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澄切
……
実は三
日余り、
仙境霊地に
心身共に
澄切つて、
澄切つた
胸さきへ
凡俗の
気が
見透くばかり。
其骨の
尖角の間から洩るる大空が、気味の悪いほどに
澄切っているのは、
軈て真黒な雪雲を運び出す
先触と知られた。人馬の交通を
遮るべき厳寒の時節も
漸く迫り来るのである。
彼は
慌しく
窓を
開いて、
呼吸のありたけを
口から
吐出すが
如くに
月を
仰ぐ、と
澄切つた
山の
腰に、
一幅のむら
尾花を
殘して、
室内の
煙が
透く。それが
岩に
浸込んで
次第に
消える。