すぢ)” の例文
御酒ごしゆをめしあがつたからとてこゝろよくくおひになるのではなく、いつもあをざめたかほあそばして、何時いつ額際ひたひぎはあをすぢあらはれてりました。
この子 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
けれどわたし如何どういふものか、それさはつてすこしもなく、たゞはじ喰出はみだした、一すぢ背負揚しよいあげ、それがわたし不安ふあん中心点ちうしんてんであつた。
背負揚 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
ためにくろさにつやした烏帽子岩えぼしいはあたまに、を、いまのいろなみにして、一すぢ御占場おうらなひばはうに、烏帽子岩えぼしいはむかつて、一すぢ
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
芝居を見るには夫で沢山だと考へて、からめいた装束や背景を眺めてゐた。然しすぢはちつともわからなかつた。其うち幕になつた。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
あげよと云ければ和吉わきちは番茶を茶碗ちやわんみイザと計りに進めけり發時そのとき主個あるじは此方に向ひ御用のすぢは如何なる品と問へば元益茶碗ちやわん
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
しかつぎ過激くわげき勞働らうどうからぞくにそら手というてすぢいたんだので二三にち仕事しごとられなかつた。それから六七にちたつてはげしい西風にしかぜいた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
芳太郎といふすぢのよくないので評判の錺屋に入つて聞くと、始めは何んにもいひませんでしたが、十手を見せて脅かした末、たうとう白状させましたよ。
汝かたく信ずべし、たとひこの焔の腹の中に千年ちとせの長き間立つとも汝は一すぢの髮をも失はじ 二五—二七
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
わたしの通されたへやは、奥の風通しのい二階であつた。八畳の座敷に六畳の副室があつた。衣桁えかうには手拭が一すぢ風に吹かれて、まづ山水さんすゐふくが床の間にけられてあつた。
父の墓 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
手のすぢさうする男も参り、英国の紳士達の前に片膝立てつついみじきうらなひを致すさまも見え申しさふらふ
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
昔は少し泳げたのだが、狸も三十七になると、あちこちのすぢが固くなつて、とても泳げやしないのだ。白状する。おれは三十七なんだ。お前とは實際、としが違ひすぎるのだ。
お伽草紙 (旧字旧仮名) / 太宰治(著)
これは水揚みづあがりせざるところものどもこゝにはせあつまりて、川すぢひらき水をおとさんとする也。闇夜あんやにてすがたは見えねど、をんなわらべ泣叫なきさけこゑあるひとほく或はちかく、きくもあはれのありさま也。
マーキュ 何人なんにん? いや、足下おぬしのやうなのが二人ふたりとゐたら、たちまころしあうてしまはうから、二人ふたりともゐなくならう。はて、足下おぬしなぞはひげすぢおほすくないがもとでもたゝふ。
といふおはなしを考へました、これ昔風むかしふう獣物けものくちくといふお話のすぢでございます。
牛車 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
そのころ、それが賭博とばくとのうたがひをけて、ばんどうがそのすぢから調しらべをけるやうな事件じけんあがつたが、調しらべるがはがその技法ぎはふらないのでだれかが滔滔たうたう講釋かうしやくをはじめ
麻雀を語る (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
江戸えど町醫者まちいしや小田東叡をだとうえい安政あんせいねん十二ぐわつ出版しゆつぱん防火策圖解ばうくわさくづかい)なるものかかべすぢかひをれることを唱道しやうだうしたくらゐのことでそれ以前いぜんべつ耐震的工夫たいしんてきくふう提案ていあんされたことはかぬのである。
日本建築の発達と地震 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
すぢ日本につぽんうるはしき乙女おとめ舞衣まひぎぬ姿すがたが、月夜げつやにセイヌかは水上みなか彷徨さまよふてるといふ、きはめて優美ゆうびな、またきはめて巧妙こうめう名曲めいきよく一節ひとふし、一は一よりはなやかに、一だんは一だんよりおもしろく
ふたゝ火山脈かざんみやく辿たどつてみると、それが地震ぢしんおこすぢすなは地震帶ぢしんたい一致いつちし、あるひあひ竝行へいこうしてゐる場合ばあひおほみとめられる。しかしながら火山脈かざんみやくともなつてゐない地震帶ぢしんたい多數たすうあることをわすれてはならない。
火山の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
但馬守たじまのかみは、れいひたひすぢをピク/\とうごかしつゝつた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
行啓おなりのまへ消防隊のしゆすぢが並んで見てるたんばこの花
海阪 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
生れたり、刺違さしちがへたり、まるですぢが立つてゐない。
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
何だか膸のあたりがすぢをひいて痛み出した。
展望 (旧字旧仮名) / 福士幸次郎(著)
全身のすぢのはちきれるやうな
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
あがれるすぢいかれるしゝ
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
黒雲二たすぢ
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
げにも浮世うきよ音曲おんぎよく師匠ししやうもとしかるべきくわいもよほことわりいはれぬすぢならねどつらきものは義理ぎりしがらみ是非ぜひたれて此日このひ午後ひるすぎより
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
よ! よ! いはめんなめらかに、しつあをつやきざんで、はないろうつしたれば、あたかむらさきすぢつた、自然しぜん奇代きたい双六磐すごろくいは
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
宗助そうすけしろすぢふちつたむらさきかさいろと、まだらないやなぎいろを、一歩いつぽ遠退とほのいてながはしたこと記憶きおくしてゐた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
證據にと目にかどたつれば惣内ひざ立直たてなほし名主役の惣内を盜人などとは言語同斷ごんごどうだんなり九助品に依りすぢに因ては了簡れうけん成難なりがたしと聞皆々みな/\四方より九助を取まきたり
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
さうして被害者ひがいしやから事實じじつ相違さうゐしたといふ意味いみ取消とりけしせばそれでいといふことにまではこびがついた。微罪びざいといふのでそのすぢ手加減てかげん出來できたのである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
「人間のくづだよ、——俺の立てたすぢは先づ間違ひはあるまいと思ふ。このお調べは面白いぜ、八」
昔は少し泳げたのだが、狸も三十七になると、あちこちのすぢが固くなつて、とても泳げやしないのだ。白状する。おれは三十七なんだ。お前とは実際、としが違ひすぎるのだ。
お伽草紙 (新字旧仮名) / 太宰治(著)
んでゐると、そのえた力におどろき、亦引摺ひきずられても行きますが、さて頁を伏せて見て、ひよいと今作者さくしやに依つてゑがかれた人物の心理しんりを考へて見ると、人物の心理のせんすぢけはきはめてあざやかに
三作家に就ての感想 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
... そりやアなんともへないすご怪談くわいだんがある」「へー、それはどうすぢです」「くはしい事は知らないが、なんでも初代しよだい多助たすけといふ人は上州じやうしうはうから出てた人で、同じ国者くにもの多助たすけ便たよつてて、 ...
塩原多助旅日記 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
身内のすぢこと/″\ゆるんですつと胸が開く様な暢達ちやうたつな気持を覚える。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
すぢを引き、くわんをゑがきて
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
よしや千萬里ばんりはなれるとも眞實まこと親子おやこ兄弟けうだいならば何時いつかへつてうといふたのしみもあれど、ほんの親切しんせつといふ一すぢいとにかヽつてなれば
経つくゑ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
六月ろくぐわつらすなかに、寢不足ねぶそく蒼白あをじろかほを、蒸返むしかへしにうだらして、すぢもとろけさうに、ふら/\とやしきちかづく。
みつ柏 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
致させまじかれをつとの一大事と申は何か仔細のある事ならんとかく願ひのすぢ取上て遣はすべし然れども今は此混雜こんざつゆゑのち趣意しゆいは聞んにより一まづ其者を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
またどうすぢとほれば、馬鹿ばかはないでむといふ手續てつゞきをしへてれるものもなかつた。宗助そうすけ矢張やつぱり横町よこちやう道具屋だうぐや屏風びやうぶるよりほか仕方しかたがなかつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「さうだが、それもどういふすぢぜにだかわからないがそりや使つかつちやいかないんだらうさね」
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
全身のすぢのはちきれるやうな
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
駄々だゞぬて、泣癖なきくせいたらしい。へのなり曲形口いがみぐちりやう頬邊ほゝべた高慢かうまんすぢれて、しぶいたやうな顏色がんしよく
山の手小景 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
うきかざりのべにをしろいこそらぬものあらがみ島田しまだ元結もとゆひすぢきつてはなせし姿すがたいろこのむものにはまただんとたヽえてむこにゆかんよめにとらん
経つくゑ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
さうなると、今迄は気がかなかつたが、じつに見るに堪えない程醜くいものである。毛が不揃むらびて、あをすぢ所々ところ/″\はびこつて、如何にも不思議な動物である。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
いまふさがず、れいみはつて、ひそむべきなやみもげに、ひたひばかりのすぢきざまず、うつくしうやさしまゆびたまゝ、またゝきもしないで、のまゝ見据みすえた。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
れならどうしてとはれゝばことさまざまれはうでもはなしのほかのつゝましさなれば、れに打明うちあけいふすぢならず、物言ものいはずしておのづとほゝあかうなり
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
手に編針あみばりを持つてゐる。毛糸けいとのたまが寝台のしたころがつた。女の手から長い赤い糸がすぢを引いてゐる。三四郎は寝台のしたから毛糸のたまを取り出してやらうかと思つた。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
はやく、まちはなれてつじれると、高草たかくさ遥々はる/″\みちすぢ、十和田わだかよふといたころから、同伴つれ自動車じどうしやつゞかない。
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
なにごとにもすぢなる乙女氣をとめぎには無理むりならねど、さりとはなげかはしきまよひなり、かくしたしくひてしたしくかたりて、いさむべきはいさなぐさむべきはなぐさめてやりたし
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)