫こざくらひめ通信つうしん昭和しょうわねんはるから現在げんざいいたるまで足掛あしかけねんまたがりてあらわれ、その分量ぶんりょう相当そうとう沢山たくさんで、すでに数冊すうさつのノートをうずめてります。
こはれた壁に圍まれた狹い平地、夕ぐれ時を示す、昇りはじめた新月しんげつにつきまとうた感情を、私は、云ひあらはすことが出來ない。
代助のひにた平岡も其戸口とぐちからあらはれた。先達て夏服なつふくて、相変らず奇麗なカラとカフスをけてゐた。いそがしさうに
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
かゝる誤りは萬朝報よろづてうはうに最もすくなかつたのだが、先頃さきごろほかならぬ言論欄に辻待つぢまち車夫しやふ一切いつせつ朧朧もうろうせうするなど、大分だいぶ耳目じもくに遠いのがあらはれて来た。
もゝはがき (新字旧仮名) / 斎藤緑雨(著)
但馬守たじまのかみなつかしさうにつて、築山つきやま彼方かなたに、すこしばかりあらはれてゐるひがしそらながめた。こつな身體からだがぞく/\するほどあづまそらしたはしくおもつた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
學問がくもんなく分別ふんべつなきものすらくわだつることを躊躇ためろふべきほどの惡事あくじをたくらましめたるかをあらはすはけだしこのしよ主眼しゆがんなり。
「罪と罰」の殺人罪 (旧字旧仮名) / 北村透谷(著)
おまけに先刻さつき手早てばや藝當げいたうその效果きゝめあらはしてたので、自分じぶん自分じぶんはらまり、車窓しやさうから雲霧うんむうもれた山々やま/\なが
湯ヶ原ゆき (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
柳之助りゅうのすけ亡妻ぼうさいの墓に雨がしょぼ/\降って居たと葉山はやまに語るくだりを読むと、青山あおやま墓地ぼちにある春日かすが燈籠とうろうの立った紅葉山人こうようさんじんの墓が、と眼の前にあらわれた。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
米国のカピテン・ブルックは帰国の後、たまたま南北戦争の起るにうて南軍に属し、一種の弾丸だんがん発明はつめいしこれを使用してしばしば戦功をあらわせしが
しかるに、中途ちうとえて大瀧氏おほたきしあらはれて、懷中ふところから磨製石斧ませいせきふ完全くわんぜんちかきを取出とりいだし、坪井博士つぼゐはかせまへして。
あいちやんはれを左程さほどおどろきませんでした、種々いろ/\不思議ふしぎ出來事できごとには全然すつかりれてしまつて。それがところますと、突然とつぜんれがあらはれました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
おゝこの集団しふだん姿すがたあらはすところ、中国ちうごく日本にほん圧制者あつせいしゃにぎり、犠牲ぎせいの××(1)は二十二しやうつちめた
しばらくすると、ごーと山りがしてきまして、むこうのしげみのあいだから、たるのように大きな大蛇おろちが、真赤まっかしたをぺろりぺろりだしながら、ぬっとあらわれでました。
人形使い (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
ひくくしてしづかにくる座敷ざしきうちこれは如何いか頭巾づきんえざりしおもて肩掛かたかけにつゝみしいまあきらかにあらはれぬ
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「いいえ、違うわ。客間の方からならもっと左の方にあらわれなければならないはずよ、でなければ……」
崖の崩れたましい痕があらわになり渓流の中にも危岩がそびえ立って奔流を苛立いらだたせている処もある。
雨の上高地 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
御先祖大場甚内樣、大坂夏冬の陣に拔群の御手柄をあらはし東照宮樣の御墨附を頂いたばかりに、此度御所領の騷動にも、格別の御沙汰もなく、御目こぼしになりました。
真夏の炎天に笠も手拭てぬぐいも被らず、沖から吹く潮風に緑髪を乱して、胸の乳房もあらわに片手に蝋人形をさも大事相に抱いて、徒跣はだしのまま真黄な、真白な草花の咲いている
蝋人形 (新字新仮名) / 小川未明(著)
私の泣きつかれた頃に、ひょっこり姿をあらわした兵さんは私を見ると大声で、どなりつけた。
あまり者 (新字新仮名) / 徳永直(著)
のそり/\闇の中からあらはれて來てかき消すやうに物影に隱れて了ツたり、ツて見れば單純な何んでも無いやうな事柄だけれども、子供心には非常に薄氣味うすぎみわるい、其の度に
水郷 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
大久保おほくぼからせられた彼女かのぢよ手紙てがみによると、彼女かのぢよがしをらしくもかれあいすがらうとしてゐる気持きもちが、いつはりなく露出ろしゆつしてゐたが、いまかれにつれられてまへあらはれた彼女かのぢよると
彼女の周囲 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
或はいわれて澎湃ばうはい白沫をばし、或は瀾となり沈静ちんせい深緑しんりよくあらはす、沼田をはつして今日にいたり河幅水量ともはなはだしく减縮げんしゆくせるをおぼえず、果して尚幾多の長程と幾多いくたの険所とをいうする
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
かれまはりを掃除さうぢするニキタは、其度そのたびれい鐵拳てつけんふるつては、ちからかぎかれつのであるが、にぶ動物どうぶつは、をもてず、うごきをもせず、いろにもなんかんじをもあらはさぬ。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
そして早くもそのえ立った白金のそら、みずうみの向うのうぐいすいろの原のはてからけたようなもの、なまめかしいもの、古びた黄金、反射炉はんしゃろの中のしゅ、一きれの光るものがあらわれました。
インドラの網 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
答えがないので、為さんはそっと紙門からかみを開けて座敷を覗くと、お光は不断着をはおったまままだ帯も結ばず、真白な足首あらわにつまは開いて、片手に衣紋えもんを抱えながらじっと立っている。
深川女房 (新字新仮名) / 小栗風葉(著)
そこへ突然とつぜん一つの誘惑いうわくとしてあらはれたのが、せい発行はつかうの△△債劵さいけんことだつた。
(旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
ところが正九郎のそのはれものに、突如とつじょあらわれた闖入者ちんにゅうしゃが手をふれたのである。
空気ポンプ (新字新仮名) / 新美南吉(著)
緋の山繭やままゆ胴抜どうぬきの上に藤色の紋附のすそ模様の部屋紫繻子むらさきじゅす半襟はんえりを重ねまして、燃えるような長襦袢ながじゅばんあらわに出して、若いしゅに手を引かれて向うへきます姿を、又市はと目見ますと
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
えんから上手かみてへ一だんりて戸袋とぶくろかげにはすでたらい用意よういされて、かまわかした行水ぎょうずいが、かるいうずいているのであろうが、上半身じょうはんしんあらわにしたまま、じっとむしきいっているおせんは
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
私の住んでゐる村では、何處どこで井戸を掘つても、一丈程下へ行くと屹度澤山な眞菰まこもの根に掘當てる。多い處ではそうを成してあらはれる。三間ほどつて漸く水を含んだ砂に突き當てる。それは青い砂だ。
筑波ねのほとり (旧字旧仮名) / 横瀬夜雨(著)
持ちたる故隨分ずゐぶん用心ようじんはすれども白晝ひるひなかの事なれば何心なく歩行あゆみきたりし所手拭てぬぐひにて顏をつゝみたる大の男三人あらはれいで突然ゆきなり又七に組付くみつくゆゑ又七は驚きながら振放ふりはなさんとる所を一人の男指込さしこ懷中くわいちうの金子を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
あるいは諸動物の形してあらわるてふ信念が起ったのだと。
「愛」の御姿みすがたうつそ身にあらはれいでし不思議さよ。
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
ちゐて、やがてはなやかにあらはれぬ。
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
夜中よなか怪猫かいべうあらはれてわたしむねおさへた。
ねこ (旧字旧仮名) / 北村兼子(著)
ヂュリエットふたゝ階上かいじゃうあらはるゝ。
くわうひらめうち金色こんじき毒龍どくりようあら
鬼桃太郎 (旧字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
しろぬかつきあらはれ
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
彼方かなた山背やまかげからぞろ/\とあらはれてたが、鐵車てつしやるやいな非常ひじやう驚愕おどろいて、奇聲きせいはなつて、むかふの深林しんりんなかへとせた。
夫人のうして居られるのは自身の姿が不朽の芸術品として良人をつとに作られたその喜びを何時いつ迄もあらはして居られる様にも思はれるのであつた。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
現在げんざい欧米おうべい出版界しゅっぱんかいには、った作品さくひん無数むすうあらわれてりますが、本邦ほんぽうでは、翻訳書ほんやくしょ以外いがいにはあまり類例るいれいがありません。
記録きろくあらはれたものもほとんく、弘仁年間こうにんねんかん藥師寺やくしじそう景戒けいかいあらはした「日本靈異記にほんれいいき」がもつとふるいものであらう。今昔物語こんじやくものがたりにも往々わう/\化物談ばけものだんる。
妖怪研究 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
不審ふしんおもつて躊躇ちうちよしてると突然とつぜんまへ對岸たいがん松林まつばやし陰翳かげからしろひかつてみづうへへさきふねあらはれた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
彼女かのぢよ多數たすう文明人ぶんめいじん共通きようつう迷信めいしん子供こどもときからつてゐた。けれども平生へいぜいその迷信めいしんまた多數たすう文明人ぶんめいじんおなやうに、遊戲的いうぎてきそとあらはれるだけんでゐた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
種々のかたちで世界の各所かくしょあらわるゝ、人心じんしん昂奮こうふん、人間の動揺が、まぐろしくあらためて余の心の眼にうつった。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
伏見ふしみから京街道きやうかいだう駕籠かごくだつて但馬守たじまのかみが、守口もりぐち駕籠かごをとゞめ、しづかに出迎でむかへの與力等よりきらまへあらはれたのをると眞岡木綿まをかもめん紋付もんつきに小倉こくらはかま穿いてゐた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)