室内しつない)” の例文
餘念よねんもなくたわむれてるので、わたくし一人ひとり室内しつない閉籠とぢこもつて、今朝けさ大佐たいさから依頼いらいされた、ある航海學かうかいがくほん飜譯ほんやくにかゝつて一日いちにちくらしてしまつた。
繰返くりかへして三度さんど、また跫音あしおとがしたが、其時そのときまくらあがらなかつた。室内しつない空氣くうきたゞいやうへ蔽重おほひかさなつて、おのづと重量ぢうりやう出來できおさへつけるやうな!
怪談女の輪 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
私はそう叫ぶと、室内しつないに死んだようになって横たわっている老婦人を助ける元気などはたちませて、室外に飛び出しました。
崩れる鬼影 (新字新仮名) / 海野十三(著)
余は室内しつないには大小種々のたなの有りし事をしんずる者なり。入り口の他にも數個すうこまど有りしなるべければ、室内しつない充分じうぶんあかるかりしならん。(續出)
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
ると、室内しつないには白衣びゃくいた五十さいおもわるる一人ひとり修験者しゅけんじゃらしい人物じんぶつて、鄭重ていちょうこしをかがめて私達わたくしたちむかえました。
醫者いしやもらふと、發育はついく充分じゆうぶんでないから、室内しつない温度をんど一定いつていたかさにして、晝夜ちうやともかはらないくらゐ人工的じんこうてきあたゝめなければ不可いけないとつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
と、或朝あるあさはや非常ひじやう興奮こうふんした樣子やうすで、眞赤まつかかほをし、かみ茫々ばう/\として宿やどかへつてた。さうしてなに獨語ひとりごとしながら、室内しつないすみからすみへといそいであるく。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
たまたまあった、美容院びよういんとびらしてうちはいると、室内しつないは、いいかおりがただよい、はなみだれるように、うつくしいむすめたちが、あふれるばかりあつまっていました。
だまされた娘とちょうの話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
室内しつないにて前記ぜんきごと條件じようけん場所ばしよもなく、また廊下ろうか居合ゐあはせて、兩側りようがは張壁はりかべからの墜落物ついらくぶつはさちせられさうな場合ばあひおいては、しつ出入口でいりぐち枠構わくがまへが
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
病人びやうにん不安ふあん室内しつないたゞよはしてゐたが、なにものをいひたさうに、K夫人ふじんうごはうつてゐた。
彼女こゝに眠る (旧字旧仮名) / 若杉鳥子(著)
早口に、こんな言葉をかわしながら、室内しつないの物をとりのけて、しきりとだれかをさがしているようす。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いわしあぶらがぢり/\とれてあをほのほつた。いわしにほひうすけむりとも室内しつない滿ちた。さうしてそのにほひがおしな食慾しよくよくうながした。おしな俯伏うつぶしたなりで煙臭けぶりくさくなつたいわしべた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
おほきい石室せきしつ奧行おくゆきが十間近じつけんちかくもあり、室内しつない眞暗まつくらですからたいそう氣味きみわるいものでありますが、蝋燭ろうそくともしたり、懷中電燈かいちゆうでんとうたづさへてきますと、内部ないぶ模樣もようがよくわかります。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
春は目の前にきていながらめずらしく雪のる中を、ひとバスおくれた大石先生は、学校前の停留所ていりゅうじょからかさもささずに走って、職員室にとびこんだとたん、異様いよう室内しつないの空気に思わず立ちどまり
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
ふとうち見たる室内しつない
詩集夏花 (新字旧仮名) / 伊東静雄(著)
ゆかの上——室内しつない
太陽の子 (旧字旧仮名) / 福士幸次郎(著)
其事そのことこの虎髯ひげがおはなしもうすのが順當じゆんたうでせう。』と不意ふゐ室内しつない飛込とびこんでたのは、れい磊落らいらくなる虎髯大尉こぜんたいゐ本名ほんめい轟大尉とゞろきたいゐであつた。
以前いぜん少年せうねん手傳てつだつて、これからつゝみいて、人參にんじん卓子テエブル一杯いつぱい積上つみあげる。異香いかう室内しつない滿つ——で、たふとさが思遣おもひやられる。
人参 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
と、或朝あるあさはや非常ひじょう興奮こうふんした様子ようすで、真赤まっかかおをし、かみ茫々ぼうぼうとして宿やどかえってた。そうしてなに独語ひとりごとしながら、室内しつないすみからすみへといそいであるく。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
彼は教授のめるのも聞かず、勇躍ゆうやく飛んで出ると、スイッチを真暗まっくらの中にさぐってパッとをつけた。たちまち室内しつないは昼をあざむくように煌々こうこうたる光にみちた。
恐怖の口笛 (新字新仮名) / 海野十三(著)
室内しつないの有樣に付きては口碑こうひ存せず。火をきしあとの他、實地じつちに就いての調査てうさも何の證をも引き出さず。余は茲に想像そうぞうを述べて此點に關する事實じじつ缺乏けつばうおぎなはんとす。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
室内しつないあかるく、いろいろに装飾そうしょくがしてありましたけれど、ひかりは、けっしてそこへはまなかったのです。このことは、はなにとって、このうえのない不幸ふこうでありました。
花と人の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
宗助そうすけ手際てぎはでは、室内しつない煖爐だんろける設備せつびをするだけでも容易よういではなかつた。夫婦ふうふはわが時間じかん算段さんだんゆるかぎりをつくして、專念せんねん赤兒あかごいのちまもつた。けれどもすべては徒勞とらうした。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
それらのはかなかにはおほきな石室せきしつがありまして、室内しつないにはじつおどろくほど立派りつぱいてあります。そのすぐれた支那風しなふうでありまして、ちょうど支那しな六朝頃りくちようごろ畫風がふうしめしてをります。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
おつぎは勘次かんじ煙草たばこはないので一寸ちよつと煙草たばこをとることにまでは心附こゝろづかなかつた。野田のだでは始終しじうかん/\と堅炭かたずみおこしていくらでもたぎつてよるでも室内しつない火氣くわきることはないのである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
吾等われらおどろいて立上たちあがる、途端とたんもあらせず! ひゞきたちま海上かいじやうあたつて、天軸てんじく一時いちじくだぶがごとく、一陣いちぢん潮風ていふうなみ飛沫とばしりともに、サツと室内しつない吹付ふきつけた。
アンドレイ、エヒミチはやつと一人ひとりになつて、長椅子ながいすうへにのろ/\と落着おちついてよこになる。室内しつない自分じぶん唯一人たゞひとり、と意識いしきするのは如何いか愉快ゆくわいつたらう。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
はるかに歩行あるいてまたもんあり。畫棟彫梁ぐわとうてうりやうにじごとし。さてなかはひると、ひとツ。くもとびらつきひらく。室内しつないに、おほき釣鐘つりがねごと香爐かうろすわつて、かすみごとかういた。
画の裡 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
室内しつない一部分には土間どま有りて此所ここは火をき、水瓶みづがめを置く爲に用ゐられたるならん。土器どき石器せききの中には小さき物あり、うつくしき物あり。是等これらとこの上に直にかれたりとは考ふる能はず。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
しかしながら、そんな大きい無色透明の物体なんてるのでしょうか。そいつは一体何者でしょうか。それは室内しつないのどこに置いてあって、どういう風にして窓硝子へぶっつかったのでしょうか。
崩れる鬼影 (新字新仮名) / 海野十三(著)
まちなかかわながれていた。はしたもと食堂しょくどうがありました。かれはこのいえともだちといっしょにさけんだり、食事しょくじをしたのでした。和洋折衷わようせっちゅうのバラックしきで、室内しつないには、おおきなかがみがかかっていました。
風はささやく (新字新仮名) / 小川未明(著)
手足てあしのばせばくゝりつけたかやしのれてかさ/\とほどせま室内しつないを、さむさはたばねた松葉まつばさきでつゝくやうに徹宵よつぴてその隙間すきまねらつてまなかつた。勘次かんじえてしまつた。かれきたまくらしてた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
と、やがて立留たちとどまって室内しつない人々ひとびとみまわして昂然こうぜんとしていまにもなに重大じゅうだいなことをわんとするような身構みがまえをする。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
清々すが/\しいの、なんのつて、室内しつないにはちりひとツもない、あつてもそれ矢張やつぱ透通すきとほつてしまふんですもの。かべ一面いちめんたまの、大姿見おほすがたみけたやうでした、いろしろいんですがね。
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
アンドレイ、エヒミチはやっと一人ひとりになって、長椅子ながいすうえにのろのろと落着おちついてよこになる。室内しつない自分じぶんただ一人ひとり、と意識いしきするのは如何いか愉快ゆかいであったろう。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
すし、お辨當べんたうたひめしの聲々こゑ/″\いさましく、名古屋なごやにてまつたけて、室内しつないいさゝくつろぎ、あたゝかにまどかゞやく。
大阪まで (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
室内しつないはず、廊下らうかはず、にははず、なんともはれぬ臭氣しうきはないて、呼吸いきをするさへくるしいほど
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
はやく、さみしいことは、室内しつないは、一人ひとりのこらず長々なが/\つて、毛布まうふつゝまつて、みなる。
雨ふり (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
室内しつない一面いちめん濛々もう/\としたうへへ、あくどい黄味きみびたのが、生暖なまぬるつくつて、むく/\あわくやうに、……獅噛面しかみづら切齒くひしばつた窓々まど/\の、隙間すきま隙間すきま天井てんじやう廂合ひあはひから流込ながれこむ。
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
かれあわたゞしくまどひらいて、呼吸いきのありたけをくちから吐出はきだすがごとくにつきあふぐ、と澄切すみきつたやまこしに、一幅ひとはゞのむら尾花をばなのこして、室内しつないけむりく。それがいは浸込しみこんで次第しだいえる。
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
呆氣あつけられたかれ一人ひとり室内しつないのこして、悠然いうぜんとびらたのである。
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)