のぞ)” の例文
……一体いつたいが、天上界てんじやうかい遊山船ゆさんぶねなぞらへて、丹精たんせいめました細工さいくにござるで、御斉眉おかしづきなかから天人てんにんのやうな上﨟じやうらう御一方おひとかた、とのぞんだげな。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
『いや/\、わたくしかへつて、天外てんぐわい※里ばんり此樣こんしまから、何時いつまでも、君等きみら故郷こきようそらのぞませることなさけなくかんずるのです。』と嘆息たんそくしつゝ
月光げっこうらされている、そのとお山影やまかげのぞみますと、もしゆきわたってまっすぐにいくことができたならそんなにとおくもないだろう。
白すみれとしいの木 (新字新仮名) / 小川未明(著)
おこし我が子の爲と存ずる淺猿あさましき心偖々さて/\苦々にが/\しき所爲しわざなりかく淺果あさはかなる惡事何として其身ののぞみを遂ることなるべきや因て其許も能々よく/\我身を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
これと同時どうじにその論議ろんぎ具體化ぐたいくわした建築物けんちくぶつ實現じつげんさらのぞましいことである。假令たとひその成績せいせき多少たせう缺點けつてんみとめられてもそれ問題もんだいでない。
建築の本義 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
くちにせねば入譯いりわけ御存ごぞんじなきこそよけれ御恩ごおんがへしにはおのぞかなへさせましてよろこたまふをるがたのしみぞとれをすてての周旋とりもちなるを
五月雨 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ちょうど糟谷かすやが遊んでおったをさいわいに、その主任獣医しゅにんじゅういとなった。糟谷は以来栄達えいたつのぞみをたち、ろくろくたる生活にやすんじてしまった。
老獣医 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
それはかくも、わたくし神様かみさまからなにのぞみのものをえとわれ、いろいろとかんがいたすえにたったひとつだけ註文ちゅうもんしました。
技師ぎしは、わたしがのぞむなら、事務所じむしょで仕事を見つけてやると言った。ガスパールおじさんも鉱山こうざんでしじゅうの仕事をこしらえようと言った。
カピ妻 はい、まうしましたなれど、有難ありがたうはござりますが、のぞまぬとうてゐます。阿呆あはうめははか嫁入よめいりしたがようござります!
むらひとはれて、とうさんはおうちまへからそのチラ/\とえるあを狐火きつねびとほやまむかふのはうのぞんだこともありました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
遠駆とおがけの一ばん試合じあいで、勝敗しょうはいめることは当方とうほうで、のぞむところ、たしかに承知しょうちした。さらば、すぐそちらでもおしたくを」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
私達はたゞ/\解放かいはうされるのをばかりのぞんだのではなかつた。何ものかを心にしつかとつかまなければならないのでした。
冬を迎へようとして (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
無論むろんわたしにはのぞみの好敵こうてき手だつた。大正十三年から十四年へのばん除夜じよやの鐘をきながら、先生と勝負せうふあらそつた事もある。
文壇球突物語 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
「そんだが嫁樣よめさま衣物きものどういんだかてえもんだな」半分はんぶんのぞむやうな半分はんぶん氣遺きづかふやうなたがひこゝろかたるのであつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
ほかもののぞんだら、百りょうでもゆずれるしなじゃねえんだが、相手あいてがおせんにくびッたけの若旦那わかだんなだから、まず一りょうがとこで辛抱しんぼうしてやろうとおもってるんだ
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
けれどそこのうみからは、どうしても日本にっぽんくにはいのぞみがないので、ぐるりとそとまわって、但馬国たじまのくにからがりました。
赤い玉 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
ここではあらゆるのぞみがみんなきよめられている。ねがいの数はみなしずめられている。重力じゅうりょくたがいされつめたいまるめろのにおいが浮動ふどうするばかりだ。
インドラの網 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
このちひさなそばつてても仕方しかたがないと、あいちやんは洋卓テーブルところもどつてきました、なかばかぎ見出みいだしたいとのぞみながら、さもなければかく
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
ほどこして必ずほうある者は、天地の定理ていりなり。仁人じんじんこれを述べてもっひとすすむ。ほどこしてほうのぞまざる者は、聖賢せいけん盛心せいしんなり。君子くんしこれそんして以てすくう」
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
君から話を聞いた時、僕の未来を犠牲にしても、君ののぞみをかなへるのが、友達の本分だと思つた。それがわるかつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
すべてののぞみを失い、ベッドにうっ伏して、わあわあ泣いた。だが、誰もそれをなぐさめにきてくれる者はなかった。
少年探偵長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
集合的しふがふてき独立どくりつのぞんで個人的こじんてき独立どくりつあえてせざるものは独立どくりつするとも独立どくりつ好結果かうけつくわあづかり得ざるなり、我等は厄介者と共に独立するを甚だ迷惑に感ずるなり
時事雑評二三 (新字旧仮名) / 内村鑑三(著)
やみにもよろこびあり、ひかりにもかなしみあり麥藁帽むぎわらばうひさしかたむけて、彼方かなたをか此方こなたはやしのぞめば、まじ/\とかゞやいてまばゆきばかりの景色けしき自分じぶんおもはずいた。
画の悲み (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
著者ちよしやさらすゝんで地震動ぢしんどう性質せいしつあぢはひ、それによつて震原しんげん位置いちをも判斷はんだんすることに利用りようしてゐるけれども、これは一般いつぱん讀者どくしやのぞべきことでない。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
それもどうものぞみはないらしいですがね、それよりもかねことですよ。先刻さつきぼく此處ここはひらうとすると、れいのあの牧師ぼくしあがりの會計くわいけい老爺おやぢめるのです。
彼女こゝに眠る (旧字旧仮名) / 若杉鳥子(著)
近頃所蔵の骨董物こつとうものにつくづく飽きが来て、のぞさへあつたら、今が今でも譲り度いやうな事を言ひ出した。
「研究をつづけるためにだって? だってきみの研究は完成かんせいして、のぞみどおり透明とうめいになったじゃないか……」
昨夜来さくやらいしきりにり来る雨は朝に至りて未だれず、はるかに利根山奥をのぞむに雲烟うんえん濛々もう/\前途漠焉ばくえんたり、藤原村民の言の如く山霊さんれい果して一行の探検たんけんを拒むかとおもはしむ
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
あるひ患者くわんじやたいして、たん形式以上けいしきいじやう關係くわんけいたぬやうにのぞんでも出來できぬやうに、習慣しふくわんやつがさせてしまふ、はやへば彼等かれらあだかも、にはつてひつじや、うしほふ
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
終りにのぞんで讀者諸君に一言す。余は以上の風俗考を以て自ら滿足まんぞくする者に非ず、尚ほ多くの事實を蒐集總括して更に精しき風俗考をあらはさんとはの平常ののぞみなり。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
むかしむかし夫婦者ふうふものがあって、ながあいだ小児こどもしい、しい、といいくらしておりましたが、やっとおかみさんののぞみがかなって、神様かみさまねがいをきいてくださいました。
これはあなたがたおもふやうに、いやしい色慾しきよくではありません。もしそのとき色慾しきよくほかに、なにのぞみがなかつたとすれば、わたしはをんな蹴倒けたふしても、きつとげてしまつたでせう。
藪の中 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
むかし印度いんどのある国に、一人の王子がありました。国王からは大事だいじそだてられ、国民からはしたわれて、ゆくゆくは立派りっぱな王様になられるにちがいないと、みなからのぞみをかけられていました。
強い賢い王様の話 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
勿論もちろん意味いみ文芸上ぶんげいぜうのことであつた。S、H女性じよせいたいして、Iのやうな婦人ふじんのぞんでゐるやうにやさしい親切しんせつ異性いせいでないことはIつてゐた。そしてそれをくちにしてゐた。
微笑の渦 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
こんなものゝ破片はへんなどがちてゐるかどうかを注意ちゆういされるようにのぞみます。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
汽車きしゃの中等室にて英吉利婦人にう。「カバン」の中より英文の道中記どうちゅうき取出して読み、眼鏡めがねかけて車窓の外の山をのぞみ居たりしが、記中には此山三千尺とあり、見る所はあまりにひくしなどいう。
みちの記 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
それから、おのぞみのダイヤモンドなら、ここに少し持って来ましたから。
一人は澎湃奔放はうはいほんぱうたる濁流をのぞみ、ひとりは山影やまかげ苔清水こけしみづをなつかしむ。
こんな二人 (旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
「そんな大きなのぞみを出したッてしかたがないじゃないかねえ」
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
其中そのなかで、末吉すゑよし貝塚かひづかは、やゝのぞみがある。
しばらくして、乞食こじきは、もはやのぞみのかなわないものとおもってか、そのいえまえって、さよのいるほうへとあるいてきました。
善いことをした喜び (新字新仮名) / 小川未明(著)
他日たじつ海底戰鬪艇かいていせんとうていが、帝國軍艦旗ていこくぐんかんきひるがへして、千艇※艦せんていばんかんあひだつのときねがはくばそのごとく、神速しんそくに、猛烈まうれつならんことのぞむのです。
前にして遠く房總ばうそうの山々をのぞみ南は羽田はねだみさき海上かいじやう突出つきいだし北は芝浦しばうらより淺草の堂塔迄だうたふまではるかに見渡し凡そ妓樓あそびやあるにして此絶景ぜつけい
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
自分になんらの悪気わるぎはなかったものの、妻が自分にとつぐについては自分に多大ただいのぞみをしょくしてきたことは承知しょうちしていたのだ。
老獣医 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
これより、「ぢゞ茶屋ぢやや」「箱根はこね」「原口はらぐちたき」「南瓜軒なんくわけん」「下櫻山しもさくらやま」をて、倒富士さかさふじ田越橋たごえばしたもとけば、すぐにボートを眞帆まほ片帆かたほのぞむ。
逗子だより (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
なにたのしみに轅棒かぢぼうをにぎつて、なにのぞみに牛馬うしうま眞似まねをする、ぜにもらへたらうれしいか、さけまれたら愉快ゆくわいなか、かんがへればなに悉皆しつかいやで
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
びんぼう村らしくって、あまりみいりの多いことはのぞめないが、村が小さければ巡査じゅんさに出会うことも少なかろうと考えた。
またなにのぞみがあるなら、いまうち遠慮えんりょなく申出もうしでるがよい。無理むりのないことであるならすべてゆるすつもりであるから……。
たいてい自分ののぞ種子たねさえけばひとりでにどんどんできます。米だってパシフィックへんのようにからもないし十ばいも大きくてにおいもいいのです。
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)