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このひと
ふりがな文庫
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此人
(
このひと
)” の例文
同伴者
(
つれ
)
は
親類
(
しんるゐ
)
の
義母
(
おつかさん
)
であつた。
此人
(
このひと
)
は
途中
(
とちゆう
)
萬事
(
ばんじ
)
自分
(
じぶん
)
の
世話
(
せわ
)
を
燒
(
や
)
いて、
病人
(
びやうにん
)
なる
自分
(
じぶん
)
を
湯
(
ゆ
)
ヶ
原
(
はら
)
まで
送
(
おく
)
り
屆
(
とゞ
)
ける
役
(
やく
)
を
持
(
もつ
)
て
居
(
ゐ
)
たのである。
湯ヶ原ゆき
(旧字旧仮名)
/
国木田独歩
(著)
浮世絵でも描こうといった殿様だけに、
此人
(
このひと
)
には妙に平民的な——その当時の大名にしては型破りの気易いところがあったのです。
奇談クラブ〔戦後版〕:02 左京の恋
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
ホヽいやだよ
此人
(
このひと
)
は、
蜆
(
しゞみ
)
の
貝
(
かひ
)
ごと
食
(
た
)
べてさ……あれさお
刺身
(
さしみ
)
をおかつこみでないよ。梅「へえ……あゝ
好
(
い
)
い
心持
(
こゝろもち
)
になつた。 ...
心眼
(新字旧仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
一日
(
いちにち
)
も
速
(
すみや
)
かに
日本
(
につぽん
)
へ
皈
(
かへ
)
りたいのは
山々
(
やま/\
)
だが、
前後
(
ぜんご
)
の
事情
(
じじやう
)
を
察
(
さつ
)
すると、
今
(
いま
)
此人
(
このひと
)
に
向
(
むか
)
つて、
其樣
(
そん
)
な
我儘
(
わがまゝ
)
は
言
(
い
)
はれぬのである。
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
すると
嫂
(
あによめ
)
がそれに賛成して、一週間許り前
占者
(
うらなひしや
)
に見てもらつたら、
此人
(
このひと
)
は屹度人の
上
(
かみ
)
に立つに違ないと判断したから大丈夫だと主張したのださうだ。
それから
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
▼ もっと見る
蒙古
(
もうこ
)
退治の
注進状
(
ちゅうしんじょう
)
の中に、確か
此人
(
このひと
)
の
連名
(
れんみょう
)
もあったかと思いますが……。いや、それは調べれば
直
(
すぐ
)
に判ります。何しろ、面白いものを
掘出
(
ほりだ
)
しましたよ。
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
幾分かは
此人
(
このひと
)
によって満足されるだろうと云う深く知り合わない人に対しての良い予期も心の裡に満ちて居た。
千世子(二)
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
此人
(
このひと
)
も
生
(
うま
)
れ
落
(
お
)
ちると
此山
(
このやま
)
で
育
(
そだ
)
つたので、
何
(
なん
)
にも
存
(
ぞん
)
じません
代
(
かはり
)
、
気
(
き
)
の
可
(
い
)
い
人
(
ひと
)
で
些
(
ちツ
)
ともお
心置
(
こゝろおき
)
はないのでござんす。
高野聖
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
お父さんはお昼に
神保
(
じんぼう
)
さんをお招き申した。何でも何とか町の地所を
此人
(
このひと
)
に買わせるんだって、お母さんと
談話
(
はな
)
していた。今日は料理人が馬鹿に意地が悪い。
いたずら小僧日記
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
『それは
友人
(
いうじん
)
に
水谷幻花
(
みづたにげんくわ
)
といふのが
有
(
あ
)
ります。
此人
(
このひと
)
に
連
(
つ
)
れられて、
東京近郊
(
とうきやうきんがう
)
は
能
(
よ
)
く
表面採集
(
ひやうめんさいしう
)
に
歩
(
ある
)
きました』
探検実記 地中の秘密:01 蛮勇の力
(旧字旧仮名)
/
江見水蔭
(著)
檀家
(
だんか
)
の
中
(
なか
)
にも
世話好
(
せわず
)
きの
名
(
な
)
ある
坂本
(
さかもと
)
の
油屋
(
あぶらや
)
が
隱居
(
ゐんきよ
)
さま
仲人
(
なかうど
)
といふも
異
(
い
)
な
物
(
もの
)
なれど
進
(
すす
)
めたてゝ
表向
(
おもてむ
)
きのものにしける、
信如
(
しんによ
)
も
此人
(
このひと
)
の
腹
(
はら
)
より
生
(
うま
)
れて
男女
(
なんによ
)
二人
(
ふたり
)
の
同胞
(
きやうだい
)
たけくらべ
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
白猿
(
はくゑん
)
の
余光
(
よくわう
)
で
抱一
(
はういつ
)
不白
(
ふはく
)
などの
許
(
もと
)
へも
立入
(
たちい
)
るやうになり、
香茶
(
かうちや
)
活花
(
いけばな
)
まで器用で
間
(
ま
)
に
合
(
あは
)
せ、
遂
(
つひ
)
に
此人
(
このひと
)
たちの
引立
(
ひきたて
)
にて
茶道具屋
(
ちやだうぐや
)
とまでなり、
口前
(
くちまへ
)
一
(
ひと
)
つで
諸家
(
しよけ
)
に
可愛
(
かあい
)
がられ
隅田の春
(新字旧仮名)
/
饗庭篁村
(著)
此人
(
このひと
)
は梅毒とリウマチスとの治療が得意なので
其
(
その
)
家へは男女の梅毒患者が多く
行
(
ゆ
)
くと聞いて、神経の
昂
(
たかぶ
)
つて居る僕は喉を焼いて貰ふ度に
其
(
その
)
器械が無気味でならなかつた。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
そも
此人
(
このひと
)
は
如何
(
いか
)
なればかゝる細工をする者ぞと思うに連れて
瞳
(
ひとみ
)
は通い、
竊
(
ひそか
)
に様子を伺えば、色黒からず、口元ゆるまず、
眉
(
まゆ
)
濃からずして末
秀
(
ひい
)
で、眼に一点の濁りなきのみか
風流仏
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
幸
(
さいはひ
)
なるかな、
妾
(
せふ
)
の
姙娠中
(
にんしんちゆう
)
屡〻
(
しば/\
)
診察を頼みし医師は
重井
(
おもゐ
)
と同郷の人にして、
日頃
(
ひごろ
)
重井
(
おもゐ
)
の名声を敬慕し、彼と
交誼
(
こうぎ
)
を結ばん事を望み居たれば、
此人
(
このひと
)
によりて双方の秘密を保たんとて
母となる
(新字旧仮名)
/
福田英子
(著)
人
(
ひと
)
或
(
あるひ
)
は
其書
(
そのしよ
)
を
傳
(
つた
)
へて
秦
(
しん
)
に
至
(
いた
)
る。
秦王
(
しんわう
)
、
孤憤
(
こふん
)
・
五蠧
(
ごと
)
の
書
(
しよ
)
を
見
(
み
)
て
曰
(
いは
)
く、『
嗟乎
(
ああ
)
寡人
(
くわじん
)
、
此人
(
このひと
)
を
見
(
み
)
之
(
これ
)
と
遊
(
あそ
)
ぶを
得
(
え
)
ば、
死
(
し
)
すとも
恨
(
うら
)
みじ』と。
李斯
(
りし
)
曰
(
いは
)
く、『
此
(
こ
)
れ
韓非
(
かんぴ
)
の
著
(
あら
)
はす
所
(
ところ
)
の
書
(
しよ
)
也
(
なり
)
』と。
秦
(
しん
)
因
(
よ
)
つて
急
(
きふ
)
に
韓
(
かん
)
を
攻
(
せ
)
む。
国訳史記列伝:03 老荘申韓列伝第三
(旧字旧仮名)
/
司馬遷
(著)
乳母 はれま、
此人
(
このひと
)
は!
何
(
なん
)
たるお
人
(
ひと
)
ぢゃお
前
(
まへ
)
は?
ロミオとヂュリエット:03 ロミオとヂュリエット
(旧字旧仮名)
/
ウィリアム・シェークスピア
(著)
三四郎が広田の
家
(
うち
)
へ
来
(
く
)
るには色々な意味がある。
一
(
ひと
)
つは、
此人
(
このひと
)
の生活其他が普通のものと変つてゐる。ことに自分の性情とは全く容れない様な所がある。
三四郎
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
されば
外見
(
よそみ
)
には
大分限
(
だいぶげん
)
の
如
(
ごと
)
くなれど、
其實
(
そのじつ
)
清貧
(
せいひん
)
なることを
某
(
それがし
)
觀察仕
(
くわんさつつかまつ
)
りぬ。
此人
(
このひと
)
こそ
其身
(
そのみ
)
治
(
をさ
)
まりて
能
(
よく
)
家
(
いへ
)
の
治
(
をさ
)
まれるにこそ
候
(
さふら
)
はめ、
必
(
かなら
)
ず
治績
(
ちせき
)
を
擧
(
あ
)
げ
得
(
う
)
べくと
存
(
ぞん
)
じ
候
(
さふらふ
)
十万石
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
其頃
(
そのころ
)
諸侯方
(
しよこうがた
)
へ
召
(
め
)
され、
長兵衛
(
ちやうべゑ
)
が
此位
(
このくらゐ
)
の
値打
(
ねうち
)
が有るといふ時は、
直
(
ぢき
)
に
其
(
そ
)
の
代物
(
しろもの
)
を見ずに
長兵衛
(
ちやうべゑ
)
が
申
(
まう
)
しただけにお
買上
(
かひあげ
)
になつたと
云
(
い
)
ふし、
此人
(
このひと
)
は
大人
(
たいじん
)
でございますから
にゆう
(新字旧仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
それはお
前
(
まへ
)
が
何
(
なに
)
ぞの
聞違
(
きゝちが
)
へ、
私
(
わたし
)
は
毛頭
(
すこし
)
も
覺
(
おぼ
)
えの
無
(
な
)
き
事
(
こと
)
と、これが
此人
(
このひと
)
の十八
番
(
ばん
)
とはてもさても
情
(
なさけ
)
なし。
大つごもり
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
櫻木海軍大佐
(
さくらぎかいぐんたいさ
)
! 々々々。
此人
(
このひと
)
の
名
(
な
)
は
讀者
(
どくしや
)
諸君
(
しよくん
)
の
御記臆
(
ごきおく
)
に
存
(
そん
)
して
居
(
を
)
るか
否
(
いな
)
か。
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
『
僕
(
ぼく
)
は
此人
(
このひと
)
の
從者
(
じうしや
)
です』
探検実記 地中の秘密:05 深大寺の打石斧
(旧字旧仮名)
/
江見水蔭
(著)
そこで三四郎は
何
(
ど
)
うしたらあゝなるだらうと云ふ好奇心から参考の為め研究に
来
(
く
)
る。
次
(
つぎ
)
に
此人
(
このひと
)
の前へ
出
(
で
)
ると
呑気
(
のんき
)
になる。世の
中
(
なか
)
の競争があまり苦にならない。
三四郎
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
此人
(
このひと
)
始
(
はじ
)
めは
大藏省
(
おほくらしやう
)
に
月俸
(
げつぽう
)
八
圓
(
ゑん
)
頂戴
(
ちようだい
)
して、
兀
(
はげ
)
ちよろけの
洋服
(
ようふく
)
に
毛繻子
(
けじゆす
)
の
洋傘
(
かうもり
)
さしかざし、
大雨
(
たいう
)
の
折
(
をり
)
にも
車
(
くるま
)
の
贅
(
ぜい
)
はやられぬ
身成
(
みなり
)
しを、一
念
(
ねん
)
發起
(
ほつき
)
して
帽子
(
ぼうし
)
も
靴
(
くつ
)
も
取
(
と
)
つて
捨
(
す
)
て
われから
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
私
(
わし
)
なども
其位
(
そのくらゐ
)
な苦しみをして
漸
(
やうや
)
く
斯
(
か
)
ういふ
身
(
み
)
の
上
(
うへ
)
になつたのだ。と
云
(
い
)
はれて
此人
(
このひと
)
も
多助
(
たすけ
)
のいふことを
成程
(
なるほど
)
と
感心
(
かんしん
)
したから、自分も
何
(
なん
)
ぞ
商
(
あきな
)
ひをしようといふので、
是
(
これ
)
から
漬物屋
(
つけものや
)
を初めた。
塩原多助旅日記
(新字旧仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
婦人は予を
凝視
(
みつ
)
むるやらむ、一種の電気を
身体
(
みうち
)
に感じて
一際
(
ひときは
)
毛穴の
弥立
(
よだ
)
てる時、彼は得もいはれぬ声を
以
(
も
)
て「藪にて見しは
此人
(
このひと
)
なり、テモ暖かに寝たる事よ」と
呟
(
つぶや
)
けるが、まざ/\と
聞
(
きこ
)
ゆるにぞ
妖怪年代記
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
『
此人
(
このひと
)
は
武村兵曹
(
たけむらへいそう
)
とて、
吾等
(
われら
)
が
三年
(
さんねん
)
の
間
(
あひだ
)
孤島
(
こたう
)
の
生活中
(
せいくわつちう
)
、
日出雄少年
(
ひでをせうねん
)
とは
極
(
きは
)
めて
仲
(
なか
)
のよかつた
一人
(
ひとり
)
です。』と
私
(
わたくし
)
は
彼
(
かれ
)
を
二人
(
ふたり
)
に
紹介
(
ひきあは
)
せて、それより
武村兵曹
(
たけむらへいそう
)
と
私
(
わたくし
)
とは
交
(
かは
)
る/″\、
朝日島
(
あさひじま
)
へ
漂流
(
へうりう
)
の
次第
(
しだい
)
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
今
(
いま
)
の
原田
(
はらだ
)
へ
嫁入
(
よめい
)
りの
事
(
こと
)
には
成
(
な
)
つたれど、
其際
(
そのきは
)
までも
涙
(
なみだ
)
がこぼれて
忘
(
わす
)
れかねた
人
(
ひと
)
、
私
(
わたし
)
が
思
(
おも
)
ふほどは
此人
(
このひと
)
も
思
(
おも
)
ふて、
夫
(
そ
)
れ
故
(
ゆゑ
)
の
身
(
み
)
の
破滅
(
はめつ
)
かも
知
(
し
)
れぬ
物
(
もの
)
を、
我
(
わ
)
が
此樣
(
このやう
)
な
丸髷
(
まるまげ
)
などに
十三夜
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
「
字
(
じ
)
の
書
(
か
)
けるものは、
此人
(
このひと
)
ぎりなんださうですよ」と
云
(
い
)
つて
細君
(
さいくん
)
は
笑
(
わら
)
つた。すると
織屋
(
おりや
)
も
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
貴僧
(
あなた
)
、
申
(
まを
)
せば
何
(
なん
)
でも
出来
(
でき
)
ませうと
思
(
おも
)
ひますけれども、
此人
(
このひと
)
の
病
(
やまひ
)
ばかりはお
医者
(
いしや
)
の
手
(
て
)
でも
那
(
あ
)
の
水
(
みづ
)
でも
復
(
なほ
)
りませなんだ、
両足
(
りやうあし
)
が
立
(
た
)
ちませんのでございますから、
何
(
なに
)
を
覚
(
おぼ
)
えさしましても
役
(
やく
)
には
立
(
た
)
ちません。
高野聖
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
我
(
わ
)
が
思
(
おも
)
ふ
人
(
ひと
)
ほど
耻
(
はづ
)
かしく
恐
(
おそ
)
ろしき
物
(
もの
)
はなし、
女同志
(
をんなどし
)
の
親
(
した
)
しきにても
此人
(
このひと
)
こそと
敬
(
うやま
)
ふ
友
(
とも
)
に、さし
向
(
むか
)
ひては
何
(
なに
)
ごとも
言
(
い
)
はれず、
其人
(
そのひと
)
の
一言
(
ひとこと
)
二言
(
ふたこと
)
に、
耻
(
はづ
)
かしきは
飽
(
あ
)
くまで
耻
(
はづ
)
かしく
暁月夜
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
露
(
つゆ
)
の
世
(
よ
)
といへばほろりとせしもの、はかないの
上
(
うへ
)
なしなり、
思
(
おも
)
へば
男
(
をとこ
)
は
結髮
(
いひなづけ
)
の
妻
(
つま
)
ある
身
(
み
)
、いやとても
應
(
おう
)
とても
浮世
(
うきよ
)
の
義理
(
ぎり
)
をおもひ
斷
(
た
)
つほどのこと
此人
(
このひと
)
此身
(
このみ
)
にして
叶
(
かな
)
ふべしや
ゆく雲
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
美
(
うつ
)
くしい
眦
(
まなじり
)
に
良人
(
をつと
)
が
立
(
た
)
つ
腹
(
はら
)
をも
柔
(
やはら
)
げれば、
可愛
(
かあい
)
らしい
口元
(
くちもと
)
からお
客樣
(
きやくさま
)
への
世辭
(
せじ
)
も
出
(
で
)
る、
年
(
とし
)
もねつから
行
(
ゆ
)
きなさらぬにお
怜悧
(
りこう
)
なお
内儀
(
かみ
)
さまと
見
(
み
)
るほどの
人
(
ひと
)
褒
(
ほ
)
め
物
(
もの
)
の、
此人
(
このひと
)
此身
(
このみ
)
が
裏道
(
うらみち
)
の
働
(
はたら
)
き
うらむらさき
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
お
民
(
たみ
)
は
此家
(
このや
)
に十
年
(
ねん
)
あまり
奉公
(
ほうこう
)
して
主人
(
しゆじん
)
といへど
今
(
いま
)
は
我
(
わ
)
が
子
(
こ
)
に
替
(
かは
)
らず、
何
(
なに
)
とぞ
此人
(
このひと
)
を
立派
(
りつぱ
)
に
仕
(
し
)
あげて
我
(
わ
)
れも
世間
(
せけん
)
に
誇
(
ほこ
)
りたき
願
(
ねが
)
ひより、やきもきと
氣
(
き
)
を
揉
(
も
)
むほど
何心
(
なにごヽろ
)
なきお
園
(
その
)
の
体
(
てい
)
のもどかしく
経つくゑ
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
其人
(
そのひと
)
床
(
ゆか
)
しからねど
其心
(
そのこヽろ
)
にくからず、
文
(
ふみ
)
を
抱
(
いだ
)
きて
幾夜
(
いくよ
)
わびしが、
我
(
わ
)
れながら
弱
(
よわ
)
き
心
(
こヽろ
)
の
淺
(
あさ
)
ましさに
呆
(
あき
)
れ、
見
(
み
)
ればこそは
聞
(
き
)
けばこそは
思
(
おも
)
ひも
増
(
ま
)
すなれ、いざ
鎌倉
(
かまくら
)
に
身
(
み
)
を
退
(
の
)
がれて
此人
(
このひと
)
のことをも
忘
(
わす
)
れ
暁月夜
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
さても
好
(
この
)
みの
斯
(
か
)
くまでに
上手
(
じやうず
)
なるか、
但
(
たゞ
)
しは
此人
(
このひと
)
の
身
(
み
)
に
添
(
そ
)
ひし
果報
(
くわはう
)
か、
銀
(
しろかね
)
の
平打
(
ひらうち
)
一つに
鴇色
(
ときいろ
)
ぶさの
根掛
(
ねがけ
)
むすびしを、
優
(
いう
)
にうつくしく
似合
(
にあ
)
ひ
給
(
たま
)
へりと
見
(
み
)
れば、
束髮
(
そくはつ
)
さしの
花
(
はな
)
一輪
(
いちりん
)
も
中々
(
なか/\
)
に
愛
(
あい
)
らしく
暁月夜
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
今宵
(
こよひ
)
見
(
み
)
れば
如何
(
いか
)
にも
淺
(
あさ
)
ましい
身
(
み
)
の
有樣
(
ありさま
)
、
木賃泊
(
きちんどま
)
りに
居
(
ゐ
)
なさんすやうに
成
(
な
)
らうとは
思
(
おも
)
ひも
寄
(
よ
)
らぬ、
私
(
わたし
)
は
此人
(
このひと
)
に
思
(
おも
)
はれて、十二の
年
(
とし
)
より十七まで
明暮
(
あけく
)
れ
顏
(
かほ
)
を
合
(
あは
)
せる
毎
(
たび
)
に
行々
(
ゆく/\
)
は
彼
(
あ
)
の
店
(
みせ
)
の
彼處
(
あすこ
)
へ
座
(
すわ
)
つて
十三夜
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
正太
(
しようた
)
はあつとも
言
(
い
)
はず
立止
(
たちど
)
まりしまゝ
例
(
いつも
)
の
如
(
ごと
)
くは
抱
(
だき
)
きつきもせで
打守
(
うちまも
)
るに、
彼方
(
こなた
)
は
正太
(
しようた
)
さんかとて
走
(
はし
)
り
寄
(
よ
)
り、お
妻
(
つま
)
どんお
前
(
まへ
)
買
(
か
)
ひ
物
(
もの
)
が
有
(
あ
)
らば
最
(
も
)
う
此處
(
こゝ
)
でお
別
(
わか
)
れにしましよ、
私
(
わたし
)
は
此人
(
このひと
)
と一
處
(
しよ
)
に
歸
(
かへ
)
ります
たけくらべ
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
彼
(
あ
)
のやうに
思
(
おぼ
)
しめして
御苦勞
(
ごくらう
)
なき
身
(
み
)
の
御苦勞
(
ごくらう
)
やら
我身
(
わがみ
)
新參
(
しんざん
)
の
勝手
(
かつて
)
も
知
(
し
)
らずお
手
(
て
)
もと
用
(
よう
)
のみ
勤
(
つと
)
めれば
出入
(
でいり
)
のお
人
(
ひと
)
多
(
おほ
)
くも
見知
(
みし
)
らず
想像
(
さうぞう
)
には
此人
(
このひと
)
かと
見
(
み
)
ゆるも
無
(
な
)
けれど
好
(
この
)
みは
人
(
ひと
)
の
心々
(
こゝろ/″\
)
何
(
なに
)
がお
氣
(
き
)
に
染
(
そみ
)
しやら
云
(
い
)
はで
思
(
おも
)
ふは
山吹
(
やまぶき
)
の
下
(
した
)
ゆく
水
(
みづ
)
のわき
返
(
かへ
)
りて
胸
(
むね
)
ぐるしさも
嘸
(
さぞ
)
なるべしお
愼
(
つゝし
)
み
深
(
ぶか
)
さは
五月雨
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
夜目
(
よめ
)
なればこそ
未
(
ま
)
だしもなれ
晝
(
ひる
)
はづかしき
古毛布
(
ふるげつと
)
に
乘客
(
のりて
)
の
品
(
しな
)
も
嘸
(
さぞ
)
ぞと
知
(
し
)
られて
多
(
おほ
)
くは
取
(
と
)
れぬ
痩
(
やせ
)
せ
田
(
だ
)
作
(
づく
)
り
米
(
こめ
)
の
代
(
しろ
)
ほど
有
(
あ
)
りや
無
(
な
)
しや
九尺二間
(
くしやくにけん
)
の
煙
(
けぶり
)
の
綱
(
つな
)
あはれ
手中
(
しゆちゆう
)
にかゝる
此人
(
このひと
)
腕力
(
ちから
)
おぼつかなき
細作
(
ほそづく
)
りに
車夫
(
しやふ
)
めかぬ
人柄
(
ひとがら
)
華奢
(
きやしや
)
といふて
賞
(
ほ
)
めもせられぬ
力役
(
りきえき
)
社會
(
しやくわい
)
に
生
(
お
)
ひ
立
(
た
)
つた
身
(
み
)
とは
請取
(
うけと
)
れず
履歴
(
りれき
)
は
別れ霜
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
春秋
(
はるあき
)
の
花
(
はな
)
紅葉
(
もみぢ
)
對
(
つゐ
)
にして
揷
(
さ
)
す
簪
(
かんざし
)
の
造物
(
つくりもの
)
ならねど
當座
(
たうざ
)
の
交際
(
つきあひ
)
姿
(
すがた
)
こそはやさしげなれ
智慧
(
ちゑ
)
宏大
(
くわうだい
)
と
聞
(
き
)
くは
此人
(
このひと
)
すがりて
見
(
み
)
ばやとこれも
稚氣
(
をさなげ
)
さりながら
姿
(
すがた
)
に
知
(
し
)
れぬは
人
(
ひと
)
の
心
(
こゝろ
)
笑
(
わら
)
ひものにされなばそれも
恥
(
はづ
)
かし
何
(
なに
)
とせんと
思
(
おも
)
ふほど
兄弟
(
きやうだい
)
ある
人
(
ひと
)
羨
(
うらや
)
ましくなりてお
兄樣
(
あにいさま
)
はおやさしいとかお
前
(
まへ
)
さま
羨
(
うらや
)
ましと
口
(
くち
)
を
別れ霜
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
此
漢検準1級
部首:⽌
6画
人
常用漢字
小1
部首:⼈
2画
“此人”で始まる語句
此人々
此人達
此人方等