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すみき
唯其の
時は、
爪一つ
指の
尖も、
人目には
漏れないで、
水底に
眠つたやうに、
面影ばかり
澄切つて
居たのに、——こゝでは、
散乱れた、三ひら、五ひらの
卯の
花が、
凄く
動く
汽車の
底に
空模樣は、その
癖、
星が
晃々して、
澄切つて
居ながら、
風は
尋常ならず
亂れて、
時々むく/\と
古綿を
積んだ
灰色の
雲が
湧上る。とぽつりと
降る。
降るかと
思ふと、
颯と
又暴びた
風で
吹拂ふ。
珊瑚が
散つて、
不知火を
澄切つた
水に
鏤めたやうである。